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データで顧客を理解しアクションへつなげる分析思考力の基本

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データ活用と求められる分析思考力
生活者と様々なモノがリアルタイムにつながり、コミュニケーションの有り方が大きく変わり始めています。1日中365日あらゆるデータが蓄積され続け、そして分析力を武器に成果を見出す企業が日増しに増えています。

・PCやスマホによる行動に関するデータ
・様々なお買物データ
・ソーシャルデータ
・各種センシングデータなど

生活者とのコミュニケーションを高度化するために、日々マーケターはデータと格闘しています。

本連載では、数回にわたり分析とアクションを立案する視点について、基本の「き」を整理したいと思います。企業内に蓄積しやすく「お客様の顔が見えやすい」いわゆる1st party Dataに重きを置いた整理をします。
1st Party Dataに重きを置く理由は単純にマーケティングプランナーとして活動する筆者の主な担当領域であるということに加えて、内外のデータ連携が求められる昨今、最初に着手すべきは自社内データ活用であり、そこに顧客理解に役立つ真実が最も包含されていると考えるからです。

はじめに、データドリブンな観点でコミュニケーションプランニングを推進するポイントを整理します。

 

1.データから生活者一人一人の価値観を捉える。 コミュニケーションはよりパーソナルに。

誰が、いつ、何を買ったのか?(行動したのか?)、個人単位のデータを蓄積できたなら、顧客理解に役立ちます。大切なポイントは、「習慣性」と「嗜好性」の理解と考えています。無意識であれ、お客様が持ち得る「買物のクセ」を可視化。様々な観点でグルーピングすることで、パーソナライゼーションに一歩一歩と近づくことができます。

ひとつ留意したいことがあります。
データ分析からは、様々な視点を加えることで切れ味の鋭い(反応率の高い)ターゲティングをすることができます。ただ、シャープにしすぎると結果ボリュームが絞られ、反応率(KPI)は高いものの、全体の売上を押し上げていない、という状況に陥ることがあります。工数をかけてまでパーソナル化にチャレンジした意味があったのか悩んでしまっては仕方がありません。 精度の高いターゲティングとともに、ダイナミックな動きを担保できる「括り」、はどこにあるのか?  常に「量と質のベストバランス」を探し求める姿勢が必要になります。

 

2.「タイミングをつかむ」が、ますます重要な因子となってきた。

お客様にとって必要な情報でも、検討の機が熟していなければスルーされる確率は高まります。
マーケティングオートメーションに代表されるデジタルツールは、何らかの条件に達すると自動的に情報が配信される手法です。デジタルの真骨頂ともいえる、タイミングの妙をぜひ設計の中心にできたらと思います。そのために過去の購買履歴からの学びや、オウンドサイトや外部DMPとの連携で得られる「ニーズが沸き起こった瞬間」や「今後沸き起こるであろうタイミング予測」にチャレンジすることが求められます。

 

3.Push一辺倒ではない、Pullの観点も(≒UXUI)整備したい

お客様の状況に応じた、タイミングを勘案する。上述の通り重要ですが、情報提供側からの一方的なpushが過多な状態では、ネガティブな結果につながる要因となります。よりよい距離で関係を構築できる「タイミング」「間隔」「回数」を勘案することが大事と考えます。合わせて当然ながら、お客様はいざ欲しいと思えば、能動的に行動を起こしてくれます。

 

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この貴重な時にこそ、pullの観点への考慮が求められます。
「選びやすい」「探しやすい」「買いやすい」「継続的に買いたと思える」。
仕組み・仕掛けも整備されていることが大事です。これらは車の両輪として、双方をバランスよく設計していくことが大事です。

上記1.2.3に合わせて、データ活用の基本の「き」な思考力を整理しました。

 

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マーケティングを実践する現場の立場として、はじめに課題解決方向の仮説を立てることは重要と考えます。あてのない分析や何を評価すればわからない「KPI」数値の海に溺れていては現場は疲弊します。そうならないために、

・「フォーカスしないといけない課題仮説とその要因」
・「解決手法を考案するために、見ておいたほうがよいことはここにあるだろう」

といった仮の指針を持つことは、作業効率を上げるために重要です。

 

次に、統計的な分析作業から導かれた「差」の何に着目すべきか? 目的達成に近道な因子は何か? を見極める力が大事です。 チャンスを活かすべき「差」や「因子」を見極められたら、今度はそれを「アクション」に翻訳します。(次回以降の連載で事例紹介)。

・分析上可視化できても、そこまでではコストに過ぎず、売上向上に資するアクションへつなげられたか?
・それは分析に導き出された解を体現するに足るコミュニケーションアイディアとしてジャンプできているか?

コンテンツが面白くなければ、成果を得ることはできません。

 

図表2のような流れがあるとすれば、統計技術の素養とビジネスやコミュニケーションプランニングの素養、両方を持ち合わせる必要があります。 企業内に両方を1人で兼ね備えたスーパーマンは少ないのではないでしょうか。ここはチームを組んで乗り越えていくことが、肝要であると考えています。

 

1.生活者一人一人の価値観を捉える。 コミュニケーションはよりパーソナルに。
2.「タイミングをつかむ」が、ますます重要な因子となってきた。
3.Push一辺倒ではない、Pullの観点も(≒UXUI)整備したい

データ活用に立ち向かうための考えについて整理しました。
大事なことは、課題解決の方向性はどこにあるのか? 「気づく力」でもあると思っています。どうすれば気づく力を養えるのか?それは、お客様の徹底した理解と行動の背景にある動機に、自分自身がどれだけ近づけることができるか、です。

 

そもそも、優良顧客って誰ですか?


CRMやパーソナルアクションに関連するプロジェクトでは、「優良顧客を増やしたい」「優良化の育成シナリオを創りたい」という声が聞こえてきます。 とある機会の際に「優良顧客とはどんな状態ですか?」と聞くと、担当者それぞれが様々な想いで、異なる解釈をしていました。もちろん、ビジネスですから、売上に貢献してくれることは重要です。でも本当にそれだけを指標にしていいのか、一度考える機会を持つことは重要です。

某流通小売スーパー・コンビニエンスストアでは、
来店は月2回と、それほど来店頻度は多くありませんが、1回あたりの購買金額が高い。」
重要なお客様であることは間違いなく、優良顧客群に入ります。

毎日のように来店してくれるものの、お買物は1本のお茶のみ。」
購買金額の評価では、優良顧客とみなすことは難しいかもしれません。ただ、多くの競合を押しのけ、毎日来店してくれることをどのように評価するべきでしょうか。 近くにオフィスがあるなど、生活導線上に立地していると思われますが、常に選び続けてることに代わりは無く、これも重要なお客様といえます。

 

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図表3のように、単純な4象限を作成してみました。量的な売上貢献と共に、質的な観点の2軸です。質的な軸は様々な考え方があると思います。(データ取得可能か、にもよりますが)「満足度・推奨度」や「アクティブ度合い」などが考えられます。アクティブ度合いとは、メール開封有無・サイトログイン回数・キャンペーン参加有無などをスコア化し、その総和を例えばイメージしていただけたらわかりやすいと思います。


上段右は量的にも質的に理想的な状態と言えそうです。

であるならば、この状態にあるお客様とは誰で、どんな商品体験を有していているのかなど徹底して理解する必要があります。理想的な状態であるお客様も、はじめはエントリー顧客でした。つまりそこに至る道筋(体験)を知ることに多くのヒントを得ることができます。
また上段左の層はいかがでしょうか?

量的には充分な貢献です。一方で(アクティブ度合いなど)質的な観点が弱く、離反を招きやすい可能性があります。また下段右の層は、アクティブ度は高いものの量的な貢献は足りません。 ある意味「のびしろ」のある層ともいえます。 定着まもないお客様も多いかもしれません。


このように二つの軸で分類するだけでも理想的な状態の考察を深めることができます。 何をして優良顧客とするのか?充分な議論が求められます。

 

連載第1回は、ここまでとさせていただきます。

まずは顧客理解から。

次回は、顧客理解から、アクションへとつなげるプロセス例を紹介したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうござました。

 “生活者データ・ドリブン”マーケティング通信 | 博報堂DYグループ より転載