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博報堂プロダクツの各コア事業が追求している専門技術を駆使した新しい取り組み、
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「Next Film Lab.」始動!〜最新機材マイクロスコープレンズによる”The Songbards“ MVを制作〜

映像クリエイティブ事業本部とフォトクリエイティブ事業本部の共同プロジェクト「Next Film Lab.(ネクストフィルムラボ)」。最新テック・リサーチ・アイデアを武器に劇的にあたらしい映像や効率的なつくり方などを研究開発し、これまでに見たことのない映像を世の中に送り出すことを目的にスタートしたプロジェクトチームです。

 

その記念すべき最初の仕事として、The Songbards(ザ・ソングバーズ)のメジャーデビューアルバム「CHOOSE LIFE」収録楽曲、「悪魔のささやき」のミュージックビデオ(以下、MV)を制作しました。The Songbardsは、ソニー・ミュージックエンタテインメントの次世代ロック研究室に所属し、UKロックに影響を受けたツインギター&ヴォーカルと、息の合ったコーラスワークが特徴の新進4人組ロックバンド。彼らのMVを最新機材マイクロスコープレンズを使用し、全く見たことのない斬新な映像に仕上げました。

 

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The Songbards (ザ・ソングバーズ)

「悪魔のささやき」

ミュージックビデオはこちら

 

最新機材を活用したMV制作のきっかけは、LAで開催された映像機材の展示会「CINE GEAR EXPO2019」の視察。数多くのブースでマイクロスコープレンズが展示されており、その出展数の多さ、制作範囲の広がりや、クオリティ、機材価格からも世界的に普及すると確信し、映像の新しさがマイクロスコープレンズの魅力でした。同じものを見ても、マイクロスコープレンズを通して見ると全く違うものに見えてしまう。これを活かした映像をいち早く作りたいと考えていました。そこで、被写体、テーマ、音/音楽、全て揃っているMVが最適と考え、もともと音楽系映像が得意だったディレクターの中嶋を通じて、The Songbardsと出会い実現に至りました。

 

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アナログと最新テックのバランスで世界観を表現

 

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賀内)テーマは「欲望との葛藤」。The SongbardsはUKロックの影響を受けているためか、映像の質感にかなりこだわりがありました。真っ黒でありながら、クリアではないところや、手触り感など、微細な感覚で話すことが多く、広告制作とは大きく異なるポイントでした。マイクロスコープレンズの最大の特徴は、普通のカメラでは入れないところに入れること。それが迷い込んでいる、嵌(はま)っていく感じが歌詞の世界観と親和性がありました。

 

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中嶋)今回僕たちがMVを制作した「悪魔のささやき」はThe Songbardsのメジャーデビューアルバム収録曲。レーベル側にも、彼らに何か新しいことをさせたいという思いがあって、僕たちNext Film Lab.との想いとマッチして実現しました。実際、話してみるとアーティスト自身のこだわりも強く、最新テックを使いたい僕らと、映像は古い感じ(アナログ)が良い彼らと、意見がぶつかった時もあり、なかなか活路が見いだせない中、彼らのライブに行って、そうしたら…そこで雷が落ちてきたかのように企画が降ってきたんです。

 

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彼らが望む、アナログなトーンと最新テックというのは実は真逆だったので、最新テックで撮影した映像に、あえて16mmフィルムっぽいトーンを乗せることで、今まであまり見たことのない映像、新しい表現ができたと思っています。見た側が感じる違和感というか、テクノロジーを全面に出すとパキッとしたHDみたいな映像になりますが、敢えて16mmフィルムっぽくしたことが今回の新しいチャレンジでした。

 

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岩切) アーティストの要望を叶えつつ、曲をどう映像で表現するかに主眼を置いた結果が、いわゆる最新テック活用事例にならなかったのは狙いでもありました。テックはあくまで機材でありツールなんです。それを主眼にアングルやシーンも決め、テックをうまく使っていつもとは違う新しい作品ができました。

 

みどころは被写体まで5mmのクローズアップとズームアウト

岩切)マイクロスコープレンズは、直径1センチくらいの太さで細長いレンズの先端にはLEDライトがついています。曲がらない胃カメラみたいな感じで、狭い隙間にも入っていけます。撮影では通常のレンズも使っていますが、メインとなるアーティストの寄りのカットや、ブツ撮りの接写はマクロレンズを活用しています。

テクノロジー進化の恩恵でもある「被写体にここまで寄れる」ことを見てもらいたいです。防水なのでミキサーの中にも入っていくことができ、最初はなんだかわからないけれど、引いていくとピックや角砂糖だったとか、見たことない被写体との距離感が見どころです。闇が迫ってくることを表現したライティングもユニークですよね。

 

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若手ディレクター2名の2チーム体制が機能

賀内)今回はフォトクリエイティブ事業本部のスタジオ、ENstudioをまる1日借り切り、人物撮影とブツ撮りにスタジオを分けて撮影しました。マクロレンズはフォーカスが難しく、ブツ撮りチームでは対象が小さい分、フォーカスがシビアです。マクロレンズがモノの内側に入っていく映像を撮影する際、その微妙な揺れの影響はかなり大きくなります。人物撮影も、対象が演奏しているミュージシャンのため、人力と機材の合わせ技で工夫して使っています。現場ではいろんなハプニングもありましたが、チームワークとその場の機転で乗り越えた部分も大きいですね。

 

中嶋)撮影を2箇所に分けた事で大変ではありましたが良い点もありました。人物は松岡がメインで監督し、ブツ撮りはまた別のディレクターと、若手二人をメインにすえて監督させました。監督が2人いれば同時進行できるし、賀内と僕も彼らをサポートできるので、若手の現場経験としてもかなり恵まれた状況で仕事ができたと思います。

 

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松岡)先輩たちに見てもらい、助けていただきながらも自分の意見も伝える事ができました。ギターの指やドラム(ハイハット)の中に入っていくところなどはこれまで見たことのない世界がモニターの中に広がっていて、撮影しながらワクワクが止まりませんでした。出来上がった映像を見るたび歓声が上がって最後まで現場が盛り上がった撮影でした。

 

賀内)チームで作る利点は、脳みそが一個ではないから「もっとこうしてみたら?」という別のアイデアが色々出てくること。きっちりコンテを書いて、ロケハンをして、きちんとその通りに作業を進める通常のCM制作とは大きく異なりました。しかもこれまで使ったことのない機材での撮影のため、みんなで話し合い、現場で実験しながら進めることができ、とても良かったですね。「もっとこうしたらうまくいきそう」という建設的な意見も多かったです。

 

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松浦)今回の制作は、期間が短い中で、有志も含めPJTの中で可能な限りメンバーがそれぞれ予定を調整して集まる形でした。通常の案件のように、ひとつのチームとして最初から最後まで進めるのではなく、その時に集まったメンバーの中でそれぞれの専門分野を担当します。4人の制作チームでも新しい取り組みのため全員が手探り。みんなで相談しながら前向きに取り組んでいきました。その中で僕がしたことは、とにかく走る!こと。誰か一人が一生懸命走ることによって、他のみんなも鼓舞することができる。少しずつチームらしさが出来上がってきてそれを間近で見ることができたことに感動しましたし、とても楽しかったですね。

 

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吉田)いろんな個性、状態、モチベーションを持つ人たちで結成された混合チームでしたから。クリエイター陣は、のめり込んで制作しているけれど、プロデューサーの僕らは一歩引いて俯瞰で見ているから気付ける事も多い。
それがチームなんですよ!

 

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志村)このチームを引っ張ってくれる、吉田、松浦がいないとこの業務は成立していないと思います。

 

賀内)映像クリエイティブ事業本部では、この案件をきっかけに他事業本部との協業も積極的に行なっています。最新テックは実際に使うことで、どんどんアイデアが出てくるので、この経験で培った新たなチームのあり方を活かし、プロダクツならではのプロフェッショナルなチームワークを武器に新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。