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博報堂プロダクツの各コア事業が追求している専門技術を駆使した新しい取り組み、
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デジタル時代のデジタルとアナログの融合とは?【第3回】

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昨今のデジタル×アナログ融合の潮流は?
そして成功体験を得るために、基本の「き」を整理。 

高まるデジタル×アナログの観点

生活者は溢れかえるメッセージを掻き分け、高い情報収集能力を駆使しオンからオフへ、オフからオンへと、自分に合った購買体験を意識的に、あるいは無意識に選び取っています。マーケターはデジタル施策に閉じることなく、生活者が求める情報をデジタルとアナログを組み合わせたコミュニケーションのシナリオを描くことが求められます。過去の記事では2回の連載を通じてその考え方と事例を整理させていただきました。 


本稿は過去2回のその後のまとめ的な意味合いで整理しています。そして前回の寄稿からわずか1年、デジタル×アナログ融合の論調は高まるばかりです。図表1はweb記事等を拾ってみたものです。マーケティング専門メディアや大小様々なセミナーでも頻繁に取り上げられています。事業会社側も、受託・支援側も、今まさに理解を深めるべきテーマであるといえます。

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デジタル×アナログ融合は、今何が起きている?

過去2回の連載では、私がお手伝いをしている某社デジアナ実証実験プロジェクトを通じた学びを中心にご紹介しています。

  • オンライン not アクティブに「DMとメール」を組み合わせると、web送客・購買ともに最も高いパフォーマンスであった。
  • 施策の順番はDMを先に送り、数日後にリマインダーの文脈でメールを届けるのが良い。 等々。

ついでながら別の例となりますが、某通販系企業様ではメール・LINE・DMの組み合わせによるテストを行い、「メール×LINE」の組み合わせ効果より、「メール or LINE×DM」のほうが有用との結果を得たケースもありました。これらから得られるベーシックな示唆はとても大切と考えますが、今世の中でチャレンジされている取り組みはより高度で、多彩です。

リアル店舗とEC融合の試みも、以前にまして見聞きするようになりました。まだ実験段階と思われますが、
例えば

  • リアル店舗は「展示」に徹し、「購買はネット」でという試み。
  • リアル店舗の購買に重きを置き、在庫がない商品をネットで補う試み 等。

他にも、アプリが反応する音を仕込んだmusicを館内スピーカーから放送し、アプリへ特定情報を表示するといった試みなども。
  
様々なレベルでデジタルとアナログを行き交う体験創りが試行されています。幣方がお手伝いする某案件では「ネットでの購買とリアルでの購買、両方の買い回り経験があるお客様ほどLTVが高い。」ことが明快に可視化でき、融合の重要性を実感できました。

本稿で特筆するテーマは「デジタルツール(MA or ECエンジン)とバリアブル印刷機を直接的に」つなぐことでデジタル×アナログを実現する試みです。具体的には個々のお客様単位のオンライン行動データをバリアブル印刷機へ直接的に情報として伝達。オンライン上の行動に基づいたパーソナライズDM(お手紙)をお客様へ24h~48h以内にお届けする。といった試みです。前回の連載では「まだまだこれから」のニュアンスで取り上げましたが、スピードは速いもので、現在はデジタル×アナログ融合の好例として続々出現しています。

上記の技術は例えば、こんなこともできるでは?

  • 旅行サイトで関西方面**温泉のページ閲読を確認できたら、該当する地域の詳細カタログとクーポンを届ける。
  • サイトログインを*日以上しなくなったら、サイト未アクティブと認定し、最後の購買に基づく店頭クーポンをDMで届ける。

某社の通販カタログでは、過去購入した商品が表紙となり、各ページが嗜好性に考慮した商品をECと連携して掲載。さらにインスタグラムの画像データまでも駆使。まさに1人に一冊といえるコンテンツを実現させています。実験段階といえそうですが、これからの動向が楽しみな事例です。
従来の印刷物は提供側の都合で展開のタイミング・規模・メッセージが決まります。しかしこれらのケースは、生活者の行動が、いわばトリガーとなり、情報もパーソナライズされます。オンもオフも融合し、生活者が必要とされるタイミングを最大限考慮できることがポイントです。このようなデジタルと印刷の融合は更なる拡がりをみせていくと思われます。

 

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リアル拠点とデジタル連携、印刷機とデジタルツールの連携等々、ここまでの紹介に留まらず、融合の取り組み例は増加の一途。もはや、べき論から、成果を出すステージに入っていると言えるのではないでしょうか。

 

(デジアナは効果がでるのはわかった・・・)問題はどうやるかだ。

技術的なツールの話だけをしても仕方ありません。自社の課題解決を念頭に、何を伝えればお客様を動かすことができるのか? 工数をかけてでもやるべき価値は認められるのか?あきらかにしていく必要があります。「言いたい事はわかる、我々もやってみたけど、どうもうまくいかない」という声を時折耳にします。もし、万が一にでも成功体験を見出す方法に誤りがあったとしたら、諦めてしまうのはもったいない、と感じます。

以下は言わずもがな、かもしれません。
(とりあえずやってみるのではなく、)

◎目的をもつ。
今、解決したい課題は何か? そのために、どのようなデジタル×アナログな体験を実現させることが有用か? 期待仮説を明快に。
 
◎ターゲットは誰なのか?
デジタル×アナログ融合は単純なコスト効率追及より、コミュニケーションをよりリッチにする意味合いも。誰に何をすると、収支が合い、売上効果が大きいのか?注力すべきターゲットの定義がカギを握ります。(誤ったターゲット設定だと、仮に反応が良くてもROIを合わせる事が困難です)
 
◎有効なトリガー(タイミング)を理解する

ニーズが沸き起こった時・オンライン not アクティブと判定した時・カートまで至っても未購買の時等々、どのタイミングを捉えると売上効果が大きいのか? 分析やお客様の声を通じて発見する。

 
◎メッセージやオファー設計は適切か?

目的・ターゲット・タイミング(上記3つ)に基づく、行動を後押しするメッセージとオファーを開発する。
自分にとって大切な情報と、気づきを与えられているか?


最低でもこれらを充分に勘案し、ひとつひとつ解を紐解きながら推進することが求められます。まずは小さな成功体験から、そしてそれを拡大実施した際に、売上を充分に押し上げてくれるかどうかが最大の評価ポイントです。

常にお客様を想う。 大切なのは徹底したお客様の理解。
デジタル×アナログ融合の施策設計の前提として、自社内に眠る 1st Partyデータを分析・活用することが求められます。言い換えれば、「自社のアセットを用いて、お客様を徹底して理解する」です。

ところで、自社ビジネスにとって、理想的なお客様とは誰でしょうか?どういう関係を築くことが必要なのでしょうか?

時として、部署ごと・担当領域ごとに、異なる理解のままで施策が推進されていることがあります。何が理想的な、目指す状態なのか、部署・立場を超えた共通理解を醸成することが重要と考えています。それは誰もが納得し、目指すことができる重要なKPIを見出すことにもつながります。図表3は単純な一例ですが、「この場合売上が大きく、オンラインのアクティビティが高い」が理想的となっています。縦軸と横軸、様々な視点が考えられると思います。自社の場合、例えばこのような4象限などを用いて定義してみるのはいかがでしょうか。

 

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繰り返しになりますが、生活者は縦横無尽にデジタル・アナログを行き交います。自社のお客様の購買行動の特性や嗜好性を理解し、もちろんチャネルごとの特性も理解し、トリガーたる兆しを捉えて、コミュニケーション設計をぜひ。

ここまでデジタル×アナログ観点の基本の「き」を整理して参りました。過去2回の連載とあわせて、多少でも今後の取り組みのヒントにつながれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございます。