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模倣品対策ソリューション「du-al.io™」、NFT技術で企業と生活者の新たなエンゲージメントを創出


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近年、品質・耐久性に問題のある模倣・偽造品の氾濫が、企業と生活者の双方に深刻な影響を与えています。そのような課題に応えるために開発された次世代型の模倣品対策プラットフォーム「du-al.io™」。NFT技術とNFC技術を組み合わせることで、グッズなどの商品が本物であるかをリアルとデジタル双方で検証できます。ソリューションの詳しい開発背景から、ユーザー同士でのNFTの譲渡や交換によってもたらされるコミュニティ生成やロイヤルティ向上といった活用方法、今後の機能拡張の構想について、博報堂の伊藤佑介氏とプレミアム事業本部の岡本尚樹に話を聞きました。

 

 

広がる模倣品・偽造品被害への対策から生まれた新たなソリューション

 

ー「du-al.io™」を開発することになった背景を教えてください。

 

岡本:模倣品や偽造品の被害が広がっていることが背景にあります。模倣品や偽造品は被害の件数が増えることで販売機会の損失だけでなく、生活者に対するブランドイメージの毀損など深刻な悪影響があります。被害を受けている商品としては、プレミアム事業本部で普段関わっている高付加価値なグッズやファッションアクセサリー、アートやアパレルだけでなく、電子機器やアウトドア用品など、業種や商品を問わず多岐に渡ります。もっとシンプルに言えば、インターネットで「転売」が問題となっている人気商品は、ほぼ模倣や偽造のターゲットになり得ます。
そんな中、「BE@RBRICK(ベアブリック)」を製造している株式会社メディコム・トイ様に偽造品対策の新たなサービス開発の相談を受けたのが大きなきっかけでした。グッズの真贋を判定する方法には、これまでもホログラムや特殊な印刷、QRコードを用いたものなどがありました。しかし、これらの認証を突破しようとする偽装の手口は年々高度化し、新しい対策技術とのイタチごっこになっているのが実状です。
そこで、リアルとデジタルの双方で利用できる新たな認証方法としてNFTを活用できるのではないかと、博報堂の伊藤(佑介)さんに相談をしました。

 


岡本 尚樹
博報堂プロダクツ プレミアム事業本部 プロデュース部 部長 

 

 

ー岡本さんと伊藤さんはもともと面識があったのですか?

 

岡本:いえ、伊藤さんは以前よりコンテンツ領域のブロックチェーン活用の研究で活躍されていて、3年ほど前に参加したセミナーで伊藤さんの講演に感銘を受けたのが最初の出会いです。その後、NFTの可能性などについて意見交換していましたが、その時点ではプレミアム事業とは結び付けられませんでした。しかし、株式会社メディコム・トイ様から模倣品・偽造品対策のサービス開発について相談を受けた際に、伊藤さんに相談したらうまくいくのではないか?と直感的に閃きました。

 

伊藤:相談いただいた際はとても嬉しかったです。というのも、私は2016年からコンテンツ領域におけるブロックチェーン活用にフォーカスしてNFTの取り組みを行っていました。NFTを一言で説明すると、誰かが何かを所有していることを示す“保証書”のデータにしか過ぎず、NFTのデータそのものには価値はありません。それまでは、主にデジタルコンテンツの所有を示す“保証書”としてのNFTに取り組んできましたが、フィジカルなプロダクトの所有を示す“保証書”としてのNFTの取り組みに関わることはありませんでした。ですが、6年間さまざまなチャレンジをする中で、NFTをより多くの場面で活用させていくためには、デジタルコンテンツだけでは難しく、フィジカルなプロダクトとの連携が必要だと考えるようになりました。そんな中、プレミアム事業本部で普段からものづくりに取り組む岡本さんと再会し、私が取り組みたかったデジタルとフィジカルを連携させたNFTが生かせる相談をいただきました。「まさにこれだっ!!」と最高に興奮しました。

 


伊藤 佑介
博報堂 ビジネス開発局 ビジネスプロデューサー/
一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(略称:JCBI) 代表理事 

 

 

NFTで解決できる課題は真贋判定だけではない

 

ーどのような仕組みで「du-al.io™」は本物と偽物を判定しているのでしょうか。

 

岡本:たとえば、こちらのベアブリックには、内部にNFC(近距離無線通信)のタグが埋め込まれています。ここにはメーカーしか知り得ない固有の番号が埋め込まれていて、スマートフォンなどのNFCタグを読み取れるデバイスをかざすことで本物(正規品)かどうかの判定が行われます。この正規品の所有者の情報を管理するためにNFTの技術が用いられています。NFTを活用することで、正規品を移転する際、相手を指定して双方合意した後に、実際にモノからNFCを読込む事で移転が完了します。これにより、NFTとモノの所有が常に対になって移転される仕組み(特許出願中)を可能とします。

 

伊藤:よく誤解されますが、製品そのものの真贋を判定しているのはNFCであって、NFTではありません。NFCによって、正規品をもっているユーザーの所有情報を改ざんが不可能なブロックチェーン上に記録します。そして、自分がリアルな正規品を所有していることをデジタル上で証明できる「保証書」としてNFTが機能します。これにより、リアルとデジタルの2つの異なる世界(dual)を繋ぐことができるのです。

 

 

ーNFTが正規品のデジタル保証書となるということですが、アイテムの所有を確実に証明する以外の使い方も可能なのでしょうか。

 

岡本:du-al.io™では、この保証書としての機能を「ギャランティーカード」と呼んでいて、Webサービスから所有の情報を確認できます。先ほども説明したように、NFCタグを読み取ることで、別のユーザに対してグッズとともにギャランティーカード(NFT)を譲渡することが可能になります。
このように購入者に“本物(正規品)を確かに所有している”体験を提供することがもっとも重要な部分ですが、NFTだからこそ、更なる機能や体験を付加価値として提供できます。それは、異なる企業やサービスを横断してデータを活用する事ができるためです。具体的には、ギャランティーカード(NFT)を持っている方は、他社が運営するメタバースサービスとの連携や、限定のコンテンツ提供が可能となります。
また、今後の新機能では商品の購入数に応じてランキングを表示したり、自分が収集した商品をWebやメタバースの空間でコレクションとして見せることも可能になります。

 

 

ー企業と生活者とのエンゲージメントを高める効果が期待できますね。企業側にとってのメリットはほかにもありますか。

 

伊藤:ここまではユーザー側のメリットの話でしたが、企業側にとっても大きな利点があります。たとえば、ある限定商品が正規の一次流通市場にて10万円で販売された後、非正規の二次流通市場ではプレミア価値が付いて100万円で取引されているとします。これに対して現状、二次流通でどんなに高値で取引されたとしても、製造したメーカーはそれらの取引情報を把握することも、取引で自社商品を手にとってくれたユーザーと接点をもつことも、取引で生まれる収益を受け取ることもできません。しかし、du-al.io™を導入して、正規品であることを保証するギャランティーカード(NFT)を移転できる機能を提供することで、二次流通市場において、取引される商品が正規品であることを相互に確認するために、ユーザー間で商品と一緒にギャランティーカード(NFT)も移転されるようになると考えます。すると、さきほど挙げたメーカーが直面している二次流通における自社商品の取引に関するさまざまな課題を解決できるようになります。具体的には、NFTの移転履歴を利用すれば、二次流通市場における自社商品の取引状況が把握できるようになります。また、移転履歴から現在商品を所有しているユーザーが特定できるため、これまでメーカーが接点を持てなかった、二次流通市場で自社商品を購入した顧客に対して企業としてコミュニケーションチャネルを持つこともできます。そしてさらには、自社商品が二次流通市場で取引される際、ギャランティーカード(NFT)の移転に対して移転手数料を必要とすれば、取引利益の一部を得ることができます。つまり、CRM(顧客関係管理)の対象ターゲットを、正規店における一次流通市場の顧客に留まらず、二次流通市場の顧客にまで拡張できるようにすることこそが、du-al.io™が持つひとつの大きな可能性なのです。

 

ーdu-al.io™によって商品の真贋判定だけでなく、デジタル技術で顧客との新たな接点を結び直せることがわかってきました。

 


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du-al.io™が目指すものづくりのDX

 

ーdu-al.io™は、伊藤さんが代表理事を務めるJCBI(一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ)が支援するパブリックブロックチェーン「Sanpō-Blockchain(サンポー・ブロックチェーン)」上で開発されています。その理由や今後目指す方向性について教えてください。

 

伊藤:JCBIは、ブロックチェーン等の先端技術を基点として日本のコンテンツ業界のDXを業界横断で“共創”して加速するための企業連合です。2020年2月に7社で発足し、現在ではコンテンツ関連企業を中心に55社が加盟しています。一方で、Sanpō-Blockchainは、日本固有の“共創”の考え方である近江商人の「三方よし」を理念として掲げるコンテンツ領域に特化した日本発のパブリックブロックチェーンです。実際に、ガス代と呼ばれるブロックチェーンの利用手数料がなく無償で安心して利用でき“生活者にとってよし”、著作権などの権利や契約に関する情報がブロックチェーン上で安全に管理でき“権利者にとってよし”、膨大な電力を浪費して環境に負荷をかけるマイニングが不要で“社会にとってよし”、という特長を有しています。そのため、JCBIは、“共創”という考えを共にするSanpō-Blockchainを支援しています。また、JCBIとして取り組んでいる、日本のコンテンツを安心、安全にグローバルへ流通拡大するための環境整備においても、その基盤環境としてSanpō-Blockchainを採用しています。

 

岡本:誤解を恐れずに言えば、1つの企業だけで真贋判定や顧客情報を収集するのであれば自社でデータベースを構築するだけでよいので、ブロックチェーンは必須ではありません。しかし、将来的に企業同士の“共創“を視野に入れて進めていくのであれば、情報を勝手に改ざんできないブロックチェーンを使用することで相互の信用が保たれます。また、秘密鍵を利用することで個人情報の受け渡しをしなくても、各ユーザーが所有している商品の情報を企業間で相互に確認できるので、コラボレーションしやすくなるでしょう。

 

 

ー多くの企業が参加することで、du-al.io™自体の利用価値がさらに高まっていくのですね。すでにクライアント企業からの問い合わせも増えているのでしょうか。

 

岡本:2022年7月に発表したばかりですが、すでにいくつかの企業から問い合わせを頂いています。中には私たちが当初想定していなかった企業や業種からの相談もあり、ニーズの高まりとともに、私たちの取り組みが正しかったのだという手応えを感じています。

 

伊藤:ブロックチェーン技術はまだまだ黎明期で、正しい理解が進んでいないため、NFTと聞くとデジタルコンテンツの話というイメージを持たれる方も少なくありません。しかし、先ほども説明したとおり、NFTは単なる“保証書”のデータにすぎないため、そのデータ自体に価値はなく、NFTという“保証書”が所有を示すデジタルコンテンツやフィジカルなプロダクトそのものにこそ本当の価値があるのです。du-al.io™では、既に多くのファンを抱えて魅力的で素晴らしい価値あるフィジカルなプロダクトの“保証書”としてのNFTにフォーカスしました。なぜなら、確かな価値を創造しているフィジカルな“ものづくり”をしている企業こそが、NFTを活用した取り組みと相性が良いと思っているからです。そして、du-al.io™によって、そうした“ものづくり”企業とその商品を愛するファンを繋ぐだけに留まらず、NFTによって、ファンとファン、さらには企業と企業までをも繋ぎ、新たなコラボレーションを生み出す、そんなものづくり産業をアップデートするようなDXを実現できると信じていますし、それにチャレンジしていきたいと考えています。

 

 

 

【プロフィール】

伊藤 佑介
博報堂 ビジネス開発局 ビジネスプロデューサー/

一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(略称:JCBI)代表理事 

東京工業大学理学部情報科学卒業後、システムインテグレーション企業を経て、2008年博報堂に入社。2016年よりコンテンツ領域におけるブロックチェーン技術活用の研究を開始。2018年からはビジネス開発局にて7つのブロックチェーンサービスをさまざまなベンチャーとコラボレーションして開発。2020年にJCBIを発足して、代表理事として加盟するコンテンツ関連企業との共創によりブロックチェーン技術を基点としたオープンイノベーションを推進中。

 

岡本 尚樹
博報堂プロダクツ プレミアム事業本部 プロデュース部 
部長

2009年博報堂プロダクツ入社。プレミアム事業領域において、食品メーカー、自動車メーカー、通信関連企業など多数のクライアントを担当。現在はプレミアムプロデュース領域の責任者として、製品の企画段階から調達過程のトータルプロデュースを通じて新たなビジネス領域の開発に従事。

 

 

 

 

 

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