2021年3月、博報堂プロダクツはデータブリッジ社と資本業務提携を行いました。
2022年に予定されている個人情報保護法の改正により、これまでのCookieベースのデータマネジメントは大きく見直され、マーケティングにおけるデータの価値も様変わりしていきます。
その大きな時代の変化を見据えた、データ利活用の新たな取り組みの展望を、両社幹部の対談を通じてご紹介していきます。
写真左から:博報堂プロダクツ 取締役常務執行役員 佐藤 雄三氏、代表取締役社長 岸 直彦氏
取締役常務執行役員 平田 智氏、執行役員データビジネスデザイン事業本部長 菊地 友幸氏(術後療養のためリモート参加)
データブリッジ社 取締役 板垣 貴聡氏、代表取締役社長 瀧山 孝平氏
■全ての事業をデータで繋ぎ、業界のフラッグシップとなっていく
岸 直彦氏
岸:コロナ禍で、マーケティング分野におけるDXへの対応は一気に加速しました。今後、さらにその流れは常態化していくでしょう。中でもデータの利活用の巧拙が成功のカギを握る、と言っても過言ではありません。
そのために専門人材の確保が不可欠なのですが、現時点、弊社において必要十分な体制は整っていますが、これからの成長を見据えていくと、まだまだ十分とは言えません。
進化・発展するマーケティングDXに対して、どのように体制を整えていくか、というのが喫緊の課題でした。
そうした中、データブリッジと連携によって、その課題に一気にチャレンジできる、という高い期待を持つことができました。
プロダクツにはリテールやEC、イベントなどの専門領域に対応する、12の事業本部やグループ会社があるのですが、それぞれが取り組む様々なデータが統合されていく、という時代がすぐ来ると思っています。
データブリッジと共に取り組んでいく、データを軸にしたマーケティングDXの先進事例を世にアピールしていくことで、私たちの事業拡大につなげていくことができると、大きな期待を私たちは抱いています。
私たちはプロモーション領域において、質・量ともに業界のリーダー企業たる思いで、日々業務に臨んでいます。そしてマーケティングDXの流れの中でも先頭集団をキープしていきたいと思っています。
そのために、より一層の連携を深めていきたいと思っています。
佐藤 雄三氏
佐藤:競合含めたマーケティング関連企業において、データ関連人材の取り込みはさらに盛んになってきています。プロダクツとしてだけでなく博報堂グループ全体として、競合他社に伍して、さらに高度化するクライアントへの期待に応えていくためにも、今回の業務提携は大変重要な意味を持っています。
博報堂グループ全体のDX化を加速させる上で、当該領域におけるリソース増強は喫緊の課題となっていますので、博報堂本社のデータドリブンプランニングやカスタマーマネジメントプラットフォームを担う部門からの期待も非常に高くなっています。
瀧山 孝平氏
瀧山:現状において、即戦力になる国内求人市場のデータサイエンティストの数は、かなり限られていると思われます。
即戦力を採用して確保する、ということは現実的にはなかなか難しいので、資質のある人材を見極め、ニーズを見据えた独自の研修・教育制度を構築して、早期に育てていくことが重要ではないかと思っています。
今回の提携によって両社で連携して、これらの取り組みを戦略的に進めていくことが可能になりました。
データマネジメントを行えるエンジニアに関しては、今までの弊社の経験と、そして今回の一体化によるプロジェクト横断型の運用をしていくことにより、競合他社に負けないスピードで戦力化に繋げられると思います。その部分がむしろ強みになっていくことを期待しています。
岸:今後は人材の質も上げていかなければならないし、機会が拡大して行けば「量」も必要になってきます。この提携はデータ領域における博報堂グループの中核になりえると考えています。
プロダクツには82職種もあるので、それらの専門人材のアウトプットに対してデータを掛け合わせることで、、アウトプットの再現性を高めたり、精緻な検証を行うが可能になります。それはプロダクツにとっても新しい「こしらえる」のカタチになっていくでしょう。
■海外の有能な人材も積極的に採用
平田 智氏
平田:昨日、ベトナムにSEを1000名以上抱えており、日本企業のオフショア事業を行っている、某会社の方とお話をする機会がありました。その会社のもう一つの柱として、東南アジアの高レベル理系大学生の日本企業への紹介という事業を積極化しているということでした。主にはベトナム人、インドネシア人、マレーシア人なのですが、多くが日本でいう東大、東工大クラスの高学歴学生で、日本企業に就職を希望しているシステム、データ領域の学生がたくさんいるというのです。もちろん、ある程度の日本語も必須科目として習得しています。
日本国内に限って考えると、データサイエンティストやエンジニアの争奪戦が、最終的にコストがどんどん上がっていくだけです。たとえば、こうした企業との連携などを進め、東南アジア人材や地方人材に視野を広げて人材獲得力を高めることも大切だと思います。そのためにも、プロダクツ・データブリッジ連合が彼らにとって魅力あるチームになることが重要だと思います。
瀧山:大企業はもちろん、中小企業においてもデジタル化へのシフトが避けられない状況にあります。伴い、マーケティングオートメーションやAI・機械学習系などのツールを利用していく需要が増えていくと思います。
その先には、データサイエンティストのような高度な人材よりも、マーケティングやツールのことをある程度理解して、ハンドリングできるようなオペレーション人材の方が向いているし、対応する作業量もかなりのものが要求されると思います。
その業務プロセスにおいて、優秀な人材は上に引き上げていく、というような形も併せてできればと思います。
平田:優秀な人材が育って、その下で海外人材が生きがいを持って就労できるモデルケースを創ることができれば、さらに優秀な人材を確保することが可能になってきますね。
日本トータルテレマーケティングというプロダクツのグループ会社に、昨年11月にベトナム人が5名、技能実習生として入社しました。
彼らは意欲もあるし頭も良いし、未だに一人も辞める事なく、次世代を担う人材として大いに期待されています。
佐藤:ベトナム人は左脳系で、タイ人はどちらからと言えば右脳系だ、というような通説もあるようで。
グループ会社としてタイにプロダクツバンコク、ベトナムにスクエアという会社がありますが、オフショアを今後どうしていくか、と考えた場合には「データ系はベトナム」という発想も持っています。
タイには他にEmergeという動画制作のオフショアを保有していますが、彼らにはデザインセンスなど右脳系の強みを期待しています。
瀧山:今後の人材確保における、ニアショアかオフショアなのですが、たとえば沖縄は、政府が率先して企業を誘致するために特別な税制等を設ける等、支援のための特区に指定しています。
しかし沖縄では人的コストが急騰しているため、日本の中でも東南アジアに最も近い場所として、物流などのハブ拠点としての機能が新たに求められてきています。
たとえば東南アジアの人材を沖縄特区に集結させて、ニアショア拠点としていくというような事も考えられます。
平田:そうですね、その拠点でのリーダーシップやマネジメントを、ハイレベルなベトナム人にやってもらうというのも良いと思います。
■両社の強みを共に出し合い、シナジーを生み出して行く
岸:データ領域における需要はこれからも、どんどん高まっていくことが分かっているので、早めに着手しないと出遅れてしまいます。
とにかく市場がひっ迫している事もあり、日本人だけで有能な人材を集めるのは不可能だと思っています。言語が違うだけで能力が高いのなら、そちらを選択します。
東南アジアの有能な人材を弊社に集めるような仕組みも含めて、一緒になって考えさせていただけたらなと思っています。
板垣 貴聡氏
板垣:データサイエンティストは少し前から流行りの職業としてもてはやされてきましたが、まだ十分な活躍できていないのが実情です。
データの扱いには長けている弊社と、ビジネス面で長けていて、かつ様々なデータも有する御社が組むことによって、データサイエンティストの成長スピードにも違いが出てくるのではないかと期待しています。
菊地 友幸氏
菊地:データビジネスデザイン事業本部は1stPartyDataの取り扱い、CRMへのデータ利活用を中心に事業を拡大してきました。この領域はポストCookie時代においてもデータ利活用が続いていく領域ですが、求められる専門性が大きく変化している領域でもあります。
そして近年は、セールス、リテール、店頭、イベントなどの領域への拡大を模索しています。ポストCookieという観点では、博報堂グループとして強化しているプラットフォーマーとの連携でありクリーンルーム対応も非常に重要と考えています。このような変化や拡大に対応していく上で最も重要なのは『人財』です。データブリッジの機能・人財の足し算ではなく、採用、育成、事業成長を共にするデータビジネスデザイン事業本部のグループとして、マーケティングDX支援力を上げていきたいと思っています。
岸:両社のシナジーに対して色々と期待は膨らみますが、着実に歩みながら高いアウトプットを生み出す、「良いタッグ」を組んでいきたいと思っています。
ぜひともご協力のほどよろしくお願い致します。
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