新しい撮影手法による、映像コミュニケーションの変革を。

ーサントリー天然水 スパークリングレモン 『モーニンルーティン』

サントリー食品インターナショナル株式会社

OUTLINE

博報堂プロダクツでは、ビジュアル化(視覚体験化)による新しいマーケティングコミュニケーション「VX(ビジュアル・トランスフォーメーション)」を強化させる撮影手法「Sizzle ”Monitor” Stage ™」を駆使して、サントリー天然水スパークリングレモンのWeb CM「モーニンルーティン」を制作。
今回のプロジェクトを通じて、3事業本部の連携により提供できた新しい価値や「VX」として挑戦していく今後のビジョンなどを、メンバーに語ってもらいました。

INTERVIEW

-今回のWeb CMを制作するきっかけや、「Sizzle ”Monitor” Stage ™」を使用することになった経緯を、教えていただけますか?

福田もともと、サントリーさんと仕事がしたくて、博報堂を通じてクレデンなどをさせてもらっているうちに、サントリー宣伝部の方たちとも仲良くなり、直接プレゼンする機会をいただいたのが今回のきっかけです。

池田宣伝部はクリエイティブ側にいる方たちなので、プロダクツにはどういうクリエイターがいて、どんなアイデアを出せるのかを知りたいという目的もあったようですね。

福田この企画に関しては、プレゼン中に「これをやりたい」とクライアントからも好評だったものが、実現しました。僕は、高橋カメラマンとぜひ仕事がしたかったので、企画を考えた平尾ディレクターたちにも相談したうえで声をかけたところ、高橋カメラマンが「Sizzle ”Monitor” Stage ™」を活用する話を持ってきてくれました。。

高橋最初に話をいただいて、とにかく新しいこと、面白いことや実験的なことができそうだなと。平尾ディレクターからも、ただ面白いだけではなく、新しくて効果的で、さらにハイクオリティを求められたこともあり、「Sizzle ”Monitor” Stage ™」を使えば、コロナ禍やスマートフォンで撮影することが、むしろ積極的に企画の表現と課題解決に繋がると提案しました。

平尾「これ、いいですね」って決まったのは、わりと早かったです。手のようなミニチュアサイズの被写体を、スマートフォンの小さな広角カメラでスケール感を持たせながら撮影する手法が、全体の撮影設計においてカメラワークも含めて凄く良くなりそうで。「Sizzle ”Monitor” Stage ™」を使って、何かしようっていうジャンプがあった感じですね。

山木最初は実写で撮る予定でしたが、「これで作ったら面白い」と、みんなで盛り上がりました。

映像の仕上がりも、新しい価値へと繋がるメリット。

ー「Sizzle ”Monitor” Stage ™」は、具体的にはどのような撮影手法なのですか?

高橋これまでも、出力した写真などを背景の壁に貼って撮影することはあったので、手法自体はそんなに新しいことではないんです。「Sizzle ”Monitor” Stage ™」は、3面のモニターで映像を流しながら、動画を撮影する撮影手法です。

-モニターを3面にしているのは、どのような理由からでしょうか?

高橋背景だけでもいいですし、天井・床・カメラ側に置いてもいいと思いますが、上から被写体に照明を入れたり、下には飾りや美術などを置いたり。そういうことも含めて、ライブ感があり臨場感もあることから、3面がベストだという結論に至りました。

ー「Sizzle ”Monitor” Stage ™」を使用したことによる、メリットはありましたか?

平尾商品のペットボトルをテーブルに置くシーンは、「Sizzle ”Monitor” Stage ™」をテーブル代わりにして撮影しているのですが、透け感のような違和感があって、ペンの上に商品を置いているように見えるけれど、実際はモニター画面上だから、商品が倒れないという画はチャレンジでしたね。普段ではできない実験がとことんでき、仕上がりの良い映像を突き詰められて、やり切れたことは良かったと思います。

山木画が成立し過ぎてしまうと「Sizzle ”Monitor” Stage ™」を使っている意味がない、平尾ディレクターとずっと検証して、せめぎ合いながらも最後いい感じに仕上がったのが、「やり切れた」というところですかね。

高橋撮影したデータは、撮影後にグレーディングが必要になるので、スマートフォンで撮影したデータでも破綻しないかを、浦田カラリストに事前に検証してもらいました。

浦田今回は、スマートフォンをメインカメラとして使用している点が普段と違ったのですが、最新モデルでデータの情報量が一気に増えたので、カラーグレーディング工程(撮影後の生データに色彩設計を施していく工程)においても、色をリッチにさせることができました。「Sizzle ”Monitor” Stage ™」のグレーディングは、今回が初めてでしたが、グリーンバックと異なり背景も一発撮りですので、後工程はかなり楽でしたね。

クリエイティブの現場を楽しくさせた、横連携のシナジー効果。

ーそれでは、今回のWeb CMの企画について、聞かせていただけますか?

福田まず20〜30代の女性がターゲットで、天然水スパークリングレモンを毎朝飲むことを習慣化させるには、どのようなCMを作るのが良いですか?というお題がオリエンでありました。そこで、平尾ディレクターのほうから、女性が朝起きて会社へ行くまでを指にスカートを履かせて表現するという企画が上がりまして。平尾ディレクターが、リリックも全部書いて、ちょうどボーカルメンバーが入れ替わった新生水曜日のカンパネラさんに楽曲制作・歌唱をお願いしました。クライアントにも気に入られて凄く刺さりましたね。

平尾シンプルに、クライアントからのオリエンを、100%叶えた世界を描いたんです。ターゲットである女性が、朝の支度などのモーニングルーティンのひとつとして、天然水スパークリングレモンを買うみたいな。ただ単純に描くだけでは面白くないから、それを歌にしてハンドダンスで描いてみたらクラフト的にも可愛いし、朝に購入する提案にもなるというのが、アイデアのもとでした。

ー 制作や撮影などでのエピソードは、何かありましたか?

高橋撮影時に「Sizzle ”Monitor” Stage ™」で流していた背景の映像は、撮影部(フォトクリエイティブ事業本部)でもアイデアをいろいろ出しました。スマートフォンで撮影することは決まっていたので、線路の背景など、みんながそれぞれ近所で撮影した映像を持ち寄って議論しました。

平尾僕も線路沿いをいくつか撮影したんですが、最終的に平田カメラマンが見つけた場所が良くて、そこで撮影しましたね。

平田ロケハンは、渡邊カメラマンが行ってくれました。僕は、主に最初のテストなどをやっていましたので。

渡邊線路のシーンは、2ヶ所だけロケハンに行きました。部屋のシーンの背景は、平尾ディレクターの自宅で撮影しました。

平尾本番の撮影では、編集を担当している本木エディターが、最後の「レモスパ!っといきましょう。」の背景モーションを速攻で作ってくれたりもしました。現場でやりたいことを本木エディターに伝えて、それを現場の状況を見ながら、その場ですぐに作れるのは凄いなって思いましたね。

本木あの場面は、泡のシズルを撮ってから編集上でタイトルを載せるのが一般的なやり方ですが、現場でリアルに撮影できたっていうのは、「Sizzle ”Monitor” Stage ™」ならではですね。通常の編集だけでは、炭酸水と文字があれほどの馴染み方にはならないので。

平尾実際に炭酸水(水槽)を手前に置いて、本木エディターが現場で作ってくれた(文字とレモンが映っている)背景モーションの「Sizzle ”Monitor” Stage ™」を奥に立てて、撮影しているんです。

池田今回のように、横連携でシナジーが生まれたのは、とにかくチームが仲良いからだと思うんですよ。密に連携が取れるので、現場でもアイデアを出しあえたり。先ほど話に出ていた背景の撮影についても、内部スタッフで撮影したからこそ、議論の回数を重ねられたので、確かな検証もできたんだと思います。

福田撮影自体は結構大変でしたが、みんなが凄く楽しそうだったのが良かったなと思って。とにかく全員一つの方向に向かって楽しそうにやっている現場を久しぶりに見て僕もニヤニヤしちゃいました。

高橋「Sizzle ”Monitor” Stage ™」を使ったり、スマートフォンで撮影したり、挑戦的というか実験的な現場って楽しいんです。しかも楽しいからいろんな人から、いろんなアイディアがどんどん出てくる。これまでも、横連携はしていましたけど、今回は、より力強いシナジーを感じましたね。

VXが実現させていく、映像コミュニケーションの新しい価値。

ーVXを通じて提供できる新しい価値や、今後のビジョンなどについて聞かせていただけますか?

福田世の中がどんどん変わって、YouTuberが映像で何億円も稼いでいる時代に、我々プロが何をやっていけばいいのかを考えないといけない。それが、VXが担う役割のひとつだと思います。今回のような「Sizzle ”Monitor” Stage ™」であったり、映像クリエイティブ事業本部が掲げるスローガン「NEXT CRAFT NEXT PRODUCE」であったり、次に何をやれば面白いのか、常に挑戦していくことが大切です。その結果として、これからも楽しく仕事をしていければいいですね。

本木僕が所属するREDHILL事業本部のポスプロは、エディターやコンポジター、ミキサーしかいない組織なので、カメラマンやプロデューサーたちがいて映像を作ることができます。今回のように、身近なチームのメンバーとして、新しいことにチャレンジしていけるのは良い環境だなと思っています。

高橋これからは、グラフィックもムービーも含めたビジュアル全体が、重要になると考えています。そこで、僕のような世代ではなく、平田カメラマンや渡邊カメラマンのような若い人たちの考え方が、さらに大事になっていきます。

平田カメラマンとして、これからはディレクション力が大事になると考えています。アートディレクターのような知識を持っていないと、やっていけないと思うので、日々がんばっています。今まではグラフィック中心にやっていましたが、これからは自分で企画した動画もどんどん撮っていきたいと思います。

渡邊写真はフィルムだったものがデジタルになって、合成だったものが「Sizzle ”Monitor” Stage ™」で一発撮りできるようになって、というのを考えると、これからは段取りのスピード感が求められてくるのかなと思います。高い技術で、一発で見せられるような手軽さが、必要になってくると感じています。

浦田今後大事になってくるのは、指示通りにビジュアルを仕上げることではなく、ビジュアルをクリエイトするというマインドで仕事をしていくことだと思います。写真・映像・AR・VRという垣根は関係なく、ビジュアルを使ってメッセージを伝えたいという意志を持つことが大事になる気はしますね。

池田プロデューサー陣も、どういう映像を作っていきたいのかという意志を持つことが、今後ますます大事になってくると思います。みんなスマートフォンで情報を得ている時代で、文字で伝えるよりも映像で伝える方がスピーディなので、そういう意味でも映像の未来を信じています。

山木若者らしいことを言うと、メタバースが出現したように、今まで思いつかなかった非現実的なことを、みんなが考え抜いて現実にすることで、時代は進化すると思うんです。次がどうなるか分からないから、新しいことが生まれるのではないかなと…。経験なのか想像力なのか分かりませんが、思いつくことさえできれば、時代はもっと速く進むのかなと思いますね。

平尾何か新しいことをするときって、想像力のちょっと向こう側にあることだから、それに向かっていく姿勢って凄く泥臭い感じがしていて…。そういうときに、今回のように横で連携することでやり切れたところに、一番手応えを感じることができました。だから、新しいものって結局、生み出す寸前まで人臭いし、泥臭いんじゃないかなと思っています。今回のような事業本部間の連携やシナジーが、クリエイティブの成果にも繋がって、新しいものが生まれるときの感覚を体験できたことは、演出家としても良い経験になりました。

プロジェクトメンバー

フォトクリエイティブ事業本部長
フォトグラファー 高橋 秀行

フォトクリエイティブ事業本部
フォトグラファー 平田 正和

フォトクリエイティブ事業本部
フォトグラファー 渡邊 成美

フォトクリエイティブ事業本部 REMBRANDT
チーフカラリスト 浦田 淳

映像クリエイティブ事業本部 クリエイティブプロデュース二部
クリエイティブプロデューサー 福田 昌史

映像クリエイティブ事業本部 クリエイティブプロデュース二部
クリエイティブプロデューサー 池田 成克

映像クリエイティブ事業本部 企画演出部
ディレクター 平尾 太一

映像クリエイティブ事業本部 クリエイティブプロデュース二部
プロダクションマネージャー 山木 秀峰

REDHILL事業本部
エディター 本木 良

※所属は取材時のものです。