仕事とプライベートの両立において、重要なテーマの一つが「男性育休」です。今回は、育休を取得した現場スタッフ2名と、制度の設計や周知を担う人事室が、育休取得の実態や課題、全員活躍を目指すための必要なマインドを語り合います。

※この記事は、博報堂プロダクツが掲げるP+ESGを実践する社員一人ひとりにスポットを当てる「P+ESG ACTION interview」の連載企画です。P+ESGとは、ESG(環境・社会・ガバナンス)に、ものづくりへのこだわりを意味する「P(プロダクト)」を加えた博報堂プロダクツ独自のサステナビリティ指針です。
- 注目が集まる男性育休と、博報堂プロダクツの現況
- 男性社員が経験した、育休取得と子育てのリアル
- 育休という選択肢の定着には、「制度」と「社員の理解」の両軸が必要
- 子育てと向き合った時間は、仕事や人生のプラスになっている
- プロフィール(取材時)
注目が集まる男性育休と、博報堂プロダクツの現況
DE&Iや人的資本経営の実現に向け、欠かせない要素となる働き方の選択。子育てにおいては、改正された「育児・介護休業法」が2025年に施行されるなど、企業が果たす役割も大きくなっています。育休の制度整備や周知を推進する博報堂プロダクツでも「男性育休の取得者は増えつつある」と、人事室人事労務部の齋藤香澄は説明します。
齋藤:男性社員は「育児休業」のほか、出生後8週間以内の希望する期間で、4週間までの休暇を2回まで分割して取得できる「出生時育児休業」を利用することができます。また、休業を取得しない場合でも、通常の有給休暇とは別に「出産休暇」を3日間取得することが可能です。
多くの社員が自身のライフスタイルに合わせて制度や休暇を選択しており、男性の取得率は、2022年度は43.5%、2023年度は51.6%、2024年度には61.5%と年々増加傾向にあります。
映像クリエイティブ事業本部の清水健成は、入社9年目のプロデューサー。2024年に育休と他の制度を併せ、約2カ月間の休暇を取得しました。
清水:出産予定に合わせ、2024年3月下旬から5月まで休みました。プロジェクトが落ち着き、チームの体制変更などが変わる年度初めのタイミングが重なり、比較的育休が取りやすい時期でした。

インセンティブプロモーション事業本部の江口雄二郎は、ノベルティキャンペーンの設計などを担うプロデューサー。2023年に育休を取得しました。
江口:私も他の休暇と併せ、約3カ月の間仕事を休みました。1月の出産に合わせて年末から休暇をとり、新年度より復帰した形です。取得の際は、人事室との面談も行いました。
齋藤:人事室では3年前、ライフイベント情報に関する社内の特設Webページを開設し、規程などに記載されている複雑な情報の整理・発信に努めています。ただ、現場社員は多忙で、情報を取得しきれないケースも少なくありません。そこで人事室では、男性社員からの出生時の書類提出などのタイミングも活用しながら、各種制度を説明する面談を実施しています。
男性社員が経験した、育休取得と子育てのリアル
制度の充実化が進む男性育休ですが、普及には課題があるのも事実。現場の社員は取得前、育休にどのようなイメージを抱いていたのでしょうか。
江口:パートナーの妊娠を受け、社内外の知人も含めて色々な方の話を聞いたのですが、当時は男性の育休取得は一般化しておらず、休暇は1週間程度が通常でした。私もそれまでは正直なところ、自分が育休を取得するイメージはもっていなかったです。育休を取得することで、復帰後の業務内容や状況が大きく変わってしまうことも懸念していました。
清水:制度の存在は知っていましたが、具体的な期間や給料などの詳細は理解していませんでした。漠然と「有給を取得すると、どう思われるのだろう」と、若干の不安もありました。ただ、チームに男性育休を取得した先輩がおり、取得のタイミングや業務調整の相談が色々できたことはとても大きかったです。
齋藤:会社全体でも1年など長期間育休を取得する男性社員はまだ少なく、人事室にも「他の社員はどのくらいの期間取得しているか」と、相談をうけるケースは多いです。私たちにできるのは制度の案内や手続きのサポートがメインとなってしまうため、業務上のリアルな相談という部分においては、先輩社員に依る部分が大きいのだと思います。
江口:実際に相談してみると、周囲は前向きに捉えてくれました。インセンティブプロモーション事業本部には子どもをターゲットにした案件も多く、「育児経験は仕事にも役立つ」と、部長が育休取得に対する雰囲気づくりに積極的だったところも大きいと思います。
いざ育休を取得してみると、発見ばかりの日々でした。家の外に出ず、温度と湿度を見張りながら、3時間ごとにミルクを与えることの繰り返し。睡眠不足を避けるため、夫婦で朝晩の交代制にしていたのですが、これらは育休を取得したからこそできたことです。
清水:3時間おきのミルクなど、パートナー一人で担うのは厳しいことも多く、育休を取得してよかったと思います。妊娠中に食べられなかった海鮮料理の食べ放題に、混雑しない平日に行くなど、夫婦の時間もつくることができました。育児の知識とスキルも集中して身につけられたことは、育休が明けた後も生きています。
江口:育児がどれだけ大変かは、言葉だけでは理解できません。時間をかけて経験することが一番です。そこに必要な期間は、私にとって最低でも1カ月でした。働きながら子育てをする力も大切なので、3カ月という期間は自分にとってはちょうど良かったと思っています。

育休という選択肢の定着には、「制度」と「社員の理解」の両軸が必要
それぞれの育休期間を経て復職した2人。現在は家庭と仕事のバランスをとりながら、日々の生活を送っています。
江口:子どもは保育園に通っており、朝の送りは私の担当です。どうしても帰宅が遅くなったりすることも多く、また子どもの急な体調不良の対応が難しかったりと、パートナーに負担をかけてしまうことも多いです。ですが、周囲の協力も得ながら、少しでも対応していけるよう心掛けてはいます。また、部内でも育休を取得する男性の後輩もでき、多忙な中でも家庭との両立を目指す空気感も強くなったと感じています。
清水:私自身も、まず自分の家庭や人生を考えるようになったので、そうした後輩が増えてほしいです。私の部署では人事室と連携し、育休の説明会を開催してもらうなど、情報共有にも努めています。また、ファミリーイベントも開催することで、家族が職場の状況を理解する場づくりもした部署もありました。そうした活動も、男性育休の取得者の増加につながっているのかもしれません。
齋藤:先輩が育休を取得し、後輩たちにも波及する流れは、さまざまな部署を見ていても明らかです。身近なところに経験者がいて、自分の選択肢をイメージできることは、ポジティブな影響を与えるのだと思います。
江口:それでも男性が育休をとりづらい風潮は、世の中全体に残っていると思います。さらに私たちが所属している広告業界には、業務量やスケジュールを調整しづらい側面もある。個人レベルで頼りにできるのは、「そもそも育休をとるべきか」と、ゼロから相談できる環境だったりします。リーダーやチームメンバーのそれぞれが育休に対してポジティブな意識を持ち発信をすることで、相談しやすい環境を作ることが、育休取得の普及につながるはずです。
清水:本当に育休取得を当たり前にするならば、働き方やキャリア設計も見直すべきだと思います。育休を取得するか否かを単体で考えるのではなく、働き方や自身のキャリア設計や評価など含めてこうした支援が充実していくのはうれしく思います。
齋藤:会社としても男女問わず、全員が活躍できる環境づくりのために、産前産後の対応、復職後の両立支援などに注力していくべきだと考えています。この取材の機会であらためて話をお伺いしていくなかで、2人のような声をもっと広げたいと感じました。

子育てと向き合った時間は、仕事や人生のプラスになっている
制度と社員の理解が重なり、男性育休がより自然な選択に。自身の成長やウェルビーイングの向上にもつながる、仕事とプライベートの両立。取得者の2人は、育休にどのような意義を見出したのでしょうか、また人事室では今後、どのように取り組みを強化していくのでしょうか。
江口:育休に踏み切る時、自分の生活にメリハリをつくりたいという気持ちがありました。中途半端に仕事をつづけてしまうと、職場でも家庭でもフラストレーションが溜まり、精神衛生にも悪い影響が及ぶものです。まとめて会社を休み、育児に集中した結果、育休明けも仕事に打ち込め、家族の理解も深まったと思います。
清水:育休を取得した一番の理由は、必ず出産に立ち会うためでした。お腹を痛めて出産する母親ではないからこそ、傍で感じることで、家族への愛を深められると思いました。仕事をいったん脇に置き、子どもと向き合えた2カ月間は、人生という長い視点で振り返っても、かけがえのない時間でした。
齋藤:悩みや困難は家庭ごとに異なりますし、ワークスタイルや求められるサポートは、部門や職種、そしてパートナーとのライフスタイルによっても大きく異なると思っています。
そのため、制度設計・情報発信・職場の雰囲気づくりを含め、それぞれが最適な選択をできる環境を整えるのが、私たち人事の役目だと考えています。創立20周年を迎える博報堂プロダクツでは、仕事とプライベートの両立を支援するため、現在、各種制度の次世代化に取り組んでいます。今後人事関連情報をお伝えする社内サイトも開設予定なので、社員の皆さんにも積極的に活用してもらえるよう社内コミュニケーションを図っていきたいと思います。
【P+ESG ACTION interview連載記事】
「すきにすなおにすすもう。」今、わたしたちが目指すアクション
誰もが心地よく働くためには? 映像制作メンバーが考える働き方と未来
“違い”を強みに変える障がい者雇用。インクルーシブな職場づくりを目指して
制度ではなく関係性で育つマネジメント。管理職研修と現場の声から見える人材育成のかたち
プロフィール(取材時)

映像クリエイティブ事業本部
清水 健成
2017年プロダクツ入社。
映像制作領域プロデューサー
主にデジタル案件を担当し、生成AIを使った案件も得意。 主に室町ビルに勤務。“仕事は人生の1/3”をモットーに働いています。

インセンティブプロモーション事業本部
江口 雄二郎
2013年博報堂プロダクツ入社。
プロデューサー
インセンティブプロモーション領域のキャンペーン設計から企画・賞品提案、制作実施までをプロデュース。これまでに、自動車・保険・食品・娯楽業などのクライアント業務に従事。

人事室人事労務部
齋藤 香澄
2011年博報堂プロダクツ入社。
入社後新卒採用や人事労務領域に幅広く従事。2020年~産休・育休を経て2022年に復職後、現在は育児と仕事の両立を図りながら入退職・異動・各種制度の適用など、人事情報データの管理・運用を中心とした業務を担当。

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博報堂プロダクツ サステナビリティサイト
サステナビリティ方針及び調達ガイドラインを策定し、持続可能な社会と事業成長の実現に向けた取り組みをまとめたサステナビリティサイト
