制作現場におけるチームづくりの要となる「ピープルマネジメント」。今回は、現場でメンバーの力を引き出すチームリーダーと、管理職研修を通じて組織全体の人材育成を支える人材開発推進室のスタッフが、制作という専門性の高い現場ならではのマネジメント課題に向き合いながら、内省や対話を通じてチームの可能性を広げるアプローチや、目指すゴールについて語り合います。

※この記事は、博報堂プロダクツが掲げるP+ESGを実践する社員一人ひとりにスポットを当てる「P+ESG ACTION interview」の連載企画です。P+ESGとは、ESG(環境・社会・ガバナンス)に、ものづくりへのこだわりを意味する「P(プロダクト)」を加えた博報堂プロダクツ独自のサステナビリティ指針です。
- プレイングマネージャーが活躍する、博報堂プロダクツのチーム制
- リーダーとしての羅針盤を見つける、自己探求と対話の管理職研修
- 個を引き出すピープルマネジメントは、関係性から始まる
- 大切な仲間だからこそ、チームに居場所を感じてほしい
- プロフィール(取材時)
プレイングマネージャーが活躍する、博報堂プロダクツのチーム制
専門分野別チームの存在が揺るぎない支柱となっている総合制作事業会社、博報堂プロダクツ。誰よりも仕事を楽しみ、目標達成へと牽引していくのが、「チームリーダー」です。管理職研修を担当する人材開発推進室の前田智美は、「チームリーダーは全員プレイングマネージャー」と、組織の特徴を説明します。
前田:博報堂プロダクツには本部長、室長などさまざまな役職がありますが、いわゆる中間管理職に該当するのがチームリーダーです。ただし、個々がプロフェッショナルを追求する博報堂プロダクツの場合、管理職はあくまで役割であり、専門性を磨いていくことこそがキャリアアップであると捉えています。そのため、チームリーダーも基本的には本職と兼務する“プレイングマネージャー”としてマネジメントを行っています。
今回の座談会に参加するチームリーダーの2名も、自身の専門性を磨くプレイングマネージャーです。デジタルプロモーション事業本部の作間馨は、管理職2年目。同部で7年ほど勤務した後、チームリーダーに就任しました。
作間:本職はデジタルプロデューサーとして、Webサイト制作を中心にプロジェクトマネジメントを担当しています。チームリーダーになり、日々の管理業務が増えたため、最初の1年間は藁にもすがる思いでした。それでもマネジメントは楽しく、9人のメンバーとはほとんど、毎週のように1on1を行なっています。
コマースクリエイティブ事業本部の篠﨑直人は、CRMチームのプランナーとして、設計から構築を幅広く担当。チームリーダーとしては5年の経験を持ちます。
篠﨑:中途で入社した当初から、チームリーダーを務めています。プレイヤーとして成果を上げながら、育成やマネジメントを担うのは大変で、チームの編成も毎年のように変わるため、課題も次々と生まれます。人材開発推進室とも密に相談しながら、リーダーとしての動き方を試行錯誤してきました。
リーダーとしての羅針盤を見つける、自己探求と対話の管理職研修
プレイヤーとしてキャリアを積んだ社員が管理職に挑戦する際、重要な足がかりになるのが各種の研修です。博報堂プロダクツでは、チームリーダー1年目を対象にした「新任管理職研修」、3年目を対象にした「管理職3年目研修」と段階的なプログラムを通じ、ピープルマネジメントの深化を促進しています。
前田:博報堂プロダクツでは人やチームの可能性を引き出す実践的な理論として注目されている「成功循環モデル」をベースに組織の成長を目指しています。このモデルでは、まず関係性の質を高めることが重要で、それによって行動の質や思考の質が向上し、最終的には結果の質へとつながっていくと考えられています。そして、この起点となる関係性の質を向上させるマネジメントスタイルとして、人材の成長と信頼関係の構築を重視するピープルマネジメントの考え方を浸透させるべく、各管理職研修を設計しています。
豊洲オフィスで行う「新任管理職研修」では、人事・評価などの基本的な知識と合わせて、管理職としてのマインドセットを伝えています。一方の「管理職3年目研修」は、合宿形式でチームリーダー同士の横のつながりを育み、体験談や悩みを交換しながら自己探求に取り組むことが主軸です。どちらの研修も、“べき論”のように特定のノウハウを教えるのではなく、研修を通じて自身のマネジメントスタイルを見つめ直し、ブラッシュアップしてもらうことを目的としています。

作間:新任管理職研修が終了した際、「これが何の役立つのだろうか」と感じるほど抽象的な内容だったのですが、時間が経つと共に、その汎用性に意義を見出すようになりました。チームリーダーになる前、「皆に教え、導く存在なのだろう」と身構えていたイメージも、今は「メンバーが持つ力を引き出すために、まずは信頼関係を構築するのがベスト」だと、180度変わりました。
篠﨑:「自分がどのようなタイプのマネージャーなのか」「どのように振る舞えばチームに良い結果をもたらすことができるか」と疑問を抱えた状態で、管理職3年目研修に臨みました。研修でユニークだったのは、「なぜ働いているのか」「人生や仕事を通じ、何を成し遂げたいか」と、自分自身と徹底的に向き合うことです。そこで発掘した価値観を基軸に、チームのビジョンを言語化し、他の参加者に伝えていきます。2日間をかけて内省する経験により、リーダーとしての方向性が明確化していきました。
前田:管理職3年目研修の特徴は、自分のコアな部分を周囲にさらけ出しながら、掘り下げていくプロセスです。軸となる価値観さえ見つかれば、研修を経て社内に戻った際も、チームにビジョンを伝えられます。こうして関係性が向上すると、メンバーの思考や行動の質が上がり、成果も高まる「成功循環モデル」が機能する。こうしたサイクルを念頭に置き、研修を設計しました。
個を引き出すピープルマネジメントは、関係性から始まる
研修で獲得した新たな視点は、どのように現場で生かされているのでしょうか。篠﨑が着目したのは、言語化のプロセスでした。
篠﨑:まずはチーム内でもワークショップを行い、一人ひとりに価値観や目標を言語化してもらいました。私を含め、世代も得意領域も異なるメンバーが、ふだんはとくに口に出していないチームや仕事への想いや目指したい方向性が共有できたことで、それぞれの「らしさ」もありながら、チームとしてのまとまりが向上したと実感しました。
何よりも、リーダーである私が思いをさらけ出す、そのための整理ができたのは研修の成果だと思います。

前田:ピープルマネジメントで重要なのは、一人ひとりの個性を引き出すこと。ただし、その“個”には管理職も含めていいのかもしれません。管理職自身がもっと自分を大切にし、自分のやりたいことを追求するからこそ、チームの一人ひとりを尊重できるのだと思います。実際参加者からも等身大の自分を認めて大切にできるようになって、改めてメンバーそれぞれの思いを大切に受け止めることができるようになった、という声も聞かれました。とは言え、 マインドだけでは成り立たない現場では、新たな課題も見つかるのではないでしょうか?
篠﨑:プレイヤーとして仕事に追われ、マネジメントに手が届かなくなると、コミュニケーションが疎遠になってしまいます。距離感をうまく取れず、退職してしまったメンバーもいました。忌憚なく本音を吐露してくれるような関係性が理想ですが、人によってはサインがわかりにくい場合もあるので、そこが難しいと思いますね。
作間:専門性を追求する会社であるからこそ、マネージャーとプレイヤーの距離感は難しい部分もありますよね。私の場合、「メンバーは、自分のチームに所属する意義を見失っていないか」と悩むことが多いです。自分が若手だった頃、「なぜかわからないけど、この人のために頑張りたい」と思える上司のもとで働いていた経験から、そうしたリーダーを目指しているのかもしれません。

前田:無理にリーダーとして気負ってしまうよりも、フラットになんでも話し合える関係を築くことが、ピープルマネジメントの第一歩ではないでしょうか。管理職にだって得意・不得意があり、時間に追われる繁忙期もあるはずです。そうした事情もオープンに打ち明ければ、メンバーにも支えたい気持ちが芽生えるかもしれません。自分ばかりが無理をして苦しくなる方向を選ばない方が、結果としてチームビルティングも上手くいくと思います。
作間:話し合える関係は重要で、1on1で対話を増やしていくと、一人ひとりの課題の“つながり”にも気づきます。チーム全体で課題が共通していたり、すでに解決策を持つ他のメンバーがいたり、メンバー同士の掛け合わせで乗り越えられたりするケースもあるんです。個別の課題も統合的に考えれば、積み重なっていた問題が、ひとつの流れの中で整理され、解決に向かって一気に動き出す。その瞬間にチームの面白さを感じ、日々マネジメントに打ち込んでいます。
大切な仲間だからこそ、チームに居場所を感じてほしい
関係性を起点に人を活かしていく、博報堂プロダクツのピープルマネジメント。前田は「管理職を楽しむ人材を増やしたい」と、人材開発の展望を語ります。
前田:管理職を志望しない若い世代は、世の中全体でも増えています。リーダーが活躍するためには、多様なモデルを育むことが必要です。二人の話を聞いていて、“等身大の管理職”がもっと増えてほしいと感じました。「管理職って、なんか楽しそう」「自分も成長できるかも」というイメージが広まれば、自己実現の幅も広がるのではないでしょうか。
現場の二人に共通するのは、自身がマネジメントを楽しんでいること。今後はどのようなリーダーとして、より良いチームを目指していくのでしょうか。
篠﨑:私にとってリーダーのやりがいは、メンバーのやる気スイッチが入るような手助けができたときに感じます。若手・ベテランを問わず、自分の価値や役割、目的意識がクリアになるとスイッチが入る。その瞬間のパッと明るくなる表情を見るのが好きです。そして、大切な仲間だからこそ、メンバーには「居場所がある」と感じてもらいたい。組織や個人、仕事の存在意義、目指す方向性を日頃からフラットに話し合えるような環境・風土づくりを目指したいです。
作間:私がチームリーダーになったのは、期待されたことがシンプルに嬉しかったからでした。また、結婚や出産でキャリアを変える女性を目の当たりにしてきたため、自分が管理職として背中を見せなければ、若い人はもっと心配になるとも思っていました。実際にやってみると、チームリーダーは楽しくて仕方がなく、本職が圧迫されるほどです。だからこそ、チームの皆が自己実現をしてほしいという気持ちも高まります。今後は思いを共有できる場、メンバーが「このチームが好きだな」と感じるきっかけを、もっと増やしていきたいです。
【P+ESG ACTION interview連載記事】
「すきにすなおにすすもう。」今、わたしたちが目指すアクション
誰もが心地よく働くためには? 映像制作メンバーが考える働き方と未来
“違い”を強みに変える障がい者雇用。インクルーシブな職場づくりを目指して
プロフィール(取材時)

デジタルプロモーション事業本部
作間 馨
2018年博報堂プロダクツに入社。Webプロデューサー/PM業を主に得意としているが、デザイン制作の経験ももつ。前職営業だった経験も生かし、うまくマネタイズしながら進行管理を実施。

コマースクリエイティブ事業本部
篠﨑 直人
大手印刷会社の企画部門から旧博報堂ダイレクトを経て、2021年博報堂プロダクツに入社。一環してCRM領域を中心としたダイレクトマーケティングに従事。通販をはじめ多様な業種のCRMプロジェクトに携わり、戦略立案から戦術設計、クリエイティブ開発に至るプランニングを横断的に担当。

人材開発推進室
前田 智美
研修会社で外部ベンダーとして多様な業種・業界の教育課題に取り組んだ後、企業の人事部門にて社内研修の企画・実施を担当。2023年に博報堂プロダクツに入社し、人材開発推進室にて管理職教育を中心に、社内外双方の視点を活かした教育体系の設計・運営に従事。

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博報堂プロダクツ サステナビリティサイト
サステナビリティ方針及び調達ガイドラインを策定し、持続可能な社会と事業成長の実現に向けた取り組みをまとめたサステナビリティサイト
