
2026年2月1日、一般社団法人 日本カラーコーディネーター協会(J-color)主催の「カラーユニバーサルデザイン(CUD)エデュケーションセミナー」にて、博報堂プロダクツ MDビジネス事業本部のプロダクトデザイナーである橋本 千里と内田 成威が登壇しました。
カラーユニバーサルデザイン(CUD)とは、色の見え方の違いに配慮したデザインの考え方です。DE&I(多様性・公平性・包摂性)への関心が高まる中、サステナビリティの観点からも重要視されるテーマであり、私たちの身近なプロダクトや日常のコミュニケーションに広く関わっています。
商品デザインの第一線で活躍する二人が、実務の中でどのようにインクルーシブデザインやカラーユニバーサルデザイン(CUD)を取り入れているのか、「色覚多様性と働き方とデザイン」をテーマとしたセミナーの一部内容とともに紹介します。
- 色覚特性とは? 日常に潜む“見え方の違い”
- プロダクトデザイナーとしての工夫―“色に頼らない設計”という発想
- 作品紹介:色を“伝える”ための表現
- 質疑応答:学び、文化、働き方まで
- 見える色が異なることは“個性”。そうした個性をデザインで包むことができる
- セミナー参加者の声(抜粋)
- お問い合わせ先

色覚特性とは? 日常に潜む“見え方の違い”
セミナーの前半では、内田による色覚特性の基礎解説からスタートしました。
日本では男性の約5%、女性の約0.2%、合計320万人以上が色覚特性(色の見え方の特性)を持つと言われています。
内田自身も色覚特性を持つプロダクトデザイナーであり、当事者として普段どのように色が見えているのかを「色覚による色の見え方クイズ」を交えて紹介しました。


紫色のトレーナーが鮮やかな青に見えたり、ピンク色のシャツが淡い水色に見えたり──。想定と異なる色の見え方に、多くの参加者から「初めて知った」という声が寄せられました。
さらに、季節の景色さえ印象が変わることも。

夏の緑の庭園が「枯れ葉色のように見える」という例では、会場から「季節感が分からなくなる」という内田の実体験に対して深く頷く参加者も多く、色覚特性が日常の認識にどれほど影響するかが伝わる時間となりました。
“どのように見えているのか” を参加者が実感として理解することで、セミナー全体のテーマである「色覚多様性とデザイン」の重要性を共有しました。
プロダクトデザイナーとしての工夫―“色に頼らない設計”という発想
色覚特性を持ちながらプロダクトデザイナーとして活躍する内田は、日々の業務で以下の工夫をしていると語ります。
- 協業メンバーに、自身の色覚特性について共有
- 色を使う前に“形の骨格”をつくり、色に頼らないデザイン設計を優先する
- 色で区別する必要がある場合は、必ずアイコンや名称を併記する
- チェック作業は、青いペンで行う(校正に多く用いられる赤ペンは、自身の目では茶色に見え、黒色との判別が難しい場合があるため)
- 色校正は、一般色覚のメンバーと協力して双方の視点で行う
プロダクトは色だけでなく形状・質感・素材でも伝えられるため、「見え方の違い」は弱点ではなく、“色に依存しない設計力”につながる強みでもあると内田は話します。
作品紹介:色を“伝える”ための表現
後半では、内田の経験から生まれた2つのプロジェクトを紹介。
①色覚特性の方に配慮した「色を伝える折り紙」
裏面に色名・明度・彩度を記載し、“色選びの不安”を解消する仕組みを組み込んだ折り紙です。ファッション、画材など他領域への応用も期待されます。


博報堂プロダクツnote『色覚多様性に配慮した、色を伝える折り紙のデザイン』
②色覚多様性をテーマにした写真作品「光と感覚」
透明フィルムと偏光板を使い、光の角度や見る人の色覚で全く違う色が立ち現れる作品。
「色は誰の見え方も正解である」というメッセージを込めた、内田自身の経験と感性から生まれた作品です。


博報堂プロダクツnote『色覚多様性をテーマにした写真作品「光と感覚」』
さらに本セミナーでは、橋本と内田が参画するブランドアクセシビリティの向上を支援するソリューションや、デザイン事例と検証スキームも紹介。
さらに、世の中のCUD事例の解説も行われ、生活用品から公共インフラまで“色の配慮”が広がる時代背景が共有されました。
質疑応答:学び、文化、働き方まで
質疑応答では、次のような質問が参加者から寄せられました。
• 橋本と内田がCUDを学び始めたきっかけ
• CUDの考え方を広げるために何ができるか
• 子ども服や玩具でできる色の工夫
• チームとして多様性に向き合う方法
• クライアントへの説明や理解の広げ方
実践的な質問に対し、橋本・内田は経験を踏まえ回答。「安心して色がわかる仕組みづくり」の重要性や多様な色覚のメンバーで仕事をするなかで「知ることが大きな一歩」という実体験から生まれた言葉が共感を集めました。
見える色が異なることは“個性”。そうした個性をデザインで包むことができる
セミナーの最後、二人は次のようなメッセージを参加者に伝えました。
• 色覚多様性は“見え方の違い”という個性
• 色覚の個性は、会話しないとわからない。会話が生まれる環境をつくることで、それぞれの色の正解を広げることができる
• デザインの力で、誰もが安心できる社会をつくることができる
• まずは知ること、興味を持つことがきっかけとなる
色に関わるすべての仕事において“誰かの見え方”を想像することが、より豊かなプロダクトと社会につながる──橋本と内田が日々の業務、そして生活のなかで大切にしている思いが根幹となるセミナーとなりました。
セミナー参加者の声(抜粋)
今回のセミナーには、教育の現場からCUDの指導にも関わるJ-colorの認定講師の方が中心に参加し、終了後のアンケートには熱量の高いメッセージが数多く寄せられました。その一部を抜粋してご紹介します。
• 「当事者の見え方を体感し、理解が一気に深まりました」
• 「企業がここまでCUDを取り入れている事例を知り、取り組む勇気が湧きました」
• 「色覚特性を共有しながら前に進む“チームの力”に感動しました」
• 「色覚多様性への配慮は、一部の人だけのためではなく“全員の使いやすさ”につながると理解できました」
• 「『何色に見えても否定されない』という言葉が胸に残りました」
• 「折り紙はぜひ商品化してほしい。教育現場でも活用できると思う」
技術的な学びとともに、 色覚多様性への理解が“前向きな気づき”として広がったことがうかがえる沢山の感動を頂戴しました。多様性の受容を自然にデザインへ落とし込む姿勢に共感が集まるとともに、ここでの驚きや気づきをきっかけに、参加者とともに色覚多様性の理解の広がりを感じる時間となりました。
お問い合わせ先
橋本と内田が所属するプロダクトデザインチームは、2025年12月にプロダクトデザインユニット 「kuummuu(クムー)」 を立ち上げました。
「人とアイデアを組み合わせ、まだ見ぬ価値を生み出す」という想いのもと、幅広い領域でインクルーシブデザインの実践を続けています。
kuummuuには、一般色覚と色覚特性、異なる色の見え方をもつプロダクトデザイナーが在籍しています。商品デザインの工程で生じる「色」に関わる判断は、それぞれの色覚とユニバーサルデザインの視点を活かし、対話しながら進めています。
こうした日々の実践で培った知見と経験を生かし、CUDの社内浸透や実務への取り入れ方を支援する「クリエイティブワークショップ・セミナー」 も提供しております。デザイン部門に限らず、教育・広報・商品企画・行政・福祉など、多様な領域でご活用いただける内容です。

自社での取り組みを強化したい、具体的な事例を学びたい、当事者視点を社内に広げたい という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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作品紹介
プロフィール

- 橋本 千里
-
MDビジネス事業本部 プロダクトデザインチーム(kuummuu)
チームリーダー/クリエイティブディレクター/プロダクトデザイナー
金沢美術工芸大学卒業。2011年博報堂プロダクツ新卒入社。
化粧品や文房具といった日用品からキャラクターコンテンツを用いた生活雑貨まで、 幅広い商品企画・デザインを手掛ける。ビジネス目線のプランニングと幅広い人脈で、常に新しい領域・手法に挑戦している。

- 内田 成威
-
MDビジネス事業本部 プロダクトデザインチーム(kuummuu)
クリエイティブディレクター/プロダクトデザイナー
金沢美術工芸大学卒業。2007年に博報堂プロダクツ入社。
クライアント商品の企画・開発からプロダクトデザインまで、幅広い領域を手がけるクリエイティブディレクター。また、デザイナーでありながら色覚特性を持ち、自身の見え方や感性を活かした色覚多様性・インクルーシブデザインの提案や、作品制作にも積極的に取り組んでいる。
