データを活かした店頭戦略で売上をアップする ―ラウンダーが担う重要な役割

f:id:hpr_saito:20211216210702j:plain

 

博報堂プロダクツで今年「営業・販売支援人材サービス」の専門チームが立ち上がりました。クライアントの事業の最大化を目指して、広告などのプロモーション施策と店頭を連動させた戦略づくりから実行までを行い、販売現場の人材や売り場の強化を支援しています。同サービスを担う博報堂プロダクツの田辺洋一、岸部純也と、博報堂でビジネス開発を行う栗原が、店頭の売上向上のポイント、特に売上を左右する「ラウンダー」という仕事の内容やその重要性、そしてグループで連携することで発揮できる強み・価値について語り合いました。

 

田辺 洋一 株式会社博報堂プロダクツ プロモーションプロデュース事業本部
栗原 清 博報堂 ビジネス開発局 GM
岸部 純也 株式会社博報堂プロダクツ リテールプロモーション事業本部

 

 

プロモーション施策と連動した売り場をつくる

栗原

博報堂プロダクツで「営業・販売支援人材サービス」の専門チームが立ち上がりました。所属する田辺さんは前職でBTL(Below the Line:セールスプロモーション施策)領域の広告制作プロダクションを、そして岸部さんはラウンダーの専門会社を経験されていて、お二人のこれまでの経験や知見が販売の現場に活かされていると思うのですが、どんな背景でこのチームが立ち上がり、どのようなサービスを提供されているのですか。

 

田辺

コロナ禍もありECサイトを利用する人は増加していますが、直接商品を見て購入したい、説明を聞きながら選びたいというニーズがなくなるわけではなく、むしろリアル店舗もお客さまと直接接点が持てる場として重要性が増しています。博報堂プロダクツでは以前より、店舗のプロモーションやラウンダーのサポートを行ってきましたが、プロモーション施策とラウンダーの活動を連動させ、売り場の支援をさらに強化していくべく、私の所属するプロモーションプロデュース事業本部の「HR(Human Resource:人材)チーム」と、岸部の所属するリテールプロモーション事業本部の「ラウンダーチーム」が手を組んで立ち上がりました。

 

岸部

ラウンダーとは、自社商品の売上を上げるために営業担当者に代わってスーパーやドラッグストアといった小売店を回り、メーカーや卸と小売本部が合意した売り方や売り場づくりを具現化する役割を担っています。小売本部は新商品販売開始の指示を出しているけれど、店舗では場所などの都合もあり、展開時期の足並みがそろわないといったことも多いのですが、そんな時にラウンダーが店舗に出向き、「これを今売れば店舗の売上アップにもつながりますよ」「この売り場をこう変えると、商品の魅力を効果的にアピールできます」と提案しながら、メーカーと小売本部の意向を現場に反映させていきます。

 

小売は、本部の決定事項を徹底する企業から、個店ごとに売り場をつくる裁量を与えている企業までさまざまですので、小売企業や店舗の特徴に合わせて接し方や情報の伝え方を変えていかなくてはいけません。我々のチームでは、メーカーの課題や各小売店舗の状況に応じて、ラウンダーの動き方や交渉方法などの戦略づくりから人材のトレーニング、またラウンダー人材の派遣まで細かく対応しています。

 

田辺

今回チームが組成されたことで、プロモーション施策と、より売り場に近いラウンダー戦略を組み合わせた提案がしやすくなり、広告やプロモーションと同じくらい、ラウンダーという存在が売上向上において重要であることを多くのクライアントに認識していただけるようになりました。それにより、これまでラウンダーを導入していなかったメーカーから相談を受けるようになったりと、提案件数が増えてきています。

 

f:id:hpr_saito:20211216211112j:plain



グループで連携し、川上から川下までを支援

栗原

ラウンダーは、すでに自社で抱えていたり、外部委託していたりと、メーカー独自のやり方が決まっているケースが多いと思うのですが、博報堂グループで支援する意義や価値はどこにあると思われますか。

 

岸部

私たちが提供できる価値は大きく二つあると思っています。

一つは、データに基づいて戦略的・戦術的なラウンダー活動を設計することです。各店舗の売上や顧客の購買行動・属性といった店頭のデータに、博報堂グループが有するさまざまな生活者データ、そして全体のマーケティング戦略を掛け合わせて、「この時期のこのエリアでは、こういう広告が出稿されるので、生活者はこんな購買行動をとるだろう」と細分化して分析し、それをもとに最適なラウンダー戦略を立て、予測される生活者の購買行動に沿った売り場を実現します。

 

もう一つは、スキルのあるラウンダー人材を派遣できること。メーカーだけでは十分な人的リソースをまかなえない場合があります。例えばドラッグストアだけでも全国に1万5000店舗以上あるので、メーカーがキャンペーンを仕掛けたいときに、全店舗に自社のスタッフが足を運んで折衝できるかといえばかなり難しい。そこでグループの知見やデータ分析をもとにラウンダーが巡回すべき店舗やルートを設計し、活動内容に沿ったトレーニングを受けた人材を派遣することで、カバーできる範囲を広げることができます。

 

栗原

グループ内で領域を越境することで、得意先の課題に合わせて細やかに、かつ幅広く対応できるようになるんですね。

 

岸部

はい。これまで博報堂グループは、マーケティング・プロモーションの領域で価値を発揮できていても、最終的な購買の部分まで設計できていたかというとなかなかそこまではできていなかったと思います。広告などプロモーション施策に加えて、実際の売上に直接関わる店頭戦略までコミットできるのが我々のチームの強みです。

 

栗原

ラウンダー人材の派遣も行っていらっしゃいますが、どのように集めて派遣されているのですか。

 

岸部

営業・販売支援を行う当グループのセレブリックスと連携して行っています。セレブリックスは営業代行や営業コンサルティングのほか、営業・販売人材の教育・派遣にも強みを持ち、スキルのあるラウンダー人材を多く有しています。営業折衝や販売スキルについて体系化された研修プログラムも用意していて、人材の強化に取り組んでいます。ラウンダーは属人的になりがちですが、しっかりと育成されたメンバーが活動しておりとても心強いです。

 

f:id:hpr_saito:20211216211222j:plain

 

栗原

博報堂プロダクツ、博報堂、セレブリックスが連携することでどんな強みが発揮できると思われますか。

 

岸部

先ほどの繰り返しになりますが、クライアントのブランド戦略・マーケティング戦略構築といった川上から、購買に直接かかわる店頭戦略など川下の活動の実行にいたるまでをワンストップで支援できることです。

博報堂がどんなブランド戦略・マーケティング戦略を構築し、どんな広告プラニングを立てているかを把握した上で、博報堂プロダクツが収集したデータを分析し、それらをもとに最適な売り場やPOPなどの販売施策を検討する。そしてセレブリックスが、戦略・施策・データ分析の内容を踏まえて注力すべきエリアや、配置するラウンダーの人数などを具体的に決めていきます。まさに川上から川下までをグループで連携して行えることが最大の強みだと思います。

 

 

売り場の情報をヒントに、逆上がりして戦略づくりに活かす

栗原

博報堂グループだからこそできた提案、それによって購買シーンが変わった事例があれば教えていただけますか。

 

岸部

例えばメーカーがキャンペーンを実施する際、営業担当者は小売本部に「キャンペーン期間中にこのようなターゲット層に対してバナー広告が展開され、来店客の増加がこれだけ見込めるので、この商品をこれだけ入れさせてください」などと交渉します。ただ、キャンペーンや広告の意図といった情報はラウンダーに正しくおりてこないことが多いので、個店に対して適切なタイミングで最適な売り場づくりを提案することができないんです。

 

私が担当する消費財メーカーでは、博報堂グループでデジタル広告も支援しているので、バナー広告がいつどんなターゲットに対して展開されるのかといった情報を共有できる。それによって、どの店舗でいつどのくらいの集客が見込めるかを予測できるので、それをラウンダーに共有し、彼らの商談に活かすことができます。実際に、「この商品を買いに、この期間は普段と違う年齢層のお客さまが来店することが予想されます」と店舗に提案し、優位な売り場を獲得したところ、提案が成功した店舗は期間中の売上が140%まで上がり、提案できなかった店舗と大きな開きが出たという例があります。

 

栗原

売り場のつくり方で、それほど売上が変わってくるんですね!

 

f:id:hpr_saito:20211216211315j:plain

 

田辺

そうなんです。メーカーの方から「広告が売上につながっていないのだが、ターゲットにリーチしていないのではないか」という声をいただくこともあるのですが、よく調べていくと、広告は認知されているけれど、売り場ができていないことが原因の一つだったということもあります。こうしたことは、グループ内でマーケティング戦略から店頭戦略までワンストップで支援することでわかることでもあります。

 

栗原

売り場から逆上がりして効果を検証していくというのは、新しい視点ですね。マーケティング戦略を店頭に反映させるだけではなく、店頭のリアルな情報をヒントに「本部とこのように交渉しましょう」「全体のマーケティング戦略はこうしましょう」と提案できるということですよね。タッチポイントが増えれば、売上向上のためのヒントをより得られることになり、そうするとグループとしてさらに価値を発揮できるようになると期待します。

最後に、お二人の今後の展望を教えてください。

 

田辺

コロナ禍前のレベルまで客足が戻るのは2023年以降になるだろうとも言われていますが、お客さまが一度離脱してしまうと、そのブランドや商品に戻ってきてもらうことは難しくなるので、今だからこそ店頭での接点がとても重要になっています。そのためラウンダーの重要性も増していますが、クライアントは、営業代行ができるほどの高い専門性は求めないけれど、一時的な応援スタッフの派遣では物足りないと、ちょうどその間くらいの人材を求めるケースが増えていると感じています。そういったニーズに柔軟に応えられるよう、よりよい人材の量と質を担保していかなければいけないと思っています。

 

高いスキルはあるけれど、フルタイムで働くことは難しいという方もたくさんいらっしゃいますので、時間とスキルをフレキシブルに組み合わせて、「1人が終日対応するのは難しいけれど、3人で時間を分けて対応します」という動き方ができれば、より支援の幅が広がってきます。「人材がいないのでできない」というチャンスロスを少なくして、クライアントの突然のご相談にも、一定レベルのスキルを持った人材で対応できるような体制を作っていきたいですね。

 

岸部

マーケティング戦略と店頭での販売戦略をつなげた成功事例はまだ多くはないのですが、逆に言えば、我々の価値が出せる余地がまだたくさんあるとも考えています。

川上から川下まで支援する際には、クライアントの縦割り組織が障壁となることも多いのですが、その点においても、数多くのクライアントで多様な部署の方々を巻き込んでプロジェクトを推進してきた博報堂グループの知見と経験が活きてきます。グループのアセットを活用して、ワンストップでクライアントの売上向上に貢献できる例をもっと作っていきたいと思っています。

 

栗原

テレビ広告やデジタル広告だけでは生活者が実際に商品を買ったり、サービスを体験したりするところまで全てをサポートすることはできませんが、これからは広告で体験価値を訴求した後、実際に体験してもらうところまで支援していかれるようになっていけば、我々の大きな提供価値となりますね。

売り場から得たヒントを、逆上がりしてマーケティング戦略に落とし込んでいくという新たな視点も強みにしながら、博報堂プロダクツやセリブリックスをはじめグループ全体で川上から川下まで支援していく体制を強化して、クライアントのパートナーとして実績を積み重ねていきたいですね。

 

f:id:hpr_torihara:20211217121112j:plain

 

 

f:id:hpr_torihara:20211217120705p:plain

田辺 洋一(たなべ・よういち)
株式会社博報堂プロダクツ プロモーションプロデュース事業本部

2007年に株式会社博報堂プロダクツ入社。通信会社、プラットフォーマー等のHR領域を担当。現在はプロモーションプロデュース事業七部部長 兼HR業務部 担当部長として従事。

 

 

f:id:hpr_torihara:20211217120654p:plain

岸部 純也(きしべ・すみや)
株式会社博報堂プロダクツ リテールプロモーション事業本部

2015年に株式会社博報堂プロダクツ入社。日用雑貨、食品メーカーなどのラウンダー・店頭プロモーション領域を担当。グループ会社であるセレブリックスへの出向を経て、現在はリテールプロモーション事業本部にてラウンダー領域の担当チームリーダーとして従事。

 

f:id:hpr_torihara:20211217120531p:plain

栗原 清(くりはら・きよし)
博報堂 ビジネス開発局 GM

2006年に株式会社博報堂入社。営業にて大手クライアントを複数担当した後に、ビジネススクールを修了。その後、博報堂DYグループの社内ベンチャーへの出向を経て、現職。
現在は博報堂ビジネス開発局のGMとして、博報堂グループの広告以外のビジネス領域への拡張に従事。

 

 

 

博報堂WEBマガジンThe Central Dot magazineより転載