
「最近AIってよく聞くけど、みんな実際どう使ってるの?」
そんな疑問に答えるべく、制作の現場から
“AI沼”にどっぷり浸かっている4人のプロフェッショナルが登場!
イベントやキャンペーンの体験設計においてAIを駆使する、体験型プロモーションの専門組織「ウラワザ」に所属するエンジニア・武井と西田。そして映像制作の現場でAI活用に取り組んでいる映像プロデューサー・為広、CMディレクター・長塩。
まったく違うフィールドで活躍する4人が、AI活用のリアルを語り合います。
「え、そんな使い方があるの?」「それ、うちでもできそう!」
そんな掛け合いから生まれる、ちょっと意外で、じわじわくるAIトークをお届けします。
プロフィール

- 為広 晋吾
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デジタルスキルが強みなプロデューサー。「心を動かす生成AI」を目指して研究を重ねている。

- 長塩 希代
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AI映像表現で、アイデアをダイレクトに形にするCMディレクター。いろんなAIを触って知見をためつつ、日々トライ&エラーを楽しむ。

- 武井 亮
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統合クリエイティブ事業本部 ウラワザ
インタラクティブな体験や映像表現をつくるエンジニア。Vibe Codingで素早くプロトタイプを実装する。

- 西田 騎タ
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統合クリエイティブ事業本部 ウラワザ
さわって楽しい体験を設計する、インタラクション開発を得意とするエンジニア。AIを駆使し、アイデアを最速で具現化・改善する。
AI×エンジニアで広がる体験創出
長塩:ウラワザのお二人は、AIをどう使っているんですか?
西田:私たちが所属する「ウラワザ」は、デジタルエクスペリエンス領域に特化した体験型プロモーションを提案し、「これまでにない体験」を生み出す専門組織。私と武井さんはエンジニア職で、イベント会場などで来場者が体験できるインタラクティブコンテンツを多く手掛けています。センサーなどを組み込んだプログラムを構築していくのが主な役割です。
AIだけで完結できるプログラミングもありますが、リアルでの体験の実装は、センサーなどのハードも含めた複雑な調整が必要です。エンジニアは全体の構造を考えてAIに指示を出し、間違いがあれば指摘する、ディレクター(監督)的な立ち位置になってきています。
AI活用の大きなメリットは、より良い体験を追求できるようになったこと。UI上のちょっとした演出に迷ったとき、これまでだと時間がかかるからと躊躇する場面も、AIを活用し複数実装した上で最適なものを選べるようになりました。
また、これまで検索ではたどり着けなかった技術や機器の情報も、LLMで収集できるようになっています。
武井:さらに自分が得意としていなかったプログラミング言語も扱えるようになり、できることの幅が広がっている点も大きなメリットです。最近は、生成AIを使ったマッチング体験コンテンツを制作しました。店頭サイネージ上に表示される質問に答えていくと、自分に合ったキャラクターが紹介され、カードをもらえるという仕組みです。私たちはAIのプログラムや画面デザインなどの実装部分を担当しました。
長塩:人と人のマッチングなどにも活用できそうですね。制作期間はどのくらいだったのですか?
武井:制作時間が短く、1か月ほどです。偏りが出ないようアルゴリズムを設計し、AIにコーディングの指示を出したり、気持ちよく体験してもらえるようボタンのモーションを調整したりと、人の手も多く加わっています。
AIはあくまでも指示通りに動くだけなので、「何をどうつくるか」を整理して言語化する力が人間に求められているなと感じます。

フルAI映像制作に挑んで感じる、可能性と葛藤
為広:映像クリエイティブ事業本部はテレビCMなどの映像を制作しており、長塩さんがCMディレクター、私が映像プロデューサーです。企画やVコン(ビデオコンテ)などの提案段階では生成AIを積極的に活用していますが、納品物として使用する場合には、著作権などの権利関係のハードルが高く、慎重な対応が求められるのが現状です。
最近は、映画祭の応募に向けて全編AIの映像制作に挑戦しました。関西支社の竹本さんに声をかけてもらい、制作メンバー約10人で10分弱の動画をつくりました。
長塩:脚本は私のアイデアをAIで膨らませ、調整しました。その脚本をベースに職種に関係なく全員が各シーンを生成し、Adobe Fireflyのボード上でアイデアを出し合いました。素材管理やアイデアの集約など、進め方も含めて試行錯誤を重ねながら取り組みました。
脚本づくりから撮影、編集まで一人でいろいろな役割を担えるので、モチベーション高く映像づくりに取り組めるんです。
為広:ただ、映像を簡単に生成できるようになったとはいえ、誰もが良い映像をつくれるわけではないことを実感しています。個人が複数の役割を担える分、より深い知見や判断力が求められ、個人プレーの集合体のようになっているのが実情ですね。
なお、今回の制作では、生成された素材に対して人の目によるレビューを複数回実施し、著作権や使用許諾の観点から問題がないかを確認するプロセスも設けました。AIによる生成物であっても、倫理的・法的な観点からのチェックは欠かせないと考えています。
長塩:可能性が広がる一方、それが苦しさにつながるというのも率直な感想です。やりがいは大きいものの、生成も素材確認も沼のように終わりが見えず、業務の合間に着手しづらいジレンマもあります。
ですが、実際にやってみて初めて気付くことも多く、AIが急速に進化している今だからこそ、試行錯誤する価値があると思っています。
AIを活用し制作した映像作品
ツールの使い分けがカギを握るAI、どう選ぶ?
長塩:最近、GPT-5(ChatGPT)等が話題ですよね。みなさんはどう使いこなしていますか?
為広:画像・動画生成のプロンプト作成にChatGPTを使っています。5になってからは、解釈と言語化の精度が高くなり「何秒後に腕を何センチ上げる」など、細かく具体的な指示に落とし込んだプロンプトを生成できるようになりました。
また最近では、画像を読み込ませて「この2人が話している画をこのアングルで」のような、既存の素材を元にしたアウトプットができ、動画の一貫性を保てるツールも出てきています。
西田:私は画像生成にGeminiもよく使います。用意したイメージ写真を元に、狙い通りの自然な画像を生成してくれます。
使うツールを絞るというより、目的によって選んでいく使い方をしています。
長塩:いろいろ試してみることで、使い分けの感覚が身につきますよね。今後はその情報自体が価値となっていく気がします。

AI時代に求められる、人間の判断と手触り
西田: Vibe Coding(自然言語からコードを生成するワークフロー)が普及していますが、コードが完璧ではないことも多いため、それを修正する職種が新たに生まれているそうです。正常に作動しているように見えても、セキュリティ上重要な部分が抜け落ちていることがあり、確認をする側にも知見が求められます。
為広:映像でもAIに任せきりにはできない部分が多くありますね。例えば、2人が会話している映像において、位置関係を把握しやすくするための構図の原則「イマジナリーライン」を無視している生成AI動画をよく見かけますが、これは映像編集の基礎を理解していないとやってしまいがちですね。

長塩:明らかな矛盾があるのに、「それっぽさ」に惑わされて気付けないという事例が話題になっているのも目にしますね。生成物の矛盾や問題点を見抜く感覚が必要だと思います。
為広:一方、人の心を動かすためには、“手触り感”も大切ですよね。人が手を動かすことでつくったものは、伝わり方・受け取られ方が違うと思います。
長塩:クライアントへのプレゼンでも、手描きの企画のほうが思いが伝わる気がします。クライアントもAIである程度のものがつくれるようになっている分、人間らしい寄り添いやプラスアルファの驚きが求められていて、そこでカギとなるのがクラフト感かなと。
西田:自分で手を動かすことで、意図や背景を説明できることも大きいですね。「ここはどうしてこうなっているの?」と聞かれたときに、自分でいくつも試してみてこれが一番いいと思ったんです、と言えれば納得感がある。
武井:そうですよね。自分だけではつくれないようなものが偶然生成されたとき、皆さんはどうしていますか?ある程度ゴールを決め、つくって壊してを繰り返した上で生成されたものは、いいと思えば採用したいと個人的には思っているんですが、採用するかどうかの判断って難しいですよね。
長塩:偶然の産物って、リアルの撮影現場でもありますよね。カットがかかった直後のリラックスした表情が良くて、あえてそこを使うみたいな。
為広:その瞬間に、現場で新たな合意形成が生まれるんですよね。
自分なら、同じ方向を目指すチームやクライアントが納得するだろうなと思えるものであれば使う判断をすると思います。AIでの制作は、撮影現場のように関係者が揃うことは少なく、個人の作業による部分も大きくなる。その分合意形成が難しくなることを、映画祭に向けた映像制作の中で痛感しています。一人で納得できるものを出せばいいなら簡単だと思うんですが、みんなが納得いくものをつくるのも、いいものができたときの感動を分かち合うのもリアルに比べると難しいなと。
ウラワザのお二人の「これまでにない体験を生み出す」仕事にはどんな影響がありますか?
武井:そうですね。AIに作業を任せることで、「どんな体験ができるか?」という質の部分に時間がかけられるようになりました。感覚、体験には正解がないからこそ、そこを考えるのが私たち人間の役割です。
AIは新たな可能性への架け橋に
西田:将来的にAIには、コミュニケーションツールとしての役割を担ってほしいなと思っているんですよね。
制作の現場では、異なる職種間の連携も非常に重要。それぞれ専門用語が多い業界なので、AIが共通認識を持つのを手助けしてくれれば、連携が格段にスムーズになるはずです。
長塩:ぜひそのAIが欲しいです!相手の専門領域について明るくなくてもお互い話すことができれば可能性が一気に広がりますね。
為広:部門間のコミュニケーションに苦労する場面もあるので、ぜひ開発してほしいです!
武井:今はそれぞれが自分の領域で高みを目指して取り組んでいる段階ですが、目指すゴールは同じだと分かって安心しました。
長塩: AIを活用する人同士、同じ意識の高まりの中で仕事ができるのが楽しいです。さらなる高みを目指し、ぜひ一緒に新しいものをつくっていきましょう。すぐ連絡しますね!

