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博報堂プロダクツの各コア事業が追求している専門技術を駆使した新しい取り組み、
最新ソリューションおよびプロフェッショナル人材などを紹介します。

「バズ」を狙わず効果を上げるSNSマーケティングの最新事情

 

SNSを中心としたコミュニケーションが主流となった今、どのように公式アカウントを運用し成果を求めていくべきなのか、その手法や考え方が改めて問い直されています。SNSマーケティングでは以前より「拡散=バズ」を狙う発想がありましたが、バズを狙わずともファンの感情に寄り添うことでブランドやサービスに対する好意を形成できると語るのは、博報堂プロダクツのSNSディレクターである小川宗紘。SNSがなぜ企業と生活者のコミュニケーションに向いているのかといった背景も含め、最新のSNSマーケティング事情を紹介します。

 

 

企業のSNSマーケティング活用の現状

 

──SNSディレクターとは、どのようなお仕事ですか。

 

小川
私が所属しているデジタルプロモーション事業本部は、WebやSNSなどデジタルが関連する領域を幅広く対応する部署です。その中でブランドやサービスの認知獲得やエンゲージメントの向上を図るさまざまなプロモーションの企画を考えるのが、アクティベーションプランニング部の担当となります。現在SNS専門の部署はありませんが、SNSディレクターは主にTwitterやInstagramなどのSNSを中心にした情報発信の戦略を考えたり、アカウントの分析や改善を提案するのが主な仕事の内容です。

 

小川 宗紘 デジタルプロモーション事業本部 アクティベーションプランニング部

 

 

──企業アカウントの実際の運用や投稿の制作も行なっていますか?

 

小川
SNS投稿の内容を制作することもありますが、どちらかと言えば、新規のアカウントの立ち上げに伴う投稿や運用のガイドラインづくりの支援や、既存アカウントの運用を分析して改善していく業務のほうが多いです。

 

 

──すでにSNSを中心としたコミュニケーションは広がっていると思いますが、企業でのSNS活用は今どこまで進んでいるのでしょうか。

 

小川
確かに、SNSはインターネットで情報を得るインフラとして成熟期を迎えています。企業においても公式アカウントを開設しているケースも多いのではないでしょうか。しかし、開設はしたもののファン層の獲得やコミュニケーションなどSNSマーケティングとしての活用まではいたっていない企業もまだ多いのではないかという印象があります。また、知名度のある企業であっても、何らかの理由でSNSアカウントを開設していない場合もあるのでしょう。

 

 

──企業がSNSマーケティング活用に踏み切れていない理由には何があるのでしょうか。

 

小川
SNSマーケティングに踏み切れていない理由の多くは「炎上リスク」を懸念してのことではないかと思われます。しかし、以前はリスクを避ける傾向のあった金融や保険といった業態でも近年はSNSに取り組む企業が増えていますし、官公庁やBtoBの分野でもブランド向上や認知獲得機会の創出、人材確保の目的で積極的に活用したいという相談は増えています。こうしたことからも、あらゆる分野でSNSが私たちの日常生活にいかに浸透してきたかが分かります。

 

 

──SNSを企業のマーケティングに活用する場合、最初に意識しなければならないポイントは何でしょう。

 

小川
最初はやはりSNSというメディアの特性をよく理解し、プラットフォームごとに利用のされ方や好まれる表現や文脈を知るところから始まります。例えば、いわゆるZ世代の若者が普段どのようにメディアに接しているかというと、テレビを持たずパソコンでGoogle検索もほとんどしていません。彼らの情報収集はInstagramやTwitter、TikTokなどのSNSで完結していることが多く、この年齢層をターゲットとするのであればSNSを運用しなければそもそもの接触機会が得られません。

 

 

 

──SNSプラットフォームごとの性格の違いは大きいですか。

 

小川
とても大きいです。国内で顧客との接点を広く持ちたいのであればTwitterなど利用者層が広く拡散性の高いSNSの公式アカウント運用が基本となりますが、ブランドの長期的なファン育成を目的にするのであればInstagramのようにビジュアル中心のSNSも望ましいといえます。

 

 

──それ以外にも注目すべきSNSプラットフォームはありますか?

 

小川
どこまでをSNSと見なすかという考え方もありますが、LINEやYouTubeもそれぞれSNS的な要素は含まれています。LINEはもはや生活インフラとして高齢者も含め幅広い年代層が利用しているのが大きな特徴で、コミュニケーションツールの側面が強いことから顧客の好みに最適化する1 to 1マーケティングの手法が適しています。YouTubeについては動画マーケティングの一環として捉えるのが適切ですが、企業が単独で運用してコミュニケーションしながらチャンネル登録数を増やすことは困難を伴います。あくまでSNSやオウンドメディアでも利用する動画置き場などの活用が現実的かもしれません。

 

 

長期的な「好意形成」というSNSマーケティングの原点に戻る

 

──SNSを企業のプロモーションに活用する場合、何を目的や目標に据えるのがおすすめでしょうか。

 

小川
SNSを運営する目的は企業ごとに異なるので、個別の事例はケースバイケースとなります。しかし、SNSというメディアを用いて自社のブランドやサービスへの好意を形成し、ファンとなってくれた人たちとの継続的な関係性を構築することがもっとも重要で本質的だと考えています。そして、その目的や施策を評価する指標としてはLTV(ライフタイムバリュー)のような長期的な視点が欠かせないと言えるでしょう。

 

 

──Twitterのいわゆる「バズリ」はあまり目的にしないほうがいいですか。

 

小川
確かにTwitterのように情報の拡散に適したSNSでは、ひとたび「バズ」が発生すればその影響はSNS内にとどまらず、マスメディアで取り上げられるなど大きな話題を生むことがあります。しかし、意図的にバズを狙うことは容易ではないですし、その効果も瞬間的なものであって持続的に関係性を構築することにはつながりません。

 

 

──フォロワー数とか投稿のインプレッション数はあまり指標には向いていないのでしょうか。

 

小川
その投稿がどれだけ見られたかというインプレッション数は注目度のわかりやすい指標として意味はありますが、それ自体を目標として掲げることは必ずしも重要とは限りません。むしろ、それよりは「いいね」や「リツイート」、「コメント」の数など投稿への反応であるエンゲージメントに関わる数値を見ていく必要があります。また、フォロワーの数なども長期的に見て増えているのはいいことですが、普段の運用では投稿の「質」を高めるためにはどうすればよいかという視点が大切です。

 

 

──SNSのメディアとしての特性という話がありましたが、どのような点に強みを持っているのでしょう。

 

小川
例えば、生活者が商品の購入を検討するまでの意識の流れは、認知→興味・関心→購入の検討とおおむね3段階に分けられると考えています。商品やサービスをあまり認知していない潜在層に対してはCMやターゲティングできるWeb広告が効果的ですし、他社製品との比較など実際に購入の検討段階に入っている層に対してはWebサイトや店頭でのプロモーション施策などが有効です。SNSはこの中間にあるブランドやサービスへの興味・関心がある層に対して定期的・継続的にコミュニケーションすることで「好意形成」を図り、購入検討層へと引き上げていくことです。

 

 

常にアップデートし続けるSNSに対応していく

 

 

──実際にSNSで好意を高めることはなかなか難しそうですね。

 

小川
商品の情報を一方的に発信してばかりいても効果は得られませんし、毎日の投稿をそれぞれのSNSのトレンドや雰囲気に合わせて投稿していかなくてはなりません。
タイムラインの流れが速いTwitterでは1日1回以上投稿しなければ目に留まることはないでしょうし、Instagramであれば週3回程度コンスタントに投稿しないと表示アルゴリズムからアクティブなアカウントでないと判定されてフィードへの表示順位が下がります。

 

 

──フォローしてもらえなければ見てもらえる機会も減りますし、Twitterのように表示のアルゴリズムの仕様が頻繁に変わるとなると厳しいですね。

 

小川
アルゴリズム自体はSNS側の都合で次々とアップデートされるので対応は必要ですが、定期的かつ頻繁に情報を発信することの重要性は変わりません。また、公式アカウントとは別の第三者がブランドに言及してもらえるようにUGC(ユーザー生成コンテンツ)のキャンペーンを企画するなど、アルゴリズムに頼らない戦略も必要です。

 

 

──SNSで人気の企業公式アカウントを見ていると、とてもうまく話題を盛り上げるコミュニケーションをしているように感じます。このあたりのコツというのはあるのでしょうか。

 

小川
それぞれのアカウントが独自に築き上げたノウハウやキャラクターがありますので、外から見て真似をしただけでは成果は上がりにくいかと思います。しかし、Twitterなどでは話題に上がるキーワードなどはある種の法則性のようなものがあって、猫や犬に関するハッシュタグや「大喜利」のように多くの人が乗ることができる話題は盛り上がりやすい傾向があります。また、毎日更新されるトレンドなどを見ると「診断系」のコンテンツは根強い人気があります。これは、人は自分のことを知ってもらいたい、見てもらいたいという気持ちが根底にあるからだと考えられます。

 

 

 

──小川さんたちSNSディレクターはマーケティングの戦略策定に加え、そうした運用に関する助言も行なっているのですね。

 

小川
はい。SNSを巡る環境は変化が激しいのでスピード感を持って常に最新のトレンドを提供できるよう心がけています。運用のお手伝いをすることもあるので、私自身もSNSのいちユーザーとしての視点からTwitterのトレンドを毎日4〜5回はチェックし、ニュースアプリだけでなくリアルタイムの盛り上がりをランキング形式で確認できる検索機能などを利用しています。最終的には企業内のSNS担当者で適切にSNSを運用していただくことが理想なので、そのために必要なノウハウやテクニックなどは惜しみなくお伝えしたいと考えています。わからないことがあれば気軽にお問い合わせいただければと思います。

 

 

 

【プロフィール】

小川 宗紘

デジタルプロモーション事業本部 アクティベーションプランニング部 
SNSディレクター/プロデューサー

2013年博報堂プロダクツ入社
WEBからAR/VRなどのデジタル制作を経て、2018年のSNS専門部署立ち上げ時から関わる。
企業アカウントを中心に企画、運用、コンテンツ制作、調査・分析業務までを幅広く手がける。最近では全国各地セミナーに登壇することも。