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Z世代をターゲットにした「ズッキュン♡郵便局」が大ヒット。その成功の訳と今後の可能性とは

博報堂プロダクツの6事業本部が連携して取り組んだ、ポップアップストア型のイベント「ズッキュン♡郵便局」が、異例のヒットで話題に。これまでに東京で2回、大阪で1回開催し、累計入場者数は約4万6,000人という大盛況を収め、メディアやSNSでも取り上げられました。そして、2025年3月には第4回目となる名古屋での開催が決定! Z世代を惹きつける新たなコンテンツはどのように生み出され、いかにしてクライアントとの継続的な関係が育まれていったのでしょうか。成功に至った秘訣を制作メンバーに聞きました。

 

ズッキュン郵便局制作メンバー※プロフィールはこちら

 

【目次】

■郵便局と若年層をつなぐポップアップストア誕生の舞台裏

■来場者も関係者も楽しみながら「郵便局のサービス」の新たな魅力を発見

■4回目の名古屋開催へ向けて

■進化し続けるプロジェクトに発展

 

■郵便局と若年層をつなぐポップアップストア誕生の舞台裏

――「ズッキュン♡郵便局」はどのようにスタートしましたか。

 

井口:2023年2月頃に日本郵政様より、“KAWAII”をテーマにした今までにない 取組みで若年層との接点を作りたいというお話があり、博報堂プロダクツの6事業本部でチームを結成しました。そこから同年5月のプレゼンに挑み、競合を勝ち抜きました。コンセプトを設定し、タイトルやロゴ、体験コンテンツ、会場の外観・内観イメージ、グッズ1個1個のビジュアルまで、それぞれ細部に至るまで具体的に設計し、すぐにでも実施に向け進行できるレベルまで提案段階で仕上げたことが勝利のポイントだと思います。

 

有冨:クライアントからオリエンいただいたテーマは“KAWAII”でしたが、私たちはZ世代と郵便局の新しい関係性をつくることから議論しました。かわいいイベントだったね、と瞬間風速で終わっては意味がない。「郵便局って楽しい」「また行こう」と思ってもらうには何が必要か。その時、手紙や荷物を送り、想いを届ける中で生まれる「ドキドキ」こそが価値で、その価値をいかに体験コンテンツへ落としていくかが勝負所だと捉えました。このドキドキというキーワードから、「ズッキュン♡郵便局」というネーミングも生まれています。

 

統合クリエイティブ事業本部 有冨 悠

統合クリエイティブ事業本部 クリエイティブディレクター 有冨 悠

 

藤野:プレゼン準備の初期段階から、博報堂プロダクツ6事業本部のメンバーが密にミーティングを重ねました。Z世代に分類される若いメンバーもいるのでターゲットに近い視点で、「これがかわいい」とか「今の子はこれよりこっちの方が好きなんじゃない?」というようにフランクに、かつリアリティを持って企画を考えていけたことが、刺さるコンテンツ制作に結びついたのだと思います。

 

 

■来場者も関係者も楽しみながら「郵便局のサービス」の新たな魅力を発見

――第1回目の「ズッキュン♡郵便局」(渋谷)は2週間で累計約8,600人が来場し、大きな話題になりました。成功に至った秘訣はどんなところにあると考えますか。

 

有冨:デザインでイメージを変え、体験したくなるコンテンツにすることで、こんなにも多くのZ世代の若者たちが手紙を書いてくれるんだという良い驚きがありました。ターゲット層が自然と「推し活」に活用したくなる要素も散りばめています。また、通りがかりの友人同士やカップル、親子も気軽に楽しめるよう「ペア」を想定して会場やコンテンツを設計したことも、楽しんでいただけた要因のひとつかもしれません。

 

藤野:来場者アンケートで満足度が一番高かったのが「ドッキン♡ハートレター」というコンテンツです。書いた手紙を半分に切り取り、半分をポストに投函して、半分は相手に直接渡すという一見手間のかかるギミックであったにも関わらず喜んでいただけたことは、私たちも想定外でしたね。 “手紙離れ”が指摘される中で、2、30分かけてZ世代の方々が丁寧に手紙を書いてくれるというのがすごく新鮮で、うれしかったです。

 

ズッキュン郵便局 渋谷での開催の様子

 

ズッキュン郵便局 渋谷での開催の様子

 

藤田:成功に至ったという点では、“手紙を書く”、“荷物を送る”という郵便の本質的価値から逃げずにすべてのコンテンツを組み立てたことが大きいと思います。表面的なかわいさだけを追わず、手紙の魅力を増幅させてZ世代の方々に合う楽しい体験と結びつけたことで、飽きることのない面白いコンテンツを生み出せました。さらに、クライアントにとっては、「郵便局のサービスをこんなカタチで提供できるんだ」という新たな発見につながったのではないでしょうか。そこが、クライアントの満足度を高められ、結果的に継続案件となった最大のポイントだと思います。

 

統合クリエイティブ事業本部 アートディレクター 藤田 奈々子

統合クリエイティブ事業本部 アートディレクター 藤田 奈々子

 

井口:スタートした当初は継続して開催することは決まっていませんでしたが、1回目の実施でクライアントが想像していた以上の大盛況だったことで、当初設定していたKPIを大幅にクリアしました。来場者数の目標を1,000人以上回り、広告換算値は約2倍という結果に。その後、クライアントから2回目もお願いしたいという話をいただくことができました。


――クライアントと良い関係を築けていることが伝わります。

 

井口:そうですね。クライアント担当者の方々とは、私たちクリエイティブチームも頻繁にコミュニケーションを重ね、信頼関係を築いてきました。チーム全員で顔を合わせてそれぞれの知見から本音で意見を交わし、オフの時間のコミュニケーションも重ねることで、クライアントも含めたワンチームを作り上げられたと思っています。

 

藤田:私たちは、そういった時間を結構大事にしていますよね。営業の担当者だけに任せにせず、クリエイティブチームの声を直接クライアントに届けられるので、お互いに素で向き合えている感覚があります。それもあって、制作を妥協しないという姿勢もきちんと伝わり、理解してもらえることが多いです。例えば、1回目の開催では実現しなかったオリジナル切手の制作が2回目以降実現できたのも、クライアントに信頼していただけた結果だと感じています。

 

――来場者からもクライアントからも高い評価を得ていますが、心に残っている言葉はありますか。

 

藤野:大阪現場のときに、会場宛てに一般のお客様から手紙をいただきました。そこには、「良いイベントだから、またやってください」という内容を書いてくださっていて。それを読んで、クライアントやクリエイティブチーム、皆で喜びました。

 

イベント・スペースプロモーション事業本部 エクスペリエンスプロデューサー 藤野 絵名

イベント・スペースプロモーション事業本部 エクスペリエンスプロデューサー 藤野 絵名

 

藤田:あれはうれしかったですね。イベントには、実際に郵便局で働いている社員の方々にもブースに立っていただいたのですが、「今年入った新卒なんですけど、めちゃくちゃ楽しいです」と直接言ってくださったり、「『ズッキュン♡郵便局』の仕事に携わりたくて、異動願いを出しました」という方がいらっしゃったり、クライアントからもうれしい声をたくさん伺いました。

 

井口:他地域の郵便局長の方から、「自分のエリアでも『ズッキュン♡郵便局』をやりたいんだよね」と言う声が出ていたり、クライアントの入社面接で「『ズッキュン♡郵便局』を見て入社を希望した」という方が何名かいた、という話も伺いました。クライアントがそういった周りからの声を聞いて喜んでいただけたことは、すごく意味があることだと感じています。

 

藤田:そんな風に、来場者だけでなくクライアントの皆さんにもすごく楽しんでいただき、結果的にインナーモチベーションアップにも貢献していると実感できました。

 

――第2回の大阪、第3回の池袋の様子はいかがでしたか。

 

有冨:大阪では、オリジナル切手を使ったカプセルトイと「ふんわり♡香りレター」とワッペンという目玉となる体験コンテンツを3つ増やしました。

 

藤田:オリジナル切手は、1回目のときにお客様からの要望もかなり多くあり、私たちも2回目で提供できるよう力を入れて進めました。「ふんわり♡香りレター」は、8つの香りから好きな香りを選んでカードに垂らし、手紙に同封できるコンテンツですが、クライアントより手紙に香りが移らないようにしたいとの要望があり、それを守りつつ、香りをいかに体験してもらうかという部分に一番苦戦しました。

 

有冨:池袋では、「アバター接客」を新コンテンツとして導入しました。こちらは、クライアントから実験的に検証したいというご要望からです。今後「ズッキュン♡郵便局」が、郵便局の新しい可能性を探る実証実験の場としても機能すると理想的ですね。

 

ズッキュン郵便局 池袋などでの開催の様子

 

ズッキュン郵便局 池袋などでの開催の様子

 

 

■4回目の名古屋開催へ向けて

――2025年3月20日(木・祝)に、「KITTE名古屋」にて第4回目「ズッキュン郵便局が開催されますが、今までとの違いは何かありますか。

 

有冨:名古屋では、過去3回の開催とはアプローチの仕方を変え、「ズッキュン♡郵便局」を今後、より効率よく継続させていくことにフォーカスしました。名古屋開催以降、規模をコンパクトにして、手軽にいろいろな地方で開催を実現できる仕様もプランニングしています。そのため、名古屋開催ではあえて新しいコンテンツはつくらず、今まで好評だったものを継続する予定です。

 

藤田:ただ、デザイン面ではご当地的な要素を加えたり、春らしくしたりと、新しい見せ方は考えています。キービジュアルの中に名古屋を象徴するシャチホコを入れ、今回初めてご当地的な要素を加えています。

 

井口:そうですね、ミニマム化はしても、デザインでオリジナルのご当地感を加えて、差別化し、さまざまなエリアで開催できる方向も想定しています。また、広告に関しては、独自のリサーチを行い、映画館の上映前に流す広告「シネアド」がZ世代に効果的だという結果が得られました。従来のInstagramやTikTokでの発信や駅の交通広告などに加え、新たな試みとして、「シネアド」でイベント開催の告知をする予定です。

 

ズッキュン郵便局 in Nagoyaのキービジュアル

ズッキュン郵便局 in Nagoya

2025年3月20日(木)~23日(日) @KITTE名古屋 1F アトリウム

 

■進化し続けるプロジェクトに発展

――今後、「ズッキュン♡郵便局」をどのように成長させていきたいですか。

 

有冨:これまで通り、クライアントとの良い関係性を維持しつつ、「ズッキュン♡郵便局」自体が、IP的な存在になるのが理想です。例えば、「ズッキュン♡郵便局」とコラボしたいという話が、 他のZ世代と関係を構築したいクライアントから来るぐらいまでに成長できれば、もっと世の中ごととして広がりをつくれると思います。

 

井口: Z世代と言えば「ズッキュン♡郵便局」と思われるぐらいに認知度を高めていきたいですね。若年層にアプローチするために、グッズ開発や協賛メニューを出したいと声がかかるくらいにブランド化できたらうれしいです。

 

プロモーションプロデュース事業本部 統合プロデューサー 井口 将人

プロモーションプロデュース事業本部 統合プロデューサー 井口 将人

 

藤田:これまでの施策でブランド力を高められたと思うので、このまま「ズッキュン♡郵便局」の持つブランド力をどんどん強化していきたいです。クライアントも博報堂プロダクツも、関わっているメンバー全員が「ズッキュン♡郵便局」を大切にしています。これからも、良いチーム力を発揮して、育てていきたいですね。

 

有冨:「ズッキュン♡郵便局」の成功の秘訣は、チーム力に尽きます。同じ目標に向かい、より良くする方法をずっと一緒に考えてこれたという意味でも、クライアントも含めてチームだと思っています。関わるメンバー一人ひとりがお互いにリスペクトし合いながら、これからも愛される「ズッキュン♡郵便局」をつくっていきたいです。


    

【プロフィール】

井口 将人

プロモーションプロデュース事業本部 統合プロデューサー

2009年博報堂プロダクツ入社。業種や領域にとらわれず、映像/グラフィック/イベント/WEB/SNS/キャンペーン等の企画~実施まで、リアル~デジタルまで、プロモーション領域全体を統合的にプロデュースしプロジェクトを進行する。

 

有冨 悠

統合クリエイティブ事業本部 クリエイティブディレクター

2009年博報堂プロダクツ入社。コピーのスキルを活かしたコンセプト&ストーリー開発をベースに、動画からデジタル・SNS ・イベント等手法にとらわれない統合型プランニング&ディレクションを得意とする。

 

藤田 奈々子

統合クリエイティブ事業本部 アートディレクター

2014年博報堂プロダクツ入社。「人の体験に入り込むこと」をモットーに、グラフィックデザインを軸に置きつつ、コンテンツ制作やイベント、スペースデザインやWebなどを統合的にプランニングから手がける。

 

藤野 絵名

イベント・スペースプロモーション事業本部 エクスペリエンスプロデューサー

2019年博報堂プロダクツ入社。化粧品/飲料/通信とさまざまなクライアントのプロモーションイベントやPR発表会、BtoB コンベンションイベンなどリアル・デジタル問わず幅広い分野を担当。生活者体験における企画から制作、実施・運営までと統括、推進する。