ワークライフバランスの見直しや価値観の多様化が進む中、注目が集まる「働き方」。今回は、その取り組みを実践している社員と環境づくりを担う人事室が、自分らしく働くために必要なこと、チームの課題や具体的なアプローチを話し合います。

※この記事は、博報堂プロダクツが掲げるP+ESGを実践する社員一人ひとりにスポットを当てる「P+ESG ACTION interview」の連載企画です。P+ESGとは、ESG(環境・社会・ガバナンス)に、ものづくりへのこだわりを意味する「P(プロダクト)」を加えた博報堂プロダクツ独自のサステナビリティ指針です。
- 博報堂プロダクツの取り組みと、変わり始めた働き方
- AI導入や午後6時退社で、制作現場の課題にアプローチ
- 「自分らしさ」を支える仕組みづくりへ
- 個人とチーム、両方の最適な働き方を目指すために
- プロフィール(取材時)
博報堂プロダクツの取り組みと、変わり始めた働き方
多様な価値観に基づく柔軟な働き方が求められる一方で、長時間労働や属人的な働き方が課題となる広告・制作業界。社員一人ひとりが選択肢を広げられるよう、博報堂プロダクツでは各種の取り組みを強化しています。その制度の推進や環境の設計を担う一人が、人事労務部の山本和生です。
山本:長時間労働の是正は大前提としながら、プライベートの時間を確保するためにも、誰もが自分のスタイルで働ける環境づくりは必要です。当社は過半数以上の社員が裁量労働制であることをベースに、週休3日を選べる「限定勤務制度」、勤務形態の幅を広げる「在宅勤務制度」など、多様なワークスタイルを支援しています。また限られた時間の中で最大限のパフォーマンスを追及し、生産性を高めるために、1日あたりの平均勤務時間10時間以内を目指す「Team Max10」を2016年より推進。年2回、連続5日間の連続休暇が取得できる「フリーバカンス制度」は現在、取得率が100%に近い水準です。
制度とともに重要となるのが、現場での取り組みです。17の事業本部、3つの支社からなる博報堂プロダクツでは、部門ごとに働き方も大きく異なるため、ワークスタイルの最適化は各事業本部や支社に委ねられています。
「働き方に対する考えが、徐々に変化している」と語るのは、統合クリエイティブ事業本部の伊藤俊輔です。
伊藤:デザイナーやコピーライター、エンジニアが在籍する私の事業本部は、急なスケジュール対応なども多く、10年ほど前まで多忙な日々を送っていました。変わり始めたのは、現在私がリーダーを務める「ウラワザ」を発足した頃です。日々の働き方を見直すようになり、現在は有給やフリーバカンスを合わせ、年間30日休むスタッフも少なくありません。
イベント・スペースプロモーション事業本部の柴田直佳は、国内外の多様なイベントを手掛ける専門職。昨年には育休を取得し、2025年5月に現場復帰しました。
柴田:イベントに携わる私の事業本部は、土日や深夜の現場対応が多いのが特徴です。平日の振替休日やフリーバカンス制度を活用し、メリハリをつけて働くよう意識しています。近年はオンライン会議の定着により、在宅勤務も増えました。一方で、繁忙期には休めない日がつづくケースもあるため、チーム内の連携・調整が課題となっています。

AI導入や午後6時退社で、制作現場の課題にアプローチ
全社的な制度に加え、各部門では独自の施策にも取り組んでいます。統合クリエイティブ事業本部では、AI活用による業務効率化プロジェクトを発足。伊藤は旗振り役として、さまざまな試みを進めています。
伊藤:本業のクリエイティブで導入していた生成AIを、業務効率化や生産性向上にも生かせないかと、推進ユニットを設置しました。まずは「制作以外の業務のAI化」「プレゼン作業のAI化」「案件ごとの担当スタッフのスリム化」の3点を生産性向上の目標事項と定義し、「議事録/タスク管理」「ポンチ絵づくり」「カンプ/コンテ制作」など、AIで代替できそうな具体的な作業をレベル別に設定。各チームが試した事例をレポートしてもらい、ナレッジとして共有しています。
集約したレポートは、チーム全員が閲覧できるようにアーカイブ化。毎月のベストチームにはインセンティブを付与するなど、積極的な参加を促した結果、ユニークな事例が集まっているそうです。
伊藤:施策を始めてから約半年。カンプ用の画像加工、不慣れな言語でのコーディング、デザインの修正指示など、実務に生かせるナレッジが溜まってきました。デザインやイラストは「AIで減る仕事」とも言われますが、デザイナーたちも積極的に参加しています。処理的な作業に費やしていた膨大な時間を、クリエイティブに集中できるので、品質も向上するのではないかと期待しています。

一方、イベント・スペースプロモーション事業本部では、スマートワークプロジェクトを実施。柴田もメンバーの一人として、働き方のシフトを推進しています。
柴田:きっかけになったのは、イベントが軒並み中止になったコロナ禍です。閑散期を有効に使おうと、事業本部の独自サイトを立ち上げ、その中で過去の事例や知見を集約しデータベース化する取り組みを進めました。その後、プロジェクトの視点は業務効率化だけでなく、働く環境や働き方にも移っていき2023年度には毎週木曜日午後6時以降の残業をなくす取り組みを開始しました。この取り組みは、家族や友人と交流する“Quality Time”を過ごそうという意味を込めています。
ノー残業デーの取り組みは現在も継続しており、毎週平均で約半数が実践しています。2024年度には社内で表彰され、今年度からは他部署でも導入されるなど事業本部を超えた取り組みにまで広がってきています。
柴田:毎週木曜午後6時以降は本部員の予定表をブロックしミーティングを設定しにくくするなど抑制していますが、まだまだ実施率は半分程度。更なる業務効率化や業務負担の分散など課題はあるものの、木曜はプライベートな予定を入れたり、本部員同士で交流したりなど、多少なりとも本部員の心の拠り所になっているかと思います。もっと多くの他本部も賛同してくれたら、一緒に取り組むことができて嬉しいですね。
「自分らしさ」を支える仕組みづくりへ
現場レベルでの積極的な取り組みが進む一方で、全社的な浸透には課題も残ります。山本は人事室の立場から、事業本部やスタッフによる差を感じるようです。
山本:社内ポータルサイトに人事関連の就業規則・規程などを記載しているものの、全員が認知しているかというと、十分とはいえません。現在、各種人事関連の制度や申請手続きなど、よりわかりやすく伝えるために、人事側では社内ポータルサイト内に人事情報に特化したサイトを作成し、様々なコンテンツ配信を今期から実施しています。また、各部門のニーズに合わせた講習会も充実させ、関心の低い社員にもアプローチしていきたいです。
社員がきちっとルールを把握して、様々な選択肢から自らに合った働き方を選んでもらう必要があると考えています。

伊藤:成果を重視し、自由な働き方を推進する社風があるからこそ、働き方の個人差も大きいのかもしれません。休まない、帰らない人や、帰宅後も働いてしまう人は、一定数います。締め切りギリギリまで品質を追求する習慣も、いまだに残ってはいます。私の場合、仕事を終える節目を「深夜」から「ビジネスタイム内」に変えたことで、タイムマネジメントの効果に気づきました。視点を切り替えるきっかけが、大切なのだと感じます。
柴田:在宅勤務は作業できる時間が増え、家事や育児とも両立しやすい利点がありながらも「気軽に人に相談ができない」「個々の繁忙状況が見えづらい」などの課題が生じます。ワークスタイルが確立された中堅以上は生産性を上げやすいですが、若手はそうではないのではと懸念しています。対面で会うことは、業務の円滑化だけでなく、チーム全体の安心感や信頼関係の醸成にもつながると思っているので大事にしたいですね。
伊藤:私の部署では、「クリエイションは出社、オペレーションは在宅」という方針にしたところ、出社率が増えました。また、最近設置したコーヒーマシンの周辺では雑談が生まれており、社員同士が何気なく交流する機会が増えていると感じています。在宅とともにオフィスの機能や環境を見直すことも、職場づくりにおいて必要なのかなと思います。
個人とチーム、両方の最適な働き方を目指すために
対談を通じて見えてきた、“博報堂プロダクツらしい”働き方。個人とチーム、両方が実現していくために、今後どのような方向性を目指すべきなのでしょうか。
山本:画一的な制度ではカバーできない個別の事情に対しては、現場の声を汲み取ることが不可欠です。優れた事例を水平展開する仕組みもつくり、知見を全社的に広げていく動きを、人事室として活発化させていきたいです。
柴田:一人ひとりが自分らしいワークスタイルを追求しつつも、今後もスマートワークプロジェクト中心に事業本部全体の“働き方”を考え続けることは必要だと思います。また全社としても、例えば「夜何時以降はオンライン会議ができない、フリーバカンス中はモバイルパソコンがシャットダウンされる」など、システム上の強制力を働かせることも、真の行動変容につながるのかなと思います。
伊藤:博報堂プロダクツは、自分の“好き”を追求する人が集まる会社。品質を高めるため、試行錯誤を重ねることは、本来楽しいことでもあるはずです。だからこそ、AIでもできる作業に時間を割いたり、ダラダラと働いたりするのではなく、本質的な仕事に特化していくべきなのでしょう。全員がパフォーマンスを発揮するためにも、手段や選択肢を充実させていきたいですね。
▼博報堂プロダクツのサステナビリティに取り組んでいる社員にインタビューしました▼
【P+ESG ACTION interview連載記事】
「すきにすなおにすすもう。」今、わたしたちが目指すアクション
誰もが心地よく働くためには? 映像制作メンバーが考える働き方と未来
“違い”を強みに変える障がい者雇用。インクルーシブな職場づくりを目指して
制度ではなく関係性で育つマネジメント。管理職研修と現場の声から見える人材育成のかたち
男性育休を、あたりまえの選択肢に。両立を支える企業制度とチームのあり方とは?
脱炭素ビジネスを、クリエイティブの力で支援する。共創型のサステナビリティとは?
プロフィール(取材時)

- 伊藤俊輔
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2007年博報堂プロダクツ入社。
クリエイティブとテクノロジーを融合させ、常に新しいユーザー体験を創出する「ウラワザ」の部署長。 JDLAの「Generative AI TEST」に合格し、生成AIを使ってクリエイティブのクオリティも生産性も向上させたいと日々奮闘中。

- 柴田直佳
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2016年博報堂プロダクツ入社。
エクスペリエンスプロデューサーとして幅広い業種のクライアントのイベント企画・制作・実施を担当し、大型BPO業務や海外の万国博覧会などにも従事。現在は在宅勤務中心に働きつつ、本部員と顔を合わせるため出社も心掛けている。仕事と育児の両立に挑戦中。

- 山本和生
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人事室
2013年博報堂プロダクツ入社。
人事室労務管理のチームリーダーとして、全社員の勤怠管理、長時間労働是正に向けた施策を推進中。
また、労務管理の専門性を活かし、働きやすい環境づくりと制度の浸透を通じて、社員の生産性向上と企業の持続的成長を支える役割を担っている。

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