博報堂プロダクツグループに多大な貢献をしたチームを表彰する、年に一度の社内アワード「社長賞」授賞式。企画から運営までを社内で担うことが慣例で、毎年博報堂プロダクツのクリエイティビティが結集・発揮される場となっています。
コロナ禍以降、リモートワークの普及により働き方が多様化し、従業員の会社への帰属意識やエンゲージメントが問われています。社内イベントによるインナーコミュニケーション・インナーブランディングの重要性が高まる中、2023年度の社長賞授賞式は5年ぶりとなるリアルでの開催にオンライン配信を交えたハイブリッドイベントとして開催。全社を巻き込んで大いに盛り上がり、前年度を上回る参加者数を記録しました。その裏側について、制作メンバーに話を聞きました。
【制作メンバー】
イベント・スペースプロモーション事業本部:島田 一樹、成川 英祐(企画・運営・演出・進行/会場装飾)
ONE★PUNCH事業本部:石田 駿弥(撮影・配信ディレクション・アーカイブ編集)
デジタルプロモーション事業本部:佐藤 仁哉(配信システム)
MDビジネス事業本部:内田 成威(トロフィー、ロゴなどの制作)
総務室 広報部:青山 永味(企画・運営・事務局)
※詳しいプロフィールはこちら
【目次】
■ ハイブリッドイベント開催という新しいチャレンジ
■ 会社方針を体現したコンセプトは「輝く結集力」
■ リアルとオンラインの温度差を埋めるための工夫
■ 社内ほぼワンストップでインナーイベントを実現し、社員のエンゲージメントも向上
■ ハイブリッドイベント開催という新しいチャレンジ
── 2023年度はハイブリッド形式でのイベント開催となりましたが、どのような経緯で実施に至ったのでしょうか。
青山:前年度はメタバース空間での開催となったのですが、2023年度に関しては、新型コロナウイルスが5類感染症に移行したこともあり、久々にリアルで開催しようという話になりました。
ただリアル開催だけだと東京以外の支社メンバーにとっては参加のハードルが高くなってしまいます。社長賞は全受賞者が等しく楽しめるイベントにしたいという思いがあったので、オンライン配信を絡めた開催を検討しはじめました。
――企画内容はどのように検討していきましたか。
青山:私の中にはハイブリッドイベントの知見がなかったので、顧客体験づくりの知見も実績も豊富なイベント・スペースプロモーション事業本部(以下、ESP事業本部)の島田に相談し、企画・運営・演出・進行、それに関わるスタッフィングまで依頼することにしました。
――島田さんは知見や実績が豊富とのことですが、実際クライアントワークとしてもインナーイベントの引き合いは多いですか?
島田:たくさんご相談はいただきますね。
――参考までに、企業などがインナーイベントを開催するにあたって、一般的にはどのような点が課題となるのでしょうか。
島田:やはり多くの企業が、参加人数を増やすにはどうしたらいいのか、社員のモチベーションにつながるイベントにするにはどうしたらいいのか、という点で悩まれている印象です。また、参加者全員が楽しめるような体験設計をすることも難しい点ですね。授賞式のようなイベントでしたら受賞者とそれ以外の人、ハイブリッドイベントでしたら、リアルとオンライン参加の人の間に、どうしても温度差が生まれてしまいがちです。
今回の社長賞授賞式を企画するにあたっても、このような課題点を踏まえたうえで、内容を検討していきました。
イベント・スペースプロモーション事業本部 島田 一樹
■ 会社方針を体現したコンセプトは「輝く結集力」
――前年度までの相違点として、ハイブリッド開催にしたことのほか、グランプリをその場で発表する形式を採用したとお聞きしています。この狙いはなんでしょうか。
島田:従来の社長賞授賞式は、既に発表されている受賞者を表彰するスタイルでした。ただ結果が事前にわかっているのであれば、当日授賞式に参加する必然性もあまり感じられない人もいるだろうと思ったため、自分たちの社長賞を、もっと皆が「自分も選ばれたい」と思えるような、高いモチベーションで参加できるようなイベントにしたかった。そこでグランプリを当日発表する、国際的な映画賞・音楽賞などのアワードをイメージした形式を採用することにしました。
青山:国際的なアワード形式を取り入れるという話になると、博報堂プロダクツを象徴するような、舞台映えするグランプリトロフィーが欲しい、というアイデアも出てきました。そこで、これまで社長賞で渡す贈答品のパッケージデザインを担当していたMDビジネス事業本部の内田に、トロフィーのデザインを依頼しました。
内田:青山からはトロフィーを作りたいという話に加えて、そのトロフィーを向こう10年は使っていきたいという要望もありました。普段からクリエイティブの仕事をしている社員をはじめ、たくさんの社員の目に触れるものですし、何年も残るプロダクトなので中途半端な仕事はできないという覚悟で、デザインのみならず、言葉によるコンセプトの設計から緻密に組み立てていきました。
MDビジネス事業本部 内田 成威
――とてもユニークなデザインとなっていますが、この狙いを教えてください。
全部で15の「P」が組み合わさって、円柱を形成している
内田:会社の方針を軸に「輝く結集力」という言葉をコンセプトにしました。プロダクツのイニシャルである「P」を円柱状に組み合わせ、社員一人一人の力、一つ一つの事業力の結集と、光り輝くイメージを形にしたデザインです。
また、下部の円柱部分には、各年度のグランプリ受賞案件名を刻めるようになっています。今後、何年にもわたり受け継いでいくトロフィーです。ずっしりと重く、受賞者がその重みを体感することになります。
――会場装飾や、演出面ではどのような工夫をされましたか。
島田:当日グランプリが発表されるというワクワク感を高めるために、受賞者にきちんとスポットライトを当てられるような会場装飾や演出にもこだわりました。社内の食堂・カフェという限られたスペースを最大限に活用しつつ、例えば、舞台までの道にレッドカーペットを敷いたり、封筒にグランプリ受賞案件が書かれた紙を入れて、社長に開封してもらう演出にしたり……さまざまなアワードの事例を参考にして皆で考えました。
環境に配慮をした素材を使用したバックパネル
次年度以降も再利用することを想定したサステナブルな設計
成川:ステージの背景となるバックパネルをデザインするにあたり、内田によるグランプリトロフィーのデザインが先行して決定していたので、バックパネルにも「P」の要素を盛り込むことにしました。パネルのスタンドの部材が、よく見ると「P」をひっくり返した形になっているんです。「人形」と呼ばれる、パネルを立てるための普通は隠れて見えない部材をあえて前に露出させることで、黒子のように表には出てこない場で仕事をしている人たちを表彰する賞を表現したいという思いを込めました。
イベント・スペースプロモーション事業本部 成川 英祐
――会場に置いてある段ボール製の巨大トロフィーも面白いですね。
「P」を一枚ずつ外してプロップスとしても使えるようになっている
部材には環境に配慮した素材を使用
成川:フォトブースとして作りました。当日参加者のみなさんがトロフィーと一緒に記念写真を撮りたいと思っても、グランプリ受賞者ではないからと本物のトロフィーと写ることを遠慮する人もいるかもしれません。そこで、会場にいる全員に授賞式の思い出を残してほしいと、この巨大トロフィーを用意しました。実際、多くの社員がトロフィーの前で記念撮影をしていて、「P」のプロップスも楽しく活用してくれていました。
■ リアルとオンラインの温度差を埋めるための工夫
――ハイブリッドイベントということで、今回カメラを入れて撮影もされていますが、どのような点にこだわりましたか。
石田:今回は数年ぶりのリアル開催ということで、なるべく現場の雰囲気、盛り上がりを配信でも伝えたいと思いました。そのため、カメラは5台導入し、さまざまなアングルの映像をスイッチングさせることで、配信で見ている人にもグランプリの発表のドキドキ感だったり、会場の盛り上がりが伝わるようにしました。一般的なオンラインイベントと比べても、5台という数は多い方だと思います。
ONE★PUNCH事業本部 石田 駿弥
佐藤:配信面では、豊洲本社に加え九州支社、関西支社、バンコクにあるグループ会社という4つの拠点をつなげながらリアルタイムに進行していく必要があったので、画角の調整であったり、画面を出すタイミングの調整であったり、支社やグループ会社のオンライン参加者と事前の協議やリハーサルを入念に重ね、直前まで密に連絡を取り合いながら本番に臨みました。
デジタルプロモーション事業本部 佐藤 仁哉
石田:リアル会場の進行に撮影・スイッチングを合わせると配信で見ている人が置き去りになることもあるし、配信のことばかり気にしすぎると遅延などでリアル会場の進行がグダグダになってしまう。ハイブリッドイベントは、そのバランスや調整が難しいんです。
佐藤:結果的には、皆の協力もありスムーズに進行することができました。途中、アドリブで社長がスクリーン越しに賞状を手渡すような演出をしていただけたことで、オンライン参加者にもより臨場感を感じてもらえたのではないでしょうか。
スクリーン越しに賞状を授与
――今回、若手のメンバーも多くプロジェクトに参加されたと聞きました。
島田:ESP事業本部では2023年度入社の新人5名が参加しています。入社して1年間、先輩についてトレーニングを積んできたみなさんの成長を見せられる集大成となるような機会になればいいなと思って、僕から声をかけたんです。
成川:もちろん先輩がサポートしつつですが、若手だけでも集まってミーティングを重ねるなど責任感を持って取り組んでくれたことで、大きな成長につながったのではないでしょうか。試行錯誤をしながら責務を全うする姿は頼もしかったです。
ESP事業本部の2023年度入社メンバー
■ 社内ほぼワンストップでインナーイベントを実現し、社員のエンゲージメントも向上
――開催の後、社内からどのような反響が届きましたか。
青山:リアルが195名、オンラインが122名、合計で300名を超える参加者数となり、前年度の参加者数を上回ることができました。社内アンケートでも、「もっと頑張っていきたいと、モチベーションが上がった」「想像以上に豪華な舞台で驚いた」「地方支社の社員も参加できてよかった」などの声をいただいています。
総務室 広報部 青山 永味
――お話を聞いていると、社長賞の取り組みこそが博報堂プロダクツの「輝く結集力」を体現しているように感じました。
島田:このインタビュー参加者以外にも、当日上映するムービーの制作、キービジュアルの撮影、表彰状の印刷など、9事業本部と1グループ会社、本社管理にわたる多くの社員が関わっています。博報堂プロダクツでは社内に限らず、通常業務でもクライアント企業のインナーイベントを担当することも多く、実績もあります。ほぼワンストップで実現・実施できますので、ぜひご相談いただきたいです。
今回は、あくまで博報堂プロダクツ内での事例でしたが、一言でインナーイベントといっても、企業によって望ましい形は多種多様です。例えば、営業部署の強い会社なのか、はたまたものづくりを強みとする会社なのか。クライアント企業が根幹としている事業や方針にしっかりとフォーカスし、社内のさまざまな事業本部の専門性を結集させて、ご満足いただけるインナーイベントを実現できるのが、博報堂プロダクツの強みです。
――今後の社長賞の展望を教えてください。
青山:今年度、組織が大きく変わっているので、次回の社長賞の枠組みも変えていく必要があると思っています。今回いただいたいろいろな意見を参考にしながらも、グランプリ受賞を目指して一層励むモチベーションとなるような、そして、社員の最高のパフォーマンスに応えられる社長賞にしていきたいです。
【プロフィール】
島田 一樹(しまだ・かずき)/イベント・スペースプロモーション事業本部 統合プロデュースチーム チームリーダー/シニア・エクスペリエンスプロデューサー
SPプランナー、PRプランナーを得て現在はイベント領域のエクスペリエンスプロデューサー。メディア向けPR発表会、セールスプロモーション、イベントの空間・演出・運営設計などプロモーションを統合して提案、実施することが得意。
成川 英祐(なるかわ・えいすけ)/イベント・スペースプロモーション事業本部 エクスペリエンスプロデューサー
2019年博報堂プロダクツ入社。前職での空間デザイン/設計の経験を活かして、リアル接点領域全般のプロデュースを得意とし、企画から制作/施工/演出/運営まで総合的に対応。
石田 駿弥(いしだ・としや) / ONE★PUNCH事業本部 プロデューサー
TV番組制作会社から2018年に博報堂プロダクツ入社。
従来のTVCM、WEBCMだけでなく、前職の知見を活かしたライブ配信、イベント映像、ドキュメンタリーなどの映像プロデュースを得意とする。
佐藤 仁哉(さとう・じんや)/デジタルプロモーション事業本部 デジタルプロモーション二部 クロスメディアプロデュース第二チーム/デジタルプロデューサー
2021年博報堂プロダクツ入社。前職であるテレビディレクターの経験を活かして、ライブ配信/映像制作/企画〜実施まで、配信イベント領域全般の実装を手がける。
内田 成威(うちだ・しげたけ)/MDビジネス事業本部 プロダクトデザインチーム クリエイティブディレクター
クライアント商品の企画・開発やカタチのデザイン、キャンペーングッズなど幅広いプロダクトデザインを手掛けるクリエイティブディレクター。色覚特性の目を持ち、自身の見え方や感性を通じ、色覚多様性やインクルーシブデザインをテーマにした作品制作も手掛けている。
青山 永味(あおやま・えみ)/総務室 広報部
大手外食チェーンやCVSなどのクライアントを担当、プロデューサーとして店頭プロモーションやSP制作、PRイベントに携わったのち、現在は広報部で、社長賞の企画運営・実施、コーポレートサイトと社内ポータルサイトの運用を担当。企業理解・ブランド価値向上に向けた社外発信と、社内における従業員エンゲージメントを高めるコミュニケーション施策を推進している。
■関連記事
250名以上が参加!年に一度の社内アワード「社長賞」をメタバース空間で初開催 - 博報堂プロダクツ
プロダクトデザインチームマガジン|博報堂プロダクツ|note