Products、Professional、Playful、Personal、Pride…
そんな、博報堂プロダクツの多彩な「P」をお届けする公式YouTube「Close Up!P Value」シリーズと連動したインタビュー記事を公開中。17事業本部・100職種以上のプロフェッショナルたちが、それぞれの“専門性や提供価値”を、お届けしています。
Vol.20では、コマースクリエイティブ事業本部からVMDプランナーの西塚 利広、コピーライターの内海 楓、アートディレクターの堀江 麗が登場。売り場とSNSをつなぐコマースソリューションの現在地を紹介します。
あらゆる業界の売り場を改善
VMDから広がるコマースソリューション
――店頭で商品を見てECサイトで購入する、あるいはSNSで情報を集めて購入する店舗を決める。購買行動がオンラインとオフラインの多様な接点を行き来するようになり、コマース領域における課題解決は、より立体的な視点が求められるようになった。
西塚:クライアントから売り場の課題について相談を受けると、「原因は本当に売り場なのか?」と問い直す視点を持つようにしています。 実際に売り場を分析すると、実は売り場ではなく接客や集客に問題があったというケースも珍しくありません。売り場のみにとらわれず、コマース領域という、より広い枠組みの中で最適なソリューションを探すことを常に意識しています。

VMDプランナー 西塚 利広
――売り場に問題が“ない”と判断できるのも、売り場づくりの知見を持つからこそできることだ。西塚 利広はVMDプランナーとして、売り場づくりの企画、ディレクションを手掛ける。課題を特定する売り場診断のプロセスでは、現場の様子を数百枚から1000枚以上の写真に収め、診断基準と照らし合わせる。基準の中核をなすのが、視覚的な効果で販売促進を図る手法、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)だ。
西塚:VMDは商品の見栄えを良くする手法と捉えられがちですが、それはVMDの要素の一部に過ぎません。私たちが実践するVMDは、店舗のコンセプトや店頭ツールの企画・制作、陳列やゾーニングの見直し、導線の設計までを含む、生活者にとって『立ち寄りやすく、選びやすく、買いやすい』売り場をつくる総合的なノウハウです。
――VMDには店内の回遊率や棚前の滞在率向上を図るフレームワークもあれば、確保すべき通路幅や価格の印象を左右する商品の並び方といった具体的なTipsもある。売り場の実情を可視化する手法でもあり、商品カタログやパッケージデザインなどクリエイティブの改善にも役立てられる。
西塚:幅広いナレッジを含むため、VMDという呼び名ではなくても、VMDを実践している業界もあります。一方で、VMDが全く浸透していない業界もまだまだ多い印象です。
――「VMDに馴染みがない業界ほど、導入時の効果が現れやすい」と語る西塚。過去の事例では、VMDの基本を実践するだけで大幅な売上改善につながるケースもあったという。しかし、導入そのものが簡単に行えるわけではない。
西塚:VMDを実際の施策に落とし込むには、現場に合わせた調整が欠かせません。 なぜなら売り場には業界ごとの事情があるためです。自社店舗で売り場を自由に変えられるアパレルの店舗と、メーカーやバイヤーとの棚割り交渉が必要な家電量販店とでは、VMDで実現できることが全く異なります。
――VMDの観点では理想的な売り場でも、業界ルールの範囲内で実現できるとは限らない。VMDの実践には各業界のルールに対する理解が必要となる。
西塚:私たちには業界特有の流通や小売のルールについて幅広い知見があります。様々な業界の特性を理解した上で、実現可能な施策としてVMDを提案できるのが強みです。
――西塚が目指すのは、VMDを起点とする柔軟なソリューションの提供だ。
西塚:売り場診断は、売り場以外の課題を見つける機会でもあります。私たちが提供するのはコマース領域の全方位的な支援。接客の課題には販売員研修やラウンダーの導入、集客の課題にはキャンペーンの企画・運営など、売り場づくりとは別角度の提案が可能です。従来以上の活用が見込める領域として、SNSにも注目しています。来店を促す情報発信や、購入後のフォローアップまで、VMDがカバーできない来店前後のコミュニケーションが可能になる。提案の幅を新しく広げる可能性を感じています。

――売り場の課題解決から、コマース全体の課題解決へ。より広い視野からVMDの可能性を広げていきたいと西塚は語る。
西塚:VMDはあくまで、クライアントとお客様双方にとって良い買い物体験を提供するための“きっかけ”であればいいと思っています。今後もVMDと他のコマース領域の掛け合わせによって生まれる可能性を模索しながら、クライアントにとっての最適解を導き出していきたいです。
ブランディングツールから購買チャネルへ
カタログ化で拓くSNSのコマース活用
――SNSとEC機能を組み合わせて購買へとつなげるソーシャルコマースの普及が進む近年。クリエイティブ制作の現場に立つ内海 楓は、購買行動の変化に企業が柔軟に対応することで、より効果的なコミュニケーションや販促が可能になると語る。
内海:SNSを利用した購買行動は生活者にとって今や当たり前の習慣になりました。私自身も、検索よりSNSのリアルな感想を参考にすることが増えています。一方で、企業のSNS運用の多くは、購買チャネルとしてはまだ十分な活用に至っていない印象を受けます。
――「店舗のSNS投稿への反応は良いが、店頭で商品が手に取られない」「魅力的な売り場を作っても、お客様が来店してくれない」といった課題は、SNSの普及期から現在に至るまで変わらず残り続けている。SNSと実店舗で購買行動が分断されている現状に対して、解決を図るための新たな試みが「SNSのカタログ化」だ。
内海:SNSカタログは、従来であれば紙やECサイト上で提供していたカタログ情報をSNS上で展開するソリューションアイデアです。
――企業は仕様や価格といった商品情報を投稿する専用アカウントを作る。ユーザーは購入を検討している商品の投稿にコメントすると、自動でDMが返信されるという仕組みだ。

内海:DMの返信内容は自由に設定でき、様々な展開が可能です。ECサイトのURLを送りお客様をスムーズに購買につなげることもできますし、クーポン配信などロイヤルティ向上の施策にも活用できます。
――SNSカタログには、店頭ツールとしてのカタログやECサイトの商品情報とは異なる、SNSならではの強みがある。
内海:メリットは大きく2つに分けられます。 一つは「来店前の認知を獲得できる」こと。 もう一つが、「退店後に購買意欲を再び喚起する役割」です。紙のカタログは持ち帰られたとしても、仕舞い込まれてしまったり捨てられてしまったりすると、お客様の目に触れる機会自体は失われてしまいます。
SNSであれば、帰宅途中や自宅での暇つぶしなど、買い物以外の目的でSNSを開く際にも、購買意欲を思い出してもらえる機会が生まれます。気になった投稿を後から見返す保存・ブックマーク機能があるSNSは、特にこのメリットを活かしやすいです。
――膨大なコンテンツがあふれるSNSにおいては、ダイレクトマーケティングで培われた、購入を促す“獲得型”の知見を生かせる可能性を感じるという。
内海:近年、ユーザーが自発的に発信するUGC(ユーザー生成コンテンツ)が注目されていますが、これはダイレクトマーケティングにおける「お客様の声」を紹介する手法とも通じるものがあります。生活者の共感を喚起するコンテンツは、SNSでも変わらず支持される。SNSカタログは新しい取り組みではありますが、SNSそのものは私たちが培ってきたノウハウを活用しやすいフィールドです。
――クリエイティブには内海のコピーライターとしてのこだわりも反映される。
内海:購買への導線となる情報をきちんと伝える。不特定多数の誰かではなく、自分のためにお勧めしてくれていると感じてもらう。このような、生活者が求める情報を指し示す“小さな矢印”を積み重ねて、購入の場まで導くのがクリエイティブの役割です。近年はSNSのアルゴリズムがユーザーの興味に合った情報を表示する傾向にあります。その仕組みをうまく利用するためには、クリエイティブ側でも本当に必要なモノを必要としている人に届ける言葉が必要だと感じています。

コピーライター 内海 楓
――コマース領域におけるSNS活用は、今まさにアップデートされる段階にあると内海は見ている。
内海: SNSの進化に伴い、購買行動は日々変化し続けています。SNSのコマース活用は、各社が試行錯誤しながら、最適解を模索している段階。裏を返せば、購買チャネルとしてのSNSはこれから活用の幅がさらに広がっていくともいえます。この流れの中で、時代に適応する新しい購買体験を提案していきたいです。
限られた瞬間で“買いたい”を喚起する
店頭もSNSも変わらないクリエイティブの力
――デザイナー/アートディレクターの堀江麗は、VMDプランナー、コピーライターと連携して、オフライン、オンラインのクリエイティブを手掛ける。
堀江:博報堂プロダクツに入社する前は百貨店の化粧品売り場における店頭クリエイティブを手掛けていました。前職では、高級感やブランドイメージを伝えるデザインが中心でしたが、現在は手掛ける売り場や商品ごとに、生活者に購買意欲を固めてもらうためのデザイン。組み立て方が全く異なります。中でもVMDの考え方は面白く、店内で生活者がどういう購買行動をとるか、様々なインサイトに応じてクリエイティブを作る奥深さを感じています。
――店外の通行人の興味を引いて店内に誘導する「ビジュアル・プレゼンテーション」。 店内の要所にディスプレイを配置し、遠くのお客様を引き寄せて回遊を促進する「ポイント・プレゼンテーション」。 そして、棚前で商品を手に取ってもらうための「アイテム・プレゼンテーション」。VMDでは来店から購買に至るまでの生活者のインサイトの変化を段階別に分類し、それぞれの段階に合ったクリエイティブの役割を定義する。堀江が担うのは、VMDの戦略に基づく具体的なクリエイティブの制作だ。
堀江:興味を持ってくれたお客様が、遠くからでも「あの場所にあの商品がある」と把握できるように情報を伝えるのが店頭におけるクリエイティブの役割です。また、店頭は必ず競合他社の商品が存在する場所でもあります。数ある商品の中から、クライアントの商品を手に取ってもらうきっかけを作るためには、差別化の工夫も必要です。
――売り場全体の色数が多ければ、あえて区画の色数を1〜2色に絞る。要素の少ないシンプルな売り場であれば、ユニークな型抜きを用いる。差別化の手法は様々だ。SNSと連動するクリエイティブも手掛ける堀江は、リアルとデジタルで一貫性のあるデザインを重視している。
堀江:ある程度の購買意欲や商品を探す目的を持ったお客様が訪れる店頭と比べて、SNSは何気なくコンテンツを眺めているユーザーに興味を持ってもらう必要があります。この点でいうと店頭とSNSのクリエイティブは性質が異なるのですが、実はどちらであってもデザインの組み立て方において大切な軸は共通しています。それは一瞬の興味をいかに喚起するかということ。お客様が売り場で触れる情報も、SNSで触れる情報も、認識してもらえるのはほんの数秒です。その短い時間で「どういう商品で、何が“ウリ”なのか」をぱっと見てすぐに理解してもらえるように情報を整理し、デザインとして成立させる。店頭でもSNSでも、あるいはブランディングでも販促でも、一貫して重視している考え方です。
――幅広いチャネルで展開されるクリエイティブを支えるのは、同じ目的意識を共有したチームメンバーとの協業だ。
堀江:職種の垣根を越えて意見を言い合える環境がありがたいですね。コピーライターがデザインについて意見をくれることもありますし、逆に私がコピーワークに対して「この表現の方が伝わるのでは」と提案することもある。デザイナーの視点だけでは一面的なクリエイティブになりがちです。VMDプランナーやコピーライターなど、様々な職種のメンバーと密に連携しながら制作に臨んでいるからこそ、店頭もSNSもブレることなく、クリエイティブの完成度を高められていると感じます。
――VMDとの出会いやチームでの協業を経て、デザインの引き出しが増えたと語る堀江。今後は海外案件にも挑戦してみたいという。アートディレクターとして、デザイナーとして新たな領域に挑み続ける堀江が、クライアントに価値を届ける上で大切にしていることがある。
堀江:シンプルですが、とにかくやる、ということがクリエイティブの質に直結すると感じています。一つひとつのクリエイティブと丁寧に向き合うことで次の案件につながるという気持ちは、しっかり持ち続けていたいです。

デザイナー/アートディレクター 堀江 麗
西塚:コマース領域における課題は、売り場・SNS・接客・販促など多岐にわたり、各タッチポイントの連動が、ますます求められています。
「売り場づくりを見直したい」「SNSをもっと購買につなげたい」など、コマースクリエイティブに関するお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。私たちが、生活者視点で“買いたくなる”体験づくりをお手伝いします。
博報堂プロダクツ 公式YouTubeチャンネルでは、今回登場した3人のインタビュー紹介動画も公開しています。こちらもあわせてご覧ください!
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