博報堂教育財団は、2021年よりタイにおける日本語教育支援を目的に、教員育成や教材開発、教師同士のネットワーク形成までを含む「日本語教育プログラム」を継続的に展開してきました。毎年2月に開催される「Forum & Award」は、その1年間の取り組みが集約され、教師たちが実践を共有し、次の学びへとつなげていくための年に一度の象徴的な場として位置づけられています。
本記事では、2月7、8日にタイ・バンコクで開催された「Forum & Award 2026」を振り返りながら、この取り組みが単なる成果発表の場にとどまらず、学びが循環し続けるコミュニティとして、どのように機能しているのかを紹介していきます。
- 体験としての「Forum & Award 2026」
- コミュニティを支える、プロダクツバンコクの存在
- “エデュテイメント”が立ち上がり始めた、現場の実感
- 研修に活用されてきた、ナレッジ動画という基盤
- 現場で見た、プロダクツの“伴走する制作”
- 学びの場を、一体でつくっていく
- 公益財団法人 博報堂教育財団さまより
体験としての「Forum & Award 2026」
「Forum & Award 2026」、初日の主役は、2025年度の研修生34名と、この4月から研修をスタートさせる2026年度の研修生33名です。研修生とは、このプログラムのために、タイ全土の日本語教師から毎年公募をし、書類選考、面接審査を経て選ばれた精鋭たちで、1年間にわたって継続的な学習に取り組みます。「Forum」では、2025年度の研修生がグループごとに作成した日本語授業案を発表し、「Award」では、新たに選抜された2026年度の研修生に認定証が授与され、翌日から早速事前研修がスタートします。この場にはこれまでの研修修了生も全員招待され、発表や授与式を見守ります。また、夜には総勢150名に及ぶネットワークパーティーが盛大に開催され、参加者全員が交流を深めた後、翌日には新しい研修生を除く全員で、授業実践を振り返るワークショップを行って、2日間の日程が終了します。
当日は、タイ各地から集まった日本語教師たちが1年間の実践を持ち寄り、互いに称え合い、次の挑戦へと踏み出す。その前向きな空気が会場全体を包んでいました。
現地でこの場に立ち会って改めて感じたのは「Forum & Award」が単なる“イベント”ではなく、教師同士の学びが循環するコミュニティとして機能しているということです。発表や表彰で終わるのではなく、期を超えた研修生・修了生が対話を重ね、実践を共有し合うことで、次の授業や取り組みへと自然につながっていく様子が、会場各所で見られました。




コミュニティを支える、プロダクツバンコクの存在
このコミュニティの土台を支えているのは、現地事務局を担うプロダクツバンコクです。研修期間中から修了後まで続く、受講者や修了生たちとの継続的なコミュニケーション、イベントやワークショップの設計・運営、教師同士のつながりを日常的に生み出す接点づくり。こうした積み重ねがあるからこそ、「Forum & Award」当日の会場には高い熱量と一体感が生まれ、「学び続ける仲間の場」として成立していることが、現場からも強く伝わってきました。

“エデュテイメント”が立ち上がり始めた、現場の実感
会場では、博報堂プロダクツ・プロダクツバンコク・イマージが連携して制作した、3種のエデュテイメント教材が展示されていました。
• 教科書「あきこと友だち」に対応した動画教材
• 文化体験を題材にした「Let’s Learn & Try!」
• 教師の授業実践を共有する「ナレッジ動画」
これらは2023年度に始まった取り組みで、まだスタートしたばかりですが、現場の教師からは「授業のイメージが湧きやすい」「生徒の関心を引く入り口になる」といった声が自然に聞こえてきました。教材に触れる教師たちの反応を見ていると、「楽しく学ばせたい」「生徒の反応を変えるきっかけをつくりたい」という日々の授業づくりの感覚と、エデュテイメントの方向性が少しずつ重なり合い始めていることがうかがえます。
研修に活用されてきた、ナレッジ動画という基盤
3つの動画シリーズの中でも、通常の映像教材と趣を異にするのが、3番目の「ナレッジ動画」です。これは研修受講者の中でも特に優れた日本語教師の実際の授業の様子を映像に収め、その授業の意図や展開の工夫などを担当教師自身に語ってもらい、こうした動画を他の教師が視聴することで実践につながる学びとして活用していこうというものです。これまでに16名の日本語教師の授業実践を制作してきました。
この動画は、「Forum & Award 2026」で行われたワークショップでも活用されました。今回のワークショップのテーマは、Teaching Portfolio、すなわち教師が1年間の授業実践を振り返り、「何を意図し、何を試し、何が起きたのか」を言語化し、次の授業へとつなげていくための思考のプロセスに置かれました。ナレッジ動画は、Teaching Portfolioを支えるツールとして研修の中で共通の視点や対話の土台として活用され、
• 教師同士が同じ視点で実践を捉えるための共通理解
• 授業を振り返る際の観点の整理
• 表層にとどまらない対話を生み出すための足場
といった役割を果たすことによって、ワークショップの場に深い議論と学びを生み出していました。

そのほかの動画はこちらから
現場で見た、プロダクツの“伴走する制作”
このナレッジ動画を制作するにあたって博報堂プロダクツが大切にしたのは、単なる「記録映像」ではなく、「次に活かされる素材」に仕立てることを前提に動画を設計したという点です。そのため制作メンバーは、財団の方々とともに、ロケハンや撮影を通してタイ各地の学校を訪問し、教師の実践を丁寧に観察し、教師とディスカッションを重ねてきました。時間と手間はかかりますが、こうした工程を経ることで、教育のプロである教師たちの心をつかむ教材づくりにつながっています。これらの動画は、他の2つの動画教材とともに、研修に参加した教師だけではなく、タイ教育省とともに広くタイの日本語教師に向けて公開されており、今後はさらに動画教材の幅を広げ、より多くの教師に見てもらえるよう、現地スタッフとともに取り組みを続けていきたいと考えています。
学びの場を、一体でつくっていく
「Forum & Award 2026」は、博報堂教育財団、そして博報堂プロダクツの動画制作のグループ、プロダクツバンコクが、それぞれの役割を尊重しながらも、同じ目線で“学びのコミュニティ”を育ててきた成果です。教育の現場に寄り添い、映像や体験を通じて気づきを促し、学びが次の行動へとつながっていく。博報堂プロダクツグループは、そのプロセスをこれからも一体となって支えていきます。

公益財団法人 博報堂教育財団さまより
このプログラムの開始当初、私たちは、選抜した教師を日本に招聘して研修をする、というものを考えていました。しかし、実際にタイの先生方と向き合う中で、単発の研修を提供するだけでなく、教材を企画したり、タイ全土にいる日本語の先生方のネットワークを作るなど、より厚みのある支援が必要なことに気づきました。
それを支えていただいたのが、博報堂プロダクツグループの皆さんです。日本から離れているタイでコミュニティを形成・運営するためには、現地に根ざし、先生方と日常的に良質なコミュニケーションができる現地事務局が必要です。また、博報堂出自の財団として、動画教材の制作、というアプローチは、教育の専門家ではない我々が彼らの世界に飛び込む「武器」として、大きな成果を生みました。まだ開始して5年ですが、今ではタイの日本語教育の世界では、名の知れたコミュニティに成長しています。ここまでのご尽力に深く感謝いたします。
