今年度、博報堂プロダクツは大きな組織改編を経て体制を一新。総合制作事業会社としてさらにクライアントの事業成長に貢献するとともに、生活者の未来を切り拓いていくという決意を込めた、新しい企業広告を制作しました。
博報堂プロダクツ、新企業広告を発表(9/17公開記事)
こちらの動画は、ぜひ4K画質でご覧ください。
博報堂プロダクツの複数事業本部のプロフェッショナルによる創造性と実施力が発揮された企業広告。そのキービジュアル・コンセプトムービーの企画・制作背景について、統合クリエイティブ事業本部の日髙 李衣子・山枝 裕介、フォトクリエイティブ事業本部の平田 正和に話を聞きました。
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【目次】
■ “攻めの姿勢”をビジュアルに表す
日髙:新たなキャッチコピー「こしらえる力で、つくりかえる。」を軸に、企業広告となるキービジュアルを含むグラフィック、そしてコンセプトムービーを制作しました。
私自身はグラフィックとムービー、全体のアートディレクションを担当。共につくり上げていく仲間として、フォトグラファーの平田さん、そして当時中途入社したばかりだったデザイナーの山枝さんをアサインさせていただきました。
まずはキャッチコピーに合わせたデザインを企画。いくつかの案のうち、博報堂プロダクツの企業ロゴが「破壊」と「再生」を繰り返し、より良いものへと変化し続ける姿勢を表現する案に決まりました。
山枝:ロゴの「破壊」と「再生」の案を何パターンも考えるところから加わりました。まさか入社してすぐに自社のロゴを壊すことを考えることになるとは驚きましたが、自由度が高く、楽しく考えることができました。
日髙:私は新卒で博報堂プロダクツに入社し、会社のことをよく知っている分、「つくりかえる」がテーマの本プロジェクトでは外からの目線、違う視点で会社を俯瞰できる山枝さんと一緒にデザインを考えたいと思いました。
また平田さんに撮影をお願いしたのは、まず素敵に撮ってくれるだろうという信頼。そして自分の思い描くイメージをどう作っていくか、手法の部分から相談でき提案をしてくれるという点で、率直に意見を交わし合える平田さんとなら一緒に作り上げていけるだろうと思ったからです。
平田:ロゴを壊すなど普通ならしないような攻めた企画で、ぜひやりたいと積極的に加わりました。全員で試行錯誤しながら進めていけるいいチームだったからこそ、仕上がりも素敵なものになりました。
■ リアルな表現を全員で“こしらえる”撮影現場
日髙:今回実写で撮影したビジュアルは3種類。カラフルな粉がロゴに向かって飛散するもの、ガラスのロゴが砕け散るもの、ロゴが水に浸かって溶けていくものです。
平田:日髙さんたちのアイデアを受けて、まずフォトクリエイティブ事業本部内でどのような撮り方が最適か議論しました。具体的な仕掛けの部分については外部の美術スタッフに相談していくつか方法を提案していただき、日髙さんたちとイメージに近いものに決めていきました。3種類のビジュアルについて、写真と映像を自社のスタジオで、丸一日かけて撮影しました。
平田:1つ目の手法はシンプルで、インドのお祭りで使われる粉を机に置いて、下からコンプレッサーで力を加えています。力の強さや粉のカラーバランス、粉を盛る高さなどによって飛び散り方や立体感が変わってくるんです。
日髙:中央に黄色を多く置いてみるとか、山をすこし高く盛ってみるとか、そういった細かい調整を何十回も重ね、最終的には思い描いていた通りの、迫力のある画を撮ることができました。キービジュアルとしてだけでなく、映像の中でも締めくくりの重要なカットになっています。
平田:写真は最も良い瞬間をとらえられるよう、シャッターやストロボの秒数、粉とロゴの距離などを綿密に調整しました。一連の動きを予測して画角などを定めていく映像撮影にも、写真とは違った面白さがありました。
山枝:ガラスが割れるカットも、手法としては1つ目と似ていて、博報堂プロダクツのロゴを印刷したガラスに下から力を加えて割っていきます。
平田:ガラスの端だけを固定して割るのですが、押さえる場所をすこし変えるだけで、一枚一枚予想もつかないさまざまな割れ方をするんです。思い通りに調整できない難しさもありながら、全部見せたいくらい面白い画がたくさん撮れました。
日髙:ロゴに亀裂が入っていく様子、割れたロゴがカメラに近づいてくる遠近感など、リアルでなければ表現できない細かい部分は実際に見ていても面白かったので、ぜひ注目していただきたいです。ガラスの枚数が限られていたので、現場では緊張感もありましたね。
山枝:ガラスを浮かせた状態で割っているので、ロゴや飛び散った破片の影がつくんです。CGでは表現できない美しい画が撮れたので、実際に撮影してよかったと思いました。色のトーンもとても美しく、結果的に映像の他のカットもこれに合わせて色味を調整しました。
日髙:ロゴが溶けていくカットでは、このために作ったロゴの型にインクを流し込んで凍らせ、それを下から少しずつ水面につけて溶かしていきます。実験性のある撮影で、見ていて楽しかったですね。
山枝:溶けたインクが水中で滞留する様子がなかなかイメージ通りにならず、美術スタッフさんのアイデアで、水に比重の異なる別の液体を混ぜてインクとの比重を調整しました。これもインクでできたロゴの数が限られていて、最後の一つでようやく成功しました。
日髙:柔軟に、環境に合わせて自分たちが変わっていくという変幻自在さをうまく表せたと思います。どれもやってみて初めて見えることも多く、面白かったですね。
平田:グラフィック、映像を通してどれも実写だからこそのディティールが感じられ、実写の良さが生きた作品になったと思います。
現場も非常に良い雰囲気で、全員でああでもないこうでもないと意見を交わしながら作り上げていくことができました。いい画が撮れるのは、そうやって全員が同じ方向を見て、意見を出し合えているときなんだなと今回改めて確信しました。
■ 映像・3D分野のプロフェッショナルが結集
日髙:動画については撮影素材以外にも、「つくりかえる」をいくつもの3DCGで表現することで、次々に新しいものに変わり続ける様子を表現しました。
カット編集はデジタルクリエイティブ事業本部、3DCGとレタッチをREDHILL事業本部、色の調整をフォトクリエイティブ事業本部のREMBRANDTに依頼しました。
撮影素材と3DCGは一般的に差が大きく、つながりが悪くなってしまうため、色味やトーンを撮影素材に合わせる調整を行いました。3DCGで思い通りの表現を作るのが難しく、何度も修正してもらった箇所もあります。思い描いていることを形にすること、さらに人に伝えることの難しさを改めて感じました。
山枝:編集に何度も立ち合い、色味にもテンポにもこだわって細かく調整しました。前職を通しても、映像制作に本格的に関わるのは本案件が初めて。限られた秒数の中でどれだけ「つくりかえる」を表現できるか組み立てていくのは楽しかったです。この経験を生かし、今後の業務でも映像領域に挑戦していきたいですね。
平田:私もこれまではグラフィックの案件がほとんどだったのですが、ちょうど映像撮影に興味を持っていたタイミングで本案件に関わることができ、これを機に映像の仕事も増え、CM撮影などの映像の仕事もいただいています。
■ 博報堂プロダクツの未来を“こしらえる”
山枝:博報堂プロダクツに入社して半年。前職も同じ業界とはいえ、会社の文化や考え方も、クリエイティブを作り上げる思考のプロセスも全く違うと感じています。複数企業での経験を持つ自分ならではの視点を生かして、より良いものをこしらえることができるクリエイターになりたいです。
平田:「こしらえる力で、つくりかえる。」を一人ひとりが、より体現できる会社にしていきたいです。入社して10年が経ち、会社がどうあるか、というのは社員一人ひとりの在り方が作っていくものだと感じています。特に若い世代にはルールに縛られすぎず、違うと思うことや変えたいと思うことはどんどん意見を言って変えていってほしいと思いますし、私たち中堅世代にはその思いや声を拾って実現させていく役割があると思うので、新たな意見も受け入れる柔軟性をこれからも持ち続けたいと思っています。
日髙:平田さんと同じように、実は仕事に決まりなんてないと思っています。決められた枠をそれぞれが飛び出していくような勢いや無邪気さを持っていてほしい、というメッセージを込めました。
そして、グラフィックに写真、映像とそれぞれの面白さがあった今回の撮影・制作を通して、やっぱり私は作ることが好きだな、と改めて実感しました。これからも好きなことを極めていきたいと思います。
【プロフィール】
平田 正和(ひらた・まさかず)/フォトクリエイティブ事業本部 フォトグラファー
日髙 李衣子(ひだか・りえこ)/統合クリエイティブ事業本部 アートディレクター
山枝 裕介(やまえだ・ゆうすけ)/統合クリエイティブ事業本部 デザイナー