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カメラ映像とAIでイベントを分析するソリューション「イベスコ」が本格稼働をスタート

 

これまで展示会などのリアルイベントでは、来場者の反応などを感覚的にしか捉えることができませんでした。この課題を解決するために、イベント会場で撮影した映像データをAIで分析し、イベントの効果測定と来場者の関心度を計測できる「イベスコ」が博報堂プロダクツより提供開始されました。リアルイベントの実施設計と効果分析にどのような効果をもたらすのかイベント・スペースプロモーション事業本部のメンバーに話を聞きました。

 

左から

岡島 和毅 イベント・スペースプロモーション事業本部

細貝 悠佳 海外事業推進室 兼 データビジネスデザイン事業本部

中田 直志 イベント・スペースプロモーション事業本部

磯村 紀久子 イベント・スペースプロモーション事業本部

 

 

イベントの効果をカメラ映像とAI解析で数値化する

 

──「イベスコ」とは、どのようなソリューションなのでしょうか。

 

岡島

イベスコは展示会のブースなどにカメラを設置して、来場者数やその属性、滞在時間に基づく関心度などをAIで計測・分析できるソリューションです。これまでのリアルイベントでは担当者が手動で来場者数をカウントしたり、リーフレットの配布数によって効果測定をしたりしていましたが、「イベスコ」を導入することでより正確で定量的なデータを得られ、過去のイベントとの比較や今後の改善点を見つけるために役立てられます。

 

 

──開発のきっかけとなった出来事などはあるのでしょうか。

 

岡島

もともと店舗内の防犯カメラを利用して人流の解析ができるソリューションがあり、これを参考にして展示会などリアルイベントでも活用できないかという発想で2021年頃から開発が始まりました。

 

──その頃はコロナ禍により展示会が中止になったり、オンラインイベントへ移行したりする動きもありましたが、そうした時代背景も影響していますか。

 

岡島

オンラインのイベントが増えたことで、視聴者数など定量的なデータからイベントを分析できるメリットが広く認識されるようになりました。最近は、再びリアルイベントに賑わいが戻りつつありますが、リアルイベントでも定量的なデータを取得できれば、今後のイベントをより良くするために活用し新たな価値の発見が出来るのではないか?という視点も、開発に至った背景の1つです。

 

イベント・スペースプロモーション事業本部 岡島 和毅

 

──映像のデータ解析にAIを用いているということですが、どのような仕組みなのでしょうか。

 

細貝

イベスコはブース内のカメラで撮影された映像をクラウド録画するセーフィー社のサービスと、映像データをAI解析するベトナムのPalexy社のシステムが用いられています。また、解析の結果はDSQUARE社が制作するダッシュボード画面に、視覚的に把握しやすいグラフで表示しています。

 

 

──分析に使用しているAIにほかには無い特長があるとお聞きしました。

 

細貝

やはりAI解析の部分が優れていて、各カメラの映像を横断してブース内の回遊行動を記録できる点が特長と考えています。イベント会場の図面データと照らし合わせることで導線がどのようになっているかわかるので、ブース設計を改善することにもつながります。

 

海外事業推進室 兼 データビジネスデザイン事業本部 細貝 悠佳

──イベントの出展社としてはカメラの設置をするだけでよいのでしょうか。

 

岡島

出展社の方は、カメラを設置するだけで利用可能です。また監視カメラの設置ガイドラインに基づいて撮影の案内パネルを掲出します。あとは出展社側で必要な工程はなく、イベント準備時にカメラを複数台設置してブース内のエリアごとにカメラで撮影した映像をAI解析します。約2週間でイベント来場者のデータを数値化してご報告することが出来ます。

 

 

──プライバシー面も十分に守られているのですね。

 

中田

撮影データはクラウドに即時アップロードされるので、イベントの会場内で個人情報の取り扱いは行われません。また、行動データの分析結果は目的外利用をせず2週間で破棄されて、統計情報の数値のみお客様に提供されます。イベスコ利用者側が映像データを保管する必要がないので、プライバシー保護の観点でも安心して導入いただけます。

 

イベント・スペースプロモーション事業本部 中田 直志

 

 

 

AI解析で見えてくるイベントのリアル

 

 

──ブース内の動画をAI解析することで、具体的にはどのようなデータを知ることができますか。

 

細貝

来場者数に加え、映像の顔認識によって性別や年代といった属性が自動的に収集できます。また、ブースへの滞在時間やどのエリアに立ち寄ったのかという細かな計測も可能で、時間帯ごとの変化も含めてさまざまな指標でイベントの成果を測定できます。また、オプションとして説明スタッフによる接客率なども測定できます。

 

磯村

イベントの形態にもよりますが、例えば商品の前でじっくりと眺めていたのか、一目見て通り過ぎたのかによって関心の度合いは異なります。イベント運営を支援する私たちが現場で感じた印象がデータで裏付けられるようになることで、イベント自体の改善のご提案も自信を持って行えるメリットも感じています。

 

イベント・スペースプロモーション事業本部 磯村 紀久子

 

 

──すでにリアルイベント会場での実験なども行われたのでしょうか。

 

岡島

イベスコ開発のために、2年ほど前から試験的に展示会で導入し、昨年から本格導入を開始しているクライアント様もいます。食品関係のイベントでは、試食コーナーなどがありますが、どの年代の来場者がどの時間帯に何のコーナーで試食したかといったデータなどが集計でき、次年度に向けたレイアウトの改善ポイントと合わせて実施終了後に分析結果をご報告させていただいております。

 

 

──展示会イベント以外にも利用できるのでしょうか。

 

岡島

駅前やショッピングモールなどもイベントスペースで行われる体験型イベントや期間限定のポップアップストアなどでもお使いいただけます。不特定多数の方が来場するイベントでは来場者数や年齢層など属性ごとの行動を数値化して、結果を報告できるというのは、リアルイベントを実施運営する側にとって大きなメリットとなると思います。

 

 

──データによる解析でこれまでの現場の肌感覚での評価との違いが見えてくることはありますか。

 

中田

実際にイベントの現場に立っていた人からの報告と大きく乖離することはありませんが、その場にいなかった他のメンバーもデータを見ることでイベントがどのような状況であったのかを正確に把握できるようになりました。データの測定を開始する前と後ではイベントの様子を共有できる人の数が大きく違っていて、例えば異なるイベントやクライアントに対しても過去のデータから類似した成功事例を参考にご提案できるなど、知見の蓄積と共有がスムーズになっていくと考えられます。

 

 

イベスコプロジェクトメンバー

前列左から 磯村 紀久子、岡島 和毅 、細貝 悠佳、中田 直志 

後列左から 岡崎 龍世、山田 勉 、西尾 優俊  



イベスコが変えるリアルイベントの未来



──これから本格的に展開されるイベスコですが、今後どのようにしていきたいかなどのビジョンはありますか?

 

細貝

これまでリアルイベントはミスなく終わらせることが重要な目的の1つとされてきましたが、ここにオンラインイベントと同じく数値/指標で評価するという共通の基盤が入ることで、博報堂プロダクツの強みである各事業本部による連携がイベントの領域でも深まると思っており、データをどのように活用してクライアント様に価値を提供していくかという考え方が加速すると考えています。また、将来的な話では活用までの時間差をできるだけ短縮していけたらよいと思っていて、理想としてはリアルタイムでイベントを改善できる方向に向かっていければとイメージしています。

 

磯村

イベントプロデューサーの視点からすると、イベントが大きくなればなるほど全体を俯瞰して把握するのが難しいという課題がありましたが、イベスコという新たな視点が加わったことで全体像を正しくデータとして把握できるようになりました。これはベテラン担当者の知見を蓄積できるということでもあり、若手でもデータを活用しながらクライアントの課題解決に貢献できるイベント設計をご提案できるようになっていくと考えています。その意味でも、イベスコを使って継続的にデータを蓄積いただくことは私たちにとってもお客様にとっても大きな成果をもたらすと期待しています。

 

岡島

映像のAI解析でこれまで見ることができなかった多くのデータを取れることになりましたが、分析したデータをそのままご報告することが私たちプロデューサーの仕事ではありません。クライアント様ごとに異なる課題に対してデータを使用しながらどのような改善案を導き出しご提案できるか、そして次のイベントにどのように繋げていくのかが重要だと考えています。イベスコはイベントに携わる方々とともにより良いイベントを創り上げていくツールになると思っています。

 

 

■プロフィール

 

岡島 和毅 イベント・スペースプロモーション事業本部

2015年博報堂プロダクツ入社。国内大規模展示会や全国行脚のプロモーションイベント、IT系企業のプライベートカンファレンスイベントなど、分野に関わらず幅広い領域のイベントをプロデューサー/営業担当として実施。

イベントDXチームを兼務し、イベントDXの取り組みとしてイベスコの開発プロジェクトを始動。

 

細貝 悠佳 海外事業推進室 兼 データビジネスデザイン事業本部

2015年博報堂プロダクツ入社。データを活用し、顧客データ統合分析業務やメディア戦略構築支援などを担当。2018年よりベトナム子会社であるスクエアコミュニケーションズに出向し、日越のデータビジネスを推進しながら、データ利活用型のソリューション開発・導入支援にも従事し、岡島とともにイベスコの開発プロジェクトを始動。

 

磯村 紀久子 イベント・スペースプロモーション事業本部

放送業界での勤務を経て、2017年博報堂プロダクツ入社。BtoC領域を中心に、大規模展示会や街頭イベントなど規模や分野を問わず幅広く担当。

 

中田 直志 イベント・スペースプロモーション事業本部

2019年博報堂プロダクツ入社。BtoC領域を中心に担当。イベントDXチームを兼務し、イベスコ開発プロジェクトを推進。

 

 

 

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