
2026年6月23日、プロダクトプロデュース事業本部 プロダクトデザイン部kuummuuの橋本千里と内田成威が、横浜美術大学の学生を対象に、色覚多様性とカラーユニバーサルデザイン(CUD)をテーマとした特別セミナーを実施しました。
今回のセミナーは、同大学で取り組まれているインクルーシブデザインの授業に、カラーユニバーサルデザインの視点を取り入れることで、より多様な人に届くプロダクト開発につなげたいという横浜美術大学プロダクトデザインコースと当社双方の思いから実現したものです。
博報堂プロダクツは顧客化接点実装事業会社として、商品やサービスそのものだけでなく、それらが生活者に届き、体験される顧客接点全体の設計・実装に取り組んでいます。 その実現に欠かせないのが、多様な人の視点や価値観を取り入れるインクルーシブデザインです。今回のセミナーでは、色覚多様性を入り口に、誰もが情報や価値にアクセスしやすい顧客接点のあり方について学生たちと考えました。
「見える世界は、ひとつじゃない」
1限目の講義は、ビジュアルコミュニケーションデザインコースとの合同で実施され、50名を超える学生や教員が参加しました。色覚特性を持つプロダクトデザイナーである内田から、色覚多様性の基礎知識や実際の見え方の違いについて紹介しました。 色覚多様性を知ることは、単に「色の見え方の違い」を学ぶことではありません。「自分が見ている世界と、誰かが見ている世界は、もしかしたら少し違うかもしれない」という想像力を持つことが、インクルーシブデザインの出発点になります。
講義では、色による見え方の違いを体験できるクイズや、実際の商品開発事例を紹介。白黒コピーやモノクロ表示による確認方法、制作時に役立つアプリやツールなども紹介しました。

質疑応答の時間では、「ピンクのような色のかわいらしさはどのように伝えればよいのか」といった質問も寄せられました。内田は、「色の持つ力を活かしながらも、色だけに頼らず、形や情報設計など複数の要素で伝えることが大切」と説明。その後も学生たちからは積極的に手が挙がり、活発な質疑応答が続きました。
橋本からは、「好きな色をそのまま使うことがデザインではなく、どんな色でも魅力的に見せられることがデザイナーの力」と伝え、学生時代から多様な色や表現に触れることの重要性を語りました。
さらに、「色覚特性だけでなく、高齢者や障がいのある方、海外出身者など、人によって見え方や感じ方、困りごとは異なる。まずはその違いを知ることが大切」と話しました。
実際にkuummuuが手がける商品開発においても、クライアントから要望があった場合だけでなく、日常的にインクルーシブデザインの視点を取り入れていることを紹介。「より多くの人が使いやすいものは、多くの生活者にとっても使いやすい。インクルーシブデザインは特別な取り組みではなく、生活者発想のひとつです」と伝えました。
学生のアイデアに寄り添うディスカッション
講義を通じて学生たちは、色覚特性への理解だけでなく、「自分とは異なる視点や体験が存在すること」を学びました。その学びを踏まえ、2限目では、プロダクトデザインコースの学生11名が取り組んでいるインクルーシブデザインをテーマとした「シェアツール」課題についてディスカッションを実施。
課題テーマは「人とモノとの関係から、福祉の新しい可能性を考えること。」橋本と内田は、それぞれのアイデアや発想を丁寧に聞きながら、実際の生活者との接点で機能する体験としてどのように実装していくかという観点からフィードバックをしていきました。
橋本からは、「そのアイデアが誰のどんな困りごとを解決するのか」という視点や、試作とユーザー検証を繰り返しながら磨き上げていくことの重要性についてアドバイスを実施。内田からは、「当事者視点で設計できているか」「多様な人が利用できる仕様になっているか」といった観点に加え、「便利さだけでなく、使いたくなる魅力やデザイン性も大切である」と伝えました。
ユーザーの声を聞きながら、人が自然と使いたくなる体験へと昇華させていくことは、実際の商品開発の現場でも欠かせない視点のひとつであることもアドバイスとして学生に伝えていきました。
アドバイスをしていく中で、学生たちが先生や同級生からの意見を素直に受け止め、自身の作品に反映しようとする姿や、積極的に質問を重ねる様子は特に印象的でした。

多様な視点が新しい価値を生み出す
今回の講義・授業でのアドバイスを通じて伝えたかったのは、「違いを知ることが新しい価値創造の出発点になり、クリエイティブの可能性を広げる」ということです。
色覚特性の配慮は特別なものではありません。より多くの人が使いやすい商品やサービスは、結果としてより多くの生活者にとって使いやすいものになります。
インクルーシブデザインは、誰か特定の人のためだけの取り組みではなく、生活者発想を広げるための考え方のひとつです。私たちは日々の仕事の中でも、「見落としている利用者はいないか」「もっと多くの人に届く方法はないか」を問い続けながら商品・サービス開発に加え、その価値が生活者に届く体験全体を設計・実装しています。
学生たちとの活発な議論からも、次世代のデザイナーたちが多様な視点を前向きに受け入れながら、新しい価値創造に挑戦していることを実感する機会となりました。

参加した学生の感想(アンケートより一部抜粋)
・これまで自分が当たり前だと思っていた「色で情報を伝える」というデザインの考え方が、すべての人に同じように伝わるわけではないことに驚きました。特に、色だけで区別すると情報が正しく伝わらない場合があることを知り、デザインには見た目の美しさだけでなく、誰もが理解しやすい工夫が必要だと感じました。今回のお話を通して、利用する人の立場に立って考えることの大切さを学び、新たな発見につながりました。
・色覚特性は特別な知識ではなく、一般的なデザインの知識として身につける必要があると感じました。自分が見えている色が他の人にも同じように見えているとは限らないため、多くの人に伝わるデザインを考える視点が大切だと思いました。
・色覚特性を持つ人はデザイン系の仕事が難しいと思っていたが、どんな人にでも見やすいデザイン、色を考える点では実際に色覚特性を持つ人がどう見えているのかを教えられるので一緒に働けるのは良いことだなと感じました。
クラフトデザイン研究室 プロダクトデザインコース 阿萬芳和准教授より

本セミナーは、実務事例と色覚シミュレーションを交えた構成が非常にわかりやすく、学生だけでなく私自身も興味深く受講できました。
特に、色覚特性をもつ講師ご本人の体験に基づくお話には強いリアリティがあり、「見える色はひとつではない」ことを実感しました。
また、色は感覚だけで扱うのではなく、明度差や文字・記号の併用など、論理的に設計し、より多くの人に伝わる形へ展開することの重要性を改めて認識しました。
kuummuu™が提供するインクルーシブデザイン支援
橋本と内田が所属するプロダクトデザインユニット「kuummuu™」では、商品開発やパッケージデザインに加え、インクルーシブデザインやカラーユニバーサルデザインをテーマとしたクリエイティブワークショップ・セミナーも提供しています。

我々はクライアントから特別な要望があった時だけではなく、日頃の商品開発においてもインクルーシブデザインの視点を取り入れています。「より多くの人が使いやすいデザインは、より多くの生活者に選ばれるデザインにつながる」その考えのもと、企業や自治体、教育機関など多様な領域で実践を重ね、実務経験に基づいたプログラムをご提供しています。
顧客化接点実装事業会社として、商品、サービス、パッケージ、販促、デジタルなど多様な顧客接点において、誰もが情報にアクセスしやすく、心地よく体験できる環境づくりを目指しています。今後もインクルーシブデザインの視点を取り入れながら、多様な生活者とのよりよい接点づくりに取り組んでいきます。
プロフィール

- 橋本 千里
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プロダクトプロデュース事業本部 プロダクトデザイン部(kuummuu)
部長/クリエイティブディレクター
金沢美術工芸大学卒業。2011年博報堂プロダクツ新卒入社。
化粧品や文房具といった日用品からキャラクターコンテンツを用いた生活雑貨まで、 幅広い商品企画・デザインを手掛ける。ビジネス目線のプランニングと幅広い人脈で、常に新しい領域・手法に挑戦している。近年は色覚多様性に配慮したCUDやインクルーシブデザインを積極的に取り組み、誰にでも伝わる色づかいや、あらゆる人が使いやすいプロダクトデザインの実現を目指している。

- 内田 成威
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プロダクトプロデュース事業本部 プロダクトデザイン部(kuummuu)
クリエイティブディレクター/プロダクトデザイナー
金沢美術工芸大学卒業。2007年に博報堂プロダクツ入社。
クライアント商品の企画・開発からプロダクトデザインまで、幅広い領域を手がけるクリエイティブディレクター。また、デザイナーでありながら色覚特性を持ち、自身の見え方や感性を活かした色覚多様性・インクルーシブデザインの提案や、作品制作にも積極的に取り組んでいる。

