
多くの企業において重要なテーマとなる、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進。博報堂プロダクツはクロスチーム(株式会社クロス・カンパニー)との業務連携により、企業が抱える課題解決を目指す「共創クリエイティブワークショップ」の提供を開始しました。
同社所属の障がいのある方(チャレンジド・デザイナー®※)と企業が、共創によって生まれたアウトプットを商品やPR施策などに実装し、導入企業の事業成果として継続的につなげることを目的としています。クロスチームが持つ共創プログラム設計・デザイン開発力と、博報堂プロダクツの商品化やプロモーション展開の力を掛け合わせることで、共創から生まれた価値を事業成果へとつなげていきます。
本記事ではクロスチームの加藤勝也氏、久世迅氏とプロダクトプロデュース事業本部の柏原陽子、金子祐史へのインタビューを通じ、このソリューションがどのような価値を生み出すのかをご紹介します。
※チャレンジド・デザイナー®は株式会社クロス・カンパニーの登録商標です。
- 企業のDE&I推進に対し、新たなビジネスモデルを提供
- ダイナミックな熱量が共有される、ワークショップの現場
- 共創を価値へと変える、博報堂プロダクツの実装力
- 共創の輪を広げ、ビジネスから社会を変えていく
企業のDE&I推進に対し、新たなビジネスモデルを提供
多様な人々が能力を発揮できる社会に向け、企業ではさまざまな施策が推進されています。採用や職場整備などの人的資本経営にとどまらず、幅広い社外の関係者との取り組みも進む中で、「現場には一定の課題も存在する」と説明するのは、プロダクトプロデュース事業本部の柏原陽子と金子祐史です。
柏原:例えば、社員向けに障がいのある方に関する研修やワークショップを開催する場合、多くは一過性のイベントにとどまりがちです。その後の事業やブランド活動につながらなければ企業の価値創出に結びつきにくく、参加社員の理解も十分に深まりにくい。そうした課題感を、クライアントの皆さまからいただくケースが多くあります。

金子:社外と連携する施策はCSRとしての側面が強く、事業とは切り離して考えられる傾向があります。DE&I推進を行なった先に、どのような経済的・社会的価値が生み出されるか。ゴールを明示することが、私たちのソリューションにも求められると考えました。
こうした背景から開発されたのが、障がいのある方と共に事業を創造する「共創クリエイティブワークショップ」です。本ソリューションは、「ヒアリング・実施計画(Step 1)」、チャレンジド・デザイナー®と社員の共創によりアート作品を制作する体験型の「ワークショップの実施(Step 2)」、そして、制作されたアート作品をデザインとして仕上げ、商品やノベルティ、広告などに実装する「商品化・PR施策(Step 3)」の3つのステップで構成されています。

金子:私たちはワークショップそのものを目的にしているわけではありません。共創から生まれたアウトプットを、企業の事業やコミュニケーション活動の中でどう活かしていくのか。その活用まで見据えて設計していることが、このプログラムの大きな特長だと思います。
協業パートナーであるクロスチームは、ワークショップで生み出されたアート作品を起点に、プロジェクト企画やデザイン開発を展開してきました。代表取締役パートナーの加藤勝也氏は、「共創のデザイン力を通じ、障がいのある方が社会に参画するモデルをつくりたい」と語ります。
加藤氏:企業の取り組みとして障がいのある方の採用が進んでいますが、まだまだ社会参画の障壁は高いのが現実です。一方、企業側ではESG経営やサステナビリティが重視されながらも、ビジネスモデルとして確立されていない場合が多い。そこで私たちは、障がいのある方の社会参画と事業成果をつなぐ仕組みを構築してきました。大切なのは、誰かを支援する関係ではなく、共に価値を生み出すパートナーとして向き合える場をつくることです。参加する方々が互いの感性に触れながら、ひとつのアウトプットをつくっていく。そのプロセス自体が、企業にとっても新しい視点を得る機会になると考えています。

クロスチームの特長は、障がいのある方のアート作品を商品に変える“デザイン力”にあります。このプロセスを担うのは、デザインディレクターの久世迅氏です。
久世氏:障がいのある方のアート作品を“社会貢献”として前面に打ち出すだけでは、本来持つ魅力や可能性が十分に伝わらないことがあります。そこで私たちが始めたのは、共創の中で生まれた表現の魅力を、企業や生活者との接点につながる形へ編集・展開することです。色や構図を再編集したり、時には複数の作品を組み合わせることで、徹底的にその価値を高めていきます。
柏原:クロスチーム様が手を加えた作品をIP(知的財産)として位置づけ、博報堂プロダクツが商品やプロモーションなど、さまざまな形式で社会に実装していく。また、クライアントが目指すビジョンや事業コンセプト、共創を通じて生まれた想いなど、背景にあるストーリーをプロダクトに宿し、生活者に伝えていく。こうしたアプローチによって新たな価値を創出すべく、共創していくことを目指しています。
ダイナミックな熱量が共有される、ワークショップの現場
では、具体的にはどのように3つのステップは進んでいくのでしょうか。「Step 1」では、クライアントの課題や目的をヒアリングし、プロジェクトの実施計画を立案していきます。
金子:計画段階では、クライアントが抱える課題に対して最適なアウトプットをご提案します。また、社員の皆さまが主体的に参加できる仕組みを入念に設計していきます。立ち上がったコンセプトのもとで実施されるワークショップは、全国のどこでも開催できるのが特長で、特別支援学校や社会福祉施設など、各地域の機関に参加していただくことも可能です。

「Step2」のワークショップの現場では、障がいのある「チャレンジド・デザイナー®」と、クライアントの社員の皆さまが共に手を動かし、アート作品を作り上げていきます。
久世氏:プロジェクトのコンセプトに合わせ、ワークショップでは一定のテーマを設けることが多いです。しかし、チャレンジド・デザイナー®はそのテーマを出発点としながらも、そこから自由な発想で独自の表現を生み出していきます。むしろ彼らは目の前に画材があるだけで、縦横無尽にクリエイティビティを発揮します。枠にとらわれず、純粋に「楽しい」という想いで描く作品はどれもエネルギーに満ち溢れており、その想像を超える表現は、私が描いた見本を隠したくなるほどユニークです。最初はどう関わって良いのか分からず様子を見ていた社員の皆さんも、チャレンジド・デザイナー®の筆の強さや自由な動きに心が動かされ、共に価値を生み出すパートナーへと関係性が変わっていきます。こうした共創のクリエイティビティの副産物として、初めてアート作品ができるのです。

柏原:博報堂プロダクツでもワークショップを試行したのですが、チャレンジド・デザイナー®の描き方には、非常に大きな熱量を感じました。設定したテーマは、当社パーパスのモチーフになっている“夜明け”と、本社所在地の“豊洲”。固定観念にとらわれない自由な表現でありながら、どこかでテーマを想起させる作品が生まれていたことが印象的でした。
共創を価値へと変える、博報堂プロダクツの実装力
ワークショップで生まれたアート作品は、「Step 3」で商品やPR施策に姿を変えます。展開方法は、商品パッケージ、店頭什器、ノベルティ、展示、広告、デジタルコンテンツなど、多岐にわたります。しかし、単に作品を活用するだけでは、企業活動の中で継続的な価値を生み出すことはできません。大切なのは、共創の過程で生まれた想いやストーリーを含めて設計し、事業やブランド活動の中で活かしていくことです。博報堂プロダクツとクロスチームは、それぞれの専門性を掛け合わせながら、共創から生まれた価値を具体的なアウトプットとして社会へ届けています。
金子:プロジェクトの成果は、クライアントの事業領域や企業方針によって異なるものです。そのため、共創によって生まれた表現やアイデアを、どのような形で事業活動につなげるかを構想することが重要になります。博報堂プロダクツには、商品化、店頭、イベント、デジタル、PRなど、生活者との多様な接点を設計・実装してきた専門部門があります。共創から生まれたアウトプットを、ノベルティや商品、展示、広告、Webコンテンツなど、企業の目的に応じた形へ展開できる体制が整っていることが私たちの強みです。
一方で、クロスチームさんは、工事現場を囲う仮囲いやフレンチレストランの盛り付けなど、既存の枠組みにとらわれないユニークな実装事例を数多く手掛けていらっしゃいます。
両社が企画段階からアイデアを持ち寄ることで、共創によって生まれた表現の可能性を広げながら、クライアントの課題や目的に合わせた最適なアウトプットを提案することが可能になります。
柏原:ポイントは、共創のストーリーを可視化することです。ワークショップで生まれた作品そのものだけではなく、その背景にある対話や気づき、共創のプロセスも含めて価値だと考えています。
例えばコンセプトが『地域』であれば、その土地の文化や風景だけでなく、『復興の歴史』や『まちづくりの未来』といったテーマを設定することで、そこに暮らす人々の想いや企業の姿勢が表現として現れてきます。
私たちは、そのストーリーをポスターやパンフレット、商品、ノベルティなどの形へ展開し、生活者に伝わるコミュニケーションへとつなげています。共創で生まれた価値を、企業活動の中で使われ続ける形へ落とし込めることが、このソリューションの大きな特長だと思います。

金子:もちろん最初は、プロジェクトの目的に沿ったアウトプットを実現することを前提に進めます。ただ、共創の面白さは、当初想定していなかったアイデアや可能性が生まれることにもあります。実際にワークショップを通じて、参加した社員の皆さまが新たな視点を得たり、別の施策や企画を発案するケースも考えられます。成果物だけでなく、その後の組織や人の変化もこのワークショッププログラムが生み出す価値のひとつだと思います。
加藤氏:ワークショップを通じて変化するのは、参加者一人ひとりの視点です。アートやデザインの捉え方だけでなく、組織や事業、社会との関わり方に対する視野が広がる方も少なくありません。共創の体験をきっかけに、担当している事業の中で新たな価値を生み出したり、組織づくりに役立てたりと、その影響はワークショップの場を越えて広がっていきます。そうした積み重ねが、企業の長期的な成長につながっていくのではないかと考えています。
共創の輪を広げ、ビジネスから社会を変えていく
「共創クリエイティブワークショップ」が展開されることで、企業や社会はどのように変わっていくのでしょうか。最後に、両社の展望を聞きました。
加藤氏:ビジネスによるアプローチは、社会においても大きな一歩だと考えています。共創クリエイティブワークショップを通じて、公正かつ透明なビジネスモデルが広がることで、障がいのある方と企業が関わる機会もより多様になっていくかもしれません。福祉とビジネス、社会的価値と経済的価値の両立については、日本でもまだ多くの企業が試行錯誤を続けています。私たちもそのような中で少しずつですが、実装可能なビジネスモデルの構築に取り組んできました。今回の博報堂プロダクツとの連携によってその可能性をさらに広げながら、企業と社会の双方に新しい価値を生み出していきたいと考えています。
柏原:私自身、ワークショップに参加する以前は、障がいのある方とどのように関わればよいか、正直なところ具体的なイメージを持てていませんでした。しかし、同じ空間で作業を共にすることで、一人ひとりの感性や表現に触れ、障がいのある方への向き合い方が変わりました。その経験から共創の社会的意義を実感できたので、ビジネスとして持続可能性を高めていきたいと思います。
金子:単発の取り組みで終わらせるのではなく、実施後のフィードバックをもとに見直しを重ねながら、継続的に価値を生み出していくことが重要だと考えています。それが企業価値の向上につながるだけでなく、多様な人々の視点や創造性が企業活動の中で活かされる機会を広げていくことにもつながると考えています。
久世氏:世の中と障がいのある方との距離感を変えていくためにも、多くの方々に参加していただきたいです。現場で得られた視点や気付きが着実に広がることで、共創の輪も大きくなります。福祉の領域に対しても、企業側からアイデアを提示できるようになるかもしれません。
「共創クリエイティブワークショップ」は、企業と社会の双方が新しい価値を生み出すための取り組みです。ワークショップという体験を入り口に、多様な視点や創造性に触れながら、社員の意識変容や組織の成長、さらには企業価値の向上へとつなげていく。
博報堂プロダクツとクロスチームは、共創から生まれた表現やストーリーを事業活動の中で活かしながら、企業と社会がともに価値を創出できる新たな実践モデルとしてその可能性を広げながら、より良い未来づくりに貢献してまいります。

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博報堂プロダクツ サステナビリティサイト
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プロフィール(取材時)

- 加藤 勝也氏
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クロスチーム(株式会社クロス・カンパニー)
代表取締役パートナー
数多くのマーケティング、ブランディングのプロジェクトを手掛け、事業を推進。自身も、重度障がいを伴う自閉症の息子がいる親であり 、クロスチーム創業メンバーの一人。「共創」のチカラをミッションに、クリエイティブなプロジェクト企画、社会実装に日々挑戦している。

- 久世 迅氏
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クロスチーム(株式会社クロス・カンパニー)
デザイン ディレクター
デザインスタジオを経て株式会社KUZE DESIGNを設立、法政大学で講師も務める。創業したクロスチームでは、障がい者との「共創」を通じたソーシャルデザインを推進。多様な感性を活かして未だ見ぬ価値を拓く取り組みに挑戦している。

- 柏原 陽子
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プロダクトプロデュース事業本部 MDビジネス部
2013年博報堂プロダクツ入社
国内外のキャラクターライセンスビジネスに従事後、博報堂プロダクツへ入社。ライセンスホルダー・ライセンシー双方で培った知見を活かし、IP活用やコンテンツ開発、商品化プロジェクトを推進。企業と社会をつなぐ共創プロジェクトの企画・実装に取り組んでいる。

- 金子 祐史
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プロダクトプロデュース事業本部
2018年博報堂プロダクツ入社
リアル接点を軸にプロデューサーとして様々なクライアントを担当。また、プロモーションにおけるIP活用も推進。企業、社会、生活者をつなぐ共創プロジェクトの企画、実装に取り組み、新たな社会価値の創出に挑戦している。
