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BOVA第13回 縦型動画部門でゴールドをダブル受賞 縦型動画の“いま”をつくる、3作品クリエイターインタビュー

縦型動画はいま、特別な表現ではなく、誰もが日常的に目にし、気軽に触れるメディアになっています。その環境の中で、つくり手それぞれがどんな距離感で、どんな工夫を重ねているのか。今回の受賞作からは、そんな向き合い方の違いが見えてきます。

 

第13回 BOVA ONLINE VIDEO AWARD(主催:宣伝会議)において、博報堂プロダクツは縦型動画部門でゴールドをダブル受賞。さらに協賛企業賞を含む、3作品が受賞する結果となりました。本記事では、若手として初受賞を果たしたプランナー、異なる立場の強みを掛け合わせた共同制作チーム、そして単独制作で表現を突き詰めたクリエイターという、それぞれ異なるアプローチで縦型動画に向き合った3組にインタビュー。それぞれの向き合い方を紹介します。

 

写真左から博報堂プロダクツの飯島 百香、鈴木 大喜、小室 潤平、加賀 愛紗

ゴールド(縦型動画部門)「みて、みて!」/飯島 百香

東亞合成/10代、20代が「アロンアルフアを使ってみたい!」と思う動画
作品名:「みて、みて!」
受賞者:飯島 百香(博報堂プロダクツ)
STAFF:企画制作/博報堂プロダクツ、CD+企画+C+演出+撮影+照明+美術+編集+音楽/飯島 百香、出演(声)/飯島 采香
https://www.youtube.com/shorts/eKakB0xj87k

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「みて、みて!」の動画画像

 

若手として挑んだ、縦型動画という入口
飯島 百香(プランナー) インタビュー

 

「受賞の連絡を待っていた期間は、どうだったんだろうなと、そわそわしながら待っていました。受賞の知らせはメールで届いて、その瞬間は本当にうれしかったです。その後、受賞者発表のサイトを見て審査員コメントを読み、こういうところを評価してもらえたんだと分かったことが、自信につながりました。」

 

― BOVAの存在を知ったのは入社してから。同じ部署の一つ上の先輩が、縦型動画部門の初年度に受賞していたことがきっかけでした。若手でも挑戦できる場があると感じ、応募を決めたそう。

 

「企画を考える中で、自分は情報を詰め込みすぎてしまう癖があるなと思いました。今回は一つのことしか言わないと最初に決めて、カメラも切り返さず、一本で見せる形に振り切りました。一人で完結できるシンプルな表現を選び、最後にたどり着いたのが今回の企画。縦型動画ならではの工夫として、特に意識していたのは冒頭です。最初に動きがないと、すぐに飛ばされてしまうので、『見て見て』という大きな文字を出して、少し呼び止めるようにしました。何が起こるんだろう、というワクワク感を引き伸ばしたかったんです。」

 

「制作の中で最も悩んだのは、最後に声を入れるかどうか。石を積み上げたあとのリアクションを入れるべきか迷いましたが、縦型動画としては、生っぽさを残した方が合うと判断。SNSで見られる動画として、共感を呼ぶことを優先しました。」

 

「縦型動画は、テレビCMと比べて距離感がとても近いメディアだと思っています。生活の中で“ながら見”されるものだからこそ、完璧に作り込むよりも、少しホームビデオのような空気感や、誰かの生活に近い目線の方が届きやすいと感じています。」

 

「今回は、自分がやりたいと思ったことを突き詰めた結果、受賞につながりました。自分の感覚を信じて出してみることの大切さを実感しました。これから挑戦する若手の方には、自分が面白いと思うことを一つだけに絞ってやってみてほしいです。シンプルなものほど、意外と強いと思っています。」

 

飯島 百香(プランナー)

 

― 若手ならではの、等身大の感覚を大切にした飯島さんの作品。一方で次に続くのは、企画・演出・制作をチームで組み立て、縦型動画というフォーマットに向き合った共同制作の事例です。制作体制が変わることで、表現はどのように変わるのか。鈴木さんと小室さんの対談から、その違いを見ていきます。

 

ゴールド(縦型動画部門)「彼女はきっと」/鈴木 大喜、小室 潤平

小学館/『小学館の図鑑NEO』を思わず買いたくなる!動画
作品名:「彼女はきっと」
受賞者: 古川映(博報堂)、小室潤平・井上智寛(博報堂プロダクツ)
STAFF:企画制作/博報堂+博報堂プロダクツ、企画+C/古川映、Pr/井上智寛、鈴木大喜、制作/佐藤詩音、演出+編集/小室潤平、撮影+カラリスト/清水貴宣、撮影(助手)/安江祐汰、勝見舜、美術/秋葉彩弓、録音/西岡智、ST/白島茉奈、HM/大咲ひかり、出演/森山未唯、宮本聖矢、今井孝祐

https://www.youtube.com/shorts/1vi2Hk31Z3g

(画像タップでもリンクへ飛べます)

「彼女はきっと」の動画画像

 

共同制作で向き合った、縦型動画というメディア
鈴木 大喜(映像プロデューサー) × 小室 潤平(映像ディレクター) インタビュー

 

― まず、受賞を知ったときのことから教えてください。

 

鈴木:チームで応募していたので、博報堂のプランナー 古川さんから受賞の連絡をもらいました。BOVAからの受賞連絡のスクリーンショットが共有されて、「あ、獲ったんだな」と。企画自体がとても面白かったので、「何かしらの賞は受賞できるだろうな」という感覚は正直ありました。ゴールドだと聞いて、納得感が大きかったです。

 

― 小室さんをアサインする流れも、かなり自然だったそうですね。

 

鈴木:企画書を見た段階で、「これは小室さんだよね」という話になりました。
ギャグやポップな映像の実績もありますし、この企画にハマるイメージが、全員の中ではっきりしていたんです。

 

小室:プレッシャーですね(笑)

 

鈴木:でも、チーム自体が年次も近くて、かなりフラットに話せる関係性だったからこそ、変に構えず、自然に決まった感じでした。

 

― 普段から一緒に仕事をしていた関係性も大きかった?

 

鈴木:そうですね。直近1年くらいは、古川さんや井上さんとも、地方ロケや長期間の案件を含めて、ほぼ一緒にやっていました。その積み重ねがあって、BOVAも自然な延長で挑戦できたと思います。

 

― 縦型動画として、特に意識したポイントは?

 

鈴木:一番は、スマホ視聴を前提に「広告っぽさ」を感じさせない表現設計でした。日常のストーリーに、どう溶け込ませるか。その距離感はかなり意識しています。フォントや色、テロップの使い分けも、行き当たりばったりではなく、最初から意味性の整理を重視した設計にしていました。

 

小室:僕自身、横型と縦型の両方を知っている世代なので、サムストップできるか、冒頭で引きつけられるか、そういう縦型動画特有の感覚は自然と身についている感じがあります。縦型動画って、「友達の投稿の延長」くらいの距離感で見られることが大事だと思っていて。今回は、そこを崩さないように意識しました。

 

― 演出面では、どんなことを加えていったんでしょうか。

 

小室:企画の文字情報自体がすでに面白かったので、僕はそれを映像として成立させる役割に徹しました。タコパの設定とか、同棲カップルの関係性とか、説明になりすぎない範囲で、「状況がすっと伝わる」ディテールを置いていく感覚です。雑に見えても、情報は整理されている。TikTok的な面白さと、広告としての意味性は、両立できると思っていました。

 

― スマホ撮影か、カメラ撮影かで悩んだ部分もあったとか。

 

鈴木:ありました。生っぽさだけを取るならスマホもありでしたけど、プロダクツとしての強みを考えた時に、スタッフを組んだ映像制作を選びました。


小室:どちらが正解という話ではないですけど、今回は企画の完成度や構成力を考えると、きちんと撮る判断が合っていたと思います。

 

― キャスティングも印象的でした。

 

小室:20秒以内でアドリブに対応できて、しかも振り切った表現ができる演技力。そこはかなり重視しました。森山 未知さんをピンポイントでお願いして、現場で実際に掛け合いをすることで、生っぽいグルーヴがちゃんと出せたのは大きかったですね。

 

― 今回の受賞から得た学びについて教えてください。

 

鈴木:最初から「縦型動画を前提」で考え抜いた制作は、自分にとっても大きな経験でした。正解がない中で、チーム全員で考え続けるプロセス自体が、普段のCM制作にも確実に還元できています。

 

小室:縦型動画って、まだ「ダサい」と言われがちな部分もありますけど、映像フォーマットの変化は、これまでも何度も繰り返されてきました。早く順応した人が評価されるフェーズに、いまは来ているんじゃないかなと思います。

 

博報堂 クリエイティブ局 アクティベーションプラナー 古川 映

数々の検証依頼にも「BOVAだからこそ、遠慮せずなんでも言ってください。チームでやりましょう!」と明るく対応してくださった小室さん。自分の企画を見すぎて「はたしてこれは面白いのか…」と不安になったときも、企画を信じて背中を押し続けてくれた井上さん、鈴木さん、佐藤さんたち制作部チーム。何テイクもチャレンジしてくれたキャストの皆さん。関わってくださったみなさんに感謝です。縦型動画はこれからもっと開発されていく領域だと思うので、今回の受賞で新しく自分に来た打席を大切にして、もっといいものをつくっていきます。

 

小室 潤平(映像ディレクター)×鈴木 大喜(映像プロデューサー)

 

協賛企業賞(縦型動画部門)/加賀 愛紗

オートウェイ/雪道コワイを超える!オートウェイでタイヤを買いたくなる動画
作品名:「ノれ! ウェイウェイオートウェイ!」
受賞者:加賀 愛紗(博報堂プロダクツ)
STAFF:企画制作/博報堂プロダクツ、CD+企画+演出+編集+音楽(AI生成)/加賀 愛紗
https://www.youtube.com/shorts/DIiQoG3i2gU

(画像タップでもリンクへ飛べます)

「ノれ! ウェイウェイオートウェイ!」の動画画像

 

発想を起点に、企画からアウトプットへ一気に形にするAI生成
加賀 愛紗 (映像ディレクター)

 

― 加賀さんは今回、単独制作でBOVAに挑戦しました。音楽など一部の表現には、AI生成も取り入れています。受賞の連絡は、生成AIの使用に関する確認もあり、少し早めにメールで届いたと言います。

 

「こうしたコンペや広告賞系の制作では、やりたいアイデアがあっても、制作過程で関わる人や工程、予算の制約の中で解釈が増えていくことで、当初の意図が少しずつ変化してしまうことがあると感じています。もちろんそれ自体が制作の面白さでもある一方で、最初に考えた意図を保ったまま形にする難しさも感じていました。そうした中で、AIを活用することで、企画からアウトプットまでの距離を短くし、意図をできるだけダイレクトに形にできる可能性を感じたのが今回の出発点です。」

 

「今回の企画は、輸入タイヤに対する「怖い/難しそう」という印象を、音楽表現の楽しさで反転させることを狙いました。企業名に含まれる「ウェイ」という響きを繰り返すと、楽しいなと思ったんです。そこから名前の反復によって親しみが生まれる楽曲構成にしています。また、縦型動画では冒頭数秒で視聴が決まるため、最初に「怖がるコワモテのラッパー」を置き「何が起きてるんだ?」という違和感からAUTOWAYの世界観に入っていく構成にしています。まず歌詞と企画を起点に全体構成を設計し、ロゴの反復表示(30秒で8回)など、縦型動画ならではの記憶設計も組み込んだ上で、AI生成およびAIでの音楽制作へと移行しました。」

 

「AI生成の魅力は、実写ではコストやリスクの面で難しい表現にも挑戦できる点にあります。今回の作品も、実際に撮影すれば費用はかなり高額になる内容でした。制作期間はおよそ5日間で、構成に合わせてAIでビジュアルや音楽を生成し、複数案を比較しながら流れやテンポが成立するものを選び取って構成しています。」 

 

「制作は全体としてスピード感を持って進めることができ、その中で最終的な形まで一気にまとめていけた点は、AIを活用した制作体制の利点だと感じています。一方で、細部の設計やクオリティ面では改善の余地もありますが、縦型動画というフォーマットにおいては、その揺らぎやラフさも含めてオーガニックな見え方につながる要素だと捉え、あえてその状態も含めて成立させる判断をしています。」

 

「縦型動画は、とても個人的なメディアだと思っています。きれいに整った映像というよりも、時代に合ったスピード感や個人の発想・意見など、オーガニックな空気感そのものが視聴につながる領域だと感じています。過度に作り込まずとも成立する特性だからこそ、設計には工夫が必要だと感じています。一方で、AIっぽい表現にも視聴者は少し飽きてきている部分があると思うので、企画や編集の中でAIをどう拡張していくか、あらためて考えていく必要があると考えています。」

 

― 直感的な発想をそのまま試せるスピード感と、生成AIの柔軟さを使いながら、少し尖った映像表現にも踏み込めたことは、単独制作ならではの感覚だったといえます。今回の協賛企業賞は、そうした姿勢そのものが評価されたと感じさせる結果でした。

 

「今後も縦型動画とAIを活用した制作には継続して取り組んでいきたいですし、スピード感と設計のバランスを探りながら、表現の幅を広げていければと考えています。」

 

加賀 愛紗 (映像ディレクター)

 

― 今回受賞した3作品に共通しているのは、縦型動画を特別な手法としてではなく、日常的に触れられるメディアとして捉えている点です。世代性やつくり方の違いを通して、博報堂プロダクツが描く縦型動画の“いま”が、3作品それぞれのかたちになっています。