With/Afterコロナで加速し続けるデジタルトランスフォーメーション(DX)を成功に導くために、最も重要な要素のひとつが「顧客との関係性をデジタル化すること」だと言われています。多くの企業が非接触型コミュニケーションを取り入れる中、新しい体験設計のあり方も大きく変わってきています。CGのリアルタイム合成、360°動画、VRイベントなどテクノロジーを活用した最新オンラインイベントを手がけるキーパーソンたちが語る、リアルとバーチャルが融合した新しい顧客体験から、オンラインイベントでおさえるべきポイントまでをご紹介します。
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― DXの動きが加速する中、福田さんはAR、VR、MRといったXR領域の専門家としての立場から、顧客とのコミュニケーションはどのように変わっていると感じていますか?
福田:最近「ニューノーマル」という言葉をよく耳にするようになりましたが、従来の広告コミュニケーションとして考えられてきた映像、WEB、イベントのあり方は、「非接触」という条件が加わることによって、全てがアップデートされていくだろうと私は考えています。
顧客体験が2Dから3Dになることで、大きく変わることが2つあります。ひとつは、生活者に新しい驚きを与えられるようになること。もうひとつは、ブランド理解をより深められるようになることです。これまで3D空間に入って楽しむというのは、ギークで特別な体験と位置付けられていましたが、非接触ニーズが高まったことで、様々な領域にXR技術を活かせないかという相談が急増しています。
今後、toC向けに影響力のある企業がARグラスを発売するなど、デバイス関連のマーケットも活発になるので、 XR領域がより一層、身近な存在になることは間違いないと思います。
ただ、すべてを3D化すればよいということではなく、商品サービスの性質やコミュニケーションの目的によって、最適なテクノロジーを選びながら設計していく必要があります。初めのWOW体験を作るには3D技術がとても有効ですが、単に映像視聴する場合には、2Dの方が優れた操作性で効率よく理解を深めてもらうことができると思います。
― 顧客との関係性がデジタル化することで、映像制作のあり方も大きく変わってきているのでしょうか。
熊谷:顧客体験がオンライン化されることで、場所や時間の制約を受けない世界中の人々が集まり、映像を視聴することができるようになりました。それによって「視聴ニーズの多様化」が進み、映像のあり方も大きく変わってきています。例えば、時間の濃度を上げるために2倍速で視聴する方が増えている一方で、繰り返し視聴して深く理解したいという方のアーカイブ視聴も伸びています。言語の異なる視聴者に対応すべく字幕のニーズも高まっています。このような細やかな機能を活用して、多様な視聴者一人一人に寄り添うことが、これからの映像制作に求められてくると思います。
また、オンラインイベントの映像配信においては、広告映像制作とは一線を画し、テレビ番組スタッフを起用してライブ感を伝えることを重視しています。効率よく映像制作するためには、その場で手早く編集できるディレクターやビデオグラファーの存在が不可欠です。私は前職で番組制作をしていたので、CMのように15秒で魅せる広告クリエイティブのあり方と、リアルタイムのスピード感で臨機応変に対応する番組制作のあり方、双方の良い面を使い分けながら、見る側のモードに合わせた映像プロデュースを意識しています。
― 数多くのイベントをプロデュースされてきたリアル領域の専門家である川崎さんは、DXの動きをどのように捉えられていますか?
川崎:新型コロナウイルス感染拡大により、広告コミュニケーションで一番大きな影響を受けたのが、イベントを中心としたリアル領域です。その分、デジタルをうまく取り込んで一番大きく進化することができたのではないでしょうか。これまでも、リアルとデジタルをつなぐ施策は数多く存在していましたが、リアルを補完する手法としてのデジタルに止まっていたように感じていました。緊急事態宣言中に、リアルのコミュニケーションが取れなくなったことで、オンライン基点で体験を捉え直す機会になりました。これまでイベント設計で培ってきた動線設計や見せ方に関するノウハウを活かしながらも、すべての顧客行動が可視化できるというオンラインの強みを活かしたソリューションが、まさに今、求められていると思います。
― デジタル、テクノロジー、イベント、映像のスペシャリストがチームを組んで開発した新ソリューション「PRODUCT’S LIVE」の特徴について教えてください。
藤原:「PRODUCT’S LIVE」は、非接触型ビジネスが注目を集める中で、リアルイベントを丸ごとオンラインで実施できるサービスとしてスタートしました。感染防止の観点からリアルイベントが全て中止になってしまい、代替案としてオンライン化を模索したことが開発のきっかけでしたが、みなさんから続々と引き合いをいただき、単にイベントをオンラインで配信するということに留まらない多種多様なご要望に応えることができるソリューションへと日々進化しています。映像に軸足にした売りに直結する施策、イベントに軸足にしたOMO展開など、様々なパターンの実績が蓄積しています。
川崎:例えばBtoBイベントでは、顧客管理がリアルに可視化できるので、クライアント視点に立つと、企業コミュニケーションの幅が大きく広がり、ダイレクトに顧客化に結びつけることができるようになりました。買う側の顧客にとっても、時間や場所の制約を受けることなく何回でも訪れることができるので、体験や情報収集の選択肢や利便性が高まっていると感じています。企業やブランドと顧客との関係性をデジタル化することは、費用対効果を高め、リアルでの良好な関係を構築するためになくてはならないものであると捉えています。
― 既に多くの導入事例があるとのことですが、「PRODUCT’S LIVE」ならではの強みや独自性について教えてください。
永田:イベントのオンライン配信という機能自体は、そんなに新しいことでも難しいことでもありません。今やライブ配信業界は、数多くのベンチャーが参入していますし、クライアントのインハウス化という動きも出てきています。しかし、新しい手法は一時話題になっても、すぐに廃れていってしまうものです。私たちのソリューションは、体験設計をプランニングして落とし込み、課題解決のためにカスタマイズしていくことができます。また、CGのリアルタイム合成、360°動画、VRなど様々なテクノロジーを活用して、生活者を飽きさせない工夫ができることも、「PRODUCT’S LIVE」ならではの強みだと思っています。
川崎:プロジェクトチーム内に、多様性のある専門家がいることは、前例がない課題に挑む上で大切です。各々の領域に強い軸を持った専門家が集結し、お互いを尊重しながらも、あえて先入観や常識を崩していくことで、チームとして新しい発見や価値創出ができるのだと思います。他の領域に対する理解を深めるために、積極的にナレッジ共有などにも取り組んでいます。
藤原:ライブ配信という手法に飛びついているだけで、設計がないがしろになっているケースが散見されます。オンラインで映像配信することは、ひとつの手段でしかないので、そもそもの目的に応じて、コミュニケーション全体を捉えた事前設計が成否を分けると思っています。
例えば、メディア露出やSNS拡散を目的とした場合、プレスによる撮影ができないので、予め撮影プレスキットを仕込む必要があります。事前にスチール撮影するなど、オンラインで完結する場合、これまでとは違う仕込みで出目を作っていかなければなりません。まだ体系だっていない課題も多く、何が必要かを知っている人が少ない状況なので、そもそもの目的を整理して効果測定していくための設計を丁寧にやっている点が成果につながっているのではないかと思っています。
― 今後の展望を教えてください。
川崎: 世の中的にはリアルが動き始めているタイミングなので、感染防止という守りのオンラインイベントから、費用対効果を高めるためにリアルの組み合わせ方をアップデートしていく攻めのオンラインイベントへと進化させ、新しい顧客体験をつくり続けていきたいです。
藤原:今後は、通信環境によってユーザー自身が2Dと3Dを切り替えられるようなハイブリット型の体験設計を取り入れる企業も増えてくると思いますし、リアルとオンラインのハイブリット化も進んでいきます。これまでなんで気づかなかったんだろうと思うようなことが、非接触化という視点により様々な領域で顕在化したことで、単発施策に過ぎなかったオンラインイベント配信が、今後は新しいコミュニケーションの主役になり、本気で取り組むべき事業に成長していくのではないかと感じています。
永田:いまは手法としてのオンラインイベントが注目されていますが、これからはブランディング起点でオンラインイベント設計をしていく時代になると考えています。最新テクノロジーを見せつけたり機能訴求するのではなく、いかにブランドを体験してもらうかという視点で、UXを再定義し、わかりやすくて、触りやすくて、馴染みやすい体験設計をして、オンラインとオフラインが融合したジャーニーを提供していきたいと思っています。
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