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総合制作事業会社が手がける、地方の課題解決専門チーム「地方創生特化型チーム(LGTF)」

 

地方自治体は人口減少や少子高齢化、空き家問題や地場産業の衰退など多くの課題を抱えています。これらの課題解決に挑むため、博報堂プロダクツでは初の試みとなる地方創生に特化した新プロジェクト「地方創生特化型チーム/Local Government Taskforce(ローカル ガバメント タスクフォース)」を発足。

新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の感染拡大を受けて、未曾有の経済停滞にさらされた2020年。地方で頑張る企業や地方自治体のために、地方が抱える課題に取り組み、地方の元気を取り戻すべく、博報堂プロダクツの強みであるデジタルスキルを活用し、社会課題解決をめざしています。
「地方創生特化型チーム(LGTF)」では、2022年10月に徳島県那賀町との地域活性化包括連携協定締結、2023年1月には熊本県氷川町との同連携協定を締結。今回は「地方創生特化型チーム(LGTF)」メンバーを代表して、総合プロデューサーである、板垣信行 九州支社長と那賀町、氷川町を担当した森昭二と大楠かりあにインタビューしました。

 

森 昭二:那賀町プロジェクト プロデューサー/九州支社

板垣 信行:総合プロデューサー/執行役員 兼 九州支社長

大楠 かりあ:氷川町プロジェクト プランナー/九州支社

 

 

 

デジタルを活用して地方を元気に。そして、日本を元気に。

地方の最大の課題は「人口減少」

 

 

──九州支社では地方が抱える課題を解決するためのタスクフォースを発足させたとお聞きしました。これはどのような取り組みをする組織でしょうか。

 

板垣

普段から九州各地の地方自治体のさまざまな課題と向き合ってきた博報堂プロダクツ九州支社のメンバーたちが、部署を横断して集まったプロジェクトチームです。そのため、九州支社内に専門の部署があるわけではなく、さまざまな得意分野を持つプロデューサーやプランナーが参加するタスクチームとして、機動的に行動し、地方が抱える課題の解決に挑む取り組みです。

 

 

──地方の課題解決に特化したプロジェクトが始まるきっかけは何があったのでしょうか。

 

板垣

これは九州地方に限ったことではありませんが、コロナ禍によって地方の経済は大きく疲弊しました。九州であれば観光地のインバウンド需要の激減や行動制限によるエンターテインメント施設や飲食店の休業、農産物の出荷減などあらゆる業種の民間企業が窮地に追い込まれたのは皆さんもご存知のとおりです。その一方で、地方自治体は民間企業が経営を存続させるための持続化給付金配布業務や、ワクチン接種、マイナンバーカード普及など、早急に対応しなくてはならない業務が矢継ぎ早に増えていきました

 

 

──多忙を極めるようになった地方自治体を支援するための取り組みなのですね。地域によって違いはあると思いますが、共通する大きな課題として何がありますか?

 

板垣

課題そのものについてはコロナ禍よりも前の2014年から「地方創生」の文脈で指摘されているように、東京一極集中と地方の人口減少が根本的な課題です。その解決のために、移住定住の促進や「ふるさと納税」など交流・関係人口を増やす取り組み、産業振興と地域のブランディングなどさまざまな施策がありますが、やはり地方にとっては“人口減少に歯止めをかけること”が最大の目的となります。実際に人口動態などをWebサイトで確認すると、九州の274ある自治体のうち人口が増えているのはほんのわずかです。私たち自身も九州に拠点を置く企業として、そして生活者として人口減少の問題はリアルに感じていて、地方の消滅はそのまま日本がなくなってしまうという危機感を強く持っています。

 

 

──例えば、具体的にはどのような規模の自治体と取り組むことを想定されていますか。

 

板垣

人口ベースの話ですと、東京であれば大きい市や区では50万人を超え、小さくても5万人以上が住んでいますよね。しかし、九州では県庁所在地などを除けば人口4000人くらいの自治体も珍しくありません。大手コンサル会社や広告会社では人口5万人以下の小規模な自治体を対象とする取り組みは少ないと思われますが、一番困っているのはまさにその規模の自治体です。ですので、私たちはたとえ人口1万人に満たない山間の村であっても、九州や四国など西日本のエリアでご相談があれば、すぐにお話を伺う方針です。そして、地元で頑張る企業や自治体のために、私たちの強みであるデジタルスキルなどを活かして地域活性化に貢献していくことが大きなミッションです。



 

地域の課題も魅力もさまざま。2つの自治体と長期の包括連携協定を締結

 

 

──地域の活性化といっても一筋縄ではいかない課題と思われますが、実際にどのような流れでプロジェクトを進めていくのでしょうか。

 

板垣

自治体によって課題は異なり、複雑に絡みあっており、その範囲も多岐にわたることがほとんどです。そのため、地方自治体の単年度の予算で個別の課題のみを解決するプロジェクトでは大きな効果は見込めません。そこで、自治体とは地域活性化のための包括連携協定を結んで、交流人口や関係人口の増加、移住定住人口の増加、地場産業の振興、自治体サービスの向上など必要な施策を含めた総合的なブランディング活動が必要であり、私たちはそのご提案をします。幅広い取り組みとなるため、最低でも3年以上かけて長期的に取り組んでいくのが基本です。

 

 

──すでに協定を結ばれた自治体ではどのような取り組みが行われていますか。

 

板垣

昨年10月に包括連携協定締結を発表した徳島県那賀町との取り組みが進んでいます。那賀町とのきっかけは自治体の課題と企業の解決力をマッチングさせる「自治体CONNECT」というサイトです。那賀町の担当者から「空き家対策」「農業・林業振興」などの課題を投稿いただいていて、オンラインでお話を伺ったというのが始まりでした。

 

那賀町は徳島県南部の山あいにある森林や清流がとても美しい町で、柚子や高級杉材の産地としても知られています。人口は約7000人ですが、町が琵琶湖と同じくらいの広大な面積なので、普段車で走ってもほとんど住民とすれ違わないほどです。

 

 

「那賀町みらい創造プロジェクト」メインビジュアル

 



── 「那賀町みらい創造プロジェクト」のメインビジュアルにはドローンが飛んでいますね。

 

これは私たちが訪れる前から、全国でも珍しい専門部署「ドローン推進室」が那賀町役場に設置されていました。那賀町は「日本一ドローンが飛ぶまち」というキャッチフレーズでの町づくりに取り組んでおり「徳島県版ドローン特区」にも指定されています。
当初、豊かな自然の中でドローン飛ばし放題というイメージを持っていましたが、実際のところは少し事情が異なりました。というのも、ドローンによる実証実験をすることは決まっていたものの、活用というところまではまだ進んでいませんでした。いかにユニークな取り組みであっても単独でその効果を上げることは難しく、プロジェクト全体を見渡して総合的にコーディネートしていく役目を私たちが担う必要性を実感しました。現地に何度も訪れて、役場のドローン推進室の担当者からお話を伺ったり、現地で数回ワークショップを開催したところ、私たちに地域活性化のプロジェクトマネージャーとしての役割を期待されていることもわかりました。

 

 

那賀町ワークショップの様子

 

 

 

 

──そうすると、地元の人からの期待は最初の予想以上に大きかったのですね。

 

包括連携協定の調印式が地元新聞で報道されて以降、私たちを見る目は変わったと感じています。宿に泊まった際も「博報堂プロダクツの人ですよね」とお声がけいただいて感動しましたが、同時にその期待に応えなければという気持ちが一層強くなりました。


── 続いて、今年1月に熊本県氷川町と包括連携協定を結ばれましたが、那賀町のときと異なる要素はありますか?

 

板垣

私たちの取り組みに興味を持っていただいた熊本県氷川町は、県中央部の平坦な土地にあって、近隣の熊本市や八代市などとの交通アクセスも良好なため、那賀町よりも人口密度が高いことが大きく異なります。そのため、氷川町の魅力をどのようにブランディングして、打ち出していくかという戦略も変わってきます。こちらのプロジェクトは始まったばかりで注目度も高いので、地元の皆さんを広く巻き込んでこれから変わっていく様子を見ていただきたいと考えています。

 

 

── 実際に氷川町のプロジェクトを担当してみて、町の魅力をどこに感じましたか。

 

大楠

氷川町は、町の中央部を名前の由来にもなっている「氷川」が流れ、様々な農作物ができる肥沃な農地が広がっています。梨やいちごなど農業が盛んで、畳で使うい草の日本有数の産地でもあります。一面に広がる田園風景も印象的で、「氷川町タウンブランディングプロジェクト」のメインビジュアルでは、田園を背景に走り出す子どもたちの姿と「未来の地図に輝く町へ。」というキャッチコピーで田園都市としての氷川町のイメージを表現しました。
これから具体的にどのように発信していくかは、現在調査・検討している最中ですが、氷川町はICT教育の取り組みにも積極的であり、郊外でのびのびと子育てしやすい環境であることも大きな魅力として打ち出していければと考えています。

 

 

「氷川町タウンプロジェクト」 メインビジュアル

 

 

 

 

地方が元気になれば日本も活性化する

 

 

──地域活性化の取り組みは始まったばかりとも言えるので気が早いかもしれませんが、将来的な展望はいかがでしょうか。

 

板垣

すでに地域活性化についてのご相談をいくつかいただいています。まずは那賀町と氷川町のプロジェクトをしっかりと進めていきたいというのはもちろんですが、「地方創生特化型チーム(LGTF)」の取り組みを広く知っていただくためにも継続した情報発信をしていく必要があります。

 

 

──同じような課題意識を持つ多くの地方自治体に知っていただくにあたり、博報堂プロダクツ 九州支社として提供できる他にない強みは何でしょう。

 

板垣

自治体のDXに貢献できるデジタルスキルや長年培ってきた総合制作事業会社としてのブランディングやコミュニケーション施策のノウハウなど多数ありますが、よりわかりやすいところで言えば、私たち九州支社は、九州に拠点を置いているため、地元目線で考えられるのと同時に、本社と連携することで、東京など大都市圏の生活者の視点も持ち合わせていることは大きな強みです。

 

 

──地方と東京の視点を持ち合わせるとはどういうことでしょう?

 

板垣

地方の最大の課題である「人口減少」を考える場合、見落とされがちなデータがあります。都市部は人口の社会増は進んでいても、自然増、即ち出生率が上がってはいません。日本の人口を全体的に底上げするためには、人口の自然増が起きなければなりません。一方、九州の中でも鹿児島県などはむしろ出生率が高い傾向にあります。地方の課題をその自治体と住民だけで考えて解決していくのには限界がありますので、必ず大都市圏の人たちに意識調査を行い、どんな地方に住みたいか?地方にある魅力は何だと思うか?等を探り、その上で都市住民に訴えかける施策が必要となります。例えば、ふるさと納税の返礼品やプロモーションなどで地方の魅力を大都市圏の人たちに知って、関わってもらい、いずれ生活や子育てに適した場所は地方にあると感じて行動を変えてもらうようにしていくといった長期的視点での総合的な戦略が大事です。

 

 

──確かに自分たちの住む場所の魅力を自分たちで気づくのは難しいかもしれません。そして、地域活性化の先にはどのような未来を描けますか。

 

板垣

地域に根ざした活動と全国ネットワークを持つ私たちの知見は、さまざまな形の地域活性化に大いに役立てると信じています。そして、それぞれの地域で幸せに生活できることを正しく伝えられれば、その地域だけでなく日本の将来もまた明るくなるはずです。

 

博報堂プロダクツ 九州支社「地方創生特化型チーム(LGTF)」メンバー

 

上段左から:渡辺 武(Pr)、山田 直樹(Pr)、美野田 華子(Pr)、飯田 謙一(Pl)、中段左から:宮脇 悠(Pr)、森 昭二(Pr)、末松 伸洋(Pr)、大楠 かりあ(Pl)、下段左から:梅崎 奈々子(Pr)、浦瀬 大志(Pr)、板垣 信行(GPr)、川﨑 洋(Pr)、生田 耕一郎(Pl) ※撮影協力:ENGINE PHOTO CREATIVE

 


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