マーケターはデジタルに閉じすぎてはいけない!?
生活者と様々なモノがリアルタイムにつながり、コミュニケーションの有り方が大きく変わり始めています。
1日中365日、PCやスマホによる行動に資するデータ・様々なお買物データ・ソーシャルデータ・各種センシングデータなど、マーケターはありとあらゆるデータを見極め、つなぎ、コミュニケーションを高度化することを求められます。
現場のマーケターは日々新しい技術と潮流に揉まれながら、課題解決に取り組む毎日です。
企画立案に留意すべきポイントも明快です。
- データから生活者一人一人の価値観を捉え、コミュニケーションはよりパーソナルに。(パーソナルとはいえ・・・。 量も、質も、両方を追い求めなければなりません)
- 「タイミングをつかむ」が、ますます重要な因子となってきた。
- 獲得はもとより、リテンションを考慮した体験の創出が大切
- Push一辺倒ではない、Pullの観点も(≒UXUI)整備したい
デジタルシフトの時代だからこそ、これらのポイントは為し得ることと言えます。
一方で、「デジタルのみ」で解決しようとすると、何かが足りない気がしてなりません。
当たり前ですが、生活者はデジタルもアナログも縦横無尽に行き来しているからです。
生活者は溢れかえるメッセージを掻き分け、高い情報収集能力を駆使し、オンからリアルへ、リアルからオフへと、自分に合った購買体験を意識的に、あるいは無意識に、選び取っています。
そして、デジタル施策固有の課題も顕在化してきました。
- シャープであれど、オンラインのみのリーチでは、全てのお客様を網羅できない。デジタルの優位性は言うまでも無く、拡張性やリアルタイム、コスト効率、ターゲティングの精度の高さ。そもそもオンラインに not アクティブな生活者への対策はどうするのか?
- 広告ブロックをするアプリがじわじわ増えてきた!?既にUSでは、広告ブロッカー系アプリはDLランキングの上位に位置し、確実に浸透しつつあります。(悪いとは言いませんが、)効率至上主義による、ダイナミックな施策の不足 等々
- メールの場合、パーミッション3~4割 開封1~2割、情報が届かない層も少なくありません。
デジタルとアナログの融合こそが突破口では?
デジタルシフトが間違いなく重要な時代に、決してデジタルを否定したいわけではありません。誰もが多くの恩恵に預かっています。
大事なことは、デジタルの課題をデジタルだけで解決しようとしない。
アナログ観点の施策との組み合わせこそが突破口である、ということです。
「コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則」(フィリップ・コトラー他 朝日新聞出版)日本語版が8月に出版されました。 (引用)デジタル経済における、 マーケティング 4.0とは、まさに オンラインとオフラインとの融合である。と明快な記載がありました。 世の中をみまわしても、「デジタルとアナログを組み合わせるべき」という声が日増しに増えてきているようです。
2017年9月27日の翔泳社さんのマーケティングイベント「Markezine Day Autumn2017」でも3つのセッションで、本テーマが語られていました。
「デジタルとアナログ融合とは具体的に何なのか?」
「概念はわかった、でも・・・本当に、有効なのか?」
デジタルとアナログの特性の違いを整理
連載では数回にわたって、デジタルとアナログ融合の解を求めていきたいと考えますが、本稿はもう少しデジタルとアナログの違いについて整理します。本稿でのデジタルとは、オンライン広告・オウンドメディア・デジタルデバイス・ソーシャル等とし、アナログとは、ダイレクトメール・イベント・セミナー・リアル接客等としました。
図表2は、私が任意に整理したものになります。
それぞれを「ターゲティング精度」「口コミ拡張性」「スピード」「質感」「保存性」「コスト」において、違いを記載しました。
- 口コミ拡張力
ソーシャルツールによる圧倒的なパワーをもっています。
アナログの口コミ拡張力は、物理的に近い家族・友人に限定されます。アナログはその分質は高いともいえます。 - スピード
マーケティングオートメーションに代表されるソリューションツールは、何らかのトリガーを設定さえすれば、自動的に条件に応じて理想的なタイミングでの情報付与を実現させることができます。 常に制作・実施のリードタイムを考慮に入れる必要があるアナログ施策では難しいです。 - コスト効率性
1人の生活者に届ける情報伝達コストは圧倒的に安く、かつ大量に展開することができます。口コミが拡散すればなおさらです。
アナログで、同じような規模で実現しようとすると、コストが高くなりがちであることは言うまでもありません。
一方で、アナログの主な優位な点は以下があげられます。
- 質感
モニタ投影ではなく、手触り、香り、立体感のある視る、音・・・五感にリアルに訴えることができます。 お手紙の気持ちのこもったコミュニケーションのように、質のある、記憶に留まりやすい体験を創出させることができます。 - 保存性
デジタルは瞬間が大事といえますが、アナログの場合はしばらく保存される傾向が強く、しばらくたってからも注文があるといった特性を有しています。
私はコミュニケーションプランナーを自認し、様々な企業様と課題解決に邁進する立場ですが、「あっちより、こっちのほうがよいですよ」といった対立軸で、双方を比較していたことが多かったように思います。ただし、これでは前述のように片手落ちで、生活者にしっかりと寄り添ったことになりません。 対立時ではなく共存の観点が重要です。
デジタルの拡張性・スピードとアナログの保存性、五感に強く訴える力、これらを融合させることが重要であることに改めて、気付かされます。
具体的にどんな融合のパターンがあるのか? 組み合わせの最適解とは何か?考察を深めていきますが、本稿の締めくくりとしては、図表3を用意しました。
「デジタル」が、言葉の入り口になってしまうと、デジタルに傾注した観点に終始してしまいます。生活者のことを想い、そしてビジネス課題を解決することを、常に軸に。図表3のようにデジタルは下支えしてくれる機能であり、そのうえで「接点がオンライン」「接点がオフライン」適宜活用しいていく。という文脈が大事であると考えています。
第2回目は、「概念はわかった、それは本当に効くのか?」について、事例を交えて記したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信 | 博報堂DYグループ より転載
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