
生活者が、検索結果を上から順にクリックするだけでなく、AIの回答を手がかりにし始めるようになりました。企業に求められるのは、AIに正しく理解される情報を整え、その先の店舗やイベントといったリアルな購買接点で「選ばれる体験」まで設計することです。インタラクティブプロモーション事業本部の髙井 新平とグロースデータの磯村 亮太朗とともに、AIOを「顧客接点の再設計」という視点から考えます。
- AIOとは何か。なぜ今、注目されているのか
- AI検索で問われるのは「検索順位」ではなく「ブランド認識」
- なぜAIOは顧客接点全体で考える必要があるのか
- AIO時代に企業が見直すべき顧客接点設計チェックポイント
- まとめ AIOは検索対策ではなく、顧客接点の再設計である
AIOとは何か。なぜ今、注目されているのか
【POINT】
AIOとは、AI検索という新たな情報接点を含めて、企業の情報がどう発見・理解されるかを見直す取り組みである。
AIOは、生成AIやAI検索において、企業やブランドの情報が適切に認識され回答に反映される状態を整える取り組みです。同じ領域を指す言葉として、GEO(生成エンジン最適化)、LLMO(大規模言語モデル最適化)、AEO(応答エンジン最適化)なども使われていますが、本記事ではこれらを含む呼称としてAIOを用います。
従来のSEO(検索エンジン最適化)は、検索結果で自社の情報を見つけてもらいWebサイトへ来訪してもらうことを主な対象としてきました。これに対しAIOでは、生活者が企業サイトを訪れる前に、AIとの対話を通じてブランドやサービスを理解し、比較検討を行う場面が増えています。
そのため企業にはWebサイトだけでなく、AI上でどのようなブランドとして認識されるかまで考えることが求められます。

Hakuhodo DY ONEの「ONE-AIO Lab AI検索 生活者利用実態レポート 2026」では、AI検索を週1回以上利用する回答者の72.9%が、1年前よりAI検索の頻度が増えたと答えています。「新しい発見があることが増えた」と感じる人は67.8%、「目的に到達するまでの迷いが少なくなった」と感じる人も61.8%でした。

※引用:Hakuhodo DY ONE、「ONE-AIO Lab AI検索 生活者利用実態レポート 2026」、p.8
もっとも、現時点でAI検索がWeb検索をそのまま置き換えたわけではありません。同調査では、AI検索の利用後に約7割がWeb検索へ移行しています。AI検索は情報の要約や条件整理に、Web検索は概要の把握や情報の確認に使われる傾向があり、生活者は目的に応じて両者を使い分けています。

※引用:Hakuhodo DY ONE、「ONE-AIO Lab AI検索 生活者利用実態レポート 2026」、p.10
AI検索の普及によって変わるのは、検索手段だけではありません。生活者が企業サイトを訪れる前に、AIの回答を通じてブランドを知り、比較し、候補から外すことも起こり得ます。
「企業サイトを訪れる前に、AI上で比較検討が始まっています」(髙井)
企業にとってAIOが課題になるのは、AI検索が新しい情報接点として定着し始めているためです。
AI検索で問われるのは「検索順位」ではなく「ブランド認識」
【POINT】
AIに正しく認識されるには、信頼できる一次情報と一貫した情報発信が欠かせない。
AIOへの関心が高まるにつれ、「自社サイトのどこを直せばAIに拾われるのか」という相談も増えています。情報構造を整理し、機械が読み取りやすい状態にすることは有効です。しかし、AI検索は自社サイトだけを見て企業を判断するわけではありません。
従来のSEOで重視されてきたExperience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)からなるE-E-A-Tの考え方は、AI検索でも情報の信頼性を考える際の基礎になります。その判断材料には、企業サイトの情報だけでなく、報道や専門媒体、専門家の発信、顧客の声など、複数の情報源が含まれます。
「AIは“対策された情報”ではなく、“信頼できる情報”を見ています」(髙井)
そのため、テクニカルな対策だけではなく、一次情報の発信や第三者評価の蓄積が重要になります。

AIOの土台になるのは、商品やサービスの価値が適切に発信されていることです。独自の調査データ、開発の背景、導入・活用事例、実証実験結果など、企業自身が持つ一次情報は、そのブランドを理解するための基準になります。一方で、自社だけが「優れている」と主張しても、外部に裏付けがなければ、信頼できる情報として扱われるとは限りません。
たとえば、企業が自ら「業界最大手」と発信していても、報道や専門家の評価、顧客の声による裏付けがなければ、その主張がAI検索の回答に反映されるとは限りません。反対に、公式情報と第三者の言及が同じ事実を異なる角度から捉えていれば、情報の整合性を判断する材料になります。
したがって、AIOで最初に確認すべきなのはタグや文章表現ではなく、「どのようなブランドとして認識されたいのか」「その認識を支える事実があるか」「各接点の発信に食い違いがないか」という点です。Webへの流入だけでなく、AI上で形成されるブランド認識まで管理対象に含めることが、AIOの中心になります。
AI検索時代の情報探索フローとブランド認識

AI検索では、企業サイトだけでなく、報道、専門家の発信、口コミ、SNSなど複数の情報源をもとにブランド認識が形成される。企業には、AI上で自社がどのように認識されるかを設計する視点が求められる。
なぜAIOは顧客接点全体で考える必要があるのか
【POINT】
AIOは、個別接点の最適化ではなく、顧客接点全体の設計・実装を問うテーマである。
AIは、Webサイト、報道、ソーシャルメディア、口コミなどを別々の施策として見るのではなく、それらを横断して企業やブランドを理解します。生活者もまた、広告、記事、公式サイト、店舗、イベント、接客を通じて得た印象を一つのブランド体験として受け取ります。そのためAIOは、SEO部門がWebサイトだけを改善すれば完結する課題ではありません。
「顧客接点が分断されたままでは、AIOは機能しません」(髙井)
重要なのは、上流のブランド戦略やマーケティング戦略を固め、それを各接点へ落とし込むことです。Paid(広告)、Earned(報道や専門家など第三者からの評価)、Shared(ソーシャルメディアなどでの共有)、Owned(企業が管理するメディア)を統合して捉えるPESOモデルも、そのための考え方の一つです。
「AIは部門の壁を見てくれません。情報の分断は、そのままブランド認識の分断になります」(磯村)
それぞれの接点で役割や語り方が異なっても、中心となる事実やブランド価値に食い違いがあってはなりません。

AI検索は比較や候補整理を支援できますが、最終的に選ばれる理由は、実際の体験によって生まれることも少なくありません。
「AIは比較できますが、選ばれるための感情や衝動まではつくれません」(磯村)
そのため店舗やイベントなどのリアル接点は、AI時代においても重要な役割を担います。
さらに、購入後の関係を継続的に改善するためには、CRMやファーストパーティデータの活用も欠かせません。
「公開情報は誰でも使えます。でも顧客データは自社だけの資産です」(磯村)
AI検索で認識される情報だけでなく、顧客との実際の接点から得られる独自のデータを次の施策へつなげることで、顧客体験の改善が可能になります。こうしたデータは、自社だけが保有する重要な資産であり、AI時代における差別化の源泉にもなります。
このように、AIOで扱う対象は、AIに認識される情報や各接点での表現、リアルな体験や購入後のデータまで広がります。一つの部署だけで全体を管理することは難しく、部門や専門領域を横断して設計・実装する体制が欠かせません。
博報堂プロダクツには、データ、CRM、ソーシャルメディア、Web、イベント、店頭、リテールなど、顧客接点ごとの専門人材がいます。それらを横断し、ブランド戦略を起点に施策の実装、運用改善まで支援できることが、AIOの文脈でも強みとなります。
AI検索から購買・継続利用までをつなぐ「顧客接点設計」

AI検索、PESO、店舗・イベント、CRMは別々の施策ではない。ブランド戦略を起点に顧客接点全体を統合的に設計することで、ブランド認識、顧客体験、継続利用につながっていく。
AIO時代に企業が見直すべき顧客接点設計チェックポイント
【POINT】
AIO対応の要点は、「情報」「体験」「データ」をつなぐことにある。
AIOへの対応で見直すべきなのは、WebサイトやSEO施策だけではありません。AIに認識される情報、生活者に選ばれる体験、施策を改善するデータを一貫してつなげられているか。次の項目で、自社の現状を確認してみてください。「いいえ」がついた項目が、見直しを始めるポイントです。

1 AIに認識される情報があるか
□ 自社ならではの一次情報(独自データ、開発背景、導入・活用事例、実証実験結果など)が公開されている
□ 商品・サービスについて、自社サイトだけでなく報道、専門媒体、専門家、顧客からの言及がある
□ 自社サイト、広報、広告、SNSなどで、事実関係や中心メッセージに食い違いがない
□ AI検索で自社名や商品名を調べ、どのように説明・比較されているかを確認している
2 一貫した顧客体験を提供できているか
□ 自社サイト、広報、広告、SNS、店舗、イベントなどで、共通するブランド価値が表現されている
□ AI検索やWeb検索で候補に入った後、店舗、問い合わせ、購買へ進める導線が用意されている
□ 接点ごとの担当部署が、互いの施策や発信内容を共有できる仕組みを持っている
□ 個別施策の成果だけでなく、検索から購買・継続利用までの顧客接点全体を見ている
3 継続的に改善できるデータを持っているか
□ CRMや会員データなど、自社で取得したファーストパーティデータを蓄積している
□ 来店、問い合わせ、購買、継続利用など、自社サイト流入以外の成果も確認できる
□ 顧客の行動データを、施策や顧客体験の改善に反映する運用がある
□ AIを集計や分析の補助に使い、人が企画、価値判断、部門間の合意形成に時間を使える
まとめ AIOは検索対策ではなく、顧客接点の再設計である
AIOとは、AI検索向けの文章やタグを追加する施策ではなく、顧客接点全体を見直す取り組みです。AIに正しく認識されるには、確かな一次情報と第三者評価を含む一貫した情報発信が欠かせません。また、その情報を店舗やイベントなどの体験につなげ、データを活用して継続的な改善へ生かしていく視点も求められます。
重要なのは、個々の施策を最適化することではなく、それらを分断せずにつなぐことです。AIOとは、AI検索対策の新しいテクニックではなく、情報、体験、データを一貫して設計・実装するための考え方なのです。
博報堂プロダクツは、顧客化接点実装事業会社として、AIに認識される情報設計から、PESO、CRM、店舗やイベントなどのリアル接点まで、デジタルとリアルを横断した顧客接点の設計・実装を支援しています。
※記事内の一部図版は、生成AIを活用して作成しています。
