あらゆるインターフェースを「視覚体験化」していく。新たな価値提供に取り組む総合制作事業会社、博報堂プロダクツの狙いはどこにあるのか。現状や展望について、キーマン2人に聞いた。
あらゆるインターフェースで、革新的な「視覚体験」を
5GやIoTといったテクノロジーが急速に進化したことで、企業と生活者とのコミュニケーションにも変化が起きている。すべてのモノがつながり、生活者の新たなインターフェースに進化しているのだ。一方通行からインタラクティブになり、リアルタイムになり、コマースとサービスを備えていく。コロナ禍で非接触のライフスタイルが定着したことも、インターフェース化を後押ししている。
こうした「生活者インターフェース市場」の拡大に合わせ、VX(ビジュアル・トランスフォーメーション)を推進しているのが博報堂プロダクツだ。VXに注力する意義や効果について、博報堂プロダクツ執行役員として映像事業を統括する武内寛雄氏はこう語る。
「VXの意義は、テキストや画像といった視覚情報をよりリッチでインタラクティブに視覚体験化することにあります。生活者のインターフェース化が進むと、企業と生活者の接点が直接的なものへと変化します。従来のファネル型購買プロセスが崩れ、体験の後で認知したり、認知がないまま購買したりするようになる。であれば、あらゆる接触機会で、『良質な視覚体験』を提供し、ファン化・顧客化していくことが一番良い。それがVXの大きな効果だと考えています」
「高品質×量産」が、顧客化力を高めていく
博報堂プロダクツでは、VXを推進するうえで、映像・情報・AI・環境の掛け合わせで、下図のような9つの重点領域を設けている。
見るだけの情報を視覚体験へとトランスフォーメーションさせるために整備された9領域。各部門の壁を取り払い、制作領域の力を結集したことで、あらゆるタッチポイントで良質な体験を提供できる体制を実現している |
各領域を見ると、撮影や画像処理、制作フロー、体験設計、ソリューションを活用した情報発信など、視覚に関するインプットからアウトプットまでのすべての要素が網羅されているのが分かる。しかも、博報堂プロダクツの強みは、単にプロセスが一気通貫で行えることだけではない。
「博報堂プロダクツは、創業以来『こしらえる』を生業とする総合制作事業会社です。このVXへの取り組みには、現在、海外オフショアも含めた6部門を中心に、600人を超えるクリエイターが参加しています。当社の強みであるこうした制作領域の力を結集し、『高品質×量産』で新しい視覚体験をつくっていくために策定したのがこの9領域です」(武内氏)
生活者インターフェース市場にコンテンツを投入するにしても、高品質でなければ効果が薄くなるのは言うまでもない。また、生活者との直接の接点が増えているだけに、いかに量産していくかも重要だ。博報堂プロダクツのVX戦略からは、高品質と量産の両方を満たしつつ、生活者の顧客化力を高めていくというビジョンが明確に見える。
高品質を担保しつつ時間や場所に左右されない撮影を実現
「高品質×量産」というキーワードで視覚体験を考える際、最も目に見える形でわかりやすいのが撮影のクオリティーだ。その取り組みの一例として、博報堂プロダクツが2021年11月に提供を開始した『Sizzle “Monitor” Stage™』を紹介したい。
「『Sizzle “Monitor” Stage』とは、大規模な撮影スタジオの代わりに、背景となる高品質画像やVFX映像を4Kディスプレーに投影し、その環境光をライティングとして使用することで、臨場感のある表現を可能とする撮影手法です」と説明するのは、博報堂プロダクツのフォトクリエイティブ事業本部長を務めながら、自らもフォトグラファーとして活動する高橋秀行氏だ。
同事業本部のシズル専門撮影チーム「drop」のメンバーが『Sizzle “Monitor” Stage』のコアを担う。ディスプレーに映した映像を背景に商品撮影するという説明だけでは、いかにもアナログ的な印象があるかもしれない。しかし、メインとサブ2台、合計3台のディスプレーで被写体を囲むため、写り込みも自然で、驚くほど臨場感のある撮影ができるという。
「グリーンバック合成と違って、リアルタイムでそのままの映像を撮れることが大きなメリットです。映像素材さえあればさまざまなバリエーションを試すことができ、その場でクライアントに確認してもらうことも可能です。もちろん天候も場所も選びません。タイムラプス素材があれば朝でも夜でも自由に時間が選べるので、時間と距離の制約から解放してくれます。また、規模の大きいVP(バーチャルプロダクション)スタジオではなく、高解像度モニターを使用し、スタッフ、機材のスモールスケール化、緻密な表現が要求されるスティル・ライフ撮影に特化している点でも大きなメリットがあります」(高橋氏)
博報堂プロダクツ フォトクリエイティブ事業本部には、これまでのクリエイティブの歴史で蓄積した撮影経験と高度なスキル、高品質なストックフォトがある。このアドバンテージが『Sizzle “Monitor” Stage』を支えているとも言えそうだ。
『Sizzle “Monitor” Stage』を活用して制作されたコンテンツもすでに存在する。サントリーの天然水スパークリングレモン「モーニンルーティン」がそれだ。
ウェブCM「天然水スパークリングレモン『モーニンルーティン』」
女性の朝のルーティンを指の動きで表現するこのウェブCMは、テーブルやベッド、小物類は実物だが、背景はすべてディスプレーに表示した映像。また、撮影はすべてスマートフォンで行っているというから驚きだ。
「ディスプレー3台なので小回りが利き、少人数でもシズル感や臨場感のある映像が作れます。広告や映像作品の制作プロセス・手法を根本から変えていきます」(武内氏)
床面に水を張って波を起こす場合、グリーンバックでは合成のイメージがつかめないが、『Sizzle “Monitor” Stage』ならリアルタイム撮影ができるため、遠近感や波のサイズを細かく調整できる。3面をモニターが囲うため、ボトルやグラスの写り込みも自然だ |
画像や映像を背景として使うだけでなく、ディスプレー自体をライティング機材として使うことも可能だ。表現したいイメージに合わせて色や光の強さを変えるなど、被写体にさまざまな表情をつけることができる |
顧客接点を通して、世界を良質化したい
こうした革新的なツールが生まれると、どうしてもこれまでのやり方が古臭くなったように感じるが、高橋氏は「従来の手法とのハイブリッド」「デジタルとリアルのほどよい距離感」という点を強調する。
「『Sizzle “Monitor” Stage』は少人数で『高品質×量産』を実現できるツールですが、映像素材を集めるためのロケなどの準備は必要です。また、撮影時もディスプレーだけでなく、これまで培ってきたライティングのノウハウを生かすことで、さらに高品質な作品を作ることができます。ツールによって効率や生産性が高まることも重要ですが、アイデアや知見を持ち寄ってツールを扱うのはあくまでも人。この点は大切にしていきたいと考えています」(高橋氏)
こうした考えは、博報堂プロダクツの今後の取り組みにも表れている。今後リリース予定の『PRODUCT’S LIVE creators™』でも、重視しているのは人だ。
「『PRODUCT’S LIVE creators』は、ライブ配信スタジオとセットになったライブストリーミングチームです。また、1人で何役もこなすような次世代マルチクリエイターのチームもつくります。人材の豊富さでは国内でも随一だと思いますし、こういう人材を生かすことができるのが、当社が提案するVXの強みです」(武内氏)
この強みをマーケティングにつなげることができるのも、さらなる相乗効果を生む原動力だ。「高品質×量産」が進んでいくことは、冒頭でも触れた生活者インターフェースの良質化を意味する。そうなれば、博報堂プロダクツがこれまでアプローチしてきた顧客化力のさらなる向上にもつながっていくだろう。
「最終的に生活者の利益になることを考えていくべきだと思います。価値を伝える、共感してもらうためには、作り手である自分たちもワクワクする必要があると考えています。VXを通してどんな価値を提供できるのかという点は今後も意識していきたいですね」(高橋氏)
「VXとは単なる効率化ではなく、数多くの高品質な視覚体験の提供により、企業のビジネス・トランスフォーメーションを良質化することです。多様な企業様とご一緒に、顧客接点を通して、世界を良質化していきたい。ぜひ博報堂プロダクツのVXをご活用ください」(武内氏)
圧倒的な「こしらえる力」で世界の良質化をめざす博報堂プロダクツ。今後、どのような映像世界を見せてくれるのか、期待したい。
(左)博報堂プロダクツ 執行役員 映像事業統括 武内寛雄氏(右)博報堂プロダクツ 常務執行役員 フォトクリエイティブ事業本部長 フォトグラファー 高橋秀行氏 |
問い合わせ先:
・VX(ビジュアル・トランスフォーメーション)の詳細はこちら
https://www.h-products.co.jp/topics/entry/2021/11/12/140000
・drop/「Sizzle “Monitor” Stage」の詳細はこちら
https://www.h-products.co.jp/topics/entry/2021/11/15/140000
・博報堂プロダクツ公式サイト
※日経BPの許可により「日経クロストレンド」に掲載された広告から抜粋したものです。禁無断転載©日経BP
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