博報堂プロダクツ 代表取締役社長 岸 直彦
2023年を「サステナブル元年」に――。博報堂DYグループの総合制作事業会社である博報堂プロダクツは今年をそのように位置付け、経営方針にサステナビリティを組み込み、顧客企業のサステナビリティ行動を加速させる取り組みを始動した。広告やSP(セールスプロモーション)などの制作物を「こしらえる」ことを生業とし、成果に結びつける実施力を備えた同社は、サステナビリティ領域への関与をさらに深めることで、顧客企業に持続可能な価値を提供していく。
リスクと機会、2つの取り組みを展開
博報堂DYグループの総合制作事業会社として2005年に設立され、今年で18年目を迎えた博報堂プロダクツ。グループのDNAである「生活者発想」を大切にしながら、様々な広告やイベント、ウェブサイト、ノベルティーなどの制作を手掛けている。
「動画クリエイティブや、デジタルプロモーション、リテールプロモーションなど、12の領域で事業を展開しています。単なる『制作会社』ではなく、『総合制作“事業”会社』として、事業ごとに専門性の高いサービスを提供しているのが強みです」と語るのは、代表取締役社長の岸直彦である。
同社の「事業」という点へのこだわりは、非常に強い。広告やプロモーションは、商品やサービスが売れてナンボである。そうした成果がしっかり表れるように、博報堂プロダクツは「こしらえる」という企業理念を掲げ、妥協のないものづくりを行っている。
「広告・プロモーションの表現や仕掛けづくりにおいて、『どうすれば成果に結びつくのか?』という一点から逆算し、徹底的に創り上げるのです」と岸は説明する。
博報堂プロダクツは、2023年を「サステナブル元年」と位置付け、自社の経営や顧客への提供価値を持続可能とする活動を本格的に始動した。スローガンは、「こしらえるを、もっとサステナブルに。」である。
「博報堂DYグループが掲げる『生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現』というサステナビリティゴールの達成に向けて、我々ならではの取り組みを考えました。具体的には、リスクを抑制しながら企業としての責任を果たす『サステナビリティ マネジメント』と、アイデアの社会実装を推進し、ビジネス機会を最大化する『サステナビリティ アクション』の2本柱で活動を展開していきます。この2つの取り組みを下支えするのが、『こしらえる』という企業理念です」(岸)
「P+ESG」をサステナビリティ活動のフレームに
そもそも、博報堂プロダクツはなぜ、今年を「サステナブル元年」と位置付けたのか? 「そこには複合的な背景があります」と岸は語る。
「まず、クライアントのサステナビリティに対する意識が飛躍的に高まってきたこと。それに伴って、我々が受注する事業でも、クライアントのサステナビリティ活動に関するサイトの制作や、脱炭素関連イベントの開催、環境配慮型パッケージの制作といったものが増えてきました。実施する力や、成果をもたらすことにこだわりを持ってきた当社としては、お客さまの変化に先んじて対応し、サステナブル領域でも同じように成果を提供できるようにならなければなりません」
さらに、クライアントの先にいる生活者の価値観が大きく変化している。
「2025年には世界の生産年齢人口の半分がミレニアル世代、Z世代になると言われています。環境や人権といった問題に敏感なこの世代の人々の価値観にしっかりと向き合うことは、『生活者発想』を大切にしてきた我々にとって欠かせない取り組みであり、いまこそ動き出すべきだと判断したのです」(岸)
社内における「サステナビリティ マネジメント」の方向性を定めるため、博報堂プロダクツは「サステナビリティ方針」を策定した。
その特徴は、「ものづくり」の会社であるというこだわりと責任のもと、ESG(環境・社会・ガバナンス)に、P(ものづくり)を加えた「P+ESG」をサステナビリティ活動フレームとしたことである。
「各事業本部には1万社を超える協力機関との取引があり、サプライチェーンに対する責任を負っています。ノベルティー商品などの企画・製造を請け負う事業本部は、文字通りの『ものづくり』に携わっているので、サプライヤーだけでなく、品質・安全についても責任を負わなければなりません。『こしらえる』を理念に掲げる会社だからこそ、ESGにPを加えた活動フレームにすべきだと考えました」(岸)
博報堂プロダクツのサステナビリティ活動は、ESG(環境・社会・ガバナンス)に、P(ものづくり)を加えた「P+ESG」を活動フレームとしている。「ものづくりの会社」としての責任を果たすため、Pには、サプライチェーンマネジメントの他、品質・安全の保証、消費者保護と情報セキュリティーなどを含んでいる。
今年度中に環境マネジネントシステム ISO14001認証を取得へ
サステナビリティ活動フレームにのっとったサプライチェーンマネジメントを実践するため、博報堂プロダクツは「サステナビリティ調達ガイドライン」を策定した。
サステナビリティ調達に関わる30項目の重要指標を特定した上で、「人権」「労働慣行」「環境」「公平な事業慣行」「消費者課題」「品質・安全」「管理体制の構築」の7分類に構成したガイドラインである。
また、環境に関する取り組みでは、今年、社員やグループ会社に配布した卓上カレンダーの仕様を見直している。昨年までは1カ月1枚、計12枚で構成される卓上カレンダーを制作したが、今年は1枚の表裏に1カ月ずつ、計6枚にして使用する紙を減らし、製造過程で発生するすべてのCO₂をオフセットするCO₂ゼロ印刷を採用した。「こしらえるを、もっとサステナブルに。」を身近なところから実践したのだ。
「小さな取り組みかもしれませんが、机の隅にこの卓上カレンダーがあることで、社員はサステナブルを常に意識するようになります。社員一人ひとりに、それぞれの事業の専門性だけでなく、サステナブルに関する意識も併せ持ってほしいという狙いがあります」と岸は話す。
社員の意識向上を狙ったもう1つの取り組みとして、ものづくりに携わる事業本部を対象に、今年度中に環境マネジメントシステム ISO14001の認証も取得する予定だ。
サステナビリティの実現で、社会をポジティブにしたい
一方、ビジネス機会を最大化し価値を提供していく「サステナビリティ アクション」の一つとしては、2023年4月にサステナビリティサイト「こしらえるを、もっとサステナブルに。」を開設した。同社が掲げたサステナビリティ方針や、サステナビリティ調達ガイドライン、具体的な活動について伝えるためのもので、共感性の高いサイトにするため、動画やアニメーションで訪問者の目線を惹きつける魅力的なデザインを施しているだけでなく、ウェブアクセシビリティの確保にも取り組んでいる。
博報堂プロダクツが開設したサステナビリティサイト「こしらえるを、もっとサステナブルに。」のトップページ。これからの社会にフィットするサステナビリティサイトのあり方を追求し、同社らしいストーリーで共感性の高いコミュニケーションにするため、社内の専門チームによるイラストを起用した動画やアニメーションで訪問者の視線を惹きつける魅力的なデザインを施した。
さらに5月30日には、クライアント企業のサステナビリティ アクションを支援する専門プロジェクトチームとして、「SUSTAINABLE ENGINE(サステナブルエンジン)」を発足した。
総合制作事業会社としての強みを生かし、それぞれの事業に関する高い専門性と、サステナビリティ アクションに関する知見や実績、情熱を兼ね備えた約30人の社員を抜擢して組織したプロジェクトチームだ。
「クライアントごとの課題に合わせて、『パーパス構築』『コミュニケーション設計・発信』『具体化アクション』という、サステナビリティ アクションの実装化サイクルを構成する3つのプロセスを支援します。各事業領域それぞれの専門性を発揮しながら、互いの知見を融合させることによって総合的なソリューションを提供できるのが特徴です」とサステナブルエンジンメンバーは語る。
このプロジェクトチームによる活動を着火点として、「数年後には、プロジェクトメンバーだけでなく、約2000人の全社員が、それぞれの専門性とサステナビリティに関する意識を兼ね備えた人材になるようにしたい」と岸は語る。
また、クライアントの課題を解決する時には、サステナビリティへの配慮が当たり前となるように意識変革を図りたいという。
「そのための人材教育にも力を入れていきますし、人材採用においても、サステナビリティを体現するため、人種や国籍、ジェンダー、障がいの有無などで分け隔てすることなく、多様な人材を迎え入れたいと思っています。多様な価値観を内包させることが、組織全体にサステナビリティの意識を浸透させるからです」
最終的には、「サステナビリティの実現によって、社会そのものをポジティブに変えていきたい」と岸氏は抱負を語る。「こしらえるを、もっとサステナブルに。」を目指す博報堂プロダクツの取り組みに、終わりはなさそうだ。
岸と「SUSTAINABLE ENGINE」のメンバー
博報堂プロダクツ サステナビリティサイト
https://www.h-products.co.jp/sustainability/
SUSTAINABL ENGINE
https://www.h-products.co.jp/sustainability/engine/
博報堂プロダクツ「企業のサステナブルコミュニケーションに関する調査」2023年5月
https://www.h-products.co.jp/topics/entry/2023/05/23/140000
※本記事は、日経BPの許可により日経ビジネス電子版2023年6月5日-7月4日に掲載した広告を転載したものです。