2023年にサステナビリティ方針を策定した博報堂プロダクツは、「ESG(環境・社会・ガバナンス)」に、ものづくりへのこだわりを意味する「P(プロダクト)」を加えた“P+ESG”を掲げ、さまざまなサステナビリティ活動を推進しています。シリーズ「P+ESG ACTION interview」は、P+ESGを実践する社員一人ひとりにスポットを当てる連載企画です。第4回のテーマは、障がい者雇用。人事と現場、それぞれの社員が、全員活躍のあり方や課題、カルチャー醸成について語ります。

- フラットな採用・評価制度で、障がい者の活躍を促進する
- 制度と現場のギャップを埋める、オープンなコミュニケーション
- “特別扱い”をしないカルチャーが、チームと個人を強くする
- 誰もが“すき”を仕事にするために、P+ESGが目指す未来
- プロフィール
フラットな採用・評価制度で、障がい者の活躍を促進する
誰もが参加できる共生社会において、欠かせない要素となる障がい者雇用。2024年4月には障がい者の法定雇用率が2.5%に引き上げられるなど、企業が果たす役割も大きくなっています。こうした中、博報堂プロダクツは「『すき』を仕事にする働き方」を追求し、環境の整備を進めているのが、人事室の島内奏実です。
島内:博報堂プロダクツは、100を超える専門職を有する総合制作事業会社です。一人ひとりが各領域で、プロフェッショナルとして歩むことを目指しています。そのため障がい者採用もその他の採用と同様に職種別採用を原則としております。入社後も『業務付与』『キャリア』『評価』の3点において、障がいの有無による区別はありません。ただし、配慮やサポートは徹底します。皆が同じように活躍できる仕組みをつくる。それが弊社の障がい者採用の大きな方針です。

コマースクリエイティブ事業本部の藤野桃香は、2023年に入社したデザイナー。感音性難聴という聴覚障がいがあり、人工内耳を装着して仕事をしています。
藤野:大学卒業後、障がい者採用のある広告会社を探していたのですが、業務内容が一般採用枠と区別されているなど、仕事が制限される会社も多いと感じました。そうした中で出会ったのが、皆と同様にクリエイティブに関わる仕事ができる博報堂プロダクツです。現在はコマースクリエイティブの領域で、DMやチラシ、店頭ツール制作など、生活者の「買いたい」気持ちを引き出す販促デザインを担当しています。
統合クリエイティブ事業本部の山﨑野乃花は、イラスト制作などを得意とするデザイナー。痙直とアテトーゼの複合型の脳性麻痺により、上肢・下肢に障がいがあります。
山﨑:手足の筋肉が硬くなる痙直型と、筋力が低下したり、意思とは関係なく筋肉が動いたりするアテトーゼ型。両方の症状があり、イラスト制作はデジタルツールを使用しています。私は2019年に新卒で入社したのですが、面接時に障がいの内容や必要な配慮を細かく聞かれ、最も寄り添ってくれる会社だと感じたのが決め手となりました。
制度と現場のギャップを埋める、オープンなコミュニケーション
障がいを抱えながら、皆と同様の仕事をするためには、周囲のサポートも欠かせません。現場ではどのように支え合い、障壁を乗り越えているのでしょうか。
山﨑:私の障がいは時期によって体力の増減があり、筋肉の硬直・神経痛も不定期に訪れます。そのため、チームメンバーや上長とは定期的に相談し、仕事量をコントロールしてもらっています。一方で、症状が和らいだら仕事量も増やしていくなど、体調に合わせてチームに貢献できるよう努めています。

藤野:入社当時に感じていたのは、うまくコミュニケーションをとれず、周囲に迷惑を掛けてしまうことへの不安でした。しかし、会議で聞こえない部分を聞き直したり、聞きとりやすい場所に座ることをお願いしたりと、困りごとを打ち明けていくことで、周囲が支えてくれるようになりました。まずは自分からアクションを起こすことで、無意識の制限が取り払われ、社内に配慮が広がっていくのだと思います。
山﨑:日々の業務の中では、新たな気づきも多いです。特に広告の仕事では、急な対応が発生することがありますが、誰もが工夫しながらパフォーマンスを発揮しています。中でも、子育てとの両立による時間的制約がある中で活躍している社員から学ぶことがたくさんあります。障がいにおける体力的なキャパシティはもちろん、皆のワークライフバランスにも影響するので、積極的に意見を発信していきたいと思っています。
島内:人事室では年に1度、個別面談の機会を設けています。そこで希望する働き方や困りごとをヒアリングし、各部門の管理職に共有する仕組みです。障がいと一括りにしても、一人ひとりで困るポイントは異なります。制度だけで解決するのは限界があるため、事情を細かく把握しなければなりません。チャンスと困難両方が平等であるべきだと思うので、各個人の事情を適切に把握し、必要な配慮を適切に提供することが、組織づくりのポイントだと考えています。
“特別扱い”をしないカルチャーが、チームと個人を強くする
多様性の包摂は、障がいへの配慮にとどまらず、チームの成長にもつながります。それぞれの特性を生かしたプロジェクトの実例も、徐々に増えてきました。
藤野:今年からプロダクトデザインチームに、私もメンバーの一人として参加することになりました。このチームは、クライアントの商品からキャンペーングッズに至るまで、幅広いプロダクトデザインを企画から開発まで手がけているチームです。そのチームでは色覚特性の目を持つデザイナーが、自身の経験を生かしたインクルーシブデザインに挑戦しており、私も聴覚障がいの視点から実績を作っていきたいと考えています。自分の障がいを見つめ直し、アウトプットにつなげるのは初めてのことで、新鮮さに満ちていて楽しいです。SDGsやDE&Iが浸透する今の時代は、大きなチャンスかもしれません。個性からソリューションが広がれば、もっと会社が成長するのではないでしょうか。

チームや事業が成長するためには、個人のパフォーマンスも必要です。一人ひとりがプロフェッショナルとして活躍する上では、どのようなモチベーションが原動力になっているのでしょうか。
藤野:博報堂プロダクツで働く醍醐味は、努力や実力次第で対等な評価が得られること。
フラットな雰囲気の中で、分け隔てなくチャンスが与えられるため、最近は障がい者であることを忘れるくらい充実しています。
山﨑:クリエイティブ業界の制作物は、一度世の中に出てしまえば、作り手に障がいがあるかは関係ありません。作り手ではなく制作物に興味を持って頂いた時が、私は一番嬉しいです。
また博報堂プロダクツは、ライフステージに合わせて働き方を選択できる会社です。自分のスタイルを自分で決められるからこそ、責任を持って働けるのだと思います。
島内:私自身も聴覚に障がいがあるのですが、専門性を突き詰められる博報堂プロダクツに魅力を感じ、入社を決意しました。『障がい者だから』という“特別扱い”がなく、好きな仕事に打ち込める雰囲気は、人事の仕事をしていても実感します。私にとって大切なのは、入社した社員たちが『博報堂プロダクツを選んで良かった』と思い続けてくれること。働く環境を常にアップデートすることが、人事としてのミッションだと考えています。
誰もが“すき”を仕事にするために、P+ESGが目指す未来
「すき」に全力で取り組む職場を目指す、博報堂プロダクツの人事室。島内は今後の展望として、「多様な働き方のロールモデルを増やしていきたい」と語ります。
島内:『P+ESG』の『S(社会)』は、人的資本にも関わる項目。DE&Iの観点からも、公平性の浸透は重要です。本質的には、障がい者雇用にとどまらず、もっと多様な活躍のカタチが実現されるべきです。一方、採用の現場に身を置くと、障がいのある皆さんが、“遠慮がち”だと感じることがあります。博報堂プロダクツは、“これをやりたい”という気持ちを素直に伝え、実現できる場所です。私たちの思いが広く伝わるよう、コミュニケーションを強化したいと考えています。
自己実現やキャリア形成の核となる、「やりたい」という気持ち。クリエイターとして活躍する二人にも、学生時代からの思いがありました。
山﨑:広告業界に進んだのは、さまざまな業界と関わりながら、ものづくりを続けたかったからです。『障がいがあるから』と、この仕事を選んだのではありません。クリエイターとして公平に評価を得られる博報堂プロダクツに入社できたことは、一つの転機だったと感じます。今後も仲間たちと協力しながら、腕を磨いていきたいです。
藤野:私もこれまで、障がいによって進路を制限したことはありませんでした。絵を描いたりデザインを見るのが好きで、高校からデザイン学科に進みました。今はまだ未熟なところはありつつも、イラストも手がけるようなデザイナーとして成長できたらと思っています。やりたいことを突き詰められる今の環境で、もっと自分の可能性を広げたいです。
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【P+ESG ACTION interview連載記事】
「すきにすなおにすすもう。」今、わたしたちが目指すアクション
「誰もが心地よく働くためには? 映像制作メンバーが考える働き方と未来」
プロフィール

- 山﨑 野乃花
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統合クリエイティブ事業本部 デザイナー
2019年博報堂プロダクツに新卒入社。
デザイナーとしてKV・モーション・Web・店頭ツール・キャラクター・パッケージなど幅広い領域でイラスト制作を担当。
サステナビリティ活動として、弊社の障がい者採用サイトのプロフィールアイコンや「ハハハクリエイティブ」のイラスト制作に携わる。

- 藤野 桃香
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コマースクリエイティブ事業本部 デザイナー
2023年博報堂プロダクツに新卒入社。DMやチラシ、パンフレットなどのダイレクトデザイン領域に従事。
商品の魅力を視覚的に訴求し、「買ってみたい」気持ちを引き出すビジュアル制作を手がける。
今後は、自分の障がいを活かしたデザイン開発にも取り組む予定。

- 島内 奏実
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人事室 マネジメントプランニングディレクター
2020年、博報堂プロダクツにキャリア入社。
入社後一貫して採用業務を担当。 新卒採用・キャリア採用・障がい者採用・派遣管理業務を行う。2024年よりHDYグループサステナビリティ推進委員会としても活動。

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