総合制作事業会社である博報堂プロダクツは、17の事業本部にわたる幅広い領域でソリューションを提供しています。価値創造の中核を担うのは、116もの専門職を構成する2,000名以上の人材です。
博報堂プロダクツ 公式YouTubeチャンネルでは各職種の提供価値をお伝えすべく、「Close Up!P Value」を公開中。デジタル、リアル、映像、コマース、先端テクノロジーまで、多彩なプロフェッショナルたちの姿を紹介しています。そしてコーポレートサイトTOPICSでは、YouTubeで語られた内容をさらに深堀りするインタビュー記事を公開していきます。
Vol.16では、印刷・什器事業本部から黄木 知美が登場。販促ツールや什器の製作・プロデュースを通じて、生活者の「欲しい」を引き出す売り場づくりと向き合う印刷什器プロデューサーを紹介します。
徹底した品質管理と体系的なアプローチで
売れる売り場づくりを追求
――ECや店舗アプリなどデジタルを活用した購買行動の多様化が進む一方で、実店舗は依然として生活者と企業をつなぐ重要な接点であり続けている。印刷什器プロデューサーの黄木 知美は、ポスターや陳列棚など、販促ツールを中心に多様な印刷物・什器の企画から製造管理、納品までワンストップで提供。生活者インサイトに寄り添った購買体験をプロデュースする。
黄木:印刷物や什器の製作では、まず売り場を見に行くことが大切です。売り場では、依頼のあった商品はもちろん、他社の商品がどのように陳列されているのか、売り場全体のレイアウトや商品の陳列サイクルによる変化を確認します。クライアント側に具体的な要望がない場合でも、現場に足を運ぶと必ず課題が見つかるんです。
――「商品をもっと目立たせたい」「生活者に手に取ってもらいたい」といったゴールは共通していても、課題解消に至る道筋は売り場や商品ごとに異なる。そこで改善の指針として活用されるのが、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の視点だ。
黄木:VMDとは、端的に言うと「売れる売り場のつくり方」。店舗内の動線や生活者の目線などを踏まえた客観的な基準のもとに、売り場を設計する手法です。主にアパレル分野で活用されることが多いのですが、博報堂プロダクツではさらに対象領域を広げ、生活者が商品を手に取りやすく、購入しやすい環境をつくるための独自ノウハウとして再構築しています。
――課題解決に最適なモノの仕様を導き出すためには、店外、店内、棚前における生活者の購買心理に合わせたコミュニケーション設計の考え方が欠かせない。印刷・什器事業本部が担うのはモノづくりであるとともに、店頭プロモーションのトータルプロデュースでもある。
黄木:店内を回遊する生活者の動きや目線に合わせて、どのようなビジュアルや情報を配置するか。VMDに基づく売り場づくりの観点から個々のプロダクトの役割を考えるので、たとえ「いい感じの陳列棚を作ってほしい」というオーダーがあっても、“いい感じ”を構成する素材や色、形状に意味や根拠を持たせられるんです。
――木材や鉄、アクリルなど、多種多様な素材を扱う什器の製作では、3Dクリエイティブのエキスパートが専門性を発揮する。
黄木:私たちのチームの強みは、平面の状態から組み立て後の見え方を意識できる、立体物のデザインに長けたプロがいること。たとえば、コストを抑えたいという要望に対して、ミリ単位の調整を計算し、強度とコストのバランスをとった代替パーツを提案できます。各パーツの仕様や特性を深く理解しているデザイナーが案件の初期段階からクライアントの要望を汲み取るので、スピーディな対応とクオリティを両立できるんです。
――クライアントにイメージを共有する段階では、デザイナーだけでなく、黄木自身も積極的に作業に加わることがある。
黄木:形状を提案する際、私が描いたラフスケッチをクライアントに確認していただくこともあります。もともと絵を描くのが好きだからというのもありますが、ラフスケッチにすることで早い段階で認識のズレを防げますし、より深い意見交換にもつなげられるというメリットもあります。
――必要と思えば、クライアントが求めるより早くサンプルを提出することもある黄木。ラフを描くのもサンプルを早い段階でつくるのも、スムーズな進行がクオリティに直結することを実感しているためだ。
黄木:手戻りが多いと、本来実現できたはずのクオリティも実現できなくなってしまいます。やはりモノづくりの部署なので、製造段階に入ってから修正が入るとなると、時間、コストの大きなロスにもつながる。プロデューサーはクライアント、協力会社、デザイナーをつなぐ立場ですから、それぞれの方向性をまとめ上げ、円滑にプロセスを進める要だと思っています。
――黄木が製作プロセスの中で特に重視しているのは品質管理だ。
黄木:手法や技術ももちろん重要ですが、生活者が実際に触れるモノをつくる以上、品質管理こそが最も大切だと考えています。紙製什器であれば、お子さまが触れることを想定して角を丸くするなど、安全面の配慮は欠かせません。また、長期の使用を想定したオーダーに応えられる耐久性チェックや、輸送中の破損を防ぐための構造の検討、衝撃・振動に耐えるための輸送テストも入念に行います。小さな破損が大きな事故やクレームにつながるリスクもありますから、細部のチェックを徹底しています。
――「仕様や予算に制約があっても、なるべく制約を感じさせない高品質なモノをつくりたい」と語る黄木。DX化が進む店頭プロモーション領域においても、提供価値の軸は変わらない。
黄木:この仕事に携わって10年が経ちますが、「こんなことまで印刷什器で実現できるんだ!」という新鮮な驚きはいまだに尽きません。近年はデジタルサイネージを取り込んだ什器が増えるなど、店頭プロダクト領域の新たな変化も感じています。ただ、これから先、どれほどデジタル化が進んでも、実店舗での購入体験がなくなることはないと思うんです。だから、品質の良いモノづくり、“手に取りやすく”“体験しやすく”“面白い”売り場づくりをこれからも変わらず追求します。
博報堂プロダクツ 公式YouTubeチャンネルでは、今回登場した黄木のインタビュー紹介動画も公開しています。こちらもあわせてご覧ください!
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