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博報堂プロダクツの各コア事業が追求している専門技術を駆使した新しい取り組み、
時代の進化と掛け合わせながらも手触りを宿らせるプロの仕事をご紹介します。

ショートドラマで地域の魅力を描く 公開3週間で総閲覧数50万回 群馬県館林市と挑んだ新しい自治体プロモーション

全国の自治体が情報発信のあり方を模索する中、群馬県館林市で始まったのは「ショートドラマ形式」によるシティプロモーションです。 館林市初のオリジナルショートドラマ『はい、館林市役所です。』は、市役所に届いた多々良沼でのカッパ目撃情報をきっかけに展開する、ほのぼのとしたコメディ作品。館林市役所を主な舞台に、多々良沼(日本遺産「里沼」)や茂林寺(分福茶釜ゆかりの寺院)など、館林ならではの風景や日常が物語の中に自然に織り込まれています。公開から約3週間で、SNSを中心とした関連投稿の総閲覧数は50万回に迫り、公式Instagramのフォロワー数も約4倍に増加するなど、静かな広がりを見せています。

 

今回は、本作の監督・企画を務めた、群馬県出身の博報堂プロダクツ 映像クリエイティブ事業本部 映像ディレクター 吉田 真也にインタビュー。ゼロから自治体と関係性を築き、映像作品として立ち上げていった企画背景や舞台裏、映像設計の考え方、公開後の反響などを聞きました。

 

「はい、館林市役所です。」のKV画像

地元への想いから始まったプロジェクト

最初から何か具体的な企画があったわけではありませんでした。博報堂に在籍し、現在は館林市役所に広報専門官として着任している髙橋さんの新聞記事を、群馬県にいる実家の両親から教えてもらったんです。それを見て、何か一緒にできるかもしれないと思い、すぐに市役所に連絡を取りました。はじめてお会いした際も映像の話をしたわけではなく、広報誌やSNS運用など、シティプロモーション全体について意見を交わすところから始まりました。そうしたやり取りを重ねる中で、少しずつ関係性ができていった、という感覚です。

何をつくるかよりも先に、「館林市をどう見せたいか」「今の課題は何か」みたいな話をしていました。行政の方々にも現場で感じていることや悩みがあって、そこを言葉にするところから一緒にやっていく感覚だったんです。そうやって対話を重ねていく中で、「情報として説明する」よりも「空気感が伝わる」発信のほうが合うのでは、という方向性が見えてきました。

 

市役所を舞台にした“日常の物語”

いわゆる観光PR動画のように名所を並べるだけだと、どうしても“情報”で終わってしまいます。一方でドラマなら、視聴者が感情移入しやすく、見たあとに「なんかいい街かも」と気持ちが残る。今回めざしたのは、強い起承転結やメッセージで引っ張るというより、何も起こらないのに、見終わると少し気持ちがあたたかくなる体験でした。館林市の持っている素朴な空気感を、そのまま映像のトーンに反映したいと考えました。また、市役所は、ライフイベントごとに誰もが一度は訪れる、市民にとってリアルで身近な場所です。そこを物語の中心に据えることで、行政の現場もぐっと身近に感じてもらえるし、職員の方々の意見や所作が作品のリアリティにもつながります。そうすれば、市役所職員や市民にとっても、愛着のある作品になるはずだと考えました。

 

物語は、市役所に届いた「多々良沼でカッパを見た」という、目撃情報のメールからスタートし、じわじわと周りを巻き込んでいきます。舞台は本物の館林市役所で、物語の中には多々良沼や茂林寺など、館林らしい風景が自然に入ってきます。景色や名所を見せるためにドラマに差し込むというより、日常の延長として自然に映るように意識しました。また、市民や市役所職員の方々がエキストラとしてボランティアで参加してくださったことも、作品のリアリティに直結しました。行政とクリエイターが一方通行ではなく、対等に意見を交わしながら進められたことは、今回のプロジェクトの大きな価値だと感じました。

 

撮影の様子

 

撮影の様子

 

広がる“ほっこり”反響とデジタル設計

いわゆる炎上狙いや大きな話題づくりを目的とした強い見せ方ではなく、館林らしい、優しい、ほのぼのとした市民性を意識した作品です。そのためか、作品のトーンに合わせて、映像のコメント欄も温かい反応が集まりました。「館林に行ってみたい」「続編が見たい」といった声に加えて、地元の方がたくさん見てくださっていて、コメント欄の中で地元ならではの会話が始まっているのも印象的でした。反響の高まりとともに、NHKでも本作が取り上げられました。番組内では、劇中に登場する『カッパうどん』が市内の老舗うどん店で商品化されたことも紹介されるなど、ショートドラマをきっかけに、街全体へと話題が波及しています。

 

そうした空気感まで含めて、館林市の温度が届いている感覚がありました。
また、ショートドラマを一本作って終わりではなく、市役所職員の方々とも連携し、InstagramやYouTube Shortsから本編へと誘引する導線までを含めて考えました。広告制作の現場に身を置いてきたからこそ、どこで出会って、どう本編に来てもらうかまでの体験設計ができたと思います。一方で、今回は普段の広告制作とは異なる、コンテンツとして成立する映像作品をつくる仕事でした。ここで、ショートフィルムやMVなど幅広い領域でプロデュースを手がけている村地プロデューサーに声をかけました。企画の意図を汲み取りながら、キャスティングから制作進行、品質管理まで、きめ細かく伴走してもらえたことが、作品としてのクオリティを支える大きな要因になったと思います。

 

シリーズ化と、地域を越えた展開へ

このショートドラマは、一度きりのプロモーションで終わらせず、スピンオフも含めたシリーズとして、丁寧に育てていきたいと思っています。全国的に知られている館林市の「つつじまつり」や名産品、ご当地グルメ、毎年の行事や季節の出来事と連動させることで、定点観測のようなコンテンツにしていけたらと思っています。まずはこの地域でしっかりと積み重ねていくことが重要だと考えています。その上で周辺地域や他自治体との連携も視野に入れながら、地域と人をつなぐプロモーションの形を広げていけたらと思います。

 

博報堂プロダクツ 映像クリエイティブ事業本部 映像ディレクター 吉田 真也

 

ピュアな地元愛×プロの実装力

群馬県館林市 広報専門官
髙橋 英二


■吉田 真也さんとの出会い 
昨年4月、内閣府の「地方創生人材支援制度」により博報堂から群馬県館林市へ出向しました。広報専門官としてのミッションは、移住希望地ランキング1位の群馬県で東京に一番近い「市」であり、豊かな自然と温かい市民に恵まれたこの「楽園」の認知度を向上させることです。 着任早々、地元出身の吉田さんから届いた「お役に立ちたい」というメールは、未知の土地で走り出した私にとって、これ以上ないほど心強いエールでした。

 

■ショートドラマを制作しよう! 
認知度向上の切り札として「ショート動画」の制作を決定しましたが、自治体の予算確保は一筋縄ではいきません。補助金の申請や議会への説明を重ね、ようやく認められた補正予算は、貴重な「税金」です。「失敗できない」という緊張感の中、吉田さんは脚本家の山﨑さんや経験豊富なプロデューサーの村地さんをアサインし、最高の布陣を整えてくれました。

 

■プロの仕事、そして「成果」 
本作『はい、館林市役所です。』の最大の特徴は、キャストやスタッフの多くが地域にゆかりのある「ピュアな地元愛」を持っていることです。博報堂プロダクツの皆さんは、限られたリソースを最大限に活用し、自治体動画の枠を超えたクリエイティブを実現してくれました。 その結果、公開からわずか3週間でSNSの関連投稿閲覧数は50万回。公式Instagramのフォロワーは短期間で約4倍に急増し、コメント欄には「館林に行ってみたい」という声が溢れています。市役所内にカメラが入り、プロの仕事が展開される様子は、職員や市民の皆さんに鮮烈な印象をもたらしました。

 

■最強の組み合わせ 
地方には、博報堂プロダクツさんの「プロの仕事」を必要としている自治体が数多くあります。「ピュアな地元愛×プロの実装力」こそが、地方創生を加速させる最強の組み合わせであると確信したプロジェクトでした。

 

※記事で紹介したショートドラマ『はい、館林市役所です。』の本編は、

以下のリンクよりご覧いただけます。(画像タップでもリンクへ飛べます)

https://www.city.tatebayashi.gunma.jp/s002/shisei/150/200/010/010/20251112093856.html