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博報堂プロダクツの各コア事業が追求している専門技術を駆使した新しい取り組み、
最新ソリューションおよびプロフェッショナル人材などを紹介します。

社員食堂から始まるサスティナビリティ施策 —「ライスレジン®」プロダクト開発の可能性と未来—

株式会社博報堂プロダクツでは、株式会社新潟博報堂が業務提携している株式会社バイオマスレジンホールディングスグループが開発した、食用に適さないお米を独自技術でプラスチック樹脂化した国産バイオマス素材「ライスレジン®」による、プロダクト開発サービスの提供を開始。その先駆けとして、豊洲本社内にある博報堂DYグループの社員食堂「5615CAFE&DELI」において、ライスレジン®ストローを試験導入しました。

今回の試験導入に至る経緯やライスレジン®を使用したプロダクトによる企業のSDGs推進支援などについて、株式会社バイオマスレジンマーケティングの杉原孝行様、博報堂プロダクツ プレミアム事業本部の岡本尚樹と岩尾玄樹、総務室「5615」担当の青山永味、プロジェクトを進めてきた4名の話をもとにご紹介します。

 

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目次:

ー 社員食堂「5615」がライスレジン®ストローを導入した経緯

ー SDGsの第一歩を検討する企業に適した「ライスレジン®」

ー 国産バイオマス素材ならではの価値と優位性

ー 「ライスレジン®プロダクトプロジェクト」はデザインにも強み

ー 2社の共創から生まれるライスレジン®の未来

 

 

 社員食堂「5615」がライスレジン®ストローを導入した経緯 

 

2021年6月1日から、博報堂DYグループの社員食堂「5615」のアイスドリンクは、ライスレジン®ストローでの提供が始まっています。社員食堂の運営を担当する青山永味は、店内で使用するカップとストローの変更を検討していた初春、プレミアム事業本部の岡本尚樹からライスレジン®ストローの提案を受け、導入を決めました。

「昨今、アジャイル型の広告プロモーションが求められる中、社内のソリューションやプロダクトが気軽に検証できる場の必要性を常々感じていました。そのような役割として社員食堂が協力できたらと面白いのではないかと思っていましたし、店内で発生するプラスチックゴミの問題やサスティナビリティを加味した運営に取り組まなければいけないとも考えていました。さらには、カップやストローの変更を検討していたタイミングだったこともあり、まさにお互いの思いとタイミングが合致したことからライスレジン®ストローの試験導入に至りました」

 

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豊洲本社内にある博報堂DYグループの社員食堂「5615CAFE&DELI」

 

ただ、コストがかかると売価にも影響が。環境配慮施策につきものともいえる不安要素に対し、他のバイオプラスチック素材より低コストのライスレジン®は、無理なく導入できる点が、決め手となりました。

「私自身、これまでSDGsや環境問題について、言葉はよく耳にはするけれどビジネスとしてどう捉えていくかという面では、分わからないことが多かったんです。でも、ライスレジン®ストローに出合ったことがきっかけで、自分なりに勉強する機会が得られました。社員食堂を利用する従業員の方たちも、実際にライスレジン®ストローを使うことで何か気づきを得て、プラスチック問題やフードロス解消を、自分ごととして関心を持ってもらえるとうれしいですね」

なお、毎年6月は環境省が定める『環境月間』です。それを受けて社員食堂「5615」では、6月1日(火) ~6月14日(月)までキャンペーンを実施。対象商品は、ライスレジン®ストローを使用するカフェICEメニュー全商品を30円引き。またはマイボトル持参の方は100円引き(キャンペーン終了後も、マイボトル持参の方は10円引きで提供)。店頭プロモーションに携わってきた経験も持つ青山ならではのアイデアです。

 

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博報堂プロダクツ 総務部「5615CAFE&DELI」担当 青山 永味

 

 

 SDGsの第一歩を検討する企業に適した「ライスレジン®」 

 

キャンペーンやプロモーションに関わる年間約3000万個ものプロダクトの企画・開発・デザイン・製造から品質管理までをワンストップで提供するプレミアム事業本部では、専門領域を持ったメンバーから構成されるSDGsプロジェクトチームを結成し、ものづくりの観点からSDGsの実現に向けて取り組んでいます。その一例が「ライスレジンであり、同プロジェクトの中心となるプロデューサーを務めるのが岡本尚樹です。

「私はプロデュース業務を通じてクライアント企業の担当者と接する機会が多いのですがSDGsに対して何か取り組まなければいけない危機感を覚えていながら、具体的な施策に迷われる企業から『博報堂プロダクツさん独自のもの、強みは何ですか?』と聞かれることが多く、ニーズの高さを実感していました。

そんな中、昨年5月から『ライスレジン®プロダクトプロジェクト』がスタートしたのですが、個人的に非常に面白いと感じました。国内の食べられなくなったお米を原料にするというコンセプトも良かったですし、お米のプラスチックって日本人にとってすごく親しみやすいですよね」

ライスレジン®はプラスチック樹脂とお米を混ぜ合わせて作られるので、天然由来100%のバイオマスプラスチックではありませんが、化石由来燃料の使用削減やCO2排出の低減に貢献している素材といわれています。それらの点についても、岡本は「むしろ可能性を感じた」のだと言います。

「環境負荷軽減の観点だけで言えば、天然由来素材が理想ですが、導入するにはコスト面、加工性からもハードルが高い。石油資源の利用をゼロにはしていないけれども、コストが低いライスレジン®ならばスモールスタートでSDGsの取り組みを実践することが可能になる。今すぐできる、みんなが取り組める、リアリティあるSDGsの第一歩だと感じています」

 

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博報堂プロダクツ プレミアム事業本部 プロデューサー  岡本 尚樹

 

 

 国産バイオマス素材ならではの価値と優位性 

 

全世界的な問題となっている地球温暖化の防止や化石資源への依存度低減に貢献する資材として、活用が進められているバイオマスプラスチック。その原料の主流はトウモロコシとサトウキビです。いずれも主要生産国は海外になります。一方、ライスレジン®は「お米」由来の国産バイオプラスチックとして誕生し、注目を集めています。このプロジェクトに携わり続けている、株式会社バイオマスレジンマーケティング様の杉原孝行様から、その価値や優位性を解説いただきました。

「新たなバイオプラスチックを開発するにあたり、いろいろ模索する中でたどり着いたのがお米でした。お米は日本国内のどこでも作ることができますし、日本の文化とも言える。しかも古来から日本人は、食べられなくなったお米を糊として活用するなど大切にしてきました。ライスレジン®も同じです。テクノロジーを活用する、技術を置き換えただけであって、根底にはお米を大切にする考えがあります。原料となるお米は、食用に適さず、従来は産業廃棄物として処理されていたお米を樹脂の原料として使わせていただいています」

 

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株式会社バイオマスレジンマーケティング 杉原孝行様

 

ちなみに、バイオマスレジングループは新潟博報堂と業務提携をしており、その流れから「ライスレジン®プロダクトプロジェクト」が実現しました。

「バイオマスレジングループはプラスチック樹脂を作る会社であって製品を作る会社ではありません。博報堂が持つソリューションの中で、いろいろなプロダクトを提案することは当社にとって大きなメリットになるはず。では、グループ内のどことタッグを組めばいいかを考えた時、やはり博報堂プロダクツがベストだと思ってお声がけをさせていただいて以来、強度を測ったり試作を作ったりと、力を合わせ続けています」

 

 

【ライスレジン®とは】

ライスレジン®の原料として用いられているのは、規格外や精米時に出る砕米や虫に食べられたお米、日本酒の醸造過程で発生する米粉、浸水被害を受けたお米など、食用に適さず産業廃棄物となった米たち。それらをポリエチレン、ポリプロピレンといった従来のプラスチック樹脂と混合して作られる。今回のストローは、原料にお米が20%使われているため、焼却時にCO2の発生を20%削減できるカーボンニュートラルの特質を持つ。バイオプラスチックながら、コストや成型性、強度などは従来のプラスチックと同等のエコフレンドリーな新時代のプラスチック素材。

 

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 「ライスレジン®プロダクトプロジェクト」はデザインにも強み 

 

ものづくりの最前線となるプロダクトデザイナーという立場から、岩尾玄樹はライスレジン®という新しいマテリアルに、どんな魅力を感じ、今後どんなアウトプットを考えているのでしょうか。

「ライスレジン®ストローに関しては、紙ストローに比べて、とても口当たりが良かったのが印象的でした。あえて着色せず、原料の色味である乳白色を生かしている点も、メッセージ性が感じられて魅力的ですよね。

素材としてかなり強い色まで着色できることは、ライスレジン®のある種の武器にもなるとも思いますが、このナチュラルな原料色は、最近のミニマルな嗜好に合うように思います。なので、この色合いを生かしたプロダクト開発に着手するべきだと考えていて、いま部内でディスカッションを進めているところです」

最近は生活者の意識も高まっており、エコな素材を使うだけでは心に響かせるのが難しい時代が訪れ始めています。「つくる責任」と対となる「つかう責任」について、どんどんリテラシーが高まっている。だからこそ、モノからメッセージを感じ取ってもらうには、ビジュアルが大事なのだそうです。

「デザインの力でできることは、長く使ってもらえたり、愛着を持ってもらったりすること。五感に響いて『これでいい、ではなく、これがいい』と思ってもらえるようなプロダクトを目指していきたいと思います。それに加え、今はモノがあふれている時代なので、施策の段階ではDXなどを用いてライスレジン®の背景やストーリーも丁寧に伝えながら、プロダクトを提案していきたいと思っています」

 

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博報堂プロダクツ プレミアム事業本部 プロダクトデザイナー 岩尾 玄樹

 

 

 2社の共創から生まれるライスレジン®の未来 

 

今後は、SDGs関連の展示会への出展なども含め、ライスレジン®を使ったプロダクトと企業との接点を増やしていきたいと言うプロデューサーの岡本。

「今後はライスレジン®を筆頭にしたさまざまな素材と、グループのリレーションやアイデアを生かして、クライアントの特性に合ったプロダクトの開発をご提案できればと考えています」

それに対してバイオマスレジンの杉原様は、博報堂プロダクツへの期待を語ってくださいました。

「ライスレジン®を使った商品は、まだそれほどのアイテムがありません。また、すでに商品化されたものは既存の金型を使って作られたものなので、デザイン性を打ち出していくのはこれからが勝負。グループ企業である博報堂プロダクツには、価値の高いノベルティやオリジナル商品、そして社会課題を解決するサイクルを世に送り出すために、ものづくりの企画やデザイン力を活かして、新しい可能性を創り出していただけると信じています」

 

 

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プロフィール

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株式会社バイオマスレジンマーケティング 杉原孝行
企画営業部 部長

時事通信社、エフエムラジオ新潟を経て、2008年新潟博報堂に入社。営業として、企業や行政の業務に携わる。特に、新潟市では、東アジア文化都市2015新潟市、水と土の芸術祭、新潟開港150周年記念事業やG20新潟農業大臣会合等の広報業務を担当した。新潟博報堂との業務提携により、2020年4月から株式会社バイオマスレジンマーケティングに常駐し、広報・PRや企業連携を担当している。

 

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博報堂プロダクツ 岡本 尚樹
プレミアム事業本部 プロデューサー

2009年博報堂プロダクツ入社。プレミアム事業領域において、食品メーカー、自動車メーカー、通信関連企業など多数のクライアントを担当。現在はプレミアムプロデュース領域の責任者として、製品の企画段階から調達過程まで、サプライチェーンのサスティナブル化推進を担当している。

 

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博報堂プロダクツ 岩尾 玄樹
プレミアム事業本部 プロダクトデザイナー

2020年博報堂プロダクツ入社 プレミアム事業本部配属。主に国内外の車メーカー、食品メーカー等の記念品・販売品・アクセサリー開発を担当。3DCGやレンダリングスキルを活かしたプロダクトデザインを得意とする。前職の文具メーカーにて独自商品・店頭ツールのデザイン実績多数。2018年グッドデザイン賞受賞。

 

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博報堂プロダクツ 青山 永味
総務部「5615CAFE&DELI」担当

外食チェーンやCVSなどの店頭プロモーションに携わったのち、現在は5615担当として、社員による5615オリジナルメニュー開発、店頭くじや朝食無料キャンペーンを取り入れるほか、様々な交流イベントを開催するなど、社員のクリエイティブなコミュニケーションを活性化させる場づくりに取り組んできた。今後、脱プラスチックやフードロス問題への対応のみならず、コロナ禍、社員の新しい働き方に寄り添う運営を目指している。