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DE&I時代のCM映像制作を支える「クローズドキャプション」とは

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高齢化社会の進展に伴い、音声情報を文字化する字幕つきコンテンツが増えています。テレビ字幕がすべての視聴者のサポートとして定着しつつある一方で、普及が遅れていたテレビCMもクローズドキャプション(CC)方式の字幕を導入する動きがあります。サステナブルな社会の実現にも大きな役割を果たすと期待されるCC技術をテレビCMで活用する際の課題やDE&I時代のクリエイティブのあり方について、映像クリエイティブ事業本部の石田駿弥、REDHILL事業本部の斎藤美恵子、堀岳人に話を聞きました。

 

【目次】

■「字幕付きCM」が注目されるようになった背景

■音声情報をより分かりやすく正確に伝えるために

■テレビ以外にも広がるクローズド・キャプションの可能性

 

 

■「字幕付きCM」が注目されるようになった背景

 

──そもそも「クローズドキャプション(以下、CC)」とはどのようなものでしょうか。

 

斎藤:CCは主にテレビの音声が聞こえない、聞こえにくい人のための字幕で、現在地上波で放送されているドラマや映画など多くの番組で採用されています。

 

──洋画の日本語字幕やバラエティ番組のテロップ(字幕スーパー)とは何が異なるのでしょう。

 

斎藤:翻訳の字幕や番組のテロップなどオープンキャプション(OC)との大きな違いは、視聴者がリモコンの「字幕」ボタンで表示と非表示を切り替えられることです。また、映像内の状況を伝えることを第一の目的としているのも特徴です。例えば、話者を「(話者名)こんにちは。」のように表示したり、演出上の効果音(SE)も必要に応じて「(小鳥の鳴き声)チュンチュン」のように表示することがあります。

 

 

──普段あまり意識したことがなかったのですが、大きな音が出せない病院の待合室のテレビに表示されているのを見たことがあります。

 

石田:字幕放送は災害時の情報提供などでも欠かせません。また、電車の中で音を出さずにスマートフォンで映像を見るなど視聴スタイルも多様化しているので、CCかOCかを問わず情報を文字でも伝えることの重要性は増していますね。私自身はテレビ制作の出身で、これまでOCを多く取り扱ってきました。字幕付きのCMには客観性や公平性を保つための制約だけでなく、クリエイティブ表現とのバランスなど考えることは多いため、日々より良い形を求めて試行錯誤を重ねながら仕事をしています。

 

──REDHILL事業本部では、2023年6月よりCMの映像制作でもCCに対応したということですが、そのきっかけは何だったのでしょうか。

 

斎藤:テレビCMにも字幕としてCCを付けようという動きは2014年から始まっていて、当初は1社提供枠の番組に限って字幕付きCMのトライアル放送が行われていました。

 

REDHILL事業本部 アカウント部プロデュースチーム チームリーダー 斎藤美恵子

 

──なぜ、1社提供枠のみだったのですか?

 

堀:これは複数企業の提供番組の場合、CMによって字幕の有無があると、字幕の付いていない企業のCMが悪目立ちしてしまうのではないかという懸念があったことに加え、技術的な理由で、字幕付きと字幕なしのCMが混在していると、放送局によっては字幕が他社のCMにずれ込んでしまう放送事故が発生するリスクが懸念されたためと聞いています。その後、検討を重ねた結果、2022年10月からすべての放送枠で字幕付きCMの受け入れが開始されたことを契機に対応を決めたという流れです。

 

──比較的最近の出来事なのですね。字幕付きCMの普及率は現在どのくらいなのでしょうか。

 

斎藤:オンライン送稿の基盤整備・運営を行っている広告EDIセンターのサーバに送稿された字幕CMタイプ数は、2023年5月時点で9.5%となっています。2023年2月に「字幕付きCM素材搬入基準」が改定されてからは増加傾向にありますが、字幕付きCMの制作には専用の機材やCC特有の表現様式に精通している必要があります。

 

■音声情報をより分かりやすく正確に伝えるために

 

──クローズドキャプションをテレビCM制作に導入する際の注意点などはありますか?

 

堀:詳細な内容は<日本広告業協会「字幕付きCM Portal WEB SITE」>で公開されているのでご覧いただきたいのですが、基本的なルールが2つあります。1つ目はCMの冒頭とラストの1秒には字幕を表示しないこと、2つ目としては、各字幕は最低2秒以上表示しなくてはならないというものです。つまり、15秒のCMであれば字幕が挿入できるのは13秒で、字幕の画面は最大で6枚までとなります。

 

REDHILL事業本部 ポストプロダクション一部  プリント・システムチームチームリーダー 堀岳人

 

斎藤:音声のタイミングに合わせて字幕を切り替えられればいいのですが、2秒ルールからずれてしまうのでわずかに早く出すこともあります。また、注意書きの上に表示してはいけないので、表示位置についても工夫しています。

 

堀:CCはセリフや音声をすべて文字にするのではなく、音声情報を保証するという目的があります。そのため、本来伝えたいメッセージを明確にするために、表記する情報を整理する必要があります。特にCMの字幕ではその点が非常に重要ですね。

 

──どのようにCC用のテキストが作られていくのですか。

 

堀:基本的な制作フローとしては、元素材となる映像と音声内容が分かるコンテなどの資料をいただいてから、画面に出ている音の中で、どの音を字幕にしていくかを取捨選択します。そこからCCの表現様式と運用ルールに合わせて専用のソフトで字幕データをファイルに埋め込んで、CCの表示を一般的な映像ファイル形式に書き出して目視でプレビューします。

 

 

斎藤:映像に表示されるCCを客観的に見た時にどう感じるのかを考えながら、より分かりやすくするにはどうしたらよいか迷ったところは複数人でチェックし、多様な視点で意見を出しながら検証を重ねて仕上げています。

 

石田:プロデューサー視点としては、CCに求められる客観性とCM映像のクリエイティブとの兼ね合いを俯瞰して捉えています。視聴者にとっての分かりやすさ、クライアントとしての希望、映像クリエイターが追求したい表現といった三者三様の考えから最適な場所を探っていきたいと思っていて、多様な視点から抜け漏れがないかをチェックするようにしています。

 

映像クリエイティブ事業本部 コンテンツプロデュース部 プロデューサー 石田駿弥

 

──文字の表記やフォントにはルールがあるのでしょうか。

 

斎藤:CCの表示は最終的にテレビに内蔵されたフォントを使うので、制作サイドでは全角、半角、ルビといった文字種以外は指定できません。また、テレビのメーカーごとに表示の仕様が若干異なるため、厳密にまったく同じ表示をすることはできないのです。

 

堀:用語表記を統一するためのガイドはありますが、内容によって個別に検討することも多いです。テキストを作成する際は国語の勉強をし直しているような感覚で、意外な発見もあり、面白さがありますね。

 

──字幕付き映像の制作において、博報堂プロダクツならではの強みはどこにありますか。

 

石田:私は企業のサステナビリティアクションを加速させる専門プロジェクトチーム「サステナブルエンジン」にも所属しているのですが、社内にさまざまな専門性を持つクリエーターが、実装化サイクルを通じてワンチームで課題解決に取り組めるため、意思疎通やスピード感はどこにも負けないと思います。今回のようにREDHILL事業本部の取り組みも周知しやすいですし、現にコロナ禍以降はオンラインでの仕事が増えたこともあり、サステナビリティやダイバーシティを意識した案件の問い合わせも増えています。こういう時に事業本部と横連携できることの強みを実感します。

サステナブルエンジン「実装化サイクル」 

 

 

■テレビ以外にも広がるクローズド・キャプションの可能性

 

──今回はCMにおけるCCというテーマでお話を聞きましたが、DE&Iの潮流と関連して挑戦していきたいことはありますか。

 

石田:多様性を広げるという観点では、テレビCMの映像制作だけでなくリアルタイムに生成する字幕やイベントにおけるライブ配信での活用も視野に入ってきます。すでにWeb領域ではさまざまな取り組みが始まっていて、広告映像もこの流れに対応していく必要があります。

例えばYouTubeにはCCを付与する機能があり、歌詞をCCにしているアーティストもいます。また、SNSのタイムラインでは動画の音声をオフにしている場合が多いので、テレビCM用の字幕をSNS向けにオープン化して付け直すといった動きもあります。いずれもプラットフォームごとの仕様は異なりますが、表現としての自由度は高いのでこれまでの映像制作のノウハウを活かすことができます。私たちとしては、デザインした字幕込みで演出できることを提案していくことが大切ですね。

 

堀:家で子どもたちが、CCを通じて文字への関心を深めてくれたことは、嬉しい発見でした。次世代にとっては、このようにして暮らしの中に自然とDE&Iの価値観が根付いていくのだと実感しました。字幕については最近手掛け始めたばかりということもありますが、私自身は技術者なので新しい知識や技術に対して貪欲に楽しみながら学んでいきたいと考えています。

 

斎藤:字幕付きCMでは冒頭に[字幕]というロゴを表示する仕様もあるのですが、これは任意であって必ず表示しなければならないものではありません。CMに字幕を入れるのは当然のことですから、あえて表示する必要はないと考えるクライアントもおられると思います。考え方はさまざまありますが、不利益を講じずに選択できるようすべてのCMが字幕付きになればいいなと思います。問い合わせの窓口として丁寧でわかりやすい対応をし、その手助けの一端を担えればと思います。

 

 

 

【プロフィール】

石田駿弥

映像クリエイティブ事業本部 コンテンツプロデュース部 プロデューサー

大学卒業後、テレビ番組制作会社でバラエティ番組、生放送番組の制作を経験し、2018年博報堂プロダクツ入社。博報堂プロダクツ「ライブクリエイターズ(PCL)」「サステナブルエンジン」のメンバー。

 

斎藤美恵子

REDHILL事業本部 アカウント部プロデュースチーム チームリーダー

2005年から博報堂プロダクツの前身である博報堂フォトクリエイティブに派遣社員として就業。2012年博報堂プロダクツ入社。プリントデスクとしてテレビCM等映像コンテンツの納品に携わる。

 

堀岳人

REDHILL事業本部 ポストプロダクション一部  プリント・システムチームチームリーダー

2010年10月博報堂プロダクツ入社。TVCMのオンライン編集アシスタント/エディターを経てテレビCMのオンエアプリント(放送局へ納品するビデオテープ/ディスクのダビング)やオンライン送稿の業務に従事。オンライン送稿開始時には技術実証実験に参加。REDHILLの業務ワークフロー構築やシステム環境整備・メンテナンスも担当。