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サステナブル時代のワークスペースを、体験演出と空間デザインのプロはどう実現したのか

ワークスタイルの多様化やサステナブルな組織づくり、そしてSDGsをはじめとする持続可能な社会への貢献など、現代の企業はさまざまな変化への対応が求められています。このような新しい時代にふさわしい働き方とサステナビリティを掛け合わせた未来思考のワークプレイスを実現するには何が必要か。体験演出と空間デザインのプロであるイベント・スペースプロモーション事業本部(以下、「ESP」という)が手掛けた自社オフィス改装プロジェクトについて、メンバーに話を聞きました。

 

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<目次>

「未来志向」のワークスペース改装プロジェクト発足

体験、空間づくりの専門性が活かされたオフィス設計

サステナビリティへの意識や行動を変えていくオフィスづくり

 

 

 

 

「未来志向」のワークスペース改装プロジェクト発足  

 

――ESP(イベント・スペースプロモーション事業本部)では、自分たちのオフィスの改装を実施したそうですが、そのきっかけは何ですか?

 

阿部:2年ほど前から、私たちESPのメンバーがよりよく働きやすい環境を目指す「スマートワークプロジェクト」が始動していまして、ワークスペースの改装もそのミッションの一つになります。これまでの働き方改革の流れに加え、コロナ禍を経て在宅勤務が加速したことでESP内では社員同士のコミュニケーション不足が大きな課題となり、改めてオフィスの在り方を見直し、再定義する必要がありました。また、多様な働き方が浸透してきたことで、私たちESPとしても未来を見据えた新しいワークスペースや働き方を作り出していきたいと考えました。

 

ESPで開発中のソリューションの紹介、サステナブルな素材を展示しているソリューションコーナー

 

――これからの新しい働き方を作り出すための取り組みでもあるのですね。

 

阿部:プロジェクト自体は3つのユニットで構成されていて、ESP全体の働く意識やモチベーションを変えていく「ニューカルチャー」のユニット、業務効率化となるツール開発を行う「DXツール」のユニット、そして私たち「ワークプレイス」のユニットが実際に豊洲のオフィス空間の改装設計を担当しました。私自身はプロジェクトリーダーとして全体をプロデュースしながら、ワークプレイスのユニットにも関わっています。

 

――ユニットメンバーの皆さんはどのような役割分担をされているのですか。


土門:私はワークプレイスユニットのリーダーを務めつつ、近年多くの企業で注目されるようになったSDGsに配慮したオフィスの設計を担当しました。具体的には改装に伴う廃棄物の削減や、環境に配慮したサステナブルな素材やインテリアの選定などを行いました。

 


イベント・スペースプロモーション事業本部 土門 桜子

 

市川:私は生産性の向上や柔軟な働き方を実現するために、レイアウトの変更が可能な執務スペースの設計を担当しました。

 

――市川さんは一級建築士の資格をお持ちなのですね。

 

市川:はい。私たちESPはイベント企画や設計、運営までをワンストップで実施できる体験演出と空間デザインのプロが集まっています。今回のワークプレイス改装でも、それぞれのメンバーの強みが活かされています。

 


イベント・スペースプロモーション事業本部 市川 拓史

 

 

 

 

体験、空間づくりの専門性が活かされたオフィス設計  

 

――コロナ禍を経て、自分たちのオフィスや働き方をどのような方針に変えていったのでしょうか。


阿部:これまでの執務スペースは全員出社を前提としていたので、固定のデスクが対面で並んでいる一般的なオフィスレイアウトでした。現在は業務の内容やその日の気分に合わせて、オフィス内での作業場所も選べるようにABW(Activity Based Working)の考えに基づき、豊洲オフィス内の設計を行いました。

 

――ワークスペースはどのようなコンセプトに基づいてコーナーが分けられていますか。


土門:新しいオフィスでは、大きく3つの効果を得るための設計がなされています。1つ目のポイントは「作業効率と生産性の向上」で、作業に集中できる個人ワークコーナー、打ち合わせなどができるグループワークコーナーに加え、多目的に使えるコミュニケーションコーナーなどが設けられています。2つ目のポイントは組織や会社との「エンゲージメントの強化」で、コミュニケーションコーナーのテーブルは使用用途に合わせてレイアウトが自由自在に変更できるようになっています。例えば、セミナーなどではスクール型のテーブル配置にしたり、大人数での会議に適したロの字型のテーブル配置にしたりと簡単に変更できます。そして、3つ目のポイントが「アイデアの創出」で、ESPのプロジェクトで開発中のソリューションの展示や、さまざまなサステナブルな素材を実際に手にとって触れるスペース、さらには今回の改装で出た廃材をアップサイクルした家具などを設置しています。

 

作業に集中できるように個人のスペースを確保している個人ワークコーナー

 

写真左:打ち合わせができるグループワークコーナー

写真右:使用用途に合わせレイアウト変更可能なコミュニケーションコーナー

 

市川:オフィスに入るとワークスペース全体が見渡せるようになっていて、どこに誰がいるのかをすぐ把握できるようになっています。全員が同時に出社しなくなったことで同じ面積でもデスク同士の間隔にゆとりが生まれ、導線もスムーズになっています。全体的なデザインの方向性としてはナチュラルな木目を基調とし、緑を各スペースに配置して落ち着いた雰囲気を演出しています。奥にはカフェのようなカウンターテーブルを設置し、ここは緑を囲みながらほっと一息つけるリラックスコーナーとしての利用を想定しています。

 

土門:木目を基調とした什器や、緑を多く採用することで、都会のオフィスにいながらも自然を感じることができ、同時に木や緑がもたらすリラックス効果や疲労回復などの心理効果も得られるような環境を演出しています。

 

――ワークスペースの改装によって何か目に見える効果はありましたか?


阿部:フリーアドレスを導入したことで、堅くなりがちだったオフィスの空気がお互い声をかけやすい雰囲気になり、社員同士の何気ない会話から新たなコミュニケーションが生まれるなどの効果はすでに出始めています。また、先日もコミュニケーションスペースで本部員向けの研修を開催するなど、新しいオフィス空間の機能を介して社員同士の繋がりが広がっています。これはリモートワークのみの環境では生じなかったことで、今後もさまざまな試行によって効果を確かめていきたいと考えています。

 

 

 

 

 

サステナビリティへの意識や行動を変えていくオフィスづくり  

 

――全体的にサステナビリティに配慮された取り組みを行なっているとのことですが、具体的にはどのようなことが行われていますか。


土門:一例として、ディスプレイウォールは廃棄衣類繊維を再利用した「PANECO」というボードと、木材から出た木片を高温圧縮して作るOSBボードを組み合わせて制作しています。また、フローリングも「CORKCOMFORT」というコルクでできたサステナブルなマテリアルが用いられています。床を貼り替えることにより、本来であれば大量のフロアカーペットが廃棄されてしまいますが、これもアップサイクルして椅子を制作するなど環境負荷を極力抑える取り組みをしています。同時に、自分たちのオフィスでサステナブルな素材のリアルな質感や肌触りを確かめ、その利便性や耐久性を試して今後の提案に活かしたい目的もあります。


市川:ほかにも余剰となったバインダーをスツールに再利用したり、昨年末のイベント会場で不要になった廃材の鉄パイプなどをテーブルのフレームにしたりするなど、これまでのイベントスペース設計のノウハウや多くの新しいアイデアが今回の改装に活かされていて、大変ですが貴重な体験でした。

 

写真左:床を張り替えた際に廃棄される大量のカーペットをアップサイクルした椅子と廃材の鉄パイプをフレームに使用したテーブル

写真右:イベント現場で余剰となったバインダーを活用したスツール

 

――オフィス空間にサステナブルな素材を取り入れたことで、それだけでも働く人の意識は変わっていくと思います。更にもう一歩踏み込んでサステナビリティの考え方を社内のカルチャーに浸透させるためにはどのようなアクションが必要でしょうか。


阿部:まさに意識や行動を変えていく仕組みづくりこそが、サステナビリティを「自分ごと化」するための重要な鍵になると思います。例えば、オフィス内のキャビネットの数を減らすことで紙資料をデジタル化して管理するようになり、収納場所が減ったことでコピー機の利用を削減することもできました。


土門:細かいところで言えば、紙コップではなく社員それぞれの名前入りのマグカップを導入することで廃棄物を削減する意識が生まれ、同時に組織への帰属意識を高めるための工夫もしています。このように行動を変化させるための空間デザインや体験づくりは私たちESPの得意とするところです。

 

 

――普段の行動から思考を変えていく一連のプロセスを設計できるのがESPの強みなのですね。


阿部:サステナビリティといった大きなテーマを実現するためには、まず組織や企業として取り組むのに何が一番大切かという理想のゴールを考え、未来を見据えて設計していくことが重要です。今回のプロジェクトであれば、時代の変化に合わせた多様な働き方を実現するためには、入社の年次や職務の内容といった従来のあり方に捉われず、ESPのお互いのメンバーの働き方を尊重し合う新しいカルチャーを醸成していくことが必要でした。そして、このESPらしさを体現したワークスタイルを構築するのと同時に、その結果として組織全体としての恩恵を受けることも大事になります。このゴールを共有し、実現に向けて動き出せば自ずとESPや会社全体のプレゼンスを高めることにもつながるはずです。

 


イベント・スペースプロモーション事業本部 阿部 雄多

 

――働き方やSDGsに配慮する企業が増えるなか、ESPとしてはどのような提案をしていきたいですか。


阿部:働き方改革やサステナビリティに関する取り組みは、それぞれの企業の実態によって課題となるポイントや実現に向けた環境づくりなど最適なプロセスは異なってくると考えます。私たちESPは空間デザインと体験演出のプロフェッショナルとして、これらに対応するノウハウを持っていて、今回自らのオフィス空間の改装で実践することでさらなる知見を獲得しました。この経験はこれからのイベントスペース運営に反映していくことはもちろんですが、サステナブルなオフィス作りや多様な働き方に対応するためのワークスペースの設計にも役立てられるので、ご興味のある方はぜひご相談いただければと思います。

 

 

 

 

 



 

【プロフィール】

 

 

阿部 雄多

イベント・スペースプロデュース事業本部 

エクスペリエンスプロデューサー
2016年 博報堂プロダクツ入社。自動車メーカーや生活用品メーカーを主担当に、展示会や発表会等のリアル施策やバーチャルイベントなどオンライン施策も担当。事業本部独自のSDGs プロジェクトのメンバーとしても、エクスペリエンス領域に関わるソリューションを開発中。

 

土門 桜子

イベント・スペースプロデュース事業本部 

エクスペリエンスプロデューサー 
2018年 博報堂プロダクツ入社。自動車メーカーなどの各種展示会や、企業のインナー向けショールーム、POP UPショップなどの空間設計を担当。事業本部独自のSDGs プロジェクトのメンバーとしても、エクスペリエンス領域に関わるソリューションを開発中。

 

市川 拓史 

イベント・スペースプロデュース事業本部

エクスペリエンスプロデューサー 
2017年 博報堂プロダクツ入社。一級建築士の資格を持つ。IT企業のインナーイベントをはじめ、発表会や大規模展示会 、BtoC領域のリアルイベントなど分野を問わず幅広く担当。