木場開発工房で生み出すプロダクトデザイン力 —国際化学オリンピック日本大会のメダル・賞状の実績紹介—

2021年7月25日(日)~8月2日(月)まで開催された国際化学オリンピック日本大会(リモート開催)にて、博報堂プロダクツ プレミアム事業本部 松本早紀子が手がけた「未来に広がる化学の渦」をイメージしたデザインが採用されました。メダルデザインに込められた想いや、プロダクトデザインへのこだわり、ラフスケッチから完成品ができるまでの開発プロセスについて、インタビューを交えてご紹介します。

 

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目次:

ー 国際化学オリンピックとは

ー メダルデザイン コンセプト

ー 木場開発工房を活用したデザインプロセス

ー 化学で未来を明るくする主役へ

 

 

 国際化学オリンピックとは 

 

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国際化学オリンピックは、1968年に東欧3ヵ国(ハンガリー、旧チェコスロバキア、ポーランド)が始めた高校生の学力試験から発展した、高校生の化学の“真の実力“を競う国際大会です。

学術および化学・素材産業の次世代人材の育成により、「化学で未来を明るくする」ことを目的にして、毎年、世界の70数カ国・地域から約300名以上の生徒が参加しています。2021年大会は日本で開催される2回目の国際大会となり、近畿大学を会場として開催される予定でしたが、コロナ禍の状況を鑑み, 7月25日~8月2日の会期でリモート形式での開催となりました。日本からも4名の代表生徒が参加しました。

▶ 国際化学オリンピック 2021年日本大会 公式HP https://www.icho2021.org/jp

 

 

 メダルデザイン コンセプト 

 

本大会から世界に羽ばたいてもらいたいという

想いを形にしたデザインコンセプト「未来に広がる化学の渦」

 

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国際化学オリンピックでは毎年、各国代表生徒4名が参加し、個人戦の実験と筆記試験で化学の知識を競い、成績優秀者に金銀銅メダルが贈られます。今年の日本大会において、メダルデザイン、パッケージ、賞状などの制作を担当したプロダクトデザイナー松本早紀子が、新しいアプローチでプロダクト開発した「未来に広がる化学の渦」をイメージしたデザインが採用されました。デザインコンセプトについて、次世代への特別な想いを込めたという松本。

「私が手がけたデザインは、本大会を中心として世界に広がるイメージを表しています。渦の動きは学生たちがこれから活躍していくことによる世界への影響を表現していて、それが2021年の日本大会から始まることも示しています。面には縁起の良い吉祥柄を用いて日本らしさを表現し、選手たちのこれから始まる明るい未来を応援したいという気持ちも込めました。中心から縁に向けて高くなった形状と動きのある面の配置により、中心から渦が巻き起こるような躍動感のある仕上がりになっています。」

 

 

 木場開発工房を活用したデザインプロセス 

 

一生の記念になるメダルデザインだからこそ、

細部までこしらえるプロダクトデザイン力

 

プレミアム事業本部のオフィスに併設された木場開発工房には、プロトタイプ制作が行える3Dプリンターや簡易撮影設備が揃い、品質保証部による品質実験も行われています。日本大会で採用された「未来に広がる化学の渦」を表現した立体デザインが施されたこのメダルが完成するまでには、この木場開発工房で様々な検証が繰り返され、複雑な製造工程が重ねられてきました。デザイナーによるラフスケッチからプロトタイプ作り、完成品ができるまでの開発プロセスをご紹介します。

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これまで数多くのノベルティのデザインを担当してきたことから、平面表現だけでなく立体形状に精通し、平面と立体を組み合わせたプロダクトデザインを得意とする松本。

「このメダルデザインで一番こだわったのは、いかに渦の動きを感じさせるかという点です。また渦の動きを妨げず繊細に表現される吉祥柄レリーフは、ラボで3Dプリントをして細部の厚みなどレリーフの見え方をミリ単位で検証しました。」

メダルの丸い形状を際立たせるため、リボン金具の形状も検証し、3Dプリントとリボンの紙工作によるプロトタイピングを行うことで、これまでなかった新しい金具デザインが実現。メダルからの流れを感じさせるリボンのデザインは、首にかけたときの見え方だけでなく、後ろから見た時にもロゴマークが見えるようなアクセントを加えた設計となっています。

 

木場開発工房での検証を終えると、プロダクトデザイナーが製造工場に出向き、メダルの金型職人さんと直接イメージをディスカッションします。3Dプリンターの出力ではわからなかった素材の特徴や風合いをデザインに取り込むことで、より洗練された高精度な完成品を生み出すことが可能になります。
「今回のメダルデザインは、製造の難易度が非常に高く、通常のメダル加工では、プレス機による圧力をかけて1回で成形するところ、なんと8回ものプレス加工が施され、繰り返し地金に写し込むことで、デザインが刻まれています。0.1mmのズレも許されない高度な技術と、職人さんの熱意が詰まった、結晶のようなメダルがついに完成しました。」

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 化学で未来を明るくする主役へ 

 

「未来に広がる化学の渦」というコンセプトや次世代への想いは、メダルデザイン以外にも随所に込められているという松本。

「リボンや賞状のデザインに至るまで、メダルデザインが際立つように、一貫したコンセプトで展開しています。メダルケースは、これまで耐久性の観点からプラスチック素材が主流でしたが、持続可能社会を担う次世代にふさわしいものをと考え、紙素材を使用したオリジナルケースを作りました。メダルをずっと飾っておけるように、取説台紙を三つ折りにするだけで支えとして機能するミニマルなデザインにもなっています。」「今回、残念ながらリモート開催になってしまったので、本来対面式の大会で味わえるはずだった学生同士の国際交流ができなくなってしまいました。その分、このメダルが受賞者ひとりひとりの志を応援するような存在になれたらという想いから、メダルデザインに込めたコンセプトを取説にも英語で記載させていただきました。これから先、化学で未来を明るくする主役としての活躍を期待される国際化学オリンピック参加者のみなさんが、きっと『未来に広がる化学の渦』を巻き起こしてくれると信じています。」

 

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博報堂プロダクツ プレミアム事業本部 プロダクトデザイナー 松本早紀子

 

 

国際化学オリンピック日本委員会広報小委員会副委員長 山﨑友紀様より

国際化学オリンピックに出場する選手たちは、各国で厳しい予選を勝ち抜いてきた高校生たちです。大学院生も顔負けレベルの化学の知識と実験技術を身につけた知のアスリートが今年も勢揃いしました。
今回は11年ぶりの日本大会でもあり、メダルには「日本らしさ」、「化学のイメージ」、「洗練されたクールな雰囲気」を兼ね備えたデザインを希望していました。ご縁があって、経験豊かでハイセンスなメダルデザイン経験のある松本氏にデザインを依頼させていただけたおかげで、素晴らしいメダルが出来上がり満足しています。今回のメダルデザインに落ち着くまでは、国際化学オリンピック広報小委員会のメンバーと何度も議論を重ねてくださり、こちらの意向との擦り合わせが十分にできたと思います。ベンゼン環を思わせる6角形を中心に繊細な和柄の渦が広がる様は、化学そのものの美しさとダイナミックさを表現できていると思います。きっとこのメダルは受賞者たちを明るい未来に導いてくれるラッキーチャームになるに違いありません。

 

 

博報堂プロダクツ プレミアム事業本部では、メダルをはじめとした金属加工品だけでなく、バッグやアパレルなどの繊維製品、フィギュアやおもちゃなど樹脂を使用した成形品、グラスや陶磁器、紙製品、機械製品、木材加工品など、多岐に渡るプロダクトデザインを手がけています。ユニークな得意分野を持つプロダクトデザイナー集団が、木場開発工房でのプロトタイピングを通じて、企業の課題解決をお手伝いいたします。お気軽にお問い合わせください。

 

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