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最新ソリューションおよびプロフェッショナル人材などを紹介します。

クロスセッションVol.3 ~地方からの「新しい前例」を目指して~

クロスセッションVol.3

地方からの「新しい前例」を目指して

 

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未来を担う20代、30代を中心とした中堅社員が部門を跨いで、5年後のプロダクツとプロモーションを語り合うクロスセッション。

 

第3回目のテーマは「地方からの「新しい前例」を目指して」。
支社のメンバーは、一人一人がクライアントの幅広い課題、領域を背負いながら網羅的に業務をこなし、
その姿からは「自分がフロントを張る」という心意気が見えてきます。

今後、彼らの取り組みが会社全体のスタンダードとなっていくという予見、またはなっていこうという姿勢も随所に見られます。
今回はその担い手となる3人の若手社員が、地域におけるプロモーションの未来、会社の未来について、「これからのプロダクツは地方からつくっていく」という気概を込めて語り合いました。

 

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関西支社 前田 悠さん
2012年入社で当初から関西支社配属、今年で9年目になりました。
職種はプロモーションプロデューサー、つまり営業です。
2025年の万博が今の大きな案件ですので、今回はそのあたりのこともお話しできると思います。

 

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名古屋支社 中根 徹哉さん
僕は2015年に中途で名古屋支社に採用されました。今年6年目です。
前田さんと同じく、職種はプロモーションプロデューサーで、営業をやっています。
本当にいろいろなことに携わってきた6年間だと思っていますので、多方面のお話をできればと思います。

 

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九州支社 竹本 紗希子さん
2015年に中途入社で九州支社に配属されました。
職種は、新卒で採用された前職から変わらずコピーライターですが、
業種は多岐に渡っていて、今では映像プランナー、いわゆるCMプランニングも併せて携わっています。

 

 

■2025年の世界に起こっている変化にどう関わるのか

 

ーではここから、事前にご回答いただいたアンケートを元に進めていきます。
最初の質問では、5年後の「2025年に起こるかもしれないトピックス」から気になるものをピックアップしてもらいました。
皆さんが挙げられた中から、特に興味があることについてお聞かせください。

前田:関西支社の人間としては、「万博の開催」、どうしてもここは外せないです。
それ以外では関心を持ったのが、「VR・ARの世界市場が10兆円の規模を超える」です。
デジタルコンテンツの充実はどこまでいくのか、今後DX化を進めていく上で大変興味があります。

 

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中根:僕の関心は、「一人暮らし世帯の数が1,716万人に拡大」です。
社会的に新しく、かつ重要な課題になりそうですよね。
日本全体で間違いなく高齢化は進みますし、今の人口ピラミッドも変わっていくと思うので、この先にある不安も含めて気になっています。

 

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竹本:私は制作としての立場からの回答として、「仮想現実や拡張現実の世界市場」が一番気になりました。
あとは「5Gサービスが世界人口の55-65%をカバーする」「スマートフォン・アプリでバーコードを読むセルフレジシステムが国内2,300店舗に普及」も気になります。
実際、Eコマースが、買い物のかたちや広告との関わり方をどんどん変えていっていると思っています。
2020年の九州支社の案件の中では、インフラ企業をはじめECを立ち上げる企業がかなり増えました。
私はコピーライターですが、コンセプトメイキングの段階からプランナーさんたちと一緒に打ち合わせをすることが多いので、ECを立ち上げるという企画についても提案する機会に恵まれました。
そういうところで実際の変化を感じています。

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■人の多様性がビジネスを変える


ー次の質問は、「2025年の社会ではどのような変革がおきるのか」。
皆さんのご回答は、けっこう斬新な切り口だと思いました。
まず、前田さんのご回答は"モビリティ・トランスフォーメーション"です。

前田:モビリティの価値はこの先、大きく変わるだろうということを肌で感じています。
ここからの5年ぐらいで、今は実証実験段階のものも本格的なビジネスになると思っています。
MaaSの分野で、博報堂グループはもちろん、いろいろなところが実証実験を行っていますよね。
自分の仕事の例で言うならば、ある得意先はコロナの流行で利用者が前年比7割ぐらいまで落ち込んでいるのですが、それを打開するためにどのような新しい価値を提供すべきなのか、という議論がかなり盛んに行われています。
「移動+エンターテイメント、ビジネス、学び」とも書いたのですが、得意先との仕事で、計画中の無人バスに大きなビジョンを設け、映画の告知みたいな広告事業を展開できないか、という話があります。
エンターテインメント性のある広告をモビリティの中で展開することをビジネスにする、というイメージです。

 

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ー移動をただの移動に終わらせず、「楽しむ」「学ぶ」体験の場として新しいモビリティを作っていく、そんな可能性があるということですね。
コンテンツが魅力的であれば広告としての価値も出てきますからね。

中根:前田さんのお話を伺っていて、とても現実的な話だと思いました。
僕はモビリティサービスの会社が次の仕掛けをいろいろと考えていると日々感じています。
個人的な意見ですが、日本がこの先どうやって世界と戦っていくかを考えたとき、モビリティは日本の切り札だと思っているので、注目しています。

 

ー中根さんの"生き方トランスフォーメーション"についてもお聞かせください。

中根:これまで生き方の常識とされていたさまざまなことが、今、崩壊しつつありますよね。
いろいろな生き方が認められる時代が到来していて、「生き方の多様化」が進んでいるのです。
そのような社会で、これまでマス型で生きてきた広告はどう変化していくのかが気になっています。
具体的な変化をあげれば、「22歳新卒就職、65歳で定年」というスタンダードはもう崩れつつありますし、そもそも大学以外の進路も増えていくと思います。
働かない人、逆に10代からガンガン稼ぐ人、75歳まで働く必要がある人など、それぞれ出てくるでしょう。
それから、「女性」「男性」の区別もなくなっていきますよね。
広告業界では、「男性らしい」「女らしい」という表現は避けるようになりました。

 

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前田:ジェンダーに関しては、いつ波が来るのだろうと思っているのです。女性の活躍の場を増やしていける要因はあると思います。

竹本:波は来そうですね。私の周辺ではLGBT系のキャンペーンやイベントが多くなりました。

ーだんだんハードルが下がってきたと言うべきでしょうね。

竹本:かなり下がってきました。制作の立場から例をあげると、ボーイズラブ系のコンテンツが増えました。
見る側も増えているので、全く特別なものではなくなっています。
以前なら、同性婚などはテーマにもなり得ましたが、今はもう当たり前に受け入れられていると思います。
表現の部分ではCMプランニングのとき、家でいつも家事をしてるのは女性だけではないので、「主婦」と書くところで「主夫」も混ぜます。

ーそうなってくるとコミュニケーションにも大きな変化が生まれそうです。

竹本:多様性が広がると、最終的にはターゲットをセグメントするのではなくて、個人個人を積み重ねるという視点になるのではないでしょうか。マーケティングが大きく変わりそうです。

ーコピーライターの竹本さんとしても、今までマスに対して最大公約数でコピーを書いていたところが、100人なら100通りのコピーが必要になりますよね。

竹本:現場では、タイプスがものすごく増えつつあります。九州支社では、まだマス型、つまりテレビCMなどの力が大きい方ではあると思うのですが、それでもターゲット別にタイプスを作っています。
あとは、モーメントを切り口にターゲットを想定したりもします。

ーそれだけ仕事内容が変われば、大変なことがますます増えていくと思いますが、逆に皆さんが今されていることが、これからのメインストリームになる可能性もあります。

竹本さんのご回答、"ハイパーデジタルトランスフォーメーション"についても聞かせてください。

竹本:この5年で、デジタルトランスフォーメーション化は、さらに想像できないものになっていくだろうと考えています。
最近、中国で、裸眼で実現されるARが登場しました。あれはすごいと思いました。そういうものがどんどん登場して普及するのではないでしょうか。
それからオフィスVRです。出社しなくても、リアルPCと連結しアバターを通して仮想空間で同僚と作業。
こういうことを、2025年にはどこかの会社が先がけて実現してくれると期待しています。

 

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中根:実現は充分にあり得ると思います。現実と仮想現実の垣根はどんどんなくなっていくでしょうね。
いずれ、その場所に「いる、いない」という概念が消え去るのではないでしょうか。

ー確かにコロナの流行があってリモート勤務が促進されていますが、このさきコロナ流行が収束したら勤務体制はどうなるのか、皆さんはどう感じていますか。

前田:とある食品メーカーさんではオフィス自体をなくそうという話が出ているそうで、今、オール在宅だそうです。
得意先がそうなった以上、僕らも体制をシフトしていくことになるだろう、と思っています。

中根:確かに営業はクライアントさんありきの話になりますが、皆それぞれの異なったライフスタイルに合わせて選べるようになるといいと思います。

 

―皆さんの世代は、なるべく在宅をベースにしながら働きたい、という感覚でしょうか。

竹本:でも、やはり出社して打ち合わせをするメリットはあります。結局、出社にもリモートにもいい面と悪い面があって、今回のコロナ流行でそれが露呈したのではないでしょうか。
それから、DXが進むにつれて、改めてリアルの価値も上がっていっている、と感じています。
だから、いいところだけを吸収して5年後を迎えたい、という感じでしょうか。

中根:竹本さんのおっしゃる通り、よりよい生活していくための選択肢という意味では、両方が必要だと思います。

ーそれこそ、先ほど中根さんがおっしゃった"多様化"ですね。

 

■新しい前例によってAI、人、職種の垣根がなくなり、人間力が求められる現場に

 

―では次に、今後デジタル化がさらに加速する中、5年後のプロダクツでは実際にどのような新しい前例が作られていると思われますか?

前田:やはり万博関係の話になりますが、まず、万博のテーマのもと、健康や暮らし方などに関係する最新のソリューションが各企業から登場し、それが世の中のニーズになっているのだろうと思っています。
だから、僕たちもそれらのニーズに応えていける何かを提供してきたいと思っています。
ただ、ここから先の5年10年で起こる変化は、今より前の10年やさらにその前の10年で起こった変化と比べ、さらに大きいと思います。正直想像がつきません。

 

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ーでも、そこでは間違いなくたくさんの新しい前例が生まれているでしょうね。

続いて、中根さんはいかがでしょうか。

中根:「FASTサービス」「バーチャルイベントが主流」「広告の自動可変」「カスタマーサービスのAI化」、この4つを想像しました。まずFASTサービスですが、積み重ねられたデータがあれば、作成可能な制作物はAIで自動制作化されると考えています。
例えば、凝ったコピーが必要ないバナーや文字レベルの動画編集で終わるプロモ動画などを1日で完成させられるシステムが登場するのではないでしょうか。
2つめについては、コロナ禍によってバーチャルイベントはすでに普及しているという感があります。割合でいえば半々くらいでしょう。
外出しなくても参加できる空間があれば時間のコストカットにもなりますし、制作側から言えばリアルイベントよりもお金がかかりません。
3つめの自動可変ですが、今は制作物を媒体別で作らなければいけないところを、完全に自動可変して最適化するシステムです。
プロダクツなら作るのではないかと期待しています。
最後にカスタマーサービスです。
コールセンターはコストもかかりますし、そこで働く方々もストレスが大きいと思うので、ある程度単純な対応はAIでできるようシステム化するのではないかと思っています。
質のいいサービスと単純サービスの切り分けが起こるのではないでしょうか。

ーAIやロボットの話になると、それらができることは全てそちらに回す、という話がよく出ますが、では、われわれが人間として能力を発揮できる部分はどこにあると思いますか。
例えば、プロデューサーはある種のゼネラリストですが、どういう力を発揮していけば5年後も活躍できるか、イメージはありますか?

中根:まず、AIによる効率化はむしろ喜ばしいことで、人間の負担が軽減できるのならばwin-winだと考えています。
その分、人間が使える時間が多くなりますよね。
ツールを活用しながら、人間は、データにないところから新しく何か作り出していく必要があると思います。
そういう意味では、プロデューサーもクリエーターっぽくなっていく必要があると思っています。

 

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―なるほど。竹本さんは制作側として、制作者の役割はどうなっていくと思いますか。

竹本:企画の組み立てや設計の部分では、やはり人が率先して動いていかなければいけないでしょう。
AIがコピーを100本出してきたとしても、どのコピーを選択してクライアントに責任を持って納品するか、それは人間の仕事です。
それから、これは支社ならではだと思うのですが、クライアントの社長などトップクラスにお会いすることが制作者でもありますので、クリエーターもプロデューサーとして対応できるかどうかが大事になってきています。
人とAIだけでなく人同士でも職能の垣根がなくなってきて、専門知識もさることながら、人間力が問われるようになるのではないでしょうか。

―優秀なクリエーターは優秀な営業マンでもあるし、優秀な営業マンは優秀なクリエーターだったりしますからね。
では、竹本さんの考える「新しい前例」についてもお聞かせください。

竹本:九州支社では、TIGのシステムを活用してどんどんコンテンツ化していく予定があります。
動画Eコマースの市場で全国一位、ということもあるかもしれません。それから、教育分野でDXのアプローチをしています。

 

 

■2025年に必要となる組織とは?

 

ー今から4年後、プロダクツに新しい事業本部ができるとしたらどのような事業本部でしょうか。
前田さんは"デジタルコンテンツ事業本部"とのご回答ですね。

前田:既存の技術には、知られていない裏技みたいなものがいつも隠れていて、ユーザーは「ついていけない」と少なからず感じているのではないでしょうか。
そういう意味で、単純なコンテンツにも伸び代はあると思っています。
それに、コンテンツが一般社会に普及していくスピードはいつも目を見張るものがあります。
だからデジタルコンテンツを専門に、それだけでビジネスをする事業本部ができても面白いだろうと予想しました。

 

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ーでは、中根さんの"バーチャルクリエイティブ事業本部"についてお聞かせください。

中根:バーチャルイベントがどんどん増えていく中で、リアルと同等の価値がある場に人が集まると考えれば、その場を作る、そこで広告を打つ、販促をする、そういう需要も生まれてくるでしょう。そのための事業本部です。

ー今のバーチャルイベントは、イベント・スペースプロモーション事業部はもちろん、いくつかの事業本部がそれぞれ手掛けています。でも、一つの仕事を迅速に社内全体で共有するということは必要なので、今後はお二人が予想されたような横でつながって動く事業本部が求められるかもしれません。

ー最後に竹本さん、"バーチャルリアリティマーケットデザイン事業本部"についてお聞かせください。

竹本:中根さんと同じようなことですが、仮想空間内の市場をデザインしていく、マーケットデザインの事業本部です。
仮想現実は何でもできると思うので、何か立ち上げようと思ったらおそらくゼロから作ることになります。
私は、こういう事業本部を地方に作った方がいいと思うのです。
実際、福岡市は市長がエンジニアを誘致して、もちろん創業支援もしています。
地方では社長の隣にエンジニアやプログラマーがいて、口にしたことが即実現される環境があります。
地方なら家賃も安くて、働き方も自由ですし、企業は地方にあった方が夢があると思います。

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―最後に

今回の対談を通して支社、各事業、自身のビジョンなど、それぞれの将来を描いてもらいました。
竹本さんが最後に話された支社の夢はまさにその象徴でしょう。
地方には、小規模な組織ならではのフットワークの軽さや決断の早さがあり、新しいことにチャレンジしようという風土は確実に培われています。
本社を凌駕する勢いでエリアから生まれた仕事が全国に広まっていく、そんな兆しが見え、期待がますます高まりました。

 

 

 

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