博報堂プロダクツ 映像クリエイティブ事業本部に所属する、映像ディレクター 小林 友麻さんが、第12回BOVA ONLINE VIDEO AWARD(主催:宣伝会議)で新設された縦型動画部門(TikTok for Businessコラボ)にて見事シルバーを受賞しました!また、オンラインビデオ部門では、神田 蘭子さんが企画と演出を担当した作品が協賛企業賞と審査員個人賞「なかじましんや」をダブル受賞、平尾 太一さんが演出を担当した作品が審査員個人賞「吉兼啓介」を受賞しました。おめでとうございます!
左:神田 蘭子(博報堂プロダクツ/映像クリエイティブ事業本部 ディレクター)
右:平尾 太一(博報堂プロダクツ/映像クリエイティブ事業本部 ディレクター)
<受賞作品>
1)小林 友麻:縦型動画部門 シルバー受賞/「片手の可能性」
2)神田 蘭子:協賛企業賞&審査員個人賞「なかじましんや」/「今日のオレ予報」
3)平尾 太一:審査員個人賞「吉兼啓介」/「Gummy Love」
BOVA(Brain Online Video Award)は、月刊『ブレーン』(宣伝会議)が主催するオンライン動画に特化した映像コンテストです。2013年に創設され、映像制作業界の活性化と、次世代の動画クリエイターの発掘・育成を目的としています
- 小林 友麻(こばやし ゆあさ)縦型動画部門 シルバー 受賞
- 神田 蘭子(かんだ らんこ)オンライン動画部門 協賛企業賞 & 審査員個人賞 なかじましんや 受賞
- 平尾 太一(ひらお たいち)オンライン動画部門 審査員個人賞 吉兼啓介 受賞
- プロフィール
小林 友麻(こばやし ゆあさ)
縦型動画部門 シルバー 受賞
クライアント名:PayPay
タイトル:片手の可能性
https://www.youtube.com/shorts/79hn-MR18C4
企画制作/博報堂プロダクツ
CD+企画+C+演出+編集+音楽+アニメーション/小林 友麻、NA/深瀬 大明
── 小林さんは昨年入社で今年2年目と伺いました。2年目になって変わったことはありますか。
映像クリエイティブ事業本部には、月に1回アプデ会(アップデート会)という入社5年目までの若手の会があります。1時間くらいオンラインで最近の近況や悩みなどを雑談するのですが、先日初めて今年入社の後輩2人が参加してくれて楽しかったです。私は結構悩みやすいタイプの人間なので、1年目の時は年の近い先輩に気軽になんでも話せて、緊張することなく相談にも乗ってもらえるのでとても助かりました。このおかげもあって今ここにいると思っています。今年入ってきたメンバーにとってもそういう場にできればと思っています。
── 受賞を知ったときの気持ちと、周りの反応はどうでしたか。
ゴールデンウィーク前後に、ブレーンのBOVA事務局からメールをいただきました。先に協賛企業賞の発表があったので、今年はもうダメかと思っていた分、とても驚きましたし、本当に嬉しかったです。まずは上長に報告したところ、すぐに「やったね!」と声をかけていただきました。普段の仕事でも良い企画を出せば褒めていただけることはありますが、こうして明確な“結果”として評価されるのは特別で、「頑張ってよかった」と心から思いました。作品が完成した際、先輩方に見ていただき「おもしろいね」と言ってもらえたことも嬉しかったですが、今回のように賞という形で残ることは何よりも励みになります。
── 企画はどのように思いつき、作品をつくったのですか?
今回は「賞を獲る」ことよりも、「まずは自分で一本つくってみたい」という気持ちが強くありました。いろいろなアイデアを並行して考えていたのですが、家でじっと考えているだけではなかなか思いつかず、情報を頭に入れた状態で外を歩いているときに、ふと企画がひらめきました。その場でスマホにメモを取り、帰宅後に少しずつ展開を整えていきました。
声の出演を除くすべての工程を自分で手がけ、音楽はBOVAで使用が許可されている素材を中心に構成しました。映像の前半も含め、基本的にすべて自分で制作したため、作業量は非常に多く、イラストも自作です。このような制作スタイルは、時間に比較的余裕のある1年目だからこそ実現できたと思います。限られた時間の中でいかに効率的に、かつ魅力的なアニメーションをつくるかを意識しました。これまでのアニメーション制作経験から、動きを増やしすぎたり滑らかにしすぎると作業負荷が大きくなることは理解していたので、作業量を抑えつつも視聴者に楽しんでもらえるよう、構成や演出に工夫を凝らしました。
── 見どころやこだわったポイントはありますか。
作品全体は、白い背景に紙芝居のように要素が一つずつ配置される構成にしました。色数は極力抑え、トーンはシュールに。テンポ感と空気感を大切にしながら、心地よいリズムで展開することを意識しました。また、各フェーズにおいて「起承転結」の“転”にあたる場面では、視覚的な変化を加えることで緩急をつけています。たとえば、線の数を増やしたり、タッチを変えたりといった工夫で、観る人が思わず「おっ」と驚くようなアクセントを加えました。情報量をコントロールしながら、印象に残る展開をめざしました。
── 後半の“ほっこり”する展開は、最初から構想にあったのですか?
はい、構成の初期段階からその要素は考えていました。内容自体は後から練り直しましたが、最初はあえてふざけた雰囲気で始めることを意識していました。というのも、縦型動画は視聴者が構えずに流し見することが多く、最初からエモーショナルな演出を押し出すと、かえって敬遠されてしまうのではないかと感じたからです。
そこで、冒頭には「なんだこれ?」と思わせるような、普段は身につけないようなパペットを登場させ、視聴者の興味を引きつける構成にしました。そのうえで、最後には自分たちの生活に自然とつながるような展開に持っていくことで、メッセージがより伝わるのではないかと考えました。私はシュールな表現が好きなので、冒頭の“意味不明だけど気になる”展開には特にこだわりました。最後は感動的な締めにしていますが、そのギャップも含めて気に入っています。
── 縦型動画をつくる際に意識したポイントは?
情報量を詰め込みすぎず、テンポに緩急をつけることを意識しました。特に、視聴者が「ん?」と引き込まれる“間”を大切にしています。また、スマホで視聴した際に画面が一瞬暗転し、自分の顔が映り込むような演出を入れることで、「自分ごと」として感じてもらえるよう工夫しました。これは、縦型動画ならではの視聴体験を生かした演出です。
さらに、冒頭はあえて意味のわからない展開で視聴者の興味を引き、後半で感情に訴える構成にしています。その転換点として、暗転と線画のようなフレームを用いた画面処理を挟み、印象に残る仕掛けにしました。
── 普段の仕事でも縦型動画をつくることは多いですか?
演出として初めて担当したWebコンテンツが縦型でした。企画としてはまだ一度くらいしか経験がありません。ただ、若手の間では縦型に取り組む人が多く、私の周囲にも縦型で活躍している先輩がいます。
神田:私も基本は横型が中心ですが、補足的に縦型をつくることもありました。今後は縦型が主流になる可能性もあると感じています。
平尾:縦型のみの案件もありますが、現時点ではまだ主流とは言えません。ただ、CM規模の撮影で縦型のみの発注があったこともあり、企業のニーズとしては今後さらに増えていくと感じています。
── 今後のキャリアプランや目標を教えてください
今回の受賞に満足せず、今後もさまざまな賞や社内でのチャレンジに積極的に取り組み、できることの幅を広げていきたいと考えています。特に、キャラクターを生かした広告のように、長く人々の記憶に残り、愛され続ける作品をつくることが目標です。
神田 蘭子(かんだ らんこ)
オンライン動画部門 協賛企業賞 & 審査員個人賞 なかじましんや 受賞
タイトル:「今日のオレ予報」
https://www.youtube.com/watch?v=2S6XQ9DCMfE
森川芹(TBWA HAKUHODO)、神田蘭子(博報堂プロダクツ)
企画制作/博報堂+博報堂プロダクツ、CD+企画+C/森川芹、企画+演出/神田蘭子
Pr/村地洋祐、PM/馬場晶菜、佐藤ほのか、撮影/渡邉成美、編集/山田幸、ST+HM/蓼沼仁美、CAS/涌田帆南、出演/三河悠冴、中原つばさ、宮崎恵治
── 企画はどのように思いつき、作品をつくったのですか?
この作品は、出向先で仲良くなった後輩と一緒に取り組んだもので、彼女がCD(クリエイティブディレクター)、私がディレクターという立場で進めました。
ただ、ちょうどお互いに多忙な時期と重なってしまい、なかなか良い企画が浮かばず、締切が迫る中で焦りもありました。プロデューサーにも「このあたりで企画を決めたい」と伝えていたので、いったん別の企業向けの案を提出したのですが、どうしても映像の完成形がイメージできず、納得がいかなくて。そこで思い切って「もう少し時間をください」とお願いし、自宅で一人、粘りに粘ってようやく今の企画をひねり出しました。まさに“生みの苦しみ”でした。
── 今回の作品で特に見てほしいポイントは?
一番の見どころは、ひとりの人物が何パターンも登場するという構成です。
「何時間後のあの人」という、どこにでもいそうな普通の男性が何人も現れるというインパクトを軸に、視覚的にも印象に残るよう工夫しました。撮影は非常にアナログで、一人ずつ撮影して合成するという地道な方法をとりました。細かく見ると視線が少しずれている部分もありますが、なるべく自然に見えるように、細部まで丁寧に仕上げました。編集は、同期の山田さん(REDHILL事業本部)と一緒に進めました。彼女は“かわいい系”の案件が得意で、普段から信頼してお願いしているパートナーです。今回も多忙な中、力を尽くしてくれて本当に感謝しています。
── 得意分野や今後やってみたい仕事は?
これまで「キャラクターものをやりたい」と話していたら、本当にそういったお仕事を多くいただけるようになり、昨年はポップで明るい作品に多く携わりました。
ただ、今はそこから一歩踏み出して、もう少しドラマ性のあるものやナチュラルで人物中心の映像にも挑戦してみたいと思っています。“かわいい”だけでなく“美しい”や“心に残る”といった感情に寄り添う表現にも取り組んでいきたいです。
今回の受賞も本当に嬉しかったですし、それをきっかけに、これまで少し距離を感じていた社内の方々からも声をかけていただけるようになりました。「みんな、意外と気さくなんだな」と思えて、職場の空気がぐっとやわらかくなった気がします。今は、より自然体で仕事に向き合えるようになりました。
平尾 太一(ひらお たいち)
オンライン動画部門 審査員個人賞 吉兼啓介 受賞
タイトル:「Gummy Love」
https://www.youtube.com/watch?v=SRC7PMK-cL4
企画制作/博報堂クリエイティブ・ヴォックス+博報堂プロダクツ
CD+企画+C/河口泰子、Pr/小林寿樹、PM/岡田直緒美、演出/平尾太一、撮影/金碩柱、照明/神野宏賢、編集/入澤大志郎、MA/鷹濱、ST/松野仁美、HM/Riina、井出賢司、出演/東夏輝、山口右恭、矢澤隼斗、永尾理、松井拓己、渡邉伶
── コンペへの応募は久しぶりだったそうですね。
そうですね、本当に久しぶりでした。企画を立てた博報堂CDの河口さんから「一緒にやりませんか」と声をかけていただき、応募することになりました。今回出してみて「楽しいな」と感じてしまって、ちょっとハマりそうです。コンペ応募の作品づくりは、クライアントワークと違って、自分たちでゴールを決められる分、どこまでも突き詰められる。その中で「もっといけるんじゃないか」とギリギリのラインを攻めることが多く、不安もありました。でも、久しぶりに“尖っていた自分”を思い出せて、すごく楽しかったですね。思い切ってやれたことが、結果的に良かったと思っています。
── 今回の作品で描きたかったテーマやこだわりは?
「クズ男を描きたい」という明確なテーマがありました。どれだけ“落差”をつけられるかが鍵で、「こういう男、いるよね」と思わせるリアルなキャラクター像を追求しました。発想の原点は、昭和の漫画に出てくる“悪い奴がガムを噛んでいる”というイメージです。それを現代的に再構築し、ガムと“クズ男”を掛け合わせることで、どこか憎めない“かっこいい男”像をつくり上げました。トップカットに登場する“バランス型”のイケメンには、顔のほくろの位置までコンテ段階から細かく指定しました。「悪い男って、あそこにほくろあるよね」という感覚が自分の中にあり、人相学的な記憶も影響していたのかもしれません。
── 映像をつくるうえで、特に意識していることはありますか?
映像制作で私が大切にしているのは、「自分らしい“クセ”を残すこと」です。そのクセが、作品に個性や温度感を与えると考えています。広告には伝えるべきメッセージや守るべきルールがありますが、その中に“余白”を見つけて、自由に遊ぶことが表現の鍵だと思っています。伝えたいことを丁寧に整理したうえで、あえて遊びの余地を残すことで、広告であっても作り手の表現が生まれると感じています。以前、先輩から「この仕事は、サプライズがあって当たり前と思われている」と言われたことがありました。その言葉を胸に、演出コンテを出すときも、現場に立つときも、「思っていたより良い」と感じてもらえるよう常に意識しています。
ただ、“余白”の扱いには難しさもあります。どこを削ぎ、どこに遊びを残すかの判断は、時に表現の可能性を狭めることにもなります。すべてを盛り込んで突き抜けるスタイルもあれば、削ぎ落とすことで強さを出す方法もある。私は後者の方がしっくりくるだけで、どちらが正しいということではないと思っています。
── 得意な領域や、今後取り組んでみたい仕事について教えてください。
ありがたいことに、今は自分がやりたいと思っていた仕事に取り組めています。BOVAへの参加を通じて改めて感じたのは「学生時代に憧れていたCM作家のような存在に、自分はなれているのか」という問いでした。今回の作品は、当時の自分が一番褒めてくれそうだと思えるもので、CMを面白くすることの難しさと同時に、その面白さに改めて魅力を感じました。効率を重視しすぎると、サプライズや遊びの余地が削がれてしまうことがあります。それは、信頼して任せてくださっている方々に対して、少し申し訳ない気持ちにもなります。だからこそ、もっと挑戦できることがあるのではないかと、BOVAを通じて気づかされました。正直、コンペは若い人のものだと思っていましたが、久しぶりに応募してみて、年齢や経験を重ねた今だからこそ得られる発見があるのだと実感しています。
プロフィール
- 小林 友麻
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2024年 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、博報堂プロダクツ入社
- 神田 蘭子
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2020年 女子美術大学デザイン・工芸学科卒業後、博報堂プロダクツ入社
2023年 ヤングライオンズ フィルム部門 ゴールド
2023年 JAC アワード ディレクター部門 グランプリ
2024年 ヤングライオンズ フィルム部門 ブロンズ
- 平尾 太一
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2009年 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、博報堂プロダクツ入社
2015年 ACCインタラクティブ Bronze
2017年 Spikes Asia Silver
2017年 Ad Fest Silver
2018年 Japan Youtube Ads Leaderboard 5位