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【制作現場のAI活用術】AI沼にハマったクリエイターが語る「AIのクセと付き合い方」(映像プランナー/コピーライター×プロダクトデザイナー)

AI沼にハマったクリエイターが語る「実際使ってみてどう?」制作現場のAI活用術

 

「最近AIってよく聞くけど、みんな実際どう使ってるの?」

そんな疑問に答えるべく、制作の現場から
“AI沼”にどっぷり浸かっているふたりのプロフェッショナルが登場!

映像の世界でAIを活用する映像プランナー細野と、モノづくりの現場でAIを駆使するプロダクトデザイナー南山。
まったく違う領域で活躍するふたりが、AI活用のリアルを語り合います。

「え、そんな使い方があるの?」「それ、うちでもできそう!」
そんな掛け合いから生まれる、ちょっと意外で、じわじわくるAIトークをお届けします。

プロフィール

細野潤一のプロフィール写真
細野 潤一

「わかりにくい」を「わかりやすく」がモットーの映像プランナー/コピーライター。AIでシナリオ作成から動画生成まで、日々実験中。息を吐くようにAIを使う、AI大好きマン。

南山 直人のプロフィール写真
南山 直人

3Dモデリングや立体造形を得意とするプロダクトデザイナー。AIでプロダクトデザインのプロトタイプを爆速生成中。

制作現場でどう使ってる?AI活用のリアル 

細野:南山さん、さっそくですが普段の仕事でAIをどう使っていますか? 

 

南山:プロダクトデザインのプロトタイピングにAIを使っています。 
以前はラフスケッチを描いて、それをある程度議論・検証してからでないとCGに起こせなかったですが…今はスケッチとほぼ同時にAIでCGが出せます。とても効率的ですね。 

 

プロダクトデザインのプロトタイピングにおけるAI活用図。ラフスケッチからCGが作成される様子

社内検証の一例

 

細野:それって、ある程度イメージがあってアウトプットさせてますか?それとも、コンセプトが先にあって、形状をAIに任せていますか? 

 

南山:両方ですが、最近は前者にトライしています。コンセプトやスケッチを自分で描いて、それをAIにレンダリングさせています。 CG化のハードルが下がったことで、ブレストの場でも成立するクオリティが出せるようになりました。 

 

細野:制作フローの中に組み込まれているんですね。 

 

南山:そうですね。制作フローが変わったことで、「考える→形にする→伝える」一連の流れの中で、チーム内の共通理解が深まりやすくなりました。AIでスケッチからCG化まで一気に進められるようになったことで、「とりあえず形にしてみる」がすぐできるようになって、アイデアの幅も広がっています。ブレストの場でもその場で見せられるので、話が早いし、議論も盛り上がります。

 

AIでスケッチからCG化まで一気に進められるようになったフロー図

 

細野:僕は映像制作の現場で、シナリオ作成から動画生成までAIを使ってます。コンセプトだけが先にあって、形がわからないときにAIに投げてみると、思いもよらないアウトプットが返ってくる。自分の中の“わからない”を形にしてくれるのがAIの面白さですね。 

 

南山:わかる。僕も例えば「炭酸のはじける刺激」や「冬朝の冷たい空気感」みたいなコンセプトをAIと追求していったら、思いがけない形状が出てきました。人間じゃ思いつかないこうした発想が出てくるのも面白さのひとつです。 

AIに振り回される日々!? ふたりの“あるある”実録 

細野:映像領域のAI進化って、本当に早いんですよ。今話していることが、数か月後、いや数週間後にはもう古くなっていることも珍しくない。だから、使い方も常にアップデートしていかないといけない。 

 

AIを活用する細野さんの最近の出来事。AIの最新情報をまとめようと意気込み長い時間をかけ完成したが、直後「AIのアップデート」のニュースが入り、意気消沈する様子が3コマ漫画風に描かれている。

 

南山:プロダクト領域でも同じです。ツールのアップデートも早いし、何を使えばいいかっていう“正解”がない。結局、組み合わせですよね。 

 

細野:「とりあえず何を使えばいい?」って聞かれることもあるけど、正直困りますよね(笑)。AIってそれぞれ特性があるので、用途に応じて選ぶ必要がある。映像制作では大量のクレジット(生成回数)を使うので、いかにそのクレジットを有効に使うかも考えています。 

 

だからこそ、チーム内での役割分担と情報共有が大事です。僕はAdobe Fireflyボードで、生成した素材やプロンプトを共有しています。ここに動画も貼って、Vコン(ビデオコンテ)にしちゃう。そうすると、誰が何をどう使っているかが見える化されて、チーム全体の理解が深まるんですよ。 

 

生成した素材やプロンプトをAdobe Fireflyボードを活用し共有

 

南山:いいですね!僕も使ってみたいと思います! 

 

細野:ただ、どれだけ丁寧に作っても、情報はすぐ古くなる。みんな最新のツールに飛びつくけど、使ってみたら「万能じゃないな」って気づくことも多い。だからこそ、「このAIは何が得意で、何が苦手か」を把握することが大切だと日々思っています。 

AIは誤読する? ―AIの苦手例 

南山:AIって便利なんですけど、クセが強いというか…ちょっと扱いづらいところもありませんか?たとえばPDFをそのまま読み込ませると、順番がバラバラになったりして、「え、そこから読むの?」ってなることがよくあります。 

 

細野:それ、まさにAIの“読み方”のクセなんですよ。AIって、人間が「見やすい」と思っているレイアウトを、逆に「読みにくい」と感じることがあるんです。たとえば雑誌のようなデザイン性の高いレイアウトは、見出しや写真、キャプションが散らばっていて、情報の順序が視覚的に整理されていますよね。でもAIは“チャンク”という意味のまとまりで情報を処理するので、部分部分では読めていても、文脈や順番が抜け落ちてしまうんです。 

 

人間の目だと「ここは副次的な情報だな」とか「これは見出しだな」と自然に判断できる。でもAIにはそれが難しい。だから、読み込ませる前に“AIが読みやすい形”に整理してあげる必要があります。 

 

僕は最近、別のAIツールを使ってPDFをマークダウン形式に変換してから読み込ませるようにしています。これだけで精度が全然違うんですよ。構造化された情報には強いけど、レイアウトやデザインの“ニュアンス”にはまだ弱い。だからこそ、前処理ってすごく大事です。 

 

「AIは印刷物のようなレイアウトから文字情報を読み取るのが苦手」というテキストの下に雑誌の誌面レイアウトを表した図が掲載。下部に「AIにとって読み取りやすいデータ形式に整理する」とテキストで記載。

 

細野:こうしたAIの特性を知らずに「使えないな」と離脱しちゃうのは、すごくもったいない。ちゃんと理解していないと、うまく使えなかったり、トンチンカンな使い方になってしまう。AIは“意味”を理解しているわけではなくて、言葉と言葉の“つながり”を学習しているだけなので、そこを踏まえて付き合う必要があります。 

 

南山:僕も、できないことをあいまいに終わらせていた時期がありました。「まあ、AIだし」って。でも、目先の使い勝手はどんどん更新されていくけど、こうしたAIの本質って、意外と変わらないんですよね。 

 

細野:AIが自信満々に間違えてくるのも、実は“自信を持って言った方が人間に好印象を与える”っていう学習結果の表れだったりします。だから、堂々と間違える。 

 

南山:僕らのせいなんですね(笑)。でも、そういう特性を理解していくと、AIとの付き合い方がだんだん見えてくる。気づいたら、さらに深いAI沼にハマっているんですよね。 

AIと人間の役割分担:どこまで任せる?どこを担う? 

南山:アイデア出し→スケッチ→CG→(時には)動画化っていう流れの中で、AIを“途中参加”させています。全部任せるんじゃなくて、途中で「ちょっと手伝って」って感じ。細野さんはどうですか? 

 

細野:僕もシナリオの要点は自分で作り、大枠をAIに任せて自分で調整しながら作ります。いろんなところにAIを入れていますが状況によって使えるタイミングが異なるので臨機応変に。複数のAIにやらせていいとこ取りみたいなこともよくやります。自分のあまり得意ではない演出のアイデア出しでは重宝しますよ。 

 

南山:僕は話すのが苦手なので、プレゼンはAIに任せちゃってもいいかなって思っています。伝えたいことをAIに託して、自分は自分の強みに集中する。そういう分担ができるのはありがたいです。 

 

細野:AIって、最近は絵具みたいな存在になってきている気がします。色を混ぜたり、描き方を変えたりするように、ツールや使い方をクリエイター自身の判断で組み合わせていくことで、表現の幅がどんどん広がる。たくさんの絵具を持っているほど、描ける世界も広がるし、使い手によってまったく違う表現になる側面も面白いところです。

だからこそ“掛け合い”が大事。積み上げていく行為そのものが、すごくクリエイティブだと思うんです。 

 

AI沼にハマって気づいた、クリエイターとして大切なこと 

南山:画像生成を繰り返していると、だんだん均一化されて、無個性になっていくことがある。つい「いいものができた」と思ってしまうんですけど、そこで満足しちゃうと危ない。だからこそ、アウトプットへの審美眼がますます重要になってきていると感じます。 

 

プロダクトデザイナーとして、「クライアントの課題を解決しているか」「生活者への価値をつくっているか」は常に考えるようにしています。AIが出してきたものを、安心してそのまま採用するんじゃなくて、「これは本当に意味があるの?」と、いったん立ち止まって問い直すことが、AIと共創する上での心構えだと思います。 

 

細野:僕は言語と感覚の両方を意識しています。LLM(大規模言語モデル)の部分はどんどん改善されていくけど、触り心地とか手触りみたいな“感覚的な判断”は、やっぱり人間の領域だなと。 

 

南山:完成品までAIが作れる未来は、そう遠くないかもしれません。でも、ディレクションや機能美、手触りでジャッジするところに、僕たちクリエイターの生き残る術があると思っています。 

 

細野:「AIはこれやりたいって言わない」。だからこそ、「これやりたい」って言える人間の存在が、これからもっと重要になる。わがままに「自分はこれがやりたい!」って言える人が、AI時代のクリエイティブを引っ張っていくんじゃないかな。 

 

南山:世の中の課題を見つけるところから始めるのも、人間の仕事ですよね。そこがAIにはまだ難しい。 

 

細野:もっとわがままな人同士の戦いになってもいいと思うんです。「自分はこれをやりたいけど、どう?」って言い合えるような。そういう熱量が、AIとの掛け合いを面白くする。 

 

南山:チームのアサインも変わってきそうですよね。誰がどんな“我”を持っているかで、AIとの組み合わせ方も変わってきそうですね。 

 

細野:「自我をどう通すか」。それが、これからのクリエイティブの軸になる気がします。 

 

南山:アウトプットの均一化はクライアントにも伝わります。だからこそ、どこで“突き抜けた我”を出すかが大事。AIツールを使うだけではなく、自分の視点やこだわりをどう乗せるか、ですね。 

 

細野:AIが入ることで、クリエイティブは確実に面白くなっていると思います。「こういうことだったらできるじゃん」って積み上げていく行為って、すごくクリエイティブだし、すごく人間的。だからこそ、ひたすら使ってみる。そういう領域でも考えていく。この沼からは、もう逃げられないですね…。 

 

細野と南山の2名がAIについて対談している様子の写真

おわりに:AIと人間の掛け合いが生む未来 

AIは、使い方次第で人間の創造力をぐっと広げてくれる存在。広がった領域の真ん中に何を置くか―それが、これからのAI時代のクリエイティブの面白さかもしれません。 

 

人間とAIの掛け合いの続きが気になる方は、細野さんのnoteマガジンもぜひのぞいてみてください。

対談では語りきれなかった、”AI沼”な日々を紹介していきます!

 

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