
企業と顧客の関係は、広告、店頭、EC、イベント、SNSなど多岐にわたります。しかし、それらの接点を一つひとつ設けるだけでは、必ずしも成果にはつながりません。大切なのは、それぞれの接点に役割を持たせ、行動や関係性を次へつなげていくことです。
本シリーズでは、博報堂プロダクツの8つの事業セグメントが、どのように顧客接点を実装することで、顧客の行動を生み、関係を育て、次の接点へつなげているのかを紹介します。
Vol.01では、顧客接点の全体設計と実装のプロデュースを担う「顧客化実装プロデュース事業セグメント」に焦点を当てます。クライアントの課題を起点に、社内外の専門性を組み合わせながら、顧客との接点を設計し、実装する。その役割と取り組みを紹介します。
- 「盛り上がった」で終わらない、その先の成果を捉える
- 機能する接点は顧客を「うごかす。そだてる。つなげる。」
- 課題を見極め、専門性を束ね、実装を動かす 顧客化実装プロデュース事業セグメント
- 実装事例|小売・アパレル業界のOMO店舗開発
- フルファネルは、企業ごとに描く「設計図」
- プロフィール
「盛り上がった」で終わらない、その先の成果を捉える
広告によって認知が高まっても、店頭やECで購入されない。イベントに多くの来場者が集まっても、その後の問い合わせや商談に結びつかない。では、その施策を打つことにどのような意味があるのか――。
近年、広告・プロモーションを評価する指標は、認知度や参加者数、アクセス数といった施策単体の反響から、売上、商談数、LTV(顧客生涯価値)など、その先の成果へと広がっています。
第一顧客化実装プロデュース事業本部長※1の西脇寛文は、クライアント企業が抱える課題の変化を、次のように捉えています。
西脇:ここ数年、「施策がその場限りで終わってしまう」というご相談が増えています。データによる可視化が進み、一つひとつの施策の効果を数字で把握できるようになった今、売上やLTVの最大化といった、施策の先にある成果への貢献がこれまで以上に問われるようになったと感じています。
施策単体の目標を達成しながら、期待した成果には届かない。その背景にあるのが、顧客行動の複雑化です。
第二顧客化実装プロデュース事業本部長※2の秋田功は、従来の直線的なカスタマージャーニーだけでは顧客の行動を捉えにくくなっていると指摘します。
秋田:顧客の行動が多様化した今、重要なのは、どの接点も入り口になり得るという発想です。たとえば、認知から購入へ導くだけでなく、体験を起点に継続購入へつなげるなど、接点の設計にはさまざまな切り口が求められます。
顧客は、認知、比較、体験、購入、利用といった段階を、必ずしも一方向に進むわけではありません。接点を離れた後に口コミを通じて商品を知り直すこともあれば、一度は関心を高めた潜在顧客が、時間の経過とともに無関心な状態へ戻ることもあります。
どれほど多くの接点があったとしても、それぞれの役割が明確でなければ、そこで生まれた関心や行動を次につなげることはできません。顧客との関係を継続し、施策をその場限りで終わらせないためには、接点に役割を持たせた設計が必要です。


機能する接点は顧客を「うごかす。そだてる。つなげる。」
顧客は今、企業や商品とどのような関係にあるのか。次にどのような行動を促すべきか。そのために、どの接点を入り口とし、どのような体験へ導くのか。接点の役割を整理する視点を、端的に表すキーワードが「うごかす」「そだてる」「つなげる」です。
うごかす
商品やサービスを知ってもらうだけで終わらせず、購買など具体的な行動を生み出す。
そだてる
顧客との継続的なコミュニケーションや体験を通じて、商品・サービスへの理解、企業への信頼、利用頻度を高める。
つなげる
一つの施策で生まれた関心、行動、データを、次の体験や別の接点へ引き渡し、顧客との関係が継続する流れをつくる。
生活者は、広告やWeb、SNS、店頭、イベントなど、さまざまな接点を通じて企業や商品・サービスと出会います。そこで生まれた興味を、検索や比較、購入、発信といった次の行動へと突き動かし、関係を育てていく。さらに、一つひとつの接点をつなぎながら、その関係を続けていく。この「うごかす」「そだてる」「つなげる」の一連の流れを、私たちは「顧客化」と呼んでいます。

課題を見極め、専門性を束ね、実装を動かす 顧客化実装プロデュース事業セグメント
博報堂プロダクツは、8つの事業セグメントで「うごかす」「そだてる」「つなげる」ための接点を実装します。
クライアントの課題に寄り添い、課題解決のために施策の全体設計とプロデュースを担うのが、顧客化実装プロデュース事業セグメントです。2つの事業本部と3つの支社で構成され、他の事業セグメントと連携しながら、クライアント企業と各領域の専門人材を結ぶハブとして、課題の整理、体制構築、実装の推進を担います。

クライアントから寄せられる相談は、「新商品の認知を広げたい」「イベントを実施したい」といった具体的な依頼から、「何が課題なのか整理したい」という漠然とした相談までさまざまです。顧客化実装プロデュース事業セグメントは、そうした最初の相談相手として課題を整理し、必要な専門性を見極め、社内のメンバーをつなぎながら実装まで推進する役割を担っています。
西脇:私たちの強みは、イベント、映像、デジタル、SNSなど、幅広い領域を組み合わせた実装力です。課題に応じて社内の専門性をつなぎ、領域を横断して検討できるため、課題がまだ明確になっていない段階でも、クライアントとの対話を重ねながら論点を整理し、必要な接点や体制を形にしていくことができます。むしろ、輪郭が定まっていないご相談に向き合うときにこそ、プロデュース機能の価値を発揮できると考えています。
秋田:たとえば「まずはイベントから」「CMだけ」といった個別のご依頼から、複数の事業セグメントをつないだフルファネルの実装まで、幅広く対応できます。施策の運用面では、データ利活用を専門とするグループ企業のグロースデータと連携し、接点を横断したデータ分析と改善、さらに、その結果を踏まえた次の実装まで一貫して提供することも可能です。また、オフショア(海外への業務委託)の制作体制も備えているため、求められるスピードやコストに応じた提案もできます。制作機能とエージェンシー機能をあわせ持ち、クライアントのニーズに細かく対応できるのです。
あらかじめ決められた事業領域を起点にするのではなく、クライアント企業の課題を起点に、必要な専門性を組み合わせる。このプロデュース機能が、博報堂プロダクツの多様な実装力を、クライアント企業ごとに最適化する役割を果たしています。
実装事例|小売・アパレル業界のOMO店舗開発
顧客化実装プロデュース事業セグメントが、クライアントとの対話を通じて課題を見極め、複数の専門領域を束ねながら顧客体験全体を実装した事例を紹介します。
背景と課題
- 働き方や服装の変化によって市場環境が変わる中、来店客層の固定化や若年層との接点不足が課題。
- 積極的な接客を負担に感じる顧客への配慮と、人手不足の状況でも顧客満足度を維持できる店舗運営の両立が求められた。
ソリューション
- 新たなコンセプトに基づくOMO店舗の開発から、グラフィック、動画、Webコンテンツの制作までを一貫して実装。
- デジタル採寸、パーソナル診断、スタイリング提案など、デジタルを活用した新しい買い物体験を設計。
- セルフで商品を選べるエリアと、スタッフに相談できるエリアを設け、顧客が自分に合った方法で買い物を進められる店舗体験を設計。
実装した顧客体験
- デジタルの気軽さと、スタッフに相談できるリアル店舗ならではのコミュニケーションを両立。
- 店舗とECを横断し、顧客が自分に合った方法で商品を選び、購入できる体験を実装。
- 今後の全社的なDX推進や店舗体験の進化につながる知見・データの蓄積を目指す。
セグメントの役割
- 当初の依頼であった「新店舗の内装デザイン」を、若年層との新たな接点づくりや店舗体験全体の課題として再整理。
- 空間設計だけでなく、デジタル体験、コンテンツ開発、店頭とECをつなぐ仕組みづくりなど、必要な専門領域を選定しプロジェクトを編成。
- 複数の事業セグメントや専門人材を束ねながら、OMO店舗体験全体の設計と実装を推進。


空間設計にとどまらず、顧客体験全体を見据えて課題を再定義し、必要な専門性を結集する。顧客化実装プロデュース事業セグメントは、個別施策を超えた全体最適の視点で、顧客接点の実装を推進しています。
フルファネルは、企業ごとに描く「設計図」
博報堂プロダクツは、多様な業界・領域の案件に向き合ってきました。そこで得られた経験は、施策の設計や実装に生かす知見として、社内に蓄積されています。
西脇:たとえば、どの工程でリスクが生じやすいのか、どのような体制で進めれば安定した品質を保てるのか。日々の案件を通じて蓄積してきた知見があるからこそ、高品質な実装が可能になります。
一方で、課題の本質は企業ごとに異なります。事業特性や顧客との関係、組織体制が違えば、課題解決の道筋も変わります。
秋田:課題は、決まった型を当てはめれば解決できるものではありません。フルファネルの設計は、完成済みのテンプレートではなく、クライアントと認識をそろえながら描き込んでいく、いわば「設計図」です。クライアントとともに、その企業ならではの形を定め、点在する接点を一つの流れとして描く。それが私たちの役割です。
顧客化実装プロデュース事業セグメントの仕事は、決まったソリューションを提案することではありません。クライアントとの対話を重ねながら課題を掘り下げ、時には依頼内容そのものを見直しながら、最適な実装の形を描いていくことが求められます。
秋田:当社には、クライアントの課題だけでなく、その背景にある歴史やカルチャーにも、ひたむきに向き合うメンバーが多くいます。ある種の泥臭さもありますが、そこまで踏み込むからこそ、できる提案があります。

顧客化実装プロデュース事業セグメントは、クライアントの課題を起点に必要な専門性を結び、顧客接点の全体設計から実装までを推進します。その役割は、博報堂プロダクツの8事業セグメントを束ね、顧客価値を最大化するハブです。
クライアントとの対話を通じて本質的な課題を見極め、顧客を「うごかし、そだて、つなげる」。その実現に向けて、多様な専門性を束ねながら、企業と顧客のより良い関係づくりを支えていきます。
次回のVol.02では、同じく〈顧客化実装プロデュース事業セグメント〉の関西・九州・中部の3支社をご紹介します。
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※1,2 第一顧客化実装プロデュースセグメント 博報堂DYグループの最前線で、クライアントの課題解決に向けてプロジェクトを推進するプロデューサー集団。社内外のスペシャリストと協働し、デジタルからリアルまでフルファネルの顧客接点を設計・実装、生活者とブランドの新たな関係を創出します。
第二顧客化実装プロデュースセグメント プロデューサー・プランナー・PR・クリエイター・デジタルマーケターなど多くの職種が所属する組織です。制作実装機能とエージェンシー機能を兼ね備え、主に博報堂プロダクツ独自のクライアントの多様な課題にフルファネルで対応しています。 |
プロフィール

- 西脇 寛文
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博報堂プロダクツ 取締役執行役員
兼 顧客化実装プロデュース事業セグメント担当
兼 第一顧客化実装プロデュース事業本部長

- 秋田 功
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博報堂プロダクツ 執行役員
兼 インタラクティブ顧客化接点実装事業セグメント担当
兼 第二顧客化実装プロデュース事業本部長
※記事内の一部図版は、生成AIを活用して作成しています。
