
博報堂プロダクツは2026年4月、VI(ビジュアル・アイデンティティ)を刷新しました。当社は新たなVIを起点に、「顧客化接点実装事業会社」として進化を図っています。新企業ロゴとコンセプトムービーには、どのようなメッセージが込められているのか。プロジェクト担当者に話を聞いていきます。
- 生活者・企業・社会と目線を一つにする、新VIの設計思想
- 柔軟性と多様性を演出する、リズミカルな8つの文字
- コンセプトムービーで、多様な顧客化接点をビジュアライズ
- 新VIを起点に、“まだ見ぬ衝動”をこしらえる
生活者・企業・社会と目線を一つにする、新VIの設計思想
博報堂プロダクツがVIをリニューアルしたのは、2019年以来、7年ぶりのこと。前回のデザインと比べ、小文字でデザインされた新企業ロゴは、丸みを帯びた柔らかな印象です。


リニューアルプロジェクトを統括したのは、統合クリエイティブ事業本部で本部長を務める瀧澤 武仁です。
瀧澤:企業イメージをダイレクトに表現するのが、VIの役割です。柔らかい印象に仕上げたのは、生活者や企業、社会と常に同じ目線に立つ姿勢を、私たちが大切にしたいからでした。見えてくる世界を一つにすれば、新たな価値を生み出したり、一緒に課題を解決したりできるかもしれない。そんな想いを込めています。
「同じ目線に立つ」姿勢は、カラーセッティングにも表れています。新たなVIは、すべてを包含する黒色をベースカラーとしつつ、あらゆる色に変化。生活者の嗜好、プロモーションやコンテンツの世界観、企業のブランドカラーに合わせ、色彩を自由に変えられるのです。

瀧澤:ブランドイメージを損ねる観点から、企業ロゴではカラー可変を許容しないのが通常です。当社は稀な例ですが、何者にもなれる柔軟性、固定概念にとらわれない多様性を表現したいと、自由なカラーセッティングを採用しました。
柔軟性や多様性とリンクするのが、博報堂プロダクツの新たな戦略です。デザインや映像、イベントやデジタルにわたる“総合制作事業”で成長してきた当社は、新たなステージを迎えています。目指すのは、制作物を“つくる”だけにとどまらず、顧客化そのものを実現する“顧客化接点実装事業”への進化。「顧客化」とは、生活者の行動を生み出し、関係性を持続・強化するプロセスです。
瀧澤:創業以来、広告制作事業会社として成長してきた博報堂プロダクツは、各領域で高度なノウハウを培い、顧客化の全接点を創出できるようになりました。今後は広告の概念にとらわれず、自由なクリエイティブを展開し、企画から運用までを一貫して担うことに注力します。無限に広がる顧客化接点にアプローチするためには、まず私たちが柔軟かつ多様でなければなりません。

柔軟性と多様性を演出する、リズミカルな8つの文字
VIリニューアルのプロジェクトが動き出したのは、博報堂プロダクツが創業20周年を迎えた2025年。新社長に橋本 昌和が就任するとともに、「顧客化接点実装事業」に向けた組織再編が進められていたタイミングです。博報堂のVI刷新を受け、グループ会社として方針策定に着手した瀧澤は、2026年の年明けから制作を開始。新VIの検討を進めました。
瀧澤:当社は博報堂グループの中核をなす一員であるとともに、事業の独立性を着々と高めています。『博報堂ブランドの一翼であること』と、『自立・独立した企業であること』。この二つを両立させることがVIの重要なテーマでした。新たな企業ロゴには、グループの一員としての信頼性と独自の価値を生み出す企業としての意思の両方を込めています。

新しい企業ロゴ制作を担当した、統合クリエイティブ事業本部の岡本 志音は、入社3年目のデザイナー。タイポグラフィを得意とするとともに、新たな時代の感性を備える若手クリエイターとして、今回起用されました。
岡本:すでに博報堂グループ全体のタイプフェイスが設計されていたので、当社のオリジナリティをどう表現するかを考えました。『正円の中の正方形』というグループのモチーフをベースにしつつ、『生活者、企業、社会と同じ目線』を表現したい。発案したのが、“P”だけを大文字にし、他の小文字と自然に馴染ませる方向性です。

シンボリックな頭文字の“P”には、『Professional』『Personality』『Produce』『Player』など、博報堂プロダクツの個性が込められています。当社のアイデンティティを大文字にしつつ、小文字と同じベースラインに配置することで、「同じ目線」を表現したのが岡本のアイデアでした。英字配列の原則を取り払うことで、「新しい価値の創造」も表しています。
岡本:“P”以外を小文字にしたのは、どこか威圧的な印象を与える大文字と比べ、親しみやすい印象にできるからでした。小文字は目線の動きが分断されないため、リズミカルな軽快さも生まれます。役割や序列に固定されない、博報堂プロダクツのクリエイティビティとマッチすると思いました。
大文字の“P”、小文字の“r”と“u”は、博報堂グループのタイプフェイスを岡本が加工したものです。“r”は曲線と直線の交わりを緩やかにし、“o”のラインと合うように設計。“u”は縦の直線を削除し、幾何学的な印象が強調されています。
岡本:冒頭が小文字の“p”の場合、円の曲線が“c”までつづき単調になるため、内側に直線のある大文字“P”の相性は絶妙でした。“P”“d”“t”における縦の直線、アポストロフィの正方形がポイントになり、全体として柔らかく仕上がっています。曲線と直線が織りなす軽快なリズムにより、企画から運用までを途絶えさせない、顧客化接点実装事業の全方位性も表現できました。

コンセプトムービーで、多様な顧客化接点をビジュアライズ
今回のVIリニューアルでは、コンセプトムービーも制作しました。担当したのはインタラクティブ顧客化接点実装事業セグメント 動画コンテンツクリエイティブ事業本部の竹内 一峰。デザイナーの素養もありながら動画領域での豊富な経験、AI活用などの技術を備えるディレクターです。
竹内:全社員に向け企画された今回のムービーは、博報堂プロダクツの企業姿勢を体現するものでなければなりません。最初に考えたのは、新設される8つの事業セグメントをビジュアライズすることでした。
博報堂プロダクツは、培ったノウハウを顧客化接点実装事業へと発展させるべく、専門性を軸とした8つの事業セグメントを編成しています。コンセプトムービーでは、各セグメントの個性に、企業ロゴがシンクロしていくのです。
竹内:例えば、ソリューションの全体設計を担う『顧客化実装プロデュース事業セグメント』は“スケジュール管理”、eコマースなどのソリューションを手掛ける『コマース顧客化接点実装事業セグメント』は“カートン”、データ活用やシステム設計を行う『インタラクティブ顧客化接点実装事業セグメント』は“UI・UX”など、それぞれの専門スキルを視覚的に表現。構成段階で各セグメントのイメージを自由に描き、編集で一気に凝縮させることで、熱量の高い30秒の動画に仕上げました。

コンセプトムービーは、リアルで撮影された画像とAIで生成された画像が混在しているのも特徴です。
(クリックするとYouTube動画に遷移します)
竹内:『ビジュアル顧客化接点実装事業セグメント』の部分は、光と影を表現するため実際に企業ロゴをパネル化し、ペットボトルで自然な陰影をつけるなど、手触り感のある撮影方法を試みました。テクノロジーの新技法を得意とするチーム『ウラワザ』には、触れると動くインタラクティブ装置をゼロから開発してもらっています。他にも、デザイナーに手描きでデッサンしてもらったり、レーザー装置を作ってもらったりと、それぞれのスタッフに協力してもらいました。一方、AI技術も活用することで、先進テクノロジーへの挑戦も表現しています。リアルとAIを判別できない雑多な動画は、多様な職種から構成される博報堂プロダクツらしさを象徴するとともに、手触り感を演出しています。
瀧澤:竹内のようなディレクター職も手を動かし、思い描いたものを形にしていく。数秒のシーンのために『ここまでやるか』と思わせる徹底ぶりには、博報堂プロダクツの気質を感じます。多様なクリエイターが横断的に連携し、アイデアや技術を掛け合わせることで、当社が目指す『多様な顧客化接点の実装』を表現できました。

新VIを起点に、“まだ見ぬ衝動”をこしらえる
プロジェクトを終え、社内外に発表された新VI。メンバーの3人に今後の展望を聞きました。
岡本:他のスタッフと関わる中で感じたのは、距離感が近いからこそ突き詰められる可能性です。心の底から『つくりたい』『かっこいい』と信じられるものを起点に、多様なクリエイティブに挑んでいく。博報堂プロダクツのポテンシャルを体感できました。
竹内:顧客化接点実装事業へと進化する当社は、今後“プロモーション動画”のような枠組みに固執せず、コンテンツそのものの価値を生み出していくでしょう。私自身も生活者や企業と新たな関係を作り出し、クリエイティブのカタチを変えていきたいと思います。
瀧澤:新VIの根底にあるのは、『まだ見ぬ衝動をこしらえる』という意志です。『こしらえる』は博報堂プロダクツの原点でもあり、今日も“手触り”や“好き”を信じる人材がクリエイティブを担っています。この力を最大化することで、今後はさらに生活者、企業、社会を突き動かしていきます。もっと自由で面白くなる博報堂プロダクツの活動を通じて、私たちらしい価値をさらに高めていきたいと考えています。


